追伸 ・・・野蛮人へ・・・


野蛮人は言う。
我々は自らの手で民主化を勝ち取れなかった。自らの手で自由を勝ち取って居ない。
今日の政治を招いたのは国民ひとりひとりによるものらしい。

だが野蛮人はわからない。
我々が勝ち取るべきは主権でも自由でもない。
景勝であり、理智であり、人命である。

野蛮人は知って居る。この世の頂点に居るのは手足が長く見かけ上は肌の美しい者たちである。
崇めるよりも、見上げて居る。高いねえ。キレイだねえ。スゴイねえ。
然うその美しい者たちはもう既に持って居る。
世界中から潜在的に憧れを抱かれて、心の底では美しいと認められ、政治経済文化とすべてで中心に立つ。その状況はもはや「美」だった。
そして世界と世界の仕組みを知ろうとしても学ぼうとしてもそれは飽く迄、「自分達が如何に世界の中心に居て優位な存在であるか」を確認する只の作業に過ぎなかった。
世界中の命を救おうとしてもそれは「自分達が優位に立って居る」という壮大な保険があってのことであり、自分達の優位性を以て然うではない者たちを救ってやろうとする文明を挙げての伝統だった。

我々の中でもどこの誰でも優越感を感じようとする感覚はあることだろう。
しかし実態が追いつかない。我々は今、とても美しいとは思えない。
街のどこを切り取っても美しくない。
ペラペラの家でそれらしく暮らして居る。
豪邸の前に電柱がある。
歴史ある町に電柱がある。
歴史あるものが点在して居て全く線で結ばれて居ない。
都心の傍に蜘蛛の巣が張る。
闇市あがりの市場が残る。
エッフェル塔の安いパクリが首都の目印になって居る。
支配者からそれとなく授かったコンビニが何時の間にか我々の顔になる。
手足の長さに合せてまでスーツを着て、ジーンズを穿く。
いい歳をした大人の女性が安い踊りを見せびらかしてる。
いい歳をした小学生らが運動会で踊らされてる。
いい歳をした政治家たちが打ち合せ通り原稿を読み合うだけの議論ごっこに満足して居る。
嘗て運動会や生徒会で活躍した子供たちが選挙ごっこで満足気になる。
支配者から借りたカタカナを世界中の人達が使ってると信じて使いこなしてる。
イイモノよりも安いモノを追い求めてる。
落ち込む消費を「貧しい」と言って、自分達が何をしても意味がないように斜に構えてる。
自分の価値を知りもしないで、誰かを引き摺り降ろそうとする。

だが我々は自分達の手で勝ち取ることができる。
景勝を、理智を、人命を。
優位に立って居る者は自分達の手で勝ち取ることはできやしない。
もう既に持って居る。
我々は然うではない。
そして我々は嘲笑される。
世界を支配してるわけでもないが我々よりは手足が長く顔が整って居る者たちも皆、心の底では我々のことを嘲笑ってる。
「東アジア人」よりはマシだ。
潜在的に底辺に居る。
そしてそれはどれも何も、我々自身の所為ではない。
そして驕りたかぶる者たちもまた、然うなりたくてなったのでもない。はじめから然うなのだから責任なんて取りようもない。
世界を変えるのは我々の方だ。
そして変わるのは我々の方だ。
大きな説や理論ではなく日常で目に入る身近な景色や情報が自分達を下らなくしてる。
その一つ一つを美しくして克服するのだ。
そこから始まり、それがすべてだ。
我々が野蛮なのではない。
お前が野蛮人なのだ!
心しておけ。思い知るべし。
だが荒ぶるな。冷やかなように睨みつけろ。
誰かを思い知らせてやろうとするな。
思い知らされるのは常に何時もお前の方だ。
お前の価値をお前自身が思い知るのだ。
自分が野蛮か、お前自身が判断するな。
心してゆけ。思い知るべし。
さあ野蛮人。幸あるがよい。

追伸 ・・・野蛮人へ・・・

追伸 ・・・野蛮人へ・・・

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-29

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