zokuダチ。セッション7
書き下ろし新規追加住人として、わんだふるぷりきゅあから、
犬飼こむぎと犬飼いろはが参戦します。猫組、後のメンバーは
又後ほど追加します。
エピ 25・26・27・28
遊園地編 1
今日のジャミルは、うら若きガールズ達の護衛?で、遊園地に
駆り出される事となった。メンバーはアイシャに、みらい、リコ、
はーちゃんの魔法ガールズ3人とモフルンである。
「たく、……何で俺が……、ふぁあ~……」
女の子達の後から、暇そうに着いていくジャミルが欠伸をした。
「ほら、ちゃんと歩いてよっ、結構頼りにされてるんだからねっ、
ジャミルはっ!」
アイシャがそう言うが、ジャミルは頭をかきかき、又欠伸をした。
「どうせ、帰りに荷物持ちさせる気だろ?分ってんだよ……」
「もうっ、そんな事させないったらっ!大丈夫よ!」
「どうだか……」
「遊園地、楽しみモフ~!」
「ジタンさんもすっごく来たがってたのにね、でも、今日はダガーさんの
方のお買い物の方に行く予定みたいだったから、残念だったね!」
「モフ!次はいっしょに行けるといいモフ!」
「そうだね!」
みらいとモフルンは顔を見合わせて笑った。
(……さすが、あのお嬢さんだなあ、しっかりしてら、監視が凄すぎらあ……)
「はーっ!遊園地、楽しみだよっ!あっ!」
はーちゃんは真っ先に、前方に見えてきた遊園地目指し
ダッシュで駆け出す。
「こらっ、待ちなさいっ!はーちゃんっ、団体行動乱しちゃ駄目っ!
迷子になるわよっ!」
「……あはは、リコに言われたくないかも……」
「なあに、みらいっ、何か言った!?」
「何でもな~いっ、はーちゃーん、待ってーっ!」
笑いながら、笑顔ではーちゃんを追ってみらいも駆け出した。
「ちょっ、待ちなさいったらーっ!はーちゃん、モフルン、みらいーっ!
……もうーっ!!」
燥ぐみらい達を追い、リコも慌てて走り出す。みらい達に漸く追い付き、
ジャミル達はチケットを買い、早速遊園地入口のゲートを潜る。
「やっぱり、定番はあれですよねーっ!」
みらいが指差すのは、お約束のジェットコースター。
「最初から、かっとばすなあ、……おっさん、若いモンに
ついていけないわ……」
「何がおっさんなのよっ、もうーっ!」
アイシャが呆れてジャミルを見上げた。
「はーっ!ジャミル、ジェットコースター、怖いんだあーっ!」
「モフーっ!」
「べ、別に怖かねえけど……、……あるジェットコースターに
纏わる話、してやろうか……?走行中に停電でコースターが
止まってだな……、観客皆、空中で止まったまま、全員、見事に
逆さ吊り……、あてっ!」
「此処で立ち往生しててもしょうがないよっ、込んでくるから
さあ、どんどん乗ろーっ!」
ジャミルの背中を叩いて、アイシャが歩き出した。
「のろーっ!」
「モフーっ!」
「はーっ!」
「燥ぎすぎないのよ、みんな!」
「……」
……ガールズ達のパワーに、やはりジャミル、付いていけず……。
「……モフ……」
「ん?なんだい?」
モフルンがジャミルの手を引っ張った。
「……モフルンも、みらい達と、ジェットコースター、乗りたいモフ……、
けど、このままじゃ乗れないモフ……、だから、ちょっと待っててモフ……」
「???」
モフルンはとてとて、茂みに入って行き、そして……。
「モッフーっ!!」
「……ブッ!」
「モフルン、皆と一緒に遊びたいと強く思ったら……、また
キュアモフルンになれたモフーっ!!みらいーっ、リコーっ、
はーちゃーん、待ってモフーっ!!」
「わぁ……、モフルン、人間の女の子にもなれたんだ、すごーいっ!」
口に手を当て、アイシャもびっくりである。
「そういう問題じゃねえだろ……、……何かもう、この話もどんどん
暴走して最高に歯止めが効かなくなってる様な……、この先、んとに
どうなるんだか……」
「!?モフルンっ!」
「はーっ!モフルン、またキュアモフルンになってるーっ!」
「だ、駄目よっ、モフルンっ!その恰好じゃ!……すみませーんっ、
ジャミルさーんっ!!」
「モフ?」
リコがモフルンの手を引っ張り、ジャミルの処に連れて行く。
一時、ジェットコースターを中断し、一行は先に、遊園地内の土産ブースの
子供服売り場に立ち寄り、モフルンの私服を買う事に……。
「あはっ、キュロットスカート!絶対似合うよっ! 」 (みらい)
「短パンの方が動きやすくて可愛いわよっ!ねえ、これにしたら?
