女を海に譬えるな
少女は 海のように波打つわが薔薇の膚に耐えかねていたのだった、
そが花の薫り高い肉を、葉でもむしるように引掻くのだった、
されど女の十八といううら若き齢は、
花を摘むように肉を捥ぎ取られることを希まれているのだった──
神経的な戦慄のいたみは躰という呪いを幾分か醒ます、
少女は何時や、一条の銀なる神経となって、
宇宙という暗みの空無に吊られてみたいと欲したのだった、
薔薇の如きまっしろな膚は、まるで嫌悪の対象なのだった──
少女は薔薇なる観念は肉の裡に在ると信じているのに、
そが睡る水晶はいまだ花を乱反射し躍らせることはなく、
はや躰ばかりが薔薇さながらにめざめているのだった、
女には弾力という連続質性より、拒絶の硬質性に美を視るのに──
十八歳──男たちはこの年齢の女を屡々連続物として欲するが、
女の十八と云う魂を愛し切れる男が何処にいよう?
水銀は一条に締まらない、毀れ洩れいでて恰も泳ぐよう、
唯横臥すことを欲望される膚は命の輪廻に結われると語られる──海。
*
少女の膚にめざめる躰を、海と喚ぶ勿れ。
そが膚を波打たすのは睡る水晶の慄然、海の寛容を喚起する勿れ。
拒絶に焦がれる少女よ──
たとい斃れても、手折られてはならぬ。銀の銃口を海へ向けよ──
女を海に譬えるな