トーキョー最終処分場

・東京都区部に於て大都心及び都心と区分される地区はその規制細則の在り方によって「日本人の本性の肥溜」とされなければならない。どの道府県とも違う。違うに決まってる。
・大都心という一見無制限とも言える区分域に於ても所謂オフィス街とされる領域には色調や意匠形態への規制という形で建物や広告等は規制されようが、然うした領域を除けば東京に於ける大都心というありとあらゆる場所では法令に則る限りありとあらゆる大きく、高く、派手で、騒がしく、趣味が悪く、目も当てられない、もしかしたら子供には見せられない、節操がなく恥知らずで、荒々しく、けたたましく、どうしようもない無数の建物表現や広告表現が認められるべきである。
・そこには形作られて保存される「伝統」など存在しない。ゴチャゴチャしてて奇妙且つ理性を欠いたものがともかく好き勝手に同居してる。みんな気にするどころか心地よさそうにしてる。然ういう者たちが集まってくる。鬱憤を晴らす。自分になれる。その奥底に持ってる「癖」こそが伝統であり絵に描いたような俗にいう「東京」であろう。
・そこに電線はぶら下がって居てはならない。また広告は何でもいいからといって貼り紙とか落書きが許容されてもならない。そろそろ「格好つけながらカオスを自分たちのものとする」時期である。ケバケバシイものの中から徹底的に田舎臭いものを排除していけば、そして煩いものをもっと煩くして派手で下品なものをもっと派手で下品なものにしていけば愈々求められて居た真の東京になる。

・東京五輪のPVでイタリアのパラリンピック選手が「一体どんな未来的な街なんだろう!本当にすごいんだと思う。早く行ってみたい。」とか言って本当に楽しみげにしてたけど、いざその一年後かくらいに公開された実際に東京に来て日本のパラ選手たちと会ってみたみたいなPVでは顔が死んで居た。このようなことがこれまでもきっと数えきれないほど行われてきた。顔が死ぬだけならまだ心ある人に違いない。心ない人達はそれをいいことに早速、東京を日本を優越感を感じるための使い捨ての道具にしようと企むことだろう。然ういう人たちは恐らく満面の笑みを浮かべてる。

・騒がしさとか下品さとかゲテモノを見て馬鹿にしてるんじゃない。細部の滑稽さや未熟さを嗤って居る。
・東京の夜景といえば果てまで続くビルの闇黒と光の粒の中に真っ赤なタワーが凛として居る一幕が浮かぶ。しかし闇と光の粒の中に真っ赤なものが立ってるっていう世界観は正解なのに、肝腎のタワーがペラペラの安いエッフェル塔だった。エッフェル塔もそんなに古いものでもないのに格式から風格から何もかもが違う。
・そこから田舎臭いものを排除すればそれで良い。となるとタワーは解体されて、もしかしたらまた別の形のタワーになる。構造物になる。もしかしたら、幾つもの真っ赤に輝く商業施設っぽい歪な建物たちが形を揃えて織り成し合って遠くから見たら一つの赤いタワーに見えるようにそこに佇み合ってるかも知れない。もしかしたらタワーじゃないけど闇黒と光の粒の合間の要所要所に赤いものが点在するようになるかも知れない。

・例の交差点を中規模都市のスカスカの交差点のように見せて居るのは中途半端にちょっとゴチャゴチャしてるアナログな広告たちと味気ない周辺の建物たちだった。だったらタイムズスクエアで良い。東京という都の「あの」交差点にしたいのであれば忙しくて下劣で原色がウヨウヨする無秩序都市のドロドロした血脈が結集するとんでもない爆点にしなければならない。
・交差点に向かうありとあらゆる道という道でたくさんの極彩色の映像広告と写真広告に脅されながら人々が連行され最高潮の恐怖と感動を味わう限界点でなければならなかった。漫画やアニメの中で未来か理想上の東京を絵になるように描こうとしたら然うなるんではないか。いや実際に然うでなくちゃ意味がない。
・青空が見えてるけど見えてないような気がするぐらいの映像と爆音と合法的な変な人達が蠢いてる交差点。その一帯を観察するために周辺に大きく何層にもなる廻廊を張り巡らせてまたその頭上にも左右にも眩しい広告が映像が踊って居る。然うやって交差点を取り囲む建物はすべて腰が重くて図太くて反り建つような威圧的な建物であって欲しい。
・精鋭の人命警察官たちが一見して保てなさそうな秩序を鬼面ながらに華麗に保ち、景勝警察官たちは気まずそうな顔で突っ立ってる。
・気は可笑しくするけど警察官には従いそうな変な人達が広い歩道で何の伝統にも沿ってないお祭り行進を始めても良い。狂気というより人間性を欠いたヲタ達が無心に迷惑もかけず踊り狂ってても良い。下手くそでも誰かが気持ちよく歌ってたならそれで良い。ゴリゴリのロリ装で控えめに恥じらい歩く50代くらいのオバサンを一人でも見かけないと不安になるくらいの当然に常軌を逸した非日常がそこにあればたぶん東京。