モフルンっ!」 (リコ)
「ねえ、お花模様のスカートも可愛いよ!」 (はーちゃん)
「お帽子は?夏も近いし、マリンルックのお帽子っ!」 (アイシャ)
「モフ?」
ガールズ達は、モフルンの洋服選びのコーディネイトに夢中であった。
……中に居づらいジャミルは、外に出てライターを取り出し、一服する。
(まあ、……少しだけなら、吸っていいだろ……)
「……ねえねえっ、ジャミルも来てっ!一緒に選んでよーっ!!」
アイシャが店の外まで聞こえる大声でジャミルを呼ぶがジャミルは
顔を赤くしてその場を動かず。
「兄ちゃん、……可愛い妹さんが沢山いていいねえ、ははは!」
「え?ははは、……はあ~……」
通りすがりの変なおっさんが、笑いながらジャミルの方を見て
素通りして行った。
「お待たせモフーっ!」
やがて、オレンジ色のツイードワンピースでお洒落に着飾り
チェンジしたモフルンが女の子達と店から出て来た。
……ちなみにモフルンの服はジャミルの小遣いが半分犠牲になっている。
「良かったな、じゃあ……、行くか……」
「あ、ねえねえ、ジャミルのも選んであげるっ!メンズ服売り場に
行こうっ!」
「……俺はいいっつんだよ、余計な事言うなよ、オメーはよ……」
ジャミルがアイシャに軽くデコピンした。
「ぶうーっ!」
「でも、ご迷惑お掛けしましたし、今度は私達がジャミルさんのお洋服、
見立ててあげますっ!」
「さ、いきましょ、いきましょ!」
リコまでジャミルの背中を押し始める……。
「はーっ!」
「モフモフモッフーっ!」
「ちょ、お前ら……、乗りモン乗りに来たんだろーがっ、だから、俺は
いいって言ってんだよ!おーいっ!……勘弁してくれっ!!」
女の子は本当にこういう事が好きである。しかし、連れて行かれた先は
メンズではなく、レディース服売り場……。
「さあっ、ジャミルさんのお洋服選んであげますねっ!ワクワクもんだぁ!」
「おい、ちょっと待てよ……、此処、女モン服売り場じゃねーかよっ!!」
「よーし!ジャミルthe・レディース計画発動よっ!!まずは
ウイッグからねっ!」
「はーっ!メイドさんー!メイドさーん!」
「うふっ、私のセンスが問われる時ね……、しっかり素敵なお洋服
見立ててあげますからっ!この十六夜リコにお任せあれっ!!」
「……いつからそうなったんだよーっ!!……てか、お前ら真面目にだな、
乗りモン乗って遊んで来いっつーんだよっ!!コラーーっ!!」
「ははは、兄ちゃん、本当、可愛い妹さん達と一緒で羨ましいなあ、
ははっ……」
再び、さっきの通りすがりのおっさんが、構われるジャミルを
羨ましそうに眺めていたのであった。
「もう、ジャミルったら、ほんの冗談なんだから……、私達、
そんなにお金が有る訳じゃないんだから……、あんな高い服
買えるワケないでしょ……」
「あのな……、冗談でも悪戯が過ぎるぞっ!買いもしないのに
店の奴も迷惑だろうがよっ!」
ジャミル達は、現在お昼タイム中で、園内の値段安めのレトルトカレー屋
ハウスにいる。レトルトカレーなので、直ぐ注文が届く上、味も中々
美味しいのである。午前中はこんな事↑ばっかりしていて結局、碌に
乗り物にも乗らなかったのであった。
「えー!?ジャミルから、人に迷惑掛けるとか、悪戯が過ぎるとか
聞くと、何かへーん!」
テーブルに頬杖をついて、アイシャが首を傾げ不思議そうな顔をした。
「でもっ、楽しかったねっ、いつかお小遣い溜まったら、お金出し合って
私達でジャミルさんのお洋服、買ってあげようね!」
「はーっ!」
「ふふっ、そうねえ……」
「モフっ!」
「……頼むから……、勘弁して下さい……」
遊園地編 2
お昼を食べ終えた一行はカレー屋を後にする。
「次は何にのろーかっ!わくわくっ!」
「……次はも何も……、今日、一回も何も乗ってねーだろ……」
「えへ?えへへ、そうでしたっ!」
てへぺろスマイルでみらいが頭を掻いた。一行は再びジェットコースター
乗り場の方へと戻るが。
「はーっ!凄い人っ!!朝よりも、いっぱいだねっ!」
ジェットコースターブースにはあっという間に行列が出来てしまって
いたのであった。
「……ほれみろ、さっさと乗らないから、こーゆーことになる……」
「えーと、……に、2時間待ちっ!?……計算外っ!」
「何がだ、何が……」
待ち時間のご案内板を確認したリコも悲鳴を上げる。
「もっと、空いてる処行こうか……、時間も押しちゃってるし……」
「モフっ、モフルン、お化け屋敷行きたいモフーっ!」
アイシャの意見にモフルンが跳ね、一同頷いた。
「……それも定番だな、ま、いいんじゃね」
「じゃあ、いこう、いこーっ!」
みらいを先頭に女の子達は再び元気に歩き出した、が。
「……ジャミルさんっ!」
「あん?どうかしたか?」
一番後ろを歩いていたジャミルの処に、こっそり、リコが近づいて来た。
「お化け屋敷の定番シチュエーションなんか狙っちゃ駄目ですよ!
