zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ89~93

これにて本編は終了です。この後も番外編のサブエピソードを投稿致します。
※作中の変なコーヒーおじさんは作者が数年前に実際に遭遇した変なおじさんをモデルにしております。

エピ89・90

不思議な城

次に辿り着いた風景は再度、ネクロゴンドの洞窟……、サマンオサの
城の牢獄……、そして……。
 
「お?今度は何だ、何だい?」
 
「何だか……、随分賑やかね……」
 
「ピキーッ!」
 
「ん?スライム?何で、んなとこに……」
 
突然、ジャミル達の前にぴょんとスライムが躍り出る。
 
「君たちも試合に出るの?頑張ってね!」
 
スライムはそれだけ言うと、ぴょんぴょん跳ねて何処かへ
去って行った。
 
「何だ、あいつ?……試合……?何言って……」
 
しかし、4人は直後、試合の意味を理解する事に……。
 
 
「やれーやれー!負けんなよーっ!!」
 
 
「此処……、か、格闘場……?」
 
ダウドが首を傾げた……。しかし、スタンドにいるのは皆、通常と逆で、
客の方がモンスターの方であった……。そして、何故か4人がモンスター
格闘場のコロシアムの中央にいるのである。
 
「はあ!?つう、事は……、俺らの方が金掛けられてんの?俺達……、
マジで?」
 
 
「おめえ、バカだなあ、絶対にあんな糞共、勝てる訳ねえだろうが!」
 
「何言ってんだ、だからこそ大穴狙いなんだろうが!おい、倍率、
99999・9だぞ!」
 
 
観客のモンスター達の会話がジャミル達の耳に入ってくる。
 
「うわあ……」
 
「すっげー、舐められてる……、んなろ……」
 
と、其処へ敵側のゲートが開き、相手のモンスターが入場してくる。
 
「……バ、バラモスっ!!バラモスだよっ!!あううー!!」
 
「ダ、ダウド……、落ち着いて……、首絞めないでよ……、苦しいよ……」
 
「あううーー!ごめんちゃぼーー!」
 
錯乱したダウドがアルベルトに飛びつく。これではまるで味方同士で
争っている様な光景にも見えてしまう。
 
「きゃあっ!?こっちはトロルだわっ!!」
 
「色違いだから……、相当手強いのは分るね……」
 
ダウドに絞められた首を押さえながらアルベルトがぼやく。
 
「ちくしょう、舐めやがって、……いてこましたるわ、
今の俺達じゃ、あんなもん屁でもねえんだぞ……」
 
「待って、ジャミルっ!確かに僕らでも余裕で勝てるのは
分るけど、そうしたら……、奴らに大量の金が入る事になるんだよ、
悔しくないかい!?」
 
「でも、……何でモンスターがお金使うのさあ……」
 
「おーい、蝿共ー!!負けんじゃねーぞっ!!こっちは有り金叩いて
全部てめーらに注ぎ込んでんだからよー!!負けたらぶっ殺すぞー!!」
 
「うるせーな、バカ野郎!!確かに……、むかつくな……、畜生……」
 
「……とにかく落ち着いて、冷静さを保とうよ……」
 
「ねえ、あそこに階段があるけど……」
 
アイシャが指差した方向に……、もう次の場所へワープ出来るであろう、
階段が見えている。
 
「逃げようよおー!ねーっ!早くチビちゃんの所に行かなくちゃ!!」
 
