zokuダチ。セッション9

今回の新規住人は、クレヨンしんちゃんから、野原一家、
ボーちゃんが参戦します。

エピ 33・34・35・36

お引っ越しだゾ

この間のラグナに引き続き、マンションに又も新しい住人が
引っ越して来た。ここの処、何だか新規住人ラッシュであった。
黒子にしょっちゅう新しい住人の事を聞かれるのでそれはそれで
喜ばしいことなのだが、ジャミルの気苦労もどんどん増えて
行くのである。今年の大型十連休、子供の日が近いので、柏餅を
しこたま食って部屋でゴロゴロしていたジャミルは又もアイシャに
起こされる……。最も、一年中毎日が連休の様なRPG出身組には
連休も何も、いつもと同じだが。

「起きてっ、ジャミルっ!又、新しい人達が来たみたいよ!
しかも、今度は家族連れみたいなの!」

「……ん~、またかよ、ふぁあ~……」

眠い目を擦って、エントランスへと向かう。今回の住居人は……。

「ちっす、どもうー!」

「あはは、こんにちはー!」

「おおー!」

「たいっ!」

「アンっ!」

「……ボ……」

玄関先にいたのは、無精ゴマ髭の親父、母親、ジャガイモ頭の
ゲジ眉小僧と、巻き毛ヘアーの赤ん坊、それに、全身毛玉みたいな
真っ白な子犬に、鼻を垂らした変な子供。

「あんたらも今日から入居するんだな?……ふ~ん……?」

「……たいっ!たいっ!」

「!?」

どういう訳か、母親に抱かれていた赤ん坊が異様にジャミルに
興味を持った様であり、やたらとジャミルのパーカーの裾を
掴んでくいくい引っ張るのであった。

「こ、こらっ!ひまっ!駄目でしょ、お兄さんのお洋服が
伸びちゃうでしょ、全くもうーっ!どうもすみませーんっ!!」

「たいーっ!」

「い、いや、別に……」

「……ひまは若い男とイケメンに興味があるんだゾ……」

「そうなのか、ふーん……」

赤い服のジャガイモ小僧がぼそっと喋る。これは喜んでいいのか、
悪いのか……、ジャミルは複雑な心境になる……。

「おお、そうだ、今日から此処に世話になるんだから、自己紹介
しておかないとな!俺は、野原ひろし、一家の大黒柱だ」

「父ちゃんの足の臭さは絶品なんだゾ、おかちづきの印に嗅いでみる?」

「こらっ、しんのすけっ!!いやー、すいませんね、全くもう……」

「……」

「私は、野原みさえです、宜しくね、で、さっきからうるさくて
すみません、こっちが息子のしんのすけ5歳と娘のひまわりと、
飼い犬のシロです」

「ほほーい!」

「たいやいーっ!」

「アン!」

「ぼく、ボー……、しんちゃんの……、ともだ、ち……、なんと、なく、
いっしょに、ついて、き、た……、ぼく、も……、ここ、で、いっしょ、
に……、しんちゃん、たちと……、す、む……」

「はあ?」

カタコトで話す、ぼーっとした子供。この子だけは、しんのすけの
友達で赤の他人らしいが……。一体何故ついて来たのか、不明……。
考えると頭が痛くなるので、実の親はどうしたんだとか、ジャミルは
それ以上突っ込まなかった。

と、其処に……、そろそろ来たよ、アイシャちゃんだよ。

「ジャミル、今度のお客さんは?お部屋案内しないと……」

「あーん?今……」

「おねいさーんっ!オラと一緒におでーとしませんかー?
……あらら、お胸ないのね、硬くてまったいらねえ~……」

「……はあっ!?きゃ!!」

〔げんこつ〕

「す、すみませんねー!おほほほほ!……、この子ったら……」

「……」

アイシャに飛びつこうとしたしんのすけを、母親のみさえが成敗した。

「あれ?ジャミル、又新しい人達かい?」

「ああ、アル……」

「初めまして、こんにちは、僕はジャミル達と一緒に此処のマンションで
お世話になっている者です、アルベルトと申します……」

本を持ったアルベルトもその場に通り掛り、野原ファミリーに丁寧に挨拶した。

「……たいいいーっ!」

「コラ、ひまっ!!」

ひまわりは今度は、アルベルトに興味を示した様であり、
イケメン+金持ち……、という事を悟ったのか、アルベルトに
しがみ付こうとするがみさえに妨害された。ちなみに、もうジャミルは
飽きたらしかった……。