お化けが怖くて、アイシャさんがキャー!とか抱き着いてくるの
期待して狙ってるとか、まるで計算外、甘い、甘いですよっ!」
「おい……、あのなあ……」
「リコー、どうしたの?」
「何でもないわよっ、それではっ!」
みらいが呼ぶと、リコは再び、所定の位置に戻って行った。
(本当に最近の若者にはついていけへんわ……)、と、思う
ジャミルであった……。
そして、お化け屋敷ブースに着いた一行はドキドキしながらも
お化け屋敷内に入る。最もドキドキしているのは女の子達だけで、
ジャミルは別に何ともないのだが。
「うーっ!や、やっぱり……、緊張するねっ!!」
「はー!お化けさん!お化けさん!どこかなっ!?」
暫く内部を進むと、早速の刺客、ハゲた頭部に弓が五本突き刺さった、
落ち武者のお化けが近づいて来た。
「……出たモフーっ!!」
「落ち着きなさいっ、これは作り物よっ……!きゃあーっ!!」
「でも、やっぱりこわーいっ!!」
「はーっ!!来ないでーっ!!」
「大丈夫だよーっ!!皆、おちつこーっ!!」
アイシャが励まし、女の子達は固まって震えはじめる。
「たく、どうしようもねえな、こんなモン……」
ジャミルは落ち武者に近づいていくと、禿頭をぱしっと叩いた、すると……。
「……この……盗人がーーっ!!」
「え?え?え?え……」
ハゲ落ち武者はいきなり、ジャミルに向かって突進して来た……。
「……私のアイスソードを返すのだーーっ!!うがあああーーっ!!」
「ちょ、ちょっと待てよ!俺、そっち側(リメイク版)の方の
人間じゃねえし!うわーーっ!?」
ハゲ落ち武者は異様にジャミルに執着心を燃やし、しつこくジャミルを
追い掛け回す……。
……ぽかっ!!
「あーあ、やっちまった、急に突進して来るからさ……」
ジャミルは誤魔化す様に、横を向いて、おら知らねの表情をした……。
「……お客さん、困りますよーっ!お化けを殴っちゃ!ああーっ……!!
