zokuダチ。セッション2
エピ 4・5・6・7
ヤキモチと嫉妬と風邪
引っ越して来て数日、大分この変な島の暮らしにもジャミルは慣れたのか
調子に乗ってきた様であった。
「♪ふんふーん、ふふんふーん」
風呂に入りながら歌をうたい、ご機嫌。
「さーて、風呂から出て、一杯やっかな!」
冷蔵庫に向かい、早速、キンキンに冷えたビールをごきゅごきゅ飲む。
「ぷはーっ!……俺はこの一杯の為に生きているといっても
過言ではないっ!」
「ジャミルー、いるー!オイラだよお!」
「ダウドか?待ってろ、今行く!」
急いで、玄関のドアを開けて、ダウドを迎えると……、ダウドの横に
見知らぬ巨体の少年が立っていた。
「だ、誰だい……?又、随分と……」
「紹介するよ、今日、彼も引っ越して来たんだよ、近藤茂一君、
友達になったんだよお」
「ワイ、近藤いいまんねん、よろしゅうたのんまーす!」
……その巨体の少年は、カモメ眉毛で変な顔で何故か歯が殆ど
欠けていて他には歯が二本しか見当たらなかった。
「お前、趣味わりいなあ……、友達は選べよ……」
「なんだよお!人間、外見じゃないよお!近藤君、行こう、あ、
……ジャミル、さっきお風呂で歌うたってたの、聴こえてたよお……、
音程外れてたよ……」
ダウドが口に手を当て、ジャミルの方を見、ニヤニヤ笑う……。
「ダウドはんのお友達さんって、面白い人やねー!なーんか、
外見は全然ちゃうし、こっちの方がイケメンさんやけど……、
何でやろな?誰かさんを思い出すわ……」
「面白いけど、たまに頑固で気が短いからさー、困っちゃうんだよおー!」
(何だ何だ、……この異様で異常なありえねえ光景はよ……、見てて
むかつくんだけど……、もしかして、俺?妬いてんのか……?!!!
んにゃ、んーな馬鹿な事はありませんよっ!ぜーったい、ぜーったい!!)
それでも何故か無性にカッカカッカきているのが分るので、
頭を冷やそうともう一度、水風呂を作り直し、頭からザバっと
水風呂に潜った……。
次の日。
「風邪……、ひいた……」
冷たいビールの後に又水風呂に入れば当り前である。
「はあ、こんな時……、何でアイシャ来ねえんだよ……、うう、
アイシャあ~……、会いたいよ~、……っくしんっ!!」
「ジャミル、いる?……いるね、勝手に入るよ、……あーあ……、
馬鹿だねえ、……時期も考えなよ、今、一体何月だと思ってんのさあ……」
「……んだよ、3月だよ……、っくしっ!お前、今日はあの歯掛けは
どうしたんだ?一緒じゃねえの?……親友になったんだろ?」
「オイラの親友は、ジャミルだけだよお~、当たり前でしょ、
全く、何言ってんの……」
ダウドはそう言って、ずれたジャミルの毛布を掛け直してやった。
「フン、大きなお世話じゃ……」
「何か食べたいのある?オイラの買える範囲でなら買ってくるけど……」
「……アイス、〇ーゲ〇ダッツか、レ〇ィボー〇ン……」
「だから……、買える範囲でって言ってるでしょ、種類については
贅沢言わないんだよお、とにかく買ってくるね、あったら50円
アイスでいいよね!」
「……あてっ!」
ダウドはジャミルにぴんぴんぴんぴんデコピンし、ついでに頭部に
チョップすると外に買い物に出て行った。
「今は今はアルがいないからねえ、オイラがこの役は承りますっ!」
「……あの野郎、人が動けないと思ってからに……、後で覚えてろ……」
赤くなったおでこを押さえてジャミルが呻いた……。
それから暫くして、ダウドが出て行った後、又インターホンが
鳴る音が部屋の外から聞こえてきた……。
「……俺、今出られねーんだよ、後にしてくれや!」
「大丈夫だよ!勝手に入るからー!おほほー!ご挨拶だよ!」
「おほほ?う……、げえええっ!!」
寝ているジャミルの顔を誰かが覗き込んでいた。それは真っ赤な
頭アフロのピエロであった……。
「元気ー?僕はドナルド・マクドナルド、ハンバーガーの
美味しさを広める為、このマンションにやって来たんだよー!