「すみませんっ、重ね重ね、もうー!!」

「あはは、いえ、……それでは僕、用事がありますので、
一旦失礼……」

アルベルトは冷や汗を掻きながらそそくさと、その場を退場した。

「……逃げやがったな、あいつ……」

「たいいー…」

ひまわりは名残惜しそうに、アルベルトが歩いて行った
方向を目で追った。

「……ふふ、こんにちは……」

続けて、クローディアもその場に通り掛かり、静かに、花の様な
微笑みを皆に向けた。

「おおお~……、巨乳のおねいさあ~ん、しかも、びっ、じ~ん!」

「……でへへ、これは又、綺麗なお嬢さんで……」

〔Wげんこつ〕

……鼻の下を伸ばした亭主と息子に又もみさえのゲンコが飛んで来た。

「ったく、どいつもこいつも……、あら?……あら~、私ったら、
おほほほほー!」

「……」

と、更にその後に、グレイがずかずか来て、ジャミルの側に近寄って来た。

「おい…、ジャミル、貴様、部屋割りの方、いい加減にどうにかしろと
言ったろう!俺の隣の部屋の野球バカ共達を何とかしろ、毎日ボールが
部屋に飛んで来るので敵わんのだぞ!」

「んな事言ったって、……直接本人達に言えや!俺の部屋にだって
突き抜けて飛んでくるんだよっ!幾ら注意したって聞かねえんだからっ!!」

ジャミルはブーブー怒りながら、被っていた帽子をしぶしぶ外し、
今朝も谷口のシャドウピッチングのボールをぶつけられてコブが
出来た個所を指差した。

「……あら、いい男ねえ……、ポニーテールのイケメンのお兄さん~……」

「たいい~……」

みさえとひまわりの視線は……、グレイの方に釘着けであった……。

「……な、何だか微妙に寒気がするが……、何回でも、ちゃ、ちゃんと
言っておけよ……」

……殺気を感じたグレイもその場を逃げ出す。

「みさえ……」

「母ちゃん……」

「あら?あららー、私とした事が……、いやーねえー、もうーっ!
でも此処は本当に色んな方達がいて楽しそうねーっ、ねっ、ひまーっ!」

「たいやいやいー!」

……かっこいいイケメン男には目が無い、変な専業主婦のみさえ。

「……ボ」

「ジャミル、そろそろ皆さんにお部屋案内しないと、小さい子もいるし、
ほら、疲れちゃったみたいよ……」

アイシャはジャミルを突き、ぼーっと声を洩らした男の子……、
ボーちゃんの方を指差す。

「ああ、そうだな、んじゃ、あんたらも2階かな、同じ階に中学生の女の子が
いるから……、少々……、ミーハー癖があるらしいんだ……、時々、ちょっと
興奮したりするとやかましいかもなんだ……、後、いつもチョロチョロ、
ネタ情報探ってる変な記者のおっさんが……」

「いやあ~、賑やかなのは慣れてるし、色んな人と接するのは楽しいよな!な!」

「ふふ、そうねえ!」

「……そうスか……、はは……」

まだ此処に来たばかりで余り状況を分らないひろしとみさえの夫婦が
笑っている。そうかい、それならいいや、後で苦情と文句言うなよ……と、
ジャミルは心で夫婦に念を送った。後々、変な住人はどんどん増えてくるの
だから。そして、アイシャが野原一家とボーちゃんを部屋まで案内する。
この家族は果たして、此処で一体どんな生活を送るのやら。