これもお客さんを脅かす仕掛けの一つなんですから、ああ……」
係員が慌てて飛び出して来て、オロオロする……。
「……ウーン……、こ、この、盗人めええ~……」
ジャミルにハゲ頭を思いっきり殴られたハゲ落ち武者は、巨大な
コブを作って伸びていた……。
「モフーっ!ジャミル、強いモフーっ!!」
「……俺、悪くねえし!?」
「ちょっと、ジャミルさん、それ、一体誰の真似ですかっ!?」
「……ジャミルったら、もう~……、どうも、すみませんっ!!」
アイシャが顔を赤くしながら、代りに係員に謝るのであった……。
お化け屋敷で騒動を起こした(ジャミルの所為)一行は、
気を取り直し、何処か気軽に楽しめる別のアトラクションを捜し歩く。
「お化け屋敷、楽しかったモフーっ!」
「あはは、楽しかったねーっ!」
みらいとモフルンはまるで姉妹の様に手を繋いで仲良く燥ぎ合う。
「あふぁー……、ねむ……」
「もうっ、ジャミルったらっ!欠伸なんかしてっ!ちゃんと
反省してるのっ!?」
「……んだよ、俺は悪くねーって言ってんだろ、悪いのは
あのデコハゲだろうが!!」
こちらはこちらで、ジャミルとアイシャコンビはいつも通り、喧嘩を
おっぱじめるのであった。
「リコ、あれ……、チュロス食べたい!」
はーちゃんが路上のチュロス屋を指差す。チュロス屋から
ハチミツのふんわりと甘くていい匂いが漂って来た。
「仕方ないわねえ、私が買ってあげるわ、特別よ!」
「リコ、奢ってくれるの!?うれしいなあーっ!!」
「あら?私は、はーちゃんだけに言ったのよ、みらいはちゃんと自分の
お小遣いで買いなさいね?」
「……え~、……リコぉ~、けち~……」
「うそうそ、冗談よ、もう……、ちゃんと奢ってあげるわよ、モフルンもね!」
「モッフーっ!嬉しいモフーっ!!」
「わあーい!リコ、好き好き!大好きっ!!」
「も、もう~、みらいったら……」
……ジャミルとアイシャがギャーギャー喧嘩をしている間に、
魔法ガールズ達は美味しそうに買ったチュロスを頬張りながら
二人を待つのであった。
「お?お前ら、何食ってんだよ!」
「チュロスですよ、美味しいですよ?」
「……ず、ずりい、俺もっ!!」
リコが食べているのを見、ジャミルが慌ててチュロス屋のワゴン目掛け
ダッシュする……。
「……あっ、待ちなさいよ、ジャミルっ!私だってチュロス食べるーっ!!」
「ジャミルとアイシャ、かけっこしてるっ!はー!」
「……本当、騒がしいお二人さんねえ……」
「……すみません、今日の分はもう、これ一本で、店終いなんですよ、
そろそろ時間も時間ですから……」
「も、もうそんな時間になるか……?」
ジャミルが近場の園内時計を見ると、確かに時刻はもう15時30分であった。
「んじゃ、その最後の一本、買うよ」
「有難うございます!」
ジャミルは買ったハニーチュロスをアイシャに渡した。
「ん……」
「え、え……?」
「食えよ、俺、いらねーから……」
「えーっと、じゃ、じゃあ……、半分こしよ……、ね……?」
「……わりいな……」
アイシャが半分に割ったチュロスをジャミルに渡すと、照れながら
ジャミルもチュロスを口にするのであった。
「らぶらぶモフーっ!ハニーチュロスは、はちみつ味っ!あまーい、
あまい味モフ!!」
「……こ、こら……!クマ子めっ……!!」
「……モフちゃんたら、もう~……」
アイシャは只管顔を赤くし、チュロスを齧り続けた……。
「……さて、日暮れも迫って来たし、折角来たんだから、
何か一つぐらい乗りモン乗って帰ろうや……」
「はー!あれ、あれっ!」
はーちゃんがジャミルを引っ張って指差したのは、絶叫系の
大回転ブランコであった……。
「……好きだねえ、たく……、本当に、ああいうのが……」
「えへへっ!」
「ま、いいか、……後のお前らは平気か?」
「大丈夫でーすっ!」
「モフルンもモフーっ!」
みらいとリコが揃って手を上げ、モフルンも手を上げた。
「ジャミル、私も平気よ!」
「んじゃ、今日のシメと行きますかね……」
遊園地編 3
(うふふっ、今日は特別に一日だけ、黒子さんにリンクルスマホン
返して貰っちゃった!)
話は、一日前に遡り……。
「はー!黒子さん、こんにちはー!」
「な、何でしょうか……」
市役所にはーちゃんが黒子を訪ねて来たのであった。
「あのね、お願いがあるの、明日、一日だけ、リンクルスマホンを
返して欲しいの、……駄目ですか……?」
「この間の時は……、この島の一応の危機でしたから……、一時的に
お返ししましたが……、この物語のバランスを保つ為、色々崩壊
させない為にも、この様な物はなるべくご遠慮して頂きたいのですが……」
「あ、明日……、一日だけでいいの、そうしたら、又、必ず預けに
来ます、だから……」
「……分りました、明日一日だけですよ……」
「はーっ!黒子さん!?いいの?」
黒子は、はーちゃんへと、預かっていたリンクルスマホンを渡した。
「黒子さんっ!ありがとうっ!!」
「……」
はーちゃんは黒子に飛びつき、感謝感激で大喜びするのであった。
(楽しくアトラクションを盛り上げる為にも、スマホンが必要なのっ!)
