棘棘
一部、加筆修正しました(2024年6月7日現在)。
もう死ねない、と思う。
やかましい喧騒は
そうして消え失せていく。
道理で、と呟けば
応じて震える近くの花。
その一片が落ちたのです。
はらり、という具合に。
不吉な予感。
そんなものは私にも
あなたにも、ない。
それを承知するふたりは
だから美しく笑むのです。
手折った感触を、舐めたりして。
罪、というより業でしょう。
幾ら拭いても消えない
そういう窓際で、
私(たち)は育まれた。
夥しい数の感覚を焼いて、
突然の雨にももう、驚けない。
どこにもない地獄です。
陶工の逸品のように
整ったふたりの顔には、
何の迷いもない。
目立つ埃も気にしない。
悪さも何も、知らないから。
無実の主張も、抗弁も
私(たち)の非日常と化し、
見たことも、
着たこともない衣装となる。
それを脱がし合える関係、
それを忌避した。
一つの色を
青だとも緑だとも
決められない。
するり、といかない。
足を引っ張り合う。
否定的な響きをここに覚える、
そんな事が
ふたりには起きません。
私の重い瞼が開く、
あなたの首がそうして回る。
くるん、と。
まるで生きているみたく
信じられない。
こう発する喜びが
私という魂を解きほぐし
ずっと長い、
真っ暗なトンネルを灯します。
崩れ落ちそうぐらい
叫ぶ、叫ぶ、で
真っ赤になる命。
交わし合えた口付け。
気持ちを忘れて響かせる、
伽藍堂の私(たち)。
そうしてやっと
覚えられた「もの」。
それは、
まるで、
喉に刺さる骨。
異形の始まり
ぽたぽた、と
何かがずっと流れ落ちる
それに
ええ、
ええ、と応じれば。
わたくしたち。
切れない指を、渡し合い
あいをした。
あいをした、なのです。
棘棘