君の一時と、僕の永遠
プロローグ
「私、時間っていうのが嫌いなんだよね。」
何とも訳のわからないことを言ってきた。
「なんだそれ。時間って嫌いになるもんなの?」
「まぁ私の場合は特殊だけどね。」 --そして--
「私は記憶が変則的に消えちゃうんだ。」
突然の告白に俺は棒のようにただ立ち尽くすことしか出来なかった。
第1話 出逢い
--行くな!!
そんな言葉が脳に響き渡り葉山蓮は飛び起きた。
「はぁっ..!はぁっ..!またあの夢か。」
油のようにベタつく服に鬱陶しさを感じながらダラダラとシャワーを浴び制服に着替えた。
俺は彩月川高校に通う1年生。と、言っても入学してからまだ1月しかたってない。--のにもかかわらず俺は孤立していた。多分初日にやらかしたからだと思う。
--1月前---
「これから1年一緒に過ごす仲間達だ。自己紹介していくよ。」
恒例行事が始まったな。なんて思いながら適当にやろうなんて考えてたら
「あ、そうだ。名前だけの自己紹介はだめだかんな~。おたがいのことを知るためになんか工夫しろよ~」
担任が余計なことを言ったせいで面倒なことになった。クラスのみんなが恥じらいながら、ある奴は嬉々として話してる奴もいた。あんまり関わりたくないなとか考えてたら俺に回ってきた。
「じゃあ次、葉山。宜しく。」
そこで名前言ったらダメだろ、と内心ツッコミをいれながら、渋々前に立った。
「葉山蓮です。好きなことはキャンプです。ハマっていることは、人間観察です。宜しく。」
言った後、みんながざわついた。俺もすぐは気づかずに席に戻ったけど、時間がたって気づいた。
(のぉぉぉぉぉ!俺のバカぁぁぁぁぁ!正直に言っちゃだめだろぉぉぉぉぉ!)
小学生の時にやった失敗を忘れていた。(あの時やってしまった時はいじめに発展するまで行ったのに、なんで忘れてんだよぉぉぉぉ!)
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っていうことがあって今に至る。だから、クラスメイトからは奇異な目でみられている。今日も相変わらずそうだった。いじめは今の所ないから大丈夫..かな?って感じてた。そんなある日、 「1時間目は..なんだっけな?ゴソゴソ」
バックを漁っていたときに担任が教室に入ってきた。
「おはよう。突然だが今日から転校生がこのクラスに入る。時期的におかしいかもしれないが、家庭の都合で転校してきた。じゃあ入ってきて~」
担任が手招きすると、入り口から1人の少女が入ってきた。肩より少し上で切り揃えられた茶色の短い髪に、身長は145くらいと思わせる位で、小顔で、目の色は少し青みがかっている綺麗な子だった。
「はじめまして、碧海時雨(あおみしぐれ)と言います。家庭の都合でここに転入することになりました。宜しくお願いします。」
これが、俺と時雨の出会いだった。
第2話 謎の発展
碧海時雨が来て、教室は賑やかになった。休み時間になると常に彼女を取り巻く人達がいる。だから、お近づきになりたい男子達は、蚊帳の外状態になってる。
「なぁ、蓮。蓮は、時雨ちゃんに話しかけないの?時雨ちゃん可愛いよなぁ...」 話しかけてきたこいつは、史家 颯(ふみや はやて)。成績優秀でイケメンなんだけど惜しいのが、すごく小心者で更に女子と話をするのは無理---と本人が言っていた。でも何だかんだ言って、めっちゃいいやつ。ただ、いつの間にか俺と一緒にいることが自然と多くなって来た。でも、これに違和感はないし暗黙の了解みたいな感じになってる。一緒に居てつまらないってことはない。
「そういう史家も行かないの?」
「俺のことわかってるくせにそういうこと言わないでもらえる?傷つくから。」わざとふっかけてみたけど、しなしなになっちゃいそうだからこれ以上言わないでおこうと思う。
休み時間が終わり授業を受けていたらもう夕方になった。
「よし、帰るか... ん?」
帰ろうと机の中を漁っていたら、中から水色の封筒がでできた。
(はぁ... また嫌がらせかな。)
裏面には予想だにしていなかった名前が書いてあった。
碧海時雨
思わず封筒を落としてしまった。
(なんで?なんで?なんで碧海さんから?)