「はーちゃん?何してるの、置いていくわよっ!」
「はあーいっ!」
リコが呼ぶと、はーちゃんは慌ててブースまで掛けて行く。
そして、全員座席に搭乗し終えた。
「はあー……」
「ジャミルったら、もう逃げられないわよ!」
「別にそんなんじゃねえよ、俺は平気だけど……、何かなあ、
どうもかったりんだよ……」
「怖いなら、素直になった方がいいですよっ!」
「あははー!」
ジャミルとアイシャの後ろの席に座っている、みらいとリコが茶化した。
はーちゃんとモフルンはその、さらに後ろの搭乗席である。
「何なんだろ、……違う意味で悪寒がするんだよなあ、何か起きる様な……」
「やだ、ジャミルったら……、変な事言わないでよ……」
「何なんだろう、この感じ……」
ジャミルの、その悪寒は的中する。
(うふふ、魔法で、もっと、アトラクション、盛り上げちゃおーっ!)
はーちゃんは、スカートのポケットに隠しておいたリンクルスマホンを
取り出し……。
「はーちゃん、……何してるモフ?」
「……キュアップ・ラパパ!ブランコさん、高速回転になーれっ!」
「おおう!?」
「きゃあ!?」
バイキング船型の大回転ブランコは突然、強く左右に揺れ始め、
通常の倍のスピードでぐるんぐるん強烈に回転し始めた……。
「……やだっ!何これ何これ!ま、まわりすぎだよぉぉ~!
きゃあーーっ!!」
「み、みらいっ、お、落ち着くのよっ!……きゃ、きゃあああーーっ!!」
「目が回るモフーっ!!モフモフモフーっ!!みんな回ってるモフーっ!!」
「あはははーっ!楽しいねーっ!!よーし、今度は高速15回転
させちゃおーっ!!」
……こんな時でも、はーちゃんは余裕で魔法を使う、大物であった……。
「キュアップ・ラパパ!ブランコさん、もっともっと早く回ってーっ!」
「……ぉげ……グオえーーっ!!あひょぎゃぎょえきょきゃきゅよーーっ!!」
「ジャミル、落ち着いてーっ!!しっかりしてーーっ!!
でもこれって一体どうなってるのーーっ!?」
はーちゃんの悪戯魔法で、大回転ブランコブースは大パニックに
なったのであった……。
「今度は、連続高速50回転!……あれ、あれあれあれ……?あれれ~……?
……ブランコさんも、魔法も止まっちゃった……、終りかあ……、は~……」
「ジャミル、大丈夫……?アトラクション終わったよ、
降りなきゃ、ほら……」
アイシャがジャミルに手を差し伸べるが、目が回っているジャミルは動けず……。
「吐く……、うごけな……、おえっぷ……、うげえ~…」
「もう、……しっかりしなさいよ、ほらっ!此処にずっと座ってる訳に
いかないんだから……」
「おげえええ~……、つ、強いなあ~、アイシャ……」
無理矢理、ジャミルを搭乗席から立たせ、肩を貸して歩かせる。
「何かまだ……、色々回ってる様な気がする……」
係員も皆、パニック状態で乗客全員に謝罪する羽目になり、大回転
ブランコブースは機械の調整の為、……暫くお休み状態になって
しまったのであった……。
「……はーちゃんっ!?」
「は、はー……?」
リコが腕組みをし、はーちゃんを睨む……。
「ポケットの中の……、出しなさい……」
「はー……」
「リ、リコ……」
「みらいはいいのっ!黙ってて!」
はーちゃんは、しぶしぶリンクルスマホンを取り出す。〇リキュ〇の件は
アイシャも知らないが、彼女が魔法が使える事はもう承知している。
「やっぱり……、魔法使ったのね……、私達、黒子さんにきちんと、
平等に一式預けた筈でしょ……?……どうしてこんな悪戯の為に
スマホン持って来たりしたのっ!?壊れてもいないのに機械も
お休みにしてしまったし、……沢山の人に迷惑掛けたのよっ!!」
「……リコ、みんな、ごめんなさい、私……、でも、もっと……、
アトラクションを楽しくしたかったの……、此処に来て初めての、
みんなと一緒の大きなお出掛けだったから……、ジャミルと
アイシャとも……、マンションの皆とも……、これからも……、
もっともっと……、仲良くなりたいよ……」
「……はーちゃん、もういいから、ね?泣かないで……、ほら……」
アイシャがはーちゃんの頭をそっと撫でた。
「そうだよ、はーちゃんは悪気はなかったんだよ、……ね?大丈夫だよ……、
リコだって、ちゃーんと分かってるんだから……」
「モフ……」
……心配そうに、みらいとモフルンがリコの方を見た……。
「わ、私だって……!そんな事分かってるわよっ……!あーっ、もうっ!