それっ、ドナルドマジックっ!!」
……次から次へと変な住人が現れ……、ジャミルの熱は
余計上がりそうであった。
「それじゃ、ドナルドは帰るよ、これから宜しくね!」
「……宜しくしなーいっ!……靴履いたまんまじゃねーかよっ!!」
赤い頭のアフロピエロは引っ越し祝いとお近づきの印に大量の
ハンバーガーを置いて屁をこいてスタコラ逃げて行った。
春真っサカリ
「……ぎゃーん、ひゃおー……、あっふにゃー……」
「あほあ……、あふお……、あ……にゃああ……」
春が来て、陽気もすっかり良くなり、道端では沢山の猫達が
子孫繁栄の為の大事なお仕事中。
「……うるせーぞ、この野郎!静かにしろっ!!」
ジャミルが外に飛び出し、猫達に向かって大声を張り上げると
猫達は集団で逃げて行った。
「ぎゃほおあー!」
最近、このマンションの付近でも猫達がぎゃんぎゃん春真っ盛りで
あった。特に目立つのがオスを誘っているメスのシャムネコ。
フェロモンを振りまいて、うっふ~ん、あっは~ん、状態。
「ジャミル、猫に八つ当たりしたってしょうがないでしょ」
かっぱえびせんをぼりぼり齧りながら、ダウドもマンションから出て来た。
「……だってさ、アイシャは中々来ねえし、代わりに変なのばっか
来るし……、ぶつぶつ、はあ、いつ会えんのかなあ……」
「仕方ないよお、……待つしかないんだから……、ねえ……」
と、其処に。
「……やあ、ジャミル、ダウド……」
「あ?」
「アルっ!」
「久々だねえ!……っても、前のシリーズが終わってから、
あんまり時間立ってないけどね、でも、会えて嬉しいよお!」
ダウドはアルベルトに飛びついて握手を交わした。
「んだよ、……おめーが先かよ……、ハア……」
「また姉さんに……、その……、ね……、それにしても、ジャミル、
随分機嫌悪いね……」
「うん、実はね……」
アルベルトの耳元でこそっと話をするダウド。
「そうなんだ……、僕も姉さんから散々聞かされたけどさ、
今度あなたが一人暮らしするマンションは非常に危険地帯……、
住人の出入りが激しい所です……、ってね……」
「大変だね、アルも……」
「これも僕の将来の自立の為、一環の修行だから……」
ちなみに、此処での彼の今の服装はチョッキ、上はカーディガンに
ネクタイと下半身はベルトにズボンと、ノーマルなお坊ちゃま
スタイルである。
「ねえねえ、ジャミル!折角アルが此処に引っ越して来たんだからさ、
3人でお花見行こうよ、ねえっ!」
「やだよ……、俺、花粉症だし……、それに……、アイシャが
……いな……」
「嘘つきっ!そんな話聞いてないよお!ねえ行こうよおー!