・皇居というか、御所というのは京にある。何時まで肝腎なものが何もない場所を御所という風にして「うわ~奥ゆかしさ~」みたいな感じにしておく積りなのか。空地に一応ちょっとした建物がまだ仮のものみたいな感じでポツポツ建ってるのって奥ゆかしい伝統云々だからじゃなくて抑々もともと御所じゃなかったからだろうに。
・あそこは東の政の者達が犇き合うところです。堀の外側のみならず内側でも政治が行われる。そこは京ではない。都である。城郭がそこにあれば良い。そして政を行う者のあるところはすべて堀の内と外でその趣に歩調を合せる。
・周りを見渡せばもしかしたら途方もないオフィス街で、もしかしたら迫りくる巨人の群れみたいな騒がしい下品な楽しい東京かも知れない。その中で囲まれつつ毅然とするのは普通の政治家とか官僚たちだったら構わないが、まさかそこを御所としておくわけにはいかなかった。避難されたい。あそこは東京という、檜舞台の肥溜ですから。
・然うした危機的状況に立たされる上にその政治的中心地は景勝憲法上でいうと大都心とか都心ではなく単なる町園に分類されるのだった。まさしく東京というのはとても一緒にはして欲しくないと人々が思うような毛嫌いするような優雅なゲテモノであってもらいたいので、少なくとも国は政所はそんな東京の都心じゃないで居てほしい。


・神社という神社や寺という寺は存分に孤立するが良い。景勝警察に護られながら周囲の目まぐるしい閃光と爆音に悩まされる由緒正しき存在であってこそもっと東京になる。何も大都心や都心にある社寺だけではない。渋谷とか新宿とか秋葉原とか歌舞伎町とかそんな感じの場所の傍らで片隅で息をひそめる日本橋区とか銀座区とか住宅街とかも日々悩まされつつもまた毛色の違った存在感を放つといい。他の道府県とか一般国民の静かな一面の側の代辯者で常に居られるように居るかのように、そしてギトギトした煩わしい方のオモテ側の東京を常に引き立てて恩を売ってニヤケルように。
・穏やかな方の東京の所謂歴史ある風景というか嘗ての風景のようなのが技術的にどのぐらい再現できるのかは知らない。しかし然ういう計劃を妨げるのは結局のところ野蛮な貨幣観に基いた「ザイゲン」という呪文に過ぎない点でいえば幾らでもなるようになる。何十年かかっても良いので晴れて花火を日本橋の上で眺める人々が浮世絵のように映える日が来るといい。実際はその上で観ようとする人が殺到するから抽籤になるかも知れんがそれも含めお祭りになることだろう。
・すべては「それっぽいものの意志ある復元」であって構わなかった。ヨーロッパの街並は歴史ある文明を表して居るのだろうか。そんなわけもない。「ハイ、あの~私達があのローマの正統な後継者なんでスイマセン、普通に然ういうことでいかしてもらいます」ごっこをしてきた歴史を表してるに過ぎなかった。自分達がローマかも知れない点を悉く可視化して有無も言わせず来る者来る者を黙らせようとしてきた結果でしかない。だってローマではないもんだから。またローマもギリシアではないし、ギリシアもメソポタミアの文明ではない。
・日本は全く、「日本」が可視化されてない。できてないなら好きなだけ可視化すれば良い。どの国も大陸も何より一番歴史があるのは人間ひとりひとりの血筋であり習慣であって別に街並なんかじゃない。人類が在る限りその歴史は途絶えないのだから気にすることもない。それはいいから早くカッコつけてほしい。


・道府県は羨望と憐れみで横目にしながら東京を体育座りして眺めることになる。ああ、あんな肥溜にはどう頑張ってもなれやしないや。スゴイな東京さんは。肥溜だよ?何であんなに尚も恥知らずに破天荒に振舞って尚且つまた煌びやかなんだろうか。自分達は嘗ての町の姿を大いに演出も加えながら蘇らせ昇華させ大事にしていくことしか出来ない。新しい東京は半端でなく躊躇いがなく制約がなく未だ見た事のない怪物となった。
・あれ。まさかアレは我々が法律に則って垂れ流す下水が育てた巨大な毒キノコなのではないか?下水道を突き破ったんだ。キノコって下水で育つんだな。何かもう伐採とかできないくらい太い。臭い。恐ろしい。もういい!この際だからどこまで育つか見てみよう。トイレ無しでは我々も生活できないんだしね。

・そのトイレ民たちの僅かに上からはまた、京國の民が見下ろして居た。ちょ、そこもうちょっとキレイにしといて。便器。それにそこのオッサン、立ってションベンせんといて。観光客にはちゃんと水ん中に紙ちゃんと流してもらうんやで。ていうかそこの便所もうちょい、業者に頼んで全部キレイにしてもらいぃや。カネはあれや、毒キノコの神様が払うてくれるからやな。
・何せ京國も何を隠そう、毒キノコの神様から仕送りをもらって居たので。ちゃんとするべきとこはちゃんとしとけや。ああ神様神様!言うてやでお前。何。あんなもん神様いうても毒キノコやないか。こっちには割とガチ目の神様っぽいのがホンマに居るんやからな、煽てておいて損はないもんは煽てといたらええんやお前。どっちにしろこっちが本家なんやから。

トーキョー最終処分場

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  • 自由詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-06-18

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