紫陽花と星鱗魚
雨のような砂が地上を撥ね昇り空へ降る──
土にそそぐ雨音は”歓びの短調”を弾き散らすけれど、
天空へ吸われ往く砂音はさながらに”悲痛なる長調”──
わたしは恰も織り重なるように乾いて往く地上でしゃがみこむほかはない
地上を転覆した六月の圧政は街をめいっぱいに無音揺曳させた、
わたしのいきれに追従い銀とアイボリイの泡沫が月翳に揺れうつろう──
雨のような砂は淋しいほどに清む銀で星鱗魚のように天空へ還り、
躰というわたしは地上にうずくまりわが手頸の淡さを披瀝した──
*
わたしは幻のように浮世にはなれた紫陽花の蒼みに事なきをえる
かのような銀の砂の昇る黎明の如き風景は残光にざらついている──
紫陽花と星鱗魚