お花見いー!!」
ダウドはジャミルの肩を引っ掴んでガクガク揺さぶる。
「あら、お花見行くのね…?……私達もご一緒して……、
宜しいかしら……?」
「……」
いつもの如く、クローディアがグレイを連れて現れる。
「こんにちは……、グレイ、クローディア……、僕も等々、
被害者……、引っ張り出されたよ……、今日から僕も此処に
住むんだ、この世界でも
どうぞ宜しく……」
「こんにちは、アルベルト、こちらこそ宜しくね……」
「そうか、お前もか……、まあ、精々頑張れよ……」
「は、はあ……」
「……いずれ、ガラハドの奴も来るらしいがな……」
「そうなんだ……、うん、それはそれで……、楽しみだね……」
「うわーい!これで皆でお花見行けるねーっ、ねー、ジャミルーっ!!」
ダウドが跳ねて喜ぶがジャミルは何となくムスッと不満顔……。
それでもダウドが無理矢理ジャミルを引っ張って、5人は公園へ。
桜の下でシートを敷き、クローディアが手作り弁当を広げる。
……前回彼女が持って来たおはぎとは違い、今回はとても真面なお弁当。
「沢山食べてね、あまり美味しくないかも知れないけれど……」
「ふっ、……そんな事はないだろう……、なあ……」
そう言いながら、グレイは何となくジャミルの方を見る……。
「……何で俺の方見るんだよ……」
「ジャミル、あそこのベンチにピエロさんが座ってるけど……、
あれは誰だい?マジックショーであちこち遠征してる人かな……?」
「それが……、あれも一応、マンションの住人だとよ、……たく……」
アルベルトが訪ねるとジャミルは嫌そうな顔をする。
♪テテッテテテ~
「♪もしもし?ドナルドです、……この本前に読んだな……、
♪もしもし?ドナルドです、……この本前に読んだな……、
……あら~~っ!?」
終いにはピエロが座っていたベンチが勝手にひっくり返り、ピエロは
ベンチごと後ろに転倒する。
「……何十年前のCMやってんだよ、しかもガラケーに
アンテナ付いてるし……」
「大丈夫だよ、実はね、ドナルドはね、スマホも持ってるんだよ、
ほらっ!」
ジャミルの声が聴こえ、癪に障ったらしくピエロが持っていたらしき
スマホを取り出す。
「さいですか、へえへえ……」
「色んな人がいるんだね、この世界でも……」
「恐らく、常識人は俺達だけだろう、……アルベルト、お前も
流されない様にしろ……」
……そう言いながら、グレイがクローディアの肩に触れた。
「はあ……」
「……何だよ!それじゃ俺がまるで非常識人みてえな言い方だなっ!!」
「……ふっ……」
グレイに食って掛かるジャミルをグレイが笑いのける。
「……グレイったら、駄目よ、もう!折角のお花見なんだから……、
皆で楽しくやりましょう、ね、ジャミルも……、ね?」
「そうだよお!」
クローディアが間に入り、一時収まったかの様に見えたのだったが……。
「アル、それでね、それでさ、あのねあのね!」
「うん、……ダウドも大変だったんだね……」
「ねえ、グレイ、白あえ……、食べるかしら……?」
「貰おうか……」
「……なーんか、すっげー、面白くねーんだけどっ!
……むしゃくしゃする……、あああーっ!!!」
ジャミルはイライラし、側に捨ててあった空き缶を蹴り飛ばす。
「ほにゃ~あ……」
「……あふう~……、にゃああ……」
「……だからっ!わざわざ人の目の前でするなっつってんだよ!
がうーーっ!!」
「ドナルドの靴のサイズ知ってる?何センチかな?ほら、らんらんるー!
君も一緒にやってみようよ!」
「うるせーぞ!糞ピエロ!!どいつもこいつも……!がううーーっ!!」
……前の話ではそれなりにアイシャとイチャイチャ出来たのだが、
今回はちと厳しいのです……。
「何だ、……あいつもサカリか……、相手のいない遠吠えだな……」
「グ、グレイ……、又、聴こえたらジャミルが怒るよ……」
アルベルトが慌てて注意するがグレイはふんと言った表情で知らん顔。
「……アイシャあ~、会いたい……、……あううう……、ああ~……、
早くしないと……、俺のあれが……使い物にならなくなっちまうよ……」
「今度は急に蹲ったが……、本当にあいつは見てて面白い奴だ……、
飽きんな……」
「グレイったら!……ジャミル、こっちに来て、ほら……、一緒に
おいなりさん食べましょう、ね?」
「あうううう~……」
「卵焼きと、のり巻もあるから……」
「何か……、幼稚園児と保母さんみたいだあ……」
「ダウド、君も黙って聞いてると、意外と口が悪い処……、
あるよね……」
「だって、オイラ、ジャミルの親友だもの……」
ダウドが顔を赤くしながら笑った……。号泣しているジャミルの横で
ジャミルが履いている靴下の片っぽを、おでこに縞模様のある変なネコが、
引っ張って銜えて持って行ってしまい、卵焼きを一つ、シャムネコが
銜えて盗んで逃げて行く。……ついでに黒猫も来て、ジャミルにマーキングを
するとさっさと何処かへ歩いて行った。
「そう言えば、……そうだったね、あはは……」
「そう!えへへ~」
そして、その日の夜、暫らくぶりでジャミルの部屋にインターホンが
鳴った。寝ていたジャミルは慌てて飛び起きる。
「……今度こそ、もしかしてアイシャか……?そうだよな、流れから
して絶対そうだよな!?これはきてる、絶対きてるぞおー……!!