私もきつく怒り過ぎたわ……、はーちゃん、ごめんね……」
「私も……、ごめんなさい……、みんな……、本当にごめんなさい……」
(やれやれ、……仲直り出来たか……、良かったな……)
女の子達から少し離れて状況を見守っていたジャミルが安堵の息を
洩らした。
「……モフー、モフルンも元に戻っちゃったモフー……、でも、今日は
本当に楽しかったモフ!又皆でいっしょに遊園地行きたいモフっ!!」
「モフルン、うんっ!そうだねっ、今度は又、もっと沢山のマンションの
皆とも一緒に遊びに来られるといいねっ!!」
モフルンを抱いてみらいが微笑んだ。多少トラブルはあったが、
無事、今日一日も終りを告げる……。
それから数日後、マンション内にて……。
「……やだあ~、何だいこれ、くくく……」
「可愛いじゃないの、中々、男前で……、普段よりもいいじゃない?」
「……お姉ちゃん、本当にそう思ってる…?」
「バカだねえー、本当に、嫌、普段もバカなんだけどさ……」
「これは……、ジャミルが……、本来の野生の顔を取り戻した
表情なのかしら……」
バーバラを始めとする、エレン、シフ、クローディアのお姉さま方達と
サラが廊下で何かを見て騒いでいた……。
「楽しかったですよっ!今度、お姉さん達も一緒に行きましょうねっ!」
「……ねえ、みらいちゃん、この写真に一緒に写っている女の子は誰?」
サラが聞くと、速攻でモフルンが返答する。
「それはモフルン……、ムフムフ……」
「あ、あはは!遊園地で知り合って、一緒にお友達になった
子なんですよっ!」
モフルンの口を塞ぎながらみらいが誤魔化した。
「そうなの……、でも、又、会えるといいわね……」
「はいっ!」
「でさ~、この、問題のジャミルのバカ面だけど……」
バーバラが再び、ジャミルの何かについて話を戻した様であった。
「んだよ、やけに廊下が騒がしいな……」
笑い声に釣られ、ジャミルも部屋から出て来た。
「……あっ、来たよ、ご本人様が……、く、くくく……」
「プ……」
バーバラがジャミルに反応し、シフが顔を背け、吹きだした……。
「あっ、ジャミルさーん!この間の遊園地のお写真、皆で
見てるんですよ!」
「はあ?写真なんか撮ったっけ……?」
「あの、回転ブランコの時のですけど……」
「???……あっ!!か、貸せっ!!」
「こらっ!何するんだいっ、この子はっ!!」
ジャミルは慌ててバーバラから写真を引っ手繰り、自分の目で
確認すると……。写真には鼻の下を伸ばし……、梅づカズオ面で
雄叫びを上げるカオスなジャミルの顔が写っていた……。
「まあね、もう見ちゃったし、ほーんと、今日はいいモン拝ませて
もらったよーっと!」
「……誰だーーっ!!写真撮る様頼んだやつわーーっ!!」
「あの、聞いてなかったですか?アイシャさんが事前に……」
……と、皆の後ろを……、エントランスへ向かって、こっそりと……、
歩いて行くアイシャの姿があった……。
「あ、アイシャっ……、てめっ!!」
「えへ?思い出づくりの為だよっ!?」
「……何が思い出づくりだーっ!!……今回はハイパーデコピンの
刑だーーっ!!覚悟しろーーっ!!こんのジャジャ馬ーーっ!!」
「きゃーーっ!!だって面白いスクープお写真欲しかったのーーっ!!」
「……俺をネタにすんなああーーっ!!」
ジャミルとアイシャは追い掛けっこでマンションの外へとドタドタ
飛び出していった……。
「……フウ、やれやれ、此処でも本当に仲がいいねえ、あの二人はさ……、
妬けるねえ……」
呆れた様にバーバラがキセルを取り出し、一服する。
「ねえ、みらいちゃん、……この写真、焼き増し出来ないかしら……?」
「あはは、……クローディアさん、よっぽどそのお写真、
気に入ったんですねえ……」
「……野生のジャミル……、何だか素敵な響きじゃない……、
心にときめくのよ……」
「あは?はあ~……、……ですかあ?」
クローディアはジャミルをチンパンジーか何かと勘違い
している様子……。……何はともあれ、女の子達にとって、
とても楽しい一日になった様である。
わんだふるなともダチ
「ジャミルのバカっ!もー知らないんだからっ!」
