終わりの空

プロローグ

どんな学校にもいるだろう。
絶対に手を出せない奴。
別にたいして喧嘩も強くないのに、手を出せない。
そんな奴。
そういう奴に手を出すと、周りを全て敵にまわしてしまう奴。
そんな奴。



僕、なぜここにいる。
ただただ空を見上げ座っている。
僕。
僕。
明日? そんなもんは知らない。
空の色はいつも青か?
いいやそんなことはないだろう。
僕達の世界。
人生。
全ての、




終わりの空

始まり          少年

僕の学校。栄中学校。
いつものように机に向かう。
「おーい翔!鬼ごっこやろうぜ!」
いつものように声をかけてくる拓也。
「おう!」
僕はまあ自分で言うのもなんだが、まあまあ友達はいるほうだと思う
僕はいたって普通の中学生。
うんうん。そうだ。


授業の始まりのチャイムが鳴る。
僕は今日も大人への長い長い生活を始める。

一歩          少年

挨拶とともに外へ出る俺達。
いつものように4人で帰る。
あ 今日は野球部がないから凛がひまなんだ。
5人だ。
僕、拓也、凛、謙太郎、勇樹の5人だ。
勇樹がまた僕をからかってくる。
「おい!テナガザル!おいおいこれ取ってみろよ!あー手長いからとれるか!!!!」
「んだと?!」
「やめろ翔!!!」
いつも謙太郎が止めてくれる。謙太郎がいないときに一回思いっきりなぐりそうになったが、ちょうど先生が通りかかって、何も起きなかった。
みんな勇樹には手をださない。なぜか。それは勇樹は手を出せない人。アンタッチャブルボーイなのだ。
アンタッチャブルボーイ。たいして喧嘩も強くないのに、モてるからかもしれないが、悪口や、反抗できない人。絶対に近くにいるだろう。
そいつに喧嘩売ったりすると、クラス、いや学年全体を、敵にまわしてしまうかもしれない。
そんな奴だ。
僕は、手足が長いことを、ばかにされた。あまりにもいわれてそんでもって耐えてるもんだから、最近では僕はMだと思われてたりする。
心底あきらめかけているが、どこかで、勇樹にガツンと一発殴ってやりたい気持ちはあった。
一方で、勇樹はまったくばかにされない。悪口を言われない。僕が言っても信じないことを、勇樹が言うと信じる。
なんなんだよ。まったく。
いやになってくるぜ。
拓也が話題を変えた。最近の学校の先生の話になったのだったが。
「齊藤マジウザいよな!なにあの宿題の数!」
と凛。
「齊藤ってバツイチらしいぜ!」
たまたま知っていた豆知識を言ってみた。
「はあ?!うそだろ!嘘に決まってんだろ!」
みんなが口をそろえていってくる。
「ホント!」
「いいや!ウソだろ!」
なんで?信じてくれないんだ。
そのときだった。
「マジじゃね?」
やっと勇樹が口を開く。みんなは一呼吸あけて、
「そうかなあ・・・・・」
とつぶやく。
これが、アンタッチャブルボーイの力だ。
僕は腹がたった。

俺          刑事

コンタクトが入らない・・・・・・・
ア―――――また切れた。
なんなんだよ


そう思いながらも、洗面所の前に立つ男が一人。
彼の名前は小林 一幸

一幸は、もうコンタクトをあきらめ、眼鏡をかけて、家を飛び出す。
今日も新米刑事の一日は始まる。


「おい小林!!!!」
やれやれ。また呼び出し・・・・・
「はい・・・・」
いつもの先輩、どうせいつもの説教だろう。

しかし今日は違った。
「はい・・・・・」
「おお!来たか小林。はっはっはっは!また俺の説教だと思ったろ!違うんだな―――。はっはっは!奥の部屋だ!」
酒と煙草と加齢臭の入り混じったにおいを発しながら、話しかけてくる。
奥の部屋?
一幸は奥の部屋を知らない。
警視庁長官の部屋だということを。

「失礼します・・・・・」
「ああ君が小林君か!」
アレ?
あの顔どこかで見た事がある。
あのいかにも偉そうに伸びた鼻。
伸びた無精ひげ。
ああそうだ。長官だ。
一幸は3秒で理解した。
「今回はなぜここに?」
一幸は恐る恐るきいた。
一幸の頭の中はすでにショートしかけていた。

クビか?
そうだよな・・・・・・。おれここまでまともに何もやってないし、怒られてばっかだし。
え。でも親になんて言おう・・・・・・
あんなに大口たたいて出てきちまったもんな・・・・・帰れへん・・・・・

パニックになると、方言がでてきてしまう一幸。

それに彼女はどないしよ・・・・・
仕事ない人とは結婚できへんいうし・・・・
ああ・・・結婚の約束までしとったんだけどな・・・・・
どないなっとんねん。もう・・・・・・。