あああ!アイシャちゃーーん!!」
独り言を言いながら、慌ててドアを開く。……しかし、残念ながら、
入り口に立っていたのは……。
「……オウっ!?」
「よお、ジャミル!来てやったよ!!」
「あうう……?」
アルベルトを連れた、逞しい元蛮族の雪国バルハラント出身の美女お姉さま、
おっかねえシフであった……。
「今度からあたしも此処のマンションに住むからさ!坊や共々、
アンタもびしびし鍛えてやっからな、だらだらしてんじゃないよ、
覚悟しなっ!!」
シフは持っていた竹刀でびしっと地面を叩き、ジャミルを一括する。
格好はジャージで、その姿はまるで鬼体育女教師の様でもあった……。
「ははは、そう……、言う事……だよ……」
シフに小脇に抱えられ、アルベルトが苦笑いした……。
「……何でこうなるんだよおおーー!……いい加減にしろーーっ!!」
課金ゲーで狙っていた大当たりを逃した様な……、そんなジャミルの
魂の叫びであった……。
寿司屋へ行こう
この島に、期間限定の格安回転寿司屋が建つと聞き、ダウドは
早速ジャミルを誘うのであった。
「……あんまり……、気が進まねえ……」
「行こうよお、ねえ、一皿100円ならどうにでもなるじゃない、
……500円ずつ出し合ってさあ……、行こうよお!」
「500円つー事は、5皿ずつか?やだよ、足りねーよ!
……せめて、20皿はいかねーと!」
「……欲張りだなあ、ンモー!オイラ達、お金無いんだから
しょうがないじゃん!」
「金……、そうだ!いいカモがおりましたよ、ひっひひっひ!」
「……?」
ジャミルは廊下に出てアルベルトの部屋まで走って行った。
「絶対、お断わりっ、……帰れ!しっしっ!」
「ケチだなあ!……寿司ぐらいおごってくれたっていいだろ!」
ごんっ!!
「……っつう~……」
「何やってんだい、このボンクラ!坊やの修行の時間なんだよ!」
ジャミルの後ろに……、竹刀を肩に担いだシフが現れる……。
「出たな……!大女め……!!」
ジャミルは一歩、後ろに下がって警戒し、スペシウム光線の構えをとった。
「……で、このアホから何を要求されたんだい?」
「寿司を……おごってくれって……」
「バカだねえ……、たくっ!食う事ばっか考えてんじゃないよ!