女達の修羅場

野原一家とボーちゃんも、どうにか部屋に落ち着き、ジャミルと
アイシャも部屋で一休み。

「……しかし、今年の連休は随分長いんだなあ……」

「私達、一年中大型連休みたいな物だと思うんだけどね……」

「……」

ジャミルを横目で見ながらアイシャが呟いた。

「たいよー!」

「あら?野原さんの処の、ひまちゃん?ハイハイして此処まで来たの?
凄いね、でも駄目だよ、ママが心配するからね、お部屋にもど……」

「たいー!(ケッ!)ててててて、……ててててて!」

「……ろう」

ひまわりはアイシャを無視し、ジャミルの処へハイハイで向かう。

「きゃあーい!……んふ、にえへへへへ……」

「お、おい、よじ登るなよ、俺はジャングルジムじゃねえんだから……」

アイシャは何となく、面白くなさそうな顏をして、ジャミルからひまわりを
引きずり降ろそうとするが。

「駄目だよっ!ん~っ!ママが心配するって言ってるでしょっ!!」

「たいおー!たいおー!(ええい、はなせっ、このペチャパイめっ!!)」

……一体、何が始まったのか分らず、ジャミルは恐怖で固まる……。


そして、その頃の野原一家。

「ねえねえ、美奈子ちゃん、何かネタない?……仕事で困ってるんだあ!」

「ハア!?んなの、アタシが分かる訳ないでしょっ!自分で探しなさいよ、
おっさん!ああーん!何処かに他にかっこいいお兄さんいないのーっ!?」

「……おんやああ~?カッコイイお兄さんなら目の前にいるじゃないーっ!」

「ご冗談言わないでよーっ!やだあー!……おーほほほほっ!!」


「はあ、あの兄さんの言った通り、本当に随分賑やかだなあ……、
若いって事はいい事だよ、うん……、ぷはー、うめえー!」

「そうね、後でお引越しのご挨拶にも回らないとね……、ふふ~ん♪」

野原ひろし、みさえ夫婦は新住居にて、呑気にプチ宴会中であった。
今の処、美奈子とラグナのやかましさは気にしていないらしい。

「う~ん、この島にはスーパーがあるかな、……チョコビもちゃんと
売ってるかなあ~……」

「……ボ、なんか、……たり、ない……」

ひまわりがいないのに気づいたボーちゃんは、一人で部屋を
抜け出そうとした。

「お?ボーちゃん、どうしたの?」

「……ひまちゃん、いない……、よ……」

「お?おおおー、気が付かなかったゾ……」

子供二人はひまわりを探しに部屋を出て行った。……保護者も
気づかず。


「たいやー!やいやいやー!」

「こらっ!……だから……っ、やめろってのっ!」

「駄目だったら!離れるのようー!このお兄ちゃん困ってるでしょー!」

「やいやいやー!やいやいー!(お前こそはなせー!胸無し
ペチャパイー!)」

ひまわり、ジャミルにしがみ付いたまま、離れようとせず。
アイシャはひまわりをジャミルから引き摺り下ろそうと
ひまわりと戦っていた。何故か異様にジャミルに纏わりつく
ひまわりにアイシャは苛々していた。本人も一体何故、こんなに
小さい赤ん坊にムキになっているのか分らず……。其処へ、ひまわりを
捜索に来たしんのすけとボーちゃんが。

「おお、いたゾ!ひま、駄目だゾー!」

「ボ……」

「……たいやっ!(チッ、見つかったか……!)」

「……た、助かったああ……」

「はい、ひまちゃん、あなたのお兄ちゃん達よ!」

「駄目だゾ、ひま、勝手にいなくなっちゃ、父ちゃんも母ちゃんも
オラ達も心配するでしょ」

「……やいやい……」

ジャミルはひまわりのお迎えにほっと一安心。アイシャは
顔に血管を浮かべ、ひまわりを兄貴のしんのすけに返す。

「ふふ、ひまちゃんは幸せだね!こんなに可愛がってくれる
優しいお兄ちゃん達がいて!」

「……やいっ!(ケ!」)

「……ううーん、アイシャのおねいさーん、オラのくちびるにも~、
優しい愛とラブをちょうだ~い……」

しかし、今度はしんのすけが唇をタコの様に突出し、アイシャに
チュウを迫る……。

「……ボ、……」

「あの、その……、えーっと、えへへ、どうすればいいかな……」

「好きにしてやりゃいいじゃん……」

「ちょっと!何でジャミルが機嫌悪くなるのよっ!」

……今度はジャミルの方があまりご機嫌が宜しくなくなったのであった。

「っ!いたっ!コラ、あんた達っ!急にいなくなったと思ったらっ!
……駄目でしょっ、もう~!ホラ、戻るわよ!……本当にもう~、
ウチの子達がどうもすみませんでした~っ!」

「真の追手が来たゾ、……あ、無念……」

「たいやいやいーっ!(邪魔するなケツデカオババーっ!)」

「……じゃあな、またな……」

「あははは……、またね……」

等々、保護者のみさえ現れる。みさえはしんのすけとひまわりを捕獲。
部屋まで連れて行く。ボーちゃんもボーボー言いながら一緒に帰って行った。
……その様子を見ていたジャミルとアイシャは……、漸く心から一安心。



