過去の記憶と心身分離
いつかの私とあなたへ
もう届くことはないと知っているけれど
書き残しておかないといけない気がして筆を執りました。
かつて私は、高校生のまだ青かった私は、あなたのことがただただ愛おしかった。
あなたなら、私をこの終わりのない暗闇から引き摺り出してくれるんじゃないかって。
これが恋というとも知らずに。
あなたがきっと私の片割れだと信じて疑わなかった。
あなたは自分の片割れだから、惹かれるのは必然で、惹かれ合うのは当然で、どういった形であっても一生離れることはできないのだと。
言い聞かせた。今は離れてもきっとまた一緒になれるから大丈夫だと。
数年後。
あなたとまた親しくなった。
今度は自覚した。恋だと。高校生の時ほど私は青くなく、程よく薄暗く汚れていたから。
でも、恋慕と愛慕の違いはまだわかっていなかった。
やっと、結ばれることができたのだと。
やっと、報われたのだと。
やっと、心から幸せだと思える居場所を手に入れられたのだと。
思っていたかった。
信じていたかった。
今ならわかる。
あなたと関わりを絶って1年くらい経った。
私はあなたの幻影に縋っていただけ。
現実のあなたは、私の光ではなく、ただ私自身の影そのものだった。
私の弱い部分の生き写し。
あなたにとっての私もまた然り。
それでも私は縋ってしまった。あなたが好きだったから。でも間違いだった。
あなたにとって、初めから私は必要なかった。
あなたの幸せにとって、私はただのお荷物だった。
ただ、それだけの事実。
始めは「付き合わなければよかったのか」なんて考えたりもした。そうしたらずっと仲のいい友人で居ることができたのか、と。
否。無理だった。
私は確かにあなたが好きだった。
こころから愛していた。
一緒に幸せになりたかった。
一生涯ともに過ごしたかった。
全て私の幻想だった。
全て、私の独り善がりだった。
だからこそ、離れた。
これ以上邪魔しないために。
これ以上嫌いにならないために。
一刻もはやく、あの拙く青い恋心を忘れるために。
そして今。
あなたと一度付き合って、ともに歩んで。
別れてよかったと思っている。
そうでなければ、私は一生あなたの幻影に囚われたまま、ずっと恋心を抱いていただろうから。
一生、高校生の青い私が付き纏っていただろうから。
ねぇ、元気でいますか。
毎日笑顔で過ごせていますか。
上司とうまくやれていますか。
新しい出会いはありましたか。
もう、一生声は届かないけれど。
私は今、すごく幸せです。
愛してくれる伴侶がいて、毎日あたたかいごはんと柔らかいお布団もある、静かで安心できる家に帰れています。
お仕事も頑張れています。
小さいけれど、結婚式も挙げます。
旅行に行ったり、趣味を楽しんだり。
毎日忙しくも充実した、穏やかな生活ができています。
だからもう、私のことは忘れてください。
もう、届かないけれど。
あなたと出会えて幸せでした。
一緒に過ごした日々は宝物でした。
教えてもらったこと、一緒に過ごした場所、いっぱい覚えています。
ひとつずつ大切に手離していけたらいいな。
だからあなたも、もう手離してください。
私との記憶も、感情も、全て一切合切忘れてください。
出会ったあの日から
私の心にずっといてくれたこと。
本当にありがとうございました。
過去の記憶と心身分離
嘘です。一生忘れないで。