ついでにあんたの思考回路も叩き直してやるっ!!オラオラオラオラっ!!」
「やだよーっ!冗談じゃねえやいっ、とりあえず逃走ーっ!!」
シフが竹刀をびゅんびゅん振り回すが、すばしっこさはジャミルの方が
ワンランクずば抜けて上の為、ひょいひょいと飛んで避け、そのまま
逃げていった……。
「逃げられたか……、はあ、やれやれ、……あたしもまだまだだねえ……」
「シフ……」
アルベルトがシフのジャージの裾をくいくい引っ張る。
「何だい?」
「……寿司ってなに?」
「坊やには……そういう世の中の教養も必要か……」
「?」
仕方がないので、ジャミルとダウドの有り金500円ずつ足し、
合計1000円で寿司を食べに行ってみる事にした。
「このお店の名前、面白いね、きゃっぱ寿司だって」
「名前なんかどうでもいいよ、早く寿司食いに行こうぜ……」
店に入ると……、独特の酢臭い臭いが充満する……。
「お客さん……、全然いないね……」
「……何か嫌な予感しかしなくなってきた……」
「いらっしゃいだぎゃ!」
「らっしゃい!席はどれもガラ空きだよ!客はいねーから適当に座んな!!」
店の奥を覗くと……、青いバンダナを巻いた無精髭の親父が
厨房からぬっと姿を現し、トカゲが店内をせっせと掃除していた……。
「……ホーク、何やってんだよ……、あんた海賊やめて寿司屋に
転職したのか……?」
「ちょっと又状況がやばくなってな、……俺も移住してきたのさ……、
近いうちにこの島に出来たマンションに引っ越そうとおもってな、
暫くは又、新しいレイディラック号が買えるまで資金稼ぎだ」
「そう……、なのか……」
(かっぱのお寿司……、カッパが握る……、かっぱ寿司……)
「お客さん、早く席に座ってくださいぎゃ!」
相棒のトカゲが二人を急かす。ジャミルは逃げようかと思いもしたが、
ダウドがむんずとジャミルのパーカーの裾を掴んで放さない。
「ハア、仕方ねえ……」
席に座って寿司が流れてくるのを待つ……。
「でも、こういうのって、すぐ食べられるからいーよねっ!」
「そうだな……」
(……あーあ、何で此処にアイシャがいねーんだよ……)
「あ、流れてきたよ!」
一発目に流れてきたのは……、かっぱ巻きであった……。
「……次のを待つか、折角だから……、トロ一個ぐらい
腹に入れねーと……」
「そうだねえ……」
しかし、次に流れて来たのは塩のおにぎりであった……。しかも
コンビニで買ってきたらしきブツをまんま流している………。
「おい……!この糞親父っ……!!」
ジャミルが等々ブチキレ、立ち上がり、テーブルをバンと叩いた。
「何だ!?」
厨房の奥からホークがのそのそと出てきた……。
「ふざけんなよ!真面目にブツ流す気があんのかよ、あんたっ!
トロはよっ!」
「あーん?贅沢言ってんじゃねえぞ!マグロなんか流せる資金が
ウチにあると思ってんのかあ!?第一、店の看板見ただろう!ウチの
メインはかっぱ巻きなんだっ!理解しろっ、このワル糞ガキめ!!
仕方ねえ、サービスで特別に今日はトロは特別だっ!」
ホークはブスブス怒りながら、再び厨房の奥に引っ込む。
「きゃっぱ寿司……、そのまんま……なのかあ……」
「な、なんつー……、詐欺だ……」
「そういう事ですぎゃ、お客さん、我慢して下さいぎゃ……」
「仕方ないよお、折角入ったんだから、でも、一個だけトロ流して
くれるらしいから、有り難く頂こうよ……、当然半分こでね……」
「……だから嫌だっつったんだ……」
と、肩を落とす二人の前に……、漸くトロが流れて来た……。
「……ニャー、ト、トロは食べないで欲しいのにゃあ~……」
「本日、キャプテンきゃらのサービスだぎゃ!」
「「……トロ違いだあーーーっ!!」」
怒り声の混じった声で、ジャミルとダウドが声を揃えた……。
「はっはー!ドナルドだよー!!みんな、元気してるかなあー!?」
「きゅっぴー!楽しいねえー!!」
「……」
この寿司屋には、時間帯によって、ピエロとドラゴンも
流れてくる様であった……。
「チビちゃん……、キャラが大分おかしくなってるね……、
でもあんなに楽しそうに……幸せそうで……、オイラ嬉しいよお……」
ダウドがハンカチで顔を拭うのであった……。
……それから数日、寿司屋はすぐに閉店し、ホークとゲラ=ハも
すぐにジャミル達のいるマンションへと引っ越して来た。
「どうも皆さん、お世話になります、ぎゃ……」
「……ふっ、又、珍野獣が来たか……、やれやれ……、だな……」
「んだとお!?……グレイ、テメエ、こっちの世界でも
その嫌味な性格全然変わってねえな、ああんっ!?」
「ホーク、注いであげる、どうぞ……」
クローディアがホークのコップに酒を注ぎ、お酌をする。
「おお、こりゃ悪いね、クローディア嬢ちゃん、相変わらず
お美しいねえ!少し、おケツも綺麗になったんじゃね……?
