黙示録のイエス
私は人というだけで恋をしたのだ。あなた方の、慰めが人間として欲しかった。
こんなにも愚かな、私を導いて欲しかった。
恋人のように、抱擁されたかった。
しかし、盃はまだ過ぎさらない。
こんなに苦しいのです、神よ。
霊性の到来を、溢れるこの苦悶の促され、祈られた。汗が血のように滴った。暗黒が満ちていた。宇宙の暗黒流体の気配に、イエスは叫ぶように、明日は恋をなきものに恋あれ 明日は恋あるものにも恋あれとつぶやかれた。
(注釈、魂も電氣だから、知ると通電するだろう、そこに時空の制約はない、その秘儀がこの作品の黙示録のイエスが、叫んだ明日は恋を知らぬものに恋あれ 明日は恋あるものにも恋あれ)
イエスにとってこの言葉が霊性の成就だった。
再びみんなの中にいられるように、すべてが成就するまで、人というだけで、あなたの哀しみを知ってゆけますように。
あなたという存在。私は然り、予言する。
いよいよ切に祈られた。汗が血のように、とめどなく滴った。
その時だった、ゲツセマネでイエスは何光年彼方にアンドロメの星雲を見た。
その瞬間、イエスの心臓は宇宙である、その中にアンドロメダがあるのだと悟られた。
そうして、アダムとエバから、大洪水、そののちの人類、聖人、神を忘れてゆく時代をイエスは通り過ぎた。
そうして、人が滅亡し、機械の中に人の魂が移ってゆくのを霊視した。
あなた方は永遠なのですか、イエスは問いかけた。
光は、言われた。我々は、人間である。そうして人間は地球の使命を終えたので、これから銀河の最果て、アンドロメダを目指す、イエスラエルの民のように、さすらい人の命が、永遠に向かうところです。
使命とは、イエスは、死ぬばかりに悶えられ、その光である、人間に聞いた。
主の、これからの地上で成し遂げることです。
遠ざかりつつ、言われた。人間とは愛することの為に生まれてきた。
青いかがやく霊が、そうして光より、素早く飛翔し、宇宙のダークマターの、永久機関に乗り移るように、地球時代から離れ去ってゆく。
光の、機械的な二つの目が、青い地球を見つめていた。
傅けど、永遠は宇宙の暗黒流砂が、息をしているかの如く。
汝、我が愛する子。
暗黒の泡のような重力波に、イエスは黙示録の只中のように、畏れ、叫びそうになった。
苦悶のあまり呻く。
弟子は眠っていた。辺りは神で満ちていた。まだ何が起きているかわかっていなかった。
イエスはユダに裏切られ、愛する眼差しで接吻するユダを見つめられた。
鉤爪の鞭で、光の受肉体である、イエズスは肋骨の肉を抉られ、骨まで達していた。
茨の冠は、頭蓋骨までくいこみ、
汚物のついた下着を履かせられた、イエスはその時、その兵士の手を接吻された。
磔刑のみちすがら。その中を、そののち、聖母マリアが道行を歩まれた観想のように、進行してゆく、十字架を背負って。イエスの7日7夜が明けた頃、周りからすると、すべては一瞬だった。釘の重たい響き。青空。息苦しさ。肉が裂けてゆく痛み。
イエズスは空を仰いだ。
すると、空が暗くなった。人々は何が起きてるか、わからなかった。
アンドロメの星雲はどんどん近づいてくる。
我が子よ。
我はアルパなり、オメガなり。虞れるな、われは最先なり、最後なり、活ける者なり、われかつて死にたりしが、見よ、世々限りなく生く。
願わくば、我を愛することを。
汝、永遠に向かってゆく、深淵まで来たから、私と深く繋がったのだ。私が天の父だ。深淵まで来る前に私はずっと、あなたを愛していた、我が子よ。
イエスは呻いた、されど、魂はアッバとの再会で幸福だった。
私の愛する子。神経、精神、魂に、汝が永遠に向かってゆくように、私は純粋な愛の波動を送り続けていた。光あれかしと、祈った。
主よ、イエスは祈った。安息などなく、完全などなく、私の憧れた彗星のように過ぎ去ってゆきます。
汝、われ汝の艱難と、貧窮さとを知る。されど、汝は富めるものなり。
汝は永遠に繋がってゆくだろう、星にならん。汝は神の子。汝が恋した人の子にも、またそのようになる。私が、来りつつある。知れ、私は来りつつある者。
そうしていつの日か、銀河系と一つにならん。
だから我が子よ、今は光となってこちらに来なさい。
受肉は何千年後かになるだろう。汝を磔にした人類が再び、変容して、我々の暗黒流体を知って、聖なるものによって、だからこそ、呪詛に世はかつてないほど、暗黒になるだろう。
その予言として復活したラザロは暗黒と死の影の中にすわり、苦しみとくろがねに縛られている。
しかし、時が来れば、その時こそ、現世は霊界と直通するだろう。
イエスはいよいよ、苦悶し、その激しい苦しみはビックバンを上回った。そうしてゴルゴダから放射されるエネルギーは、世界中に降り注がれ、すべての民を救った。
イエスは途切れ途切れに、異言で呟かれた。ラザロを祝福せよ。人というだけでみんなを祝福せよ。来りつつ、あるものに、裸でのぼらんとする、聖霊へ向かってゆかんがための苦悶が今日来らん。
汝に告ぐ。これまでにない暗黒の時代が訪れる、そのあとで霊性文明の希望がふたたび、再建されてゆく。
然り、汝はその時、受肉する。その暗黒の淵にイエズスはいよいよ悶えた。
主よ、なぜ、お見捨てになったのですか、
そう叫んだとき、
その時、イエスはすべてを理解した、
その時だった。
宇宙の途方もない暗黒が光に変容した。遠くにラザロがいた。イエスはラザロを特別に憐れんで、かすかに微笑んだ。そうして、目は切に空を仰いだ。脳髄はアンドロメダを戦慄するが、霊はいよいよ、愛に燃え立つばかりになってのぼりはじめた、委ねるように頭を垂れた。
黙示録のイエス