「よし、……仕方ねえ、階段まで一気に走るぞ……!!」
 
「ちょっと待って……!!お土産を置いて行こう、……イオナズンっ!!」
 
 
「……ぎゃあああああーーっ!!」
 
 
アルベルトの放ったイオナズンがスタンドのモンスター観客もろとも
巻き込み、格闘場は大爆発し、大騒ぎになる……。
 
「うふふふ♡はあ~、久々にすっきりした……、ざまあみろ……、よ、よし、
行こうっ!!」
 
「……アル、お前ってさあ……」
 
「ん?何だい、ジャミル」
 
「何でもねえよ……、行こう……」
 
ジャミル達は格闘場が混乱している最中に次の場へと逃げるので
あった……。
 
「はあ、何かすっきりしねえ、胸糞わりィ……、ブツブツ、
ブツブツ……」
 
「そう?僕はすかっとしたけどね……」
 
「お前、ただ暴れたかっただけだろうが……」
 
「そんな事ないよっ!ねえ、皆!」
 
「う、うん……」
 
「アルったら……、ご機嫌だわ……」
 
「~♪」
 
 
階段の先はポルトガの灯台の様な場所であり、そこを通り抜けた先は
お城であった。
 
「……ハア、次は何処だよ?」
 
「お城の中みたいだよお!……洞窟は抜けたんだねえ、良かった~!」
 
ダウドが喜んで燥ぎ回るが、アルベルトが注意する。
 
「油断しては駄目だよ、……敵の城かもしれないんだからね!」
 
「でも、全然雰囲気が違うわ、ほら、綺麗なお花!」
 
アイシャが城内に植えてある花を見て喜んでいる。確かに、場所の感じから
して此処はモンスターとは無縁の場所の様である。其処へ、4人の前に丸々と
肥えた王様が、のしのしと姿を現す。
 
「よくぞ、参った、儂はこの城の主、ゼニス一世であるぞ、そなた達は
下界から神竜に会いに、わざわざ参ったのであろう?」
 
「あっ、……国王様でしたか、初めまして……、僕らは世界中を
旅しております……、あそこにいる、……一応、勇者と……、
その連れです……」
 
アルベルトが頭を下げると、アイシャとダウドも挨拶した。
 
「……おい、一応とはなんだっ!一応とはよ!!」
 
「あの……、国王様……?神竜って……、もしかして……、
どんな願いも叶えてくれるって言う……」
 
アイシャが聞くと、ゼニスは丸っこい顔で笑顔を見せながら答える。
 
「この城を抜けた先の塔の最上階に住んでいる、……神竜は
手強いぞ……、神竜と戦い、勝利した者だけが褒美を得られる、
それでも行くのか……?」
 
「下の世界で聞いたあれか……、けど……、今は願い事よりも、
ちょっと、あんたに聞きたい事があるんだよ……」
 
「ふむ?」
 
ジャミルが訪ねると、ゼニスは不思議そうな顔をした。
 
「俺達の前に……、この城に誰か来なかったかい?」
 
「そう言えば……、真っ白い小さなドラゴンが……、この城を通って、
ぽてぽてと塔に向かって行った様じゃが……、何だかあまり元気が
なかった様じゃったぞ」
 
「チビちゃんだよお!……それじゃチビちゃんは神竜の所に行ったんだあ!
でも、どうして……?分かんないよおお……」
 
「それを確める為にも……、この先の塔に行かなきゃな……、
もしかしたら、チビは神竜に捕まってるって事もあり得る、
だとしたら、神竜と戦ってでもチビを助けなきゃ……」
 