へっへ!」
「……そんな……、もう……、ホークったら……」
グレイが立ち上がり、無言でホークにアイスソードを
向けようとするが、クローディアが制した……。
「ちょっと、ジャミルーっ!あんたもっと、どんどんビール買ってきなよ!
焼酎もねえっての!これじゃ足んないよっ!!」
すっかり酔いつぶれたシフがジャミルにどんどん酒のおかわりの
要求をする。
「どうでもいいけど……、何で俺の部屋で宴会やってんだよ……」
ダウドは今日、自分の部屋に自主避難し、顔を出さないでいる。
「でも、これでメイン6人は揃ったんだよね、後は……、バーバラと……」
「アイシャだよなっ!うんっ、次来るのは絶対アイシャだよなっ、
な、アルっ!」
「う、うん……、アイシャだといいね……」
アルベルトに同意を必死で求めるジャミルにアルベルトは
困り顔をする……。
「そうだよ、冗談じゃねえよ、……厚化粧の婆ーラなんかよ、
後でだっていいんだよっ!……アイシャが先に来てくれない……」
「あ……」
ジャミルのその先の言葉は続かず……。
「……と……、いっ……てえええーーっ!!」
「相変わらず口だけは達者だねっ!誰が厚化粧の婆ーラだい!?
ほら、もっと言ってみなってのよ、どうなんだい、ええっ!?」
「おお、バーバラ!やっと来たか!」
「はあーいっ、ホーク、みんなー!お久ねー!あたしも今日から
此処住まいなのさ、宜しくねーーっ!!」
バーバラは過激な際どい、ヘソ出しボディコンスタイルで
皆の前に登場する……。
「バーバラー!ほおら、こっち来な来なー!女同士飲み明かそう
じゃないか!……ジャミルっ!アンタ黙って突っ立ってないで
酒もっと買って来るんだよっ!!」
「ああう、ああ……」
とにかく、女主人公達は姉御肌で気が強い為……(サブのミリアム、ファラ、
ディアナも含む)で、誰も逆らえないのであった……。
「ふっ……」
グレイはジャミルの方を見て、ニヤリと笑うとビールを一口、
口に入れた。
「……残念だけど……、やっぱりアイシャは最後みたいだね……、
でも次は必ず来ると思うからさ……」
「ちくしょーーっ!俺をパシリにしやがってーーっ!!グレてやるーーっ!!
……うわああああーーっ!!」
「柿の種も忘れんじゃないよーっ!」
「……うるせーー!この蛮族大女めええーーっ!!」
(ジャミル、またアイシャ……、外れたんだね……、何処まで運が
悪いのかな……、ハア……)
物凄いスピードで走って行く友人を……、ダウドが自室のドアを開け、
……様子をこっそり見ていたのであった……。
小猿とバーバラ
「……まただ……、これで今日何回目だよ、たく……」
ジャミルはブツブツ言いながら、部屋の壁を突き抜けて
飛び込んできた野球のボールを拾うのであった。
「すいませーん!あの、こちらに僕の投げたボールが
また……、お邪魔していませんでしょうか……?」
部屋の入口に坊主頭の少年が顔を出した……。
「お前確か、谷口……?とか言ったっけ?……駄目だぞ、
ピッチング練習するんなら外でやれって言ったろ……」
文句を言いながらも、ジャミルは谷口へ軽くボールを投げ、返してやる。
「はっ、はいっ!す、すみません!!軽いシャドウピッチングの
つもりだったんですが……、つい、僕……、たまにムキになりすぎて
しまう処が有りまして……、どうも本当にすみません!」
「はあ、もういいよ、今度から気を付けてくれや……」
「はっ、はいっ!すみませんでしたっ!……ではっ!!」
「……」
谷口はジャミルに何度も何度もぺこぺこすると、部屋に戻って行った。
「ぷっ……」