結果は違った。
「君はもう一人前の刑事だ。よって、君に拳銃を渡す。」
は?!
一幸の頭は一瞬にして正常にもどった。
カシャ その音と同時に長官の手には拳銃が握られていた。
リボルバー。弾は6発まで入る。
「はっ!ありがとうございます。」
リボルバーを受け取る。

これから本当の刑事としての人生が始まるのか・・・・


長官室を出て、ガッツポーズ。

眠り          刑事

一幸は仕事を終えてのびをする。
刑事としての一日が終わった。
もらったリボルバーを握る。
いい。この感触。
はっはー撃ってみてー。
そう思いつつも、それをしまってバス停へ歩き出す。
明日の出勤も早い。早く帰りたい。
昨日遅くまで残業だったから、急に眠気が襲ってきた。
バスが来る。
バスに乗り込む。
やばい。眠い。
椅子に座るとほぼ同時に眠ってしまった・・・・・・・






彼はまだ知らない。
ここで眠ってしまったこと。
それによって日本国民を命の危険にさらすこと。




そしてなにより、


ここでリボルバーを盗まれているという事を・・・・・・・・・・

問題          少年

今日もいつもと同じ一日が始まる。
教室のドアを開けた。
また勇樹だ。
「お!きましたテナガザル!」
「うるせーな!」
「お?!殴るのか?」
「あ?!なんだとこら!」
「おい二人ともやめろよ!」
また謙太郎が止めに入ってくれた。

なんか最近もっとギクシャクなったような気がする。
勇樹と僕。
あのころの友情はどこにいってしまってしまったんだろう。
いや、もとからそんな友情なんかなかったのかもしれない。

そんなことを思いながら、一時間目が始まる。


放課後。
いつものように四人で帰った。
勇樹と僕との間には、二人がはさまっていた。

それなりに会話は盛り上がった。
帰り際だった。
「じゃなー明日なー。」
「じゃあな。テナガザル。」
「うるせーな。」
「テナガザルは三波が好きなんだっけ?」
「は?!そんなこといつ言った!」
「なーみんな聞けよ。こいつ三波が好きなんだってー!。」
「本当か?!」
「違えーよ!。」
「おいおい。照れんなって。」
「てめえ!。」
「お!殴るのか?!おいおい暴力でしか解決できないか!」
「んだって?!」
「やめろよ!」
「まあどうせ殴れねーんだろ。」
「あん?!」
「やめろって!」
怒りは最高潮になっていた。
「ふざけんじゃねー!」




次の瞬間、僕は勇樹の顔を殴っていた。

発見          刑事

「お客さん!お客さん!!終点ですよ!!!」
その声が遠くから聞こえ、一幸は目を覚ました。
「あ!はい!すぐ出ます!!!」
そういい残し、鞄をおもむろに抱えバスの外へと出た。
一幸は、外へと出ると、家に向かって歩き始めた。
すると一幸は、さきほどもらった、リボルバーをもう一度確認したくなった。
鞄の中を覗き込んだ一幸は、その瞬間、顔色を真っ赤にした。
鞄の中に、リボルバーはなかった。
一幸はその場に立っているしかなかった。










「6発のリボルバーじゃねーか」
新宿のとあるカプセルホテル。男はリボルバーを握り締めていた。
「さあて。どうすっかな」
男は、ニヤついて、立ち上がった。

始まり          少年

「翔!ほら起きて!学校だよ!」
母親が、こちらへどなってくる。
「やっベー!遅刻だ!」
勢いよく家を飛び出した。今日もいつもと同じ、日がやってくる。
ーはずだった・・・・・・・。-



鼻歌を歌いながら教室に入るとなぜかクラスのみんながこちらをにらんできた。どうしたものかと思いながらも、席に座ろうとした。
僕は目を疑った。
机にはカッターのようなものでこう削られていた。
「暴力テナガザル」
再び周りを見渡すと、そこにはヒソヒソと笑う声と、にらむ目があった。
なぜこんなことになったんだよ。昨日までは、あんなに普通の日々だったじゃないか。
ああ。崩れていく。今までの日々が、崩れていく。



いじめ。
ああ。これか。




なぜか、自分の顔は、笑っているようにも見えた・・・・・・・・・。

終わりの空

終わりの空

主人公のいつもの生活が、あっという間に崩れ落ちてゆく。 人間の心理を疑う。そんな話。 真相は長い長い迷宮へ。 まだ若い少年の決断とは・・・・・ あなたの身に起こるかもしれません。 もしかしたら、明日かも・・・・・・・・

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. プロローグ
  2. 始まり          少年
  3. 一歩          少年
  4. 俺          刑事
  5. 眠り          刑事
  6. 問題          少年
  7. 発見          刑事
  8. 始まり          少年