頭にハテナしかない状態で封筒を開けてみると、便箋が1枚だけ入っていた。そこには、
「葉山くんへ。放課後教室に残って居てください。」
と、短いたった一行の達筆な文字があった。
(やべ、俺なんかやらかしたかな?うわぁぁぁどうしよう。)
内心、めっちゃ焦ってたけど、実際聞かないと分からないから待つことにした。
読んでいた本の右手側が厚くなってきた時だった。
ガラガラガラ「はぁっ...!はぁっ...!はぁっ...!ごめんなさいお待たせしましたっ!」
息を切らしながら、碧海さんは教室に入ってきた。とりあえず用を聞こう。
「落ち着いて、ゆっくり話してください。俺に何の用ですか?」
「へ?!いや、それは、、その...」
ん?呼び出されたのって俺だよな?何で碧海さんは、躊躇ってるんだ?お待たせしましたって言ってんのに、へ?!っていうのは文として、会話として成り立ってないし!
「碧海さん。用は無かったかな?誰かと間違えた?」
思わず俺は聞いた。が、
「ま、待って下さい!!」
と引き留められる。という若干噛み合ってないような会話を三回ほど繰り返した後に、碧海さんが、
「わ、わたしと付き合ってっ!」
・・・・・・・・・・は?
はぁぁぁぁぁ?!いや、なんで碧海さんが?俺に?え?
ーーーーーあらゆる思考を巡らせて出した答えは、
「分かった。これから宜しくね。碧海さん。」
その魅力に俺は敗北した。
でも...なんで俺なんだろう。
第3話 雨の放課後
あんなことがあった翌日。
俺は、学校に行くのを躊躇っていた。ーーーいや、正確に言うならば、行くのは行くのだが、どうすればいいか分からなかった。初めて彼女ができて、どう接すればいいか分からない。ただ、1つだけ思うのは、付き合って欲しいって自分自身に好意を伝えてくれたからには全力で、応えてあげたいって思った。
でも、どうすれば碧海さんが喜んでくれるかな。
「なーに考えてんの?れんれん!」
「うぉっ?!」
色々巡らせていたら、後ろから背中を思いっきり突き飛ばされた。
「いってぇ...何すんだよ!優乃!」
で、突き飛ばしてきたこの小動物みたいなやつは、一柳 優乃(ひとつやなぎ ゆの)で、俺の数少ない女友達。小中は別だけど、家が近くて昔から遊んでるから仲はいい。ただ、こんな風にちょっかい出してくるのがめんどくさい。優乃とは、クラスは違うけど優乃持ち前の明るさが生きてるようで、友人が沢山いるのは史家から聞いた。明るさで惹き付けるというのもあると思うけど、やはり容姿端麗だって言うのもある。碧海さんみたいに清楚とは違ってガッツリスポーツをやっている。日に焼けていて、でもモデルのようなスタイルの良さ、背は碧海さんよりかは大きいけど差ほど変わらない。The陽キャみたいなやつだ。かなり、モテるらしい。...これも史家から聞いた。
「...ん....れん...れんれん!聞いてる!?まぁた変なこと考えてたでしょ!」
「あ、あぁ悪い。ちょっと優乃...じゃなくて学校のことで。」
あぶない考えてたことがバレるーーー
「何?わたしのこと?そんなん考えてたりするから彼女の一人もできないんだよー!」
スクールバッグを振り回しながら、そんなことを言ってきた。
「あー。俺、彼女出来たんだよね。」
「またまたー。冗談でしょ?」
「いや、本当だけど」
・・・・・・・ドサッ
あ、言っちゃった....大丈夫かな、、碧海さんに怒られないかな...ってあれ?
「優乃?お~いゆーのー?」
優乃のカバンが手から滑り落ちて優乃自身が固まっている。
「えぇぇぇ?!れんれんに彼女ぉぉぉぉ?!」
正気に戻った(?)と思えば、窓ガラスが割れるんじゃないかってくらいの声量で叫んでいた。まあ、それだから彼女ができないとかって言ってたし....びっくりしたんだろうな。
「なんでなんで?!どうして?どうやって口説いたの?!相手は誰?!どこで知り合ったのー?!」
君の一時と、僕の永遠