「るせー俺だって知るかっ!アホアホアホっ!」
「何よバカっ!!」
「また言ったなっ!アホッ!!」
「何回だって言うもんっ!バカバカバカバカっ!!」
「るせー!アホアホアホアホーーっ!!」
朝からけたたましい喚き声。毎度お馴染の台詞で喧嘩ップルが
廊下で大ケンカしているのである。まだ二人の事をあまり詳しく知らない
住人はびっくりしていたが、ロマ1住人達は分っているので、冷静沈着で
皆、特に止めもせず、湿気たモンである。まあ、時間が立てばすぐに
仲直りしてしまう事も承知の上であるが。そして、アイシャは膨れて部屋に
引き籠った後、バーバラ達に誘われ気分転換に外出。ジャミルも不貞腐れ、
……部屋でいじけスモーキングバカと化す。
「畜生、アイシャの野郎……、俺の顔見れば、あーじゃねえこーじゃねえ、
何だってんだよっ!あー苛々するっ!」
……そう言いながら、午前中から缶チューハイを一気飲みし、本日、
タバコ10本目を口にしようとする。
※これはバカ話だからいいですが、成人者の皆さんはくれぐれも
吸い過ぎに注意して下さい……。
「ジャミル……、お客さん……、あっ!また吸ってるっ!しかも
朝から呑兵衛!いい加減にしなってばっ!」
部屋に駆け込んで来たダウドが慌ててジャミ公からタバコを取り上げた。
……こんな風にして、アイシャが対応出来ない、彼女が気分が乗らない時は
主にダウドがジャミルに歯止めを掛ける役目である。
「るせー!ヤケタバコだっ!止めるなっ!」
ダウドは溜息をついて、ごそごそと後ろに隠していた何かを取り出す。
そして。
……パンッ!
「いっ、てえええ~……、ダウドっ!テメー何すんだっ!」
「アルから借りて来たんだ、スリッパをね、さ、行こう、新しいお客さんが
待ってますっ!ちゃんとお仕事終わるまで、これはオイラが預からせて
貰いますよお!」
「畜生ーーっ!……はーなーせええーーっ!」
ダウドは嫌がるジャミルを引きずり、煙草を回収するとエントランスまで
無理矢理連れて行った。エントランスの玄関に来ていたのは、中学生ぐらいの
二人の少女。
「こんにちはー!今日からお世話になりまーす!」
「♪わんっ!こんにちはー!」
「……よう、こんちは……、って、わん?」
「エントランスでジャミルを待っていた、今回の客人らしき
2人の女の子。片方の子は、頭部の右側にハートのヘアピンを
着けており、左右にもみあげ、明るめのオレンジ色の髪色の
ショートヘア、紫のサスペンダーキュロットズボンの衣装の子。
性格も明るめの様で、とってもフレンドリィな感じの子。
……もう片方の子は、茶色い髪色、額付近に三日月マーク、
二股ポニテ、大きなピンクのリボンを頭部に着けている。
頭部のリボン同じく、此方は薄目だがピンク色のパーカーワンピを
着用している。見る限り、活発で元気そうな女の子だった。
「初めまして!私、犬飼いろはですっ!」
「わんわん、はじめまして♡わたしはこむぎだよー!いっしょにあそぼー!」
「……ハア、わん……、て……、何か犬みてえだなあ~……」
「いろは!ちょうちょさんだよっ!ホラホラ、みてみてっ!」
ジャミルはピンクリボンの方の女の子、こむぎの方をまじまじと見つめる。
異様に落ち着きが無いのは嫌でも分かった。先程から其所編で飛んでいる
チョウチョをじーっと目で追っており、何だか蝶に向かって今にもジャンプ
しそうな勢いである。
「こむぎ、大人しくしてなくちゃ駄目だよ!あっ、ご免なさい、この子、
わ、私の従姉妹なんです!とっても元気が良すぎて色々やらかしちゃうかも
知れませんけど、とにかく宜しくお願いしますっ!……ホラ、こむぎも
管理人さんにご挨拶だよ!」
「宜しくおねがいしまーす!わんっ♡」
「……そうか、直姉妹じゃあねえのな、分かったよ、んで、俺の方も
自己紹介、俺はジャミル、一応ココの管理人さ、まあ、気楽に
過ごしてくれや、他にも色んな連中がいるからさ、飽きねえと思うよ」
「わあっ、おにいさん、おなまえはジャミルって言うんだねっ!よろしくう、
ジャミルうー!」
「こ、こらっ!駄目だよっ!ちゃんとジャミルさんて言うのっ!