そして、夜……、ジャミルの部屋には今度はダウドが
顔を出していた。

「お前、最近あんまり出番なかったな……」

「……何だか殺気を感じて、ここんとこ、部屋に引き籠ってた……」

2人は長い大型連休をどう過ごすか考えながら、値下げの
柏餅を食べている。

「たいや!」

……まだ赤ん坊が一人で開けるには重いであろうドアを
勝手に開け、ひまわりが顔を出した。恐るべき赤ん坊である……。

「う、……ま、また来た……」

又隙を見てひまわりが脱走してジャミルの部屋に来た。
……アルベルトとグレイに相手にされないので、どうしても
ジャミルの処に来てしまうらしい。

「……ててて、ててててて……、あや?」

「な、なに……?」

ひまわりはダウドの顔を暫く見た後……。

「たい!(けっ!イモ!)ててて、ててててて……」

「何か失礼な子だなあ……、何、あの人を馬鹿にした
様な目つき……」

「よしっ、ひまわりっ、これを見ろっ!」

「ああ~?」

ジャミルはダウドのオールバック頭をぐちゃぐちゃに崩し、
縛ってある後ろ髪の毛も無理矢理解いた。

「……な、何すんのさあ~、もう~……」

「あや?……てひぃぃ~……」

ひまわりは態度を一変させ、今度はダウドの顔を見て、
にへらにへら笑い出した。

「ちょ……」

「良かったな、お前、髪解いたら気に入られたみたいだぜ?」

「……困るよお~、何とかしてよおおお~……」

「ひまあああー!いたっ!アンタはもう~!何回言ったら分るのっ!
駄目だって言ってるでしょうがっ!」

ドアを勢いよく開け、再びみさえが姿を現す。

「やいやいー!あいやいやいー!」

「……」

みさえはひまわりを捕獲し連れていく。その様子をボーっと見ていた
ジャミルとダウド。……家庭の主婦って大変なんだなあ……と、
他人事ながら、しみじみ思うのであった。

そして、次の日の早朝……。

「うふふ、今日は早起きで、うるさいアルテミスが目を覚ます前に
来ちゃったわ……、……此処で見張っていれば、絶対にグレイさんが
通る筈だわ……、この美奈子が絶対に何としても、グレイさんに
モーション掛けて落とすのよ、そして、GWは二人で愛の休日を……」

エントランス玄関前で張り込んで座り込み、……只管グレイが
通るのを待っているミーハーアホ美奈子。……ちなみに早朝5時から、
ずっとである。

「やいやいやー!」

「……うっ!っと、何よこの子は!子供がこんなとこ一人で
ウロチョロしてたら駄目でしょうが!ホラホラ、帰りなさい!」

「やいやいやー!ややややい!(お前こそ帰れー!このひょっとこ
オカメおばんー!)」

「……な、何か、すっごくむかつく感がするんですけど……、
何なのかしら……?」

此方もまた早朝から脱走してたらしき恋する乙女?ひまわり。
赤ん坊ながらにしてイケメンを狙う鋭い目は只者ではない。
……此方もグレイを狙っている為、美奈子に対し、早くも敵対心を
燃やしていた。

「あの……、グレイは今朝はいないのよ、……大人のお付き合いで
昨夜からホーク達と出掛けているの……」

其処に静かに現れるクローディア。……何となく顔が引き攣っている……、
様にも見受けられた。

「……がああ~んっ!」

「やいやいー!」

「……見つけたっ!……みい~……なーあーこーおおーー!」

「ひまわりーーっ!」

……それぞれの、保護者……、アルテミスとみさえに見つかり、
捕獲された美奈子とひまわり。年齢は違っても、いい男を追掛ける
ミーハーな困った似た物同志……、である。

「アタシは絶対諦めないんだからねーーっ!」

「ややややーーい!」

そして、更にその日の夕方。

「ててて!ててててて!」

「……か、勘弁してーっ!!」

「ひまわりーーっ!!こらあーーっ!!」

又、脱走したのか、ひまわりが高速ハイハイでアルベルトを
追いかけ、その後をみさえが慌てて捕まえようとする光景が
ジャミルの目に留まった。

「……はあ、これからこのマンションも増々おかしくなるな、
どうなるんだかな……」

「全くですな、……ジャミルお兄さんの将来の結婚相手並に
日本の未来も見えませんなあ……」

……又しんのすけも突然現れ、やれやれのポーズをとった。

「そうだな、俺の将来の結婚相手……、先見えねえ……、って、
お前に言われたかないわーーっ!!」

〔げんこつ〕

お嬢様への道・1

「はー、クローディアさんて、いつもお淑やかで綺麗、……どうしたら
そんなにお姫様みたいになれるんですか?」

「そうね、私がお姫様みたいかどうか分らないけれど、……女の子は皆、
お姫様なのよ」

「私も?」

「ええ、勿論よ……」

「はーっ!みらいー、リコー!私も皆も女の子はお姫様って
クローディアさんに言われちゃったー!」

「ふふ、はーちゃん、嬉しそう……」

廊下で二人のやり取りを聞いていたアイシャはくすっと笑った。

「お姫様……、ね……」

「ちょっと、ジャミルっ!どうして私の方見て溜息つくのっ!?」

「……いでで、いででで!コラやめろっ!オメーもちょっとは
大人しくしてねえと、嫁の貰い手ねえぞっ!!」

「ふーんだ、大きなお世話ですっ!なーんでジャミルがそんな
心配すんのよっ!バカっ!!」

(てか、あの時……、ことはが確か変身した時、口調がそれこそ
変わって……、まるで別人みたいになったけど……、本人は
自覚してないんだろうか……)