「そうか、……理由は分らぬが……、神竜の所まで辿り着くまでにも
強力なモンスターが塔には潜んでおる、くれぐれも気を付けてな……」
 
ジャミル達はゼニスに礼を言い、塔へ向かおうとした、その時……。
 
「お久しぶりです……、勇者さん達……」
 
「?あ、あんた、確か、詩人だっけ……?」
 
旅先先で出会った、不思議な被り物の詩人が……、再びジャミル達の前に現れた。
 
「等々、あなた達も此処まで辿り着いたのですね……、お見事です……」
 
「ハア……、それはいいけど……、あんた、何で此処に……?」
 
神出鬼没の詩人にジャミル達は首を傾げ、目をパチクリさせる。
 
「……私は旅の案内人です、正体を明かす事は出来ません」
 
詩人はそう言うと、ウインクし、自身の指を口に当てた
 
「はああ……?」
 
「ですが、冒険に終わりはありません、これからもどうか、
色々な所を旅し、世界の謎を解き明かして下さい……」
 
詩人はそう言うと、ダウドに賢者の石を握らせた。
 
「これって……、貰っていいの……?」
 
「……神竜は本当に生半可ではありませんよ、覚悟して臨む事です……、
それではいつか又お会いする日まで……、ごきげんよう……」
 
詩人はジャミル達に頭を下げ、何処かへ姿を消した……。
 
「行っちまった……」
 
「でも、ラッキーだったね、これで賢者の石が二つになったよ…、
はい……」
 
ダウドは喜んで、詩人がくれたもう1個の賢者の石をアイシャに手渡す。
 
「有難う、ダウド、これがもう一つあるだけでも何だか心強いわね、
私もこれで回復の方にも回れるわ!」
 
「えへへ、ちょっとだけ気が楽になったよお!」
 
「けれど、それだけ……、神竜の力は半端じゃないって事だよ、
ダウド……」
 
「あうあううう~……、うええ……」
 
「俺達もこの先……、どうなるか分かんねーけど、
とにかく行こうや、チビを取り返しにな!」
 
仲間達は静かに頷く。4人は神竜の塔へと続くであろう、
階段に向かって歩き出した、が……。
 
「ちょいと、ちょいと!其処行くお兄さん達!」
 
「あ?ああ……?」
 
今度は、謎の鍋を持った変なおばさんがこちらに走って来た。
鍋の蓋からは物凄い湯気が吹き出ている……。
 
「神竜の所へ行くんだろう?なら、このシチューを食べていきな!」
 
おばさんは鍋の蓋を開けて、ぐつぐつ煮え立った見るからに
熱そうなシチューを4人に見せる。
 
「へえ、美味そうだなあ……、でも、何で?」
 
「神竜と戦う前の、薬みたいなもんだよ!」
 
(どうも、このおばさん、誰かに似ている様な気がするんだけど、
……気の所為かな……)
 
「俺、丁度腹減ってるし、貰うよっ!」
 
「あ、ジャミル……」
 
アルベルトが止めようとするが、既にジャミルはスプーンで
シチューを一口、口に入れてしまっていた。
 
「……あ、ああああああっ……、つううううううううーーー
いいいいーーー!!」
 
「やっぱり……」
 
「ジャ、ジャミルっ……!大丈夫!?」
 
アイシャが心配してジャミルに声を掛けるが、ジャミルは舌を大火傷した
様であり、それ処ではない状態であった……。
 
「あーっはっはっはっ!やっぱり、若い子をからかうと
楽しいねえー!」
 
(そうだ、……どうも誰かに雰囲気が似ていると思ったけど、ルザミの
変なおばさんだ……)
 
「もう、ホントに食い意地が張ると、碌な事ないよね……、早く
チビちゃんの所に行かなきゃなんないのにさあ~……」
 
「……う、ひゃひゃい、ばふゃふぁでゅふぉ……、こんひょ、
くひょばひゃああ……」
 
もはや、何語だか意味不明である。
 
「多分、……う、うるさい、バカダウド……、こんの、クソババア……、
と、申しております、以上、オイラ、ダウドの副音声でした……」
 
 
 
「……」
 
「ぴ?神竜さん、どうしたの……?」
 
「どうやら何者かがこの塔に向けて足を進めておるようだ……、
又我の力を求めて来たか……、ならばこちらもバリケードを
張らせて貰おう……」
 
(……来てくれたのが……、ジャミル達だったらいいのにな……、
だ、駄目っ!!もう、皆の事は忘れなくちゃ……、甘えちゃ駄目、
きゅぴ……)


待ち受ける者のその先へ……

ジャミル達はいよいよ塔の内部へと足を踏み入れる。もしもチビが
捕らわれの身ならば、相