ウチのこむぎが……、どうもすみませ~んっ!」
いろは年上のジャミルをタメ口で呼ぶこむぎを慌てて窘め、自らは
頭を下げ、ペコペコ謝る。こむぎ張本人は悪気なく、きょとんとしている。
このこむぎと言う少女、外見は中学生の少女だが、頭の中身は幼稚園児……、
もしくは本当に何だか無邪気な子犬を見ている様な、そんな感じが
ジャミ公はしたのである。
「いいよいいよ、どうせ年下にも呼び捨てで結構呼ばれてるし、
気にしなくていいよ、それよりも部屋を案内するよ、いつもは俺の
ダチの女の子がサポートで部屋案内をしてくれるんだけど、……今日は
外出中でさ、だから代わりに今回は俺が……」
「こんにちはー!オイラダウドでーす!えへへ、ジャミルの親友なんだー!
オイラも今後とも宜しくねえー!」
「……おい」
ジャミルの肩越しから、ぬっとヘタレが顔を出し、いろはと
こむぎにご挨拶……。
「あっ、ジャミルさんのお友達なんですね!私、犬飼いろはです!
はい、此方こそ、宜しくお願いしますね、ダウドさん!仲良く
して下さいね!」
「わんわん、宜しくね、ダウド!」
「……こむぎっ、だからタメ口で呼んじゃ駄目だよっ!きちんとダウドさんて
言いなさいっ!めっ!……あれれ?あれれ?え、えーっとおおお……、
あれれ?ジャミルさんて……、ジャミルさんて……」
「わん?」
いろはは急に困り出す……。よく見ると、ジャミルもダウドも、
背丈が余り自分達と変わらない様な気がしたからだった。ダウドの方が
ジャミルよりは背が大きい様な物の……。管理人の割には明らかに
背が結構小さい。しかも童顔……。なんで、年齢……、こむぎには
タメ口は駄目だよと言ったが、実際、彼の年が本当は何歳なのか
良く分からなくなってきたんである。いろははジャミルの方を
チラチラ伺いながら、目を回し始め……。ジャミルは直感で彼女が
何で困っているのか直ぐに理解する……。
「……え、え~と、え~っとおおお……」
「はあ、一応俺、20歳だけどさ、……本当に気にしなくて
いいから……、……背が小さいのは別に気にしてねえし、
……マジで平気だよ……、本当に……」
「……そ、そうですか……?お、大人の方に当たり前ですよねっ!本当に
どうもすみま……、って、こむぎっ!!」
「?」
「わふ~ん、こむぎ……、何だかねむくなってきたわん……、
すう……」
「まだ此処で眠っちゃ駄目だよっ!……こむぎーーっ!!」
どうやら。こむぎが急に眠くなってしまったらしく、床にぺたんと
座り込んでしまう。それを見たいろはは異様に困って慌てている。
「疲れたんかな、じゃあ、早く部屋に案内してやらねえとだな、ホラ、
これ、あんたらの部屋の鍵だよ、同室でいいのかい?と、もう1階は
満杯だな、2階でいいかい?」
「はいっ!おねがいしまーっすっ!!」
ジャミルは2人を部屋まで案内する。いろはは眠りそうになっている
こむぎを慌てて立たせ、連れ添い、何とかジャミルの後まで付いて行く。
……漸く自分達の部屋まで辿り着いたのだが、いろはは何故か
汗だくであった……。
「じゃあ、俺も自部屋まで戻るけど……、何かあったら101号室まで
気軽に声掛けてな……」
「ぜーはー、ぜーはー……、あ、ありがどうございまずっ!ほ、ホラ、
こむぎ、お部屋に入るよ!ハア、ハア、……、わ、わたしだちも、また、
あらだめで、ごあいさづに……、ぞれでは……」
「またな……」
ジャミルはいろはとこむぎが部屋に入ったのを確認、見届けると、
自分も自室へと戻って行く。……少々首を傾げながら……。
アイシャの事ばかり只管考え、そして……。
「はああ~!つ、疲れたああああ……、どうにか無事にお部屋に
辿り着いたああ~……」
「わふうう~ん……、こむぎ……、おともだち……、いっぱいいっぱい、
たくさんあそびたい、ふにゃ……」
「でも……、やっぱり隠し事は苦手だよう~、えうう~……、で、でも、
此処でのシェア生活、頑張るぞーっ!」
「……ぷう、ぷう、わんわん……」
いろはとこむぎの自室では、寝っ転がった子犬のパピヨンが鼻提灯を
放出しながら、いろはの足下でくうくうと眠っていた……。
zokuダチ。セッション7