「何よ、ジャミル!」

「だから、何でもねえよ……」

「そうだ!お洋服屋さんに新しいの入荷したかなあ、ねえ、
行こうよーっ!!玉にはおしゃれしたいのーっ!女の子だもんっ!」

アイシャがジャミルの腕をぐいぐい引っ張った。

「……あてて、俺は女じゃねえから、どうでもいいよ……」

「何よ、どうせまた女装するんでしょ!?」

「……するか馬鹿!」

「おい、ジャミル、昨日、クローディアの付き添いで、俺も洋品店に
足を運んだが、結構新作が入荷していたぞ……」

「ほんとっ、グレイっ!?」

アイシャはキラキラ目を輝かせる。

「たく、余計な事言うなよな……」

「ああ、アホのお前にぴったりの新作だ、大銀杏とマワシのセットだ……、
買い得だぞ……」

「っ!!うるせーこの糞グレイめっ!!はよ向こう行けっ!アホッ!!」

ジャミルがグレイに向かって蹴りのポーズを入れると、グレイは
ニタニタ笑いながら姿を消した。

「むっかーっ!相変わらず腹立つゥ……!!」

「ねえ、ジャミルもずっとその野球帽子、被りっぱなしでしょ?
玉には帽子脱ぎなさいったら!……はげるよっ!!」

「おめえもうるせえっての、大きなお世話だっ!」

「ぶうー!それじゃ、新しい帽子も買いにいこ?うん、決まりーっ!
折角だから、又4人で行こう、私がアル呼んで来るから、ジャミルは
ダウド呼んできてね!」

「……おいおいおいおい、どうしてまたそういう……」

「何、ジャミル、オイラ呼んだ?何処か行くの?」

「いや……」

「お待たせーっ、アル連れて来たよーっ!」

アイシャがアルベルトを引っ張って連れて来た。尚、アルベルトはもう
騒ぎに巻き込まれる回避を諦めた様子。

「じゃ、4人揃ったね、それじゃ洋服屋さんとお帽子屋さんへ
しゅっぱーつ!」

……アイシャが仕切り、4人は買い物へ……。

「…洋服もインテリア同じく高いねえ~…」

ダウドが何万円の洋服を見つめる。

「いらっしゃいませ、ドナルドだよっ!今日はね、バイトで
来てるんだ、君達も一緒にらんらんるーしようよっ!」

「……お前の言ってる事は毎回意味が分かんねえんだけど、頼むから
ゆっくり見させてくれ……」

「ねえ、アルはどんなのがいいの?」

「……うーん、実家から持って来た私服と比べると、ちょっと
地味かなあ……」

「けっ!ボッチャマがよ!」

「あ、ジャミル、これこれ、いいのがあったよお!ジャミルにぴったり!
90年代newツッパリセット!」

「……だから、もうそれも、いいっつんだよっ!」

「……あいたっ!」

ダウドの頭を思い切りぶん殴るジャミル。

「あっ、これこれ……」

「?」

「お嬢様ワンピ、これ着たら……、私もお嬢様みたいに
なれるのかなあ……」

アイシャはワンピースを抱きしめて、夢見る様にうっとりする。

「……プ、やめとけやめとけ、こっちのプロレスコスの方が似合うぞっ!
それとも、こっちのハゲカツラ&腹巻セットの方がいいんじゃね?」

「……ちょ、ジャミルっ!」

「あ、ああ~、又、アイシャが怒るよお~……」

「ははははっ!は……」

「……」

アイシャは無言でジャミルにズンズン近づいていくと……。

「どうせ私は……こんなの似合わないわよっ……、何よっ!
意地悪ジャミル!!……大っ嫌いっ……、ばかあーーーっ!!」

「……ぶわっ!!」

アイシャはジャミルに向かってお嬢様ワンピを思いっきりぶつけると
泣きながら店を飛び出して行った。

「こ、コラ待てアイシャっ!!」

「……今のは完全にジャミルが悪いよお~……、幾ら何でも……、
女の子に対してハゲカツラセットは酷いよ……」