「……ダウド、オメー、隠れて笑ってんじゃねえよ、出てこい……」
「あはは、ごめんよお!だって、何かさあ、ジャミルが常識人
みたいなんだもん!」
笑いながらダウドがジャミルの部屋の玄関先に姿を現した。
「……ほお~、んじゃ何か?普段の俺はやっぱ、非常識人ってか……?」
「いたたた!やめてよお~!!もう~!!」
「あ、あの……」
部屋に行ったとばかりの谷口が、再び戻って来た。
「まだ、何か用か?」
「近いうちに、僕の後輩がもう一人……、此方に訪れるかと
思うんですが……、その時は宜しくお願いします、あのう、その……、
少し性格に問題があるかも知れないんですけれど、決して悪い奴では
ないので……、その……、もしかしたら皆さんにもご迷惑をお掛けして
しまうかも知れないんですけど……、その、その……、あのう……」
「分ったよ、心得とくよ……」
「はっ、はいっ!ありがとうございますっ!!」
「……」
谷口は足取り軽く、自分の部屋に戻って行った……。
「ああ~、って事は…、まーた、次もアイシャじゃねえのかよう~、
んだよ……、いつになったら来るんだよう……、もう、おにいさんは
嫌ですよ……、グレますよ……」
「ジャ……、ジャミル……、落ち込まないで、どうどうどう……、
今にいい事がきっとあるよ……」
再び蹲ってしまったジャミルをダウドが慰めた……。
その日の午後。
「誰かいます!?挨拶回りに来た者なんですけど!」
「へえへえ、……今行くよ……」
ジャミルが部屋の入口に行くと、今度来たのは、一回り背の小さい、
小柄で華奢なサル顔の少年であった。
「……はっきり言って、何で俺がこんな所、来なきゃなんないのか
意味不明なんスけど……、でも、谷口さんが此処に来るらしいので……、
…来たんス……」
サル顔の少年は上から目線でジャミルの顔を見た。
「そら、俺だって……、?谷口……、ああ、お前、谷口が言ってた
後輩か?」
「……はい、イガラシです……」
「お前の事、心配してたみたいだったぜ?早く部屋に行って
顔見せてやれよ!」
「そうですか!谷口さんが……!では、俺はこれで一旦失礼します、
又後で……」
むすっとしていたイガラシは、〔谷口〕、の言葉を聞いた途端に機嫌が
良くなった様であった。
「……何か、あんまり心配なさそうな気がするけどね……」
様子を覗っていたダウドが自室の部屋のドアを開け、顔を出した。
「だと、いいんだけどな……」
ところがどっこい、タダでは収まらないのが、この作者が
書く話である……。
さらに次の日。
「あーっ!何なのさ!あんの猿ガキいーーっ!!あーーっ!
悔しいーーっ!!」
「何だよ……、朝っぱらから……、うるせーな、もう……」
寝起きのジャミルがぼりぼり頭を掻いた……。
「ジャミルっ、大変だよ、バーバラと、昨日此処に来た、猿みたいな
顔の子が……」
ダウドが慌てて、ジャミルの部屋に駆け込んでくる。
「ああん…?」
ジャミルが寝起き状態のままでそのまま外に出ると……、バーバラが顔に
パック白塗り状態のまま、地面を蹴って暴れていた……。
「……うわ!妖怪白塗りお婆ーラ!!」
「誰が妖怪だっ!?ああん、言ってみな、この口か!この口か!」
バーバラはジャミルの口に手を掛け、うにょにょにょと横に引っ張る。
「あふぇふぇふぇふぇ!や、やめりょ!!こひょ、おふゃふゃ!!」
「……バーバラも、落ち着いてよお~、ジャミルも駄目だよお~!」
其処に……、今回の騒動の発端となったらしい、イガラシが現れる……。
「何なんです?俺は思ってる事を正直に言っただけですけど……、
香水の臭いがきつすぎて気持ち悪くなるって、それだけですが?