「泣いてたよ、アイシャ……、謝りなよ、ちゃんと……」

「知らねえよ、フ、フン、すぐ泣きやがる……、だから女は
嫌なんだよ……、つまんねえ事でメソメソしやがって、冗談も
分かんねえのかよ……」

「それ、ちゃんと買ってねえー!じゃないと、ドナルドが
怒られちゃうからねえー!!4800円だよっ!!」

「分ったよ……、でも、値段が10000円いかなくて助かった……」

……結局、残された男衆3人は帽子屋にも寄らず、そのまま
マンションへと無言で帰宅した。


……部屋に戻ったジャミルは只管寝転んで数時間、ふて寝していた。

「……何だよ、アイシャの奴……、けど、駄目だなあ、俺って……、
どうしても……、なんつーか、見てるとからかいたくなるんだよなあ~、
それはその……、あいつが……、ボショボショ……、可愛いから……、
……あーーっ!何言ってんだ俺はーーっ!!」

「ジャミル、うるさいんだけど、オイラの部屋まで奇声が聞こえる……」

ダウドがのそっと部屋に入って来る。

「悪かったな、静かにすりゃいいんだろ……」

「どっこいしょ……」

ダウドはジャミルの側に正座するとジャミルの顔を見た。

「別にオイラは説教する気も何もないけど……、ただ、此処で
愚痴ってるよりはアイシャにちゃんと謝って来た方がいいと思うよ……」

「……」

「聞いてんの、ジャミルっ!!」

「ちょ、おま……、何だよ、又そのスリッパは!!」

「アルから借りて来た、早く謝りに行かないと……、叩くよ!」

「分ったよっ!たくもうっ!!」

ダウドに脅され、ジャミルは仕方なしにアイシャの部屋まで向かった。

(……最近ダウドの野郎も急に牙を向く様な……、何かの前兆かな……)

そして、アイシャの部屋の前に立つ。

(まだ怒ってんだろうな、相当……、いつもなら、すぐ笑って機嫌も
直ってる頃だけど、……今日は……、……はあ……)

踏ん切りが付かないジャミルはアイシャの部屋の前でウロチョロ
ウロチョロ……、これでは変なストーカーである……。

「今日は、止めるかな……、もう寝てるかも知れないしな……、
止めよう、うん、今日は止めよう!」

と、あっさり引き下がろうとするが……。

「……っとっ!!」

……何故か廊下に置いてあったバナナの皮で滑り……、思いっ切り
転倒した。

「……誰だっ!んなとこにーっ!!」

「俺だ、悪いな……、つい……、何かつい捨てたくなっちゃうんだな、
皮……」

正面を見ると、ユリアンがバナナを食べながら歩いていた。

「テメエかっ!この緑バカーーっ!!」

「……」

「あ……、アイシャ……」

……罵声に釣られ、アイシャが部屋のドアを開けて、ちらっと
廊下を見る。

「あのさ、アイシャ!さっきは……」

「いいよ、別にもう怒ってないよ、どうせ私には縁のない
お洋服だったんだから……、どうせ着ても似合わないしね、
それじゃあ……」

「ちょ、ちょっと待てよ、ちゃんと話そう、……な?」

「別に、……ジャミルと話す事なんかないもん……、私、疲れてるから……、
もう今日は休みたいの、じゃあ……」

「あ……」

アイシャはちらっとジャミルの顔を見たが……、すぐに目を反らして
部屋のドアを閉めた。

「……まずいでゴザル……、これは相当マズイでゴザルよ、ジャミル殿……」

自分でも一体何を呟いているのか分らず、ジャミルも混乱する……。

お嬢様への道・2

次の日……、アイシャはサラの部屋に訪れていた。2人は性格は
全く違うが、歳は同じなので、結構話は合う様で玉にはこうして
顔を合わせ、お互いに悩み相談、雑談、ファッションの話など、
色々している。

「そうなの、……それはちょっと酷いわね……」

「いいの、別に、だってジャミルは本当の事を言っただけなんだし、
気にしてないの……、気にしてないよ……」

「だったら、何でそんなに暗い顔してんのよ、あたしが一発、ブン殴って
来てあげようか?」

「……お姉ちゃんたら……」

サラの部屋には姉のエレンも訪れており、一緒に話を聞いて
くれているのだが。

「もう、色々考えると嫌になっちゃう!……ねえ、エレン、私にも
強い体術技教えてっ!」

「いいわよっ、教えてあげる、タコジャミルの野郎を
ぶっ飛ばしちゃいなさいよ!」

「……だから、やめてってば、お姉ちゃん!アイシャも……、
ちゃんと話し合ってジャミルと仲直りした方がいいわ、……ね?」

サラがアイシャを宥めるが、どうにもアイシャは元気になれず……。

「そうだね、……はあ、私、一旦部屋に戻るね、サラ、エレン、
どうも有難う……、でも、お話聞いて貰って、少し元気が出たよ……」

「アイシャ……」

浮かない顔でアイシャはサラの部屋を後にする。

「なーんか、やっぱり無性に腹が立つわね、……此処はやっぱり
あたしが行って……」

「……だから、やめてって言ってるの、お姉ちゃんは、もう~!」


「……ジャミルの……、バカ……」

廊下に出たアイシャは訳もなく、再び流れてきた涙を拭いた。


「……」

「あれだけ言ったのに、まだ謝ってないの……?はあ、馬鹿だねえ~……」

「うるっせんだよ、バカダウド!……あいつが謝る機会をくれねんだから
しょうがねえだろ!」

「オイラ呆れて物が言えないよおー、もう勝手にしたら?
折角来てみたけど、部屋に戻る……」

心配で様子を覗いに来たダウドはジャミルの態度に呆れ、
すぐに部屋に戻って行った。

「フン……、大きなお世話なんだよ……、ほっとけっつーの……」

……気分を落ち着かせようと、タバコを1本持って、
共用玄関先に向かう。

「おおー!ジャミルのお兄さーん、おお?……何だか
今日は元気がないですなあ……」

「そう見えるか?しんのすけ……」

「何だかいつものお馬鹿さのオーラが消えかかっているゾ」

「お前もうるさいな……」

「そんな時はこれ、ケツだけ星人!ぶりぶりー!ぶりぶりー!」

「……余計落ち込むわっ!!あーっ、早く部屋に戻って支度しろよ!
幼稚園行く時間になるだろうが!ほらほらほら!!戻れ戻れ!」

「ぶりぶりーぶりぶりー!……ぶりっ!!」

「……っ、こいつ……、ケツ出したまま生屁こきや……あーっ!
くっせええーっ!!」

「しんのすけっ!何やってるの!あ、どうもすみませーん、
ジャミルさんが捕獲してくれたんですねー、本当にいつも
有難うございますー!ではっ!」

「いや……」

みさえはしんのすけを捕まえ、ジャミルに礼を言うと
部屋へと戻って行った。

「……いっその事、恥を捨てて俺もあれをやったら……」


「アイシャっ!……昨日は悪かったっ!これを見て笑って
機嫌を直してくれっ!!ケツだけ星人!ぶりぶりー!ぶりぶりー!」

「……いやああーーっ!!ジャミルのばかあああああーーっ!!」


「余計自爆行為だ、……あほらし、……は、はは……」

恐ろしい想像になったので、それ以上の描写は控えようとする
ジャミルであった。


「……やっぱりこれだ、行き詰った時は、コマンド、たばこすう、
by神宮寺三郎……、……何も浮かばねえな……、よ、洋子ちゃあーーん!!」

それはお前が探偵ではなく、ただのアホだからである。

「あんだっ!?またどっからか声が聴こえたぞ!?」

「……ジャミルっ!!」

其処に物凄い形相のジタンがダッシュで走って来てジャミルに
突っかかって来た。

「な、何だよ!」

「何だよじゃねえだろ!お前、アイシャに何したんだよっ!昨日、
彼女、外から帰って来るなり、泣いて部屋に閉じこもってたじゃねえか!
レディを泣かすなんて男のする事じゃねえだろっ、ええ、どうなんだよっ!?」