それだけでキレるとか……、ちょっと、大人げないんじゃないの?」
「大きなお世話だよっ、……大体、あんた子供の癖にちょい生意気
すぎんじゃないのっ!?」
「……イガラシっ、駄目じゃないかっ!」
「あ、谷口さん……」
「どうもすみません、本当に……、これからこのマンションの
人達には何かと色々お世話になる事もあるんだから……、ほら、
謝るんだ、……本当にどうも、大変失礼しました!」
谷口はイガラシに頭を下げさせると、自分も一緒に頭を下げ、
謝ったのであった……。
「……すみません……、でした……」
谷口には逆らえないのか、仕方なさそうにイガラシもバーバラに
頭を下げた。
「へえー、こっちのこの子は中々しっかりしてるね、
いい子、いい子!」
バーバラは谷口のゴマ塩頭をなでなでし、ほっぺに軽くキスをした。
「ハ、ハア……」
赤面症の谷口は顔が真っ赤になる……。
※原作の漫画本編であんまり女の子に縁がないからね、この子達は……。
「さーてとっ、……化粧が終わったら、エステとお買い物にでも
行ってこようかしらーん、んじゃ、ボーヤ達、まったねえーん!」
「……」
すっかり機嫌の良くなったバーバラは腰をフリフリ、自分の部屋へ
と戻って行った。
「では、僕らもこれで、また……」
「ん……」
「失礼します……」
谷口とイガラシも部屋に戻って行く。
「……けど、オイラ達もそうなんだけどさ、……一体何の目的で
あの子達はこのマンションに住むんだろうね……」
「知るかよ……、そういうゲーム内容なんだから仕方ねえだろ……」
そして、更に……、その日の夜……。
「……近藤っ!テメーばかやろーーっ!!」
「ひいいーっ!丸井はん、もう勘弁してーな!!」
「今度は何だ……」
又、一騒動起こったらしく、今度は丸井が近藤を蹴とばしていた。
「丸井っ、やめないか!暴力はよせっ!」
「た、谷口さああん、だって……、この馬鹿が悪いんスよ……」
「どんな理由があっても、手を出したら駄目だぞっ!」
「はあい……、すみません……」
近藤はざまあみろとばかりに谷口の後ろに隠れた……、
つもりでいたがでかすぎて全然隠れていないのだった……。
(調子に乗りやがって……、谷口さんがいない時は……、覚えてろ……)
「……はあ、やってらんないよ……」
頭に手を当てて、イガラシが通り過ぎて行った。
「でも、このマンションも大分賑やかになってきて楽しいね、ジャミル!
あはっ、皆知り合いだったんだあ!」
いつの間にか、ダウドも部屋から出て来てジャミルの隣にいた。
「そうか……?てか、ホント、お前も野次馬だな…」
「何さ、ジャミルだって部屋から出て来てるじゃん!」
「うるせーからだよ、……あんだけギャーギャー騒いだら、
普通気になるだろ……」
「でも……、他の皆は意外と冷静だよね……」
ジャミルとダウド以外に……、他の住人は今の処、誰も部屋から
出て来ていない。
「じゃあ、俺らは馬なのか……、馬か……」
「……競馬場で一緒に走ろうか……」
「……」
だが、自室に戻ろうとしたイガラシを見ていた男が一人、
グレイであった……。
「何すか……?」
「お前とは……、もしかしたらウマが合うかもな……」
「ハア……?」
「……ふっ」
グレイはそれだけ一言言うと部屋に引っ込んで行った……。
「???」
「ジャミル、……シフの実家から荷物が届いて、僕にもおすそ分け
してくれたんだけど……、多すぎるからおすそ分けに来たよ、ダウドにも
あげてくれるかい?」
段ボール箱を抱えたアルベルトがジャミルの部屋にやって来る。
「おお、気が利くな!てか、明日は雨かな……」
「……失礼な……、じゃあ、おやすみ!」
不機嫌そうな顔でアルベルトが部屋に戻って行く。
「ふーん、……んで、何くれたんだ……?」
段ボール箱を開けると……。
「……人参だああーーーーっ!!」
zokuダチ。セッション2