そう言うアンタも本編じゃダガーを心配させ、泣かせまくりで
あるが……。

「……お前もうるさいなあ~、関係ねえだろ、ほっとけっつーの!」

「いーや、黙ってらんないねっ!女の子を泣かす奴は、このジタンが
許しちゃ置けねえ!よーし、なら、アイシャはこのオレが……」

「……ジタン、2人を心配するのはとても共感できるけど……、
余計な事は言わなくていいのよ、ね?」

「いたたた!ダガーさんっ、痛いっ!耳、耳っ……!!」

「はあ、……本当に、男の人って不器用だわ……」

ダガーは溜息を一つ、ジャミルの方を見る。

「フン、男ばっかりとは限らねえだろ、女だって……」

「そうね、だから、色々な事を経て、段々お互いに分かり合えていくのかも
知れないわね……」

「ん……?」

「ねえ、アイシャが又さっき、外に出て行ったみたいだけど、
追掛けなくていいの?」

「……知らねえ……、俺には関係ねえよ」

「そう、じゃあ、私達は部屋に戻りますね、……では……」

「……」

ジャミルはジタンとダガーが部屋に戻ったのを確認すると、
一旦自室に戻り、紙袋を抱え、マンションの外へと飛び出して
いくのであった。


「……ハア、アイシャ……、いたっ!」

ジャミルが見ると、洋服店の店先で一人で突っ立っている
アイシャを見つける。

「ジャミル……」

アイシャはジャミルの顔を見ると、慌てて下を向いて俯いた。

「何だよ、まーだ昨日の事、根に持ってんのかよっ!お前ってほーんと、
しぶといな!」

「なによっ……、又喧嘩吹っかけに来たの?いいわよ、その手には
乗らないんだから……、挑発なんか気にしないわよ……、じゃあね……」

「……待てよっ!」

立ち去ろうとしたアイシャの腕をジャミルが強く掴んだ。

「……いたっ!ちょっと何するのっ!?」

「これ……」

ジャミルはアイシャに紙袋を手渡す。

「昨日、ちゃんと渡せなかったからな……」

アイシャが紙袋を覗くと、中にはピンクのお嬢様ワンピが入っていた。

「これ昨日の……、どうして……?」

「正確に言うと、お前がこれ俺にブン投げただろ?……責任取らされて、
まあ、購入した訳だけど、その、何だ、……ああー、めんどくせえなあ~!」

「……」

「昨日は、ホント、悪かったよ、ごめん!俺、……その、どうにも
口がわりィからさ、……あんなに落ち込むとは思わなくて……、
マジで、ほんっと、ごめん!!でも、それは……、その、お前を
構うのが俺の楽しみで……、怒った顔を見るのがだな、その、つい……、
可愛いくて……、あ~っ、うう~っ……」

ジャミルは顔を赤くし、言葉を詰まらせながらも必死になって
アイシャに頭を下げるのであった。

「ふふ、もういいよ、ジャミル、ジャミルが毒舌なのは、
今に始まった事じゃないしね、ただね、私にはこういうのは
やっぱり似合わないのかなあと思ったら……、何だかね、凄く
悲しくなったの……」

紙袋を抱きしめ、アイシャが切なそうな顔をする。

「アホっ!誰が似合わねえなんて言ったんだよっ!……その、
お嬢にも色んなタイプがいるんだぞ?お淑やかなのばっかじゃねえよ、
……お前みたいなジャジャ馬系のお嬢だっているんだよ……」

「……ジャミルが言ったんじゃないの、やめとけって……」

「だからっ、それはっ、構って言ったんだよぉお~!頼むから、
機嫌直してくれ……」

「ふふ、ジャミルったら……」

「あ……」

アイシャはそっとジャミルの手を握った。

「私、これ……、着てみて大丈夫かな?似合うかな……、
お嬢様になれるかしら?」

「絶対、に、似合うって!……自信持てよ!な?」

「うん……」

アイシャは顔を赤くし、再び紙袋をぎゅっと抱きしめる。
その様子を見て、ジャミルも心から安心したのであった

「じゃ、じゃあ……、マンション戻るか……」

「ちょっと待って!私、まだ完全に許した訳じゃないよ……」

「……え、え、ええ~!?」

アイシャはジャミルを連れ、再び洋服屋の中に入って行く。

「どれがいいかなあ~、あ、これっ!」

「……ああ~?」

アイシャはにこっと笑って、ジャミルの前に自分が選んだ
洋服を突き出した。

「……アイシャ、俺、これマジで着たまんま……、マンションまで
行くのか……?」

「あはっ、似合ってるよっ、ジャミルっ!」

「……とほほ~、誰にも……、特にマンションの住人共……、
オババ隊に遭遇しません様に……」

ジャミルはアイシャの昨日の仕返しで、ハゲカツラ&腹巻股引セットで
マンションまでの道のりを歩かされているのであった。

「あっ、ママっ!加〇ちゃんだっ!加〇ちゃんぺが歩いてるっ!!」

マンションの住人ではないが、ジャミル、早速通りすがりの
親子連れに目を付けられ、からかわれる。

「まあ、変わったカップルさんね……」

「……うるせーなこの野郎!!」

「ねえ、このままちょっと喫茶店寄っていこっか、私、新作の
さくさくミルフィーユ食べたいっ、もちろん、ジャミルの
おごりでねっ!」

「……あ、アイシャさ~ん、本当にあっしが悪うござんした、
もう許して下さい……」

「いやっ!ミルフィーユ食べるんだからっ!……うふふっ!」

すっかり元気を取り戻したアイシャはジャミルに向かって悪戯っぽく
微笑むのであった。

zokuダチ。セッション9

zokuダチ。セッション9

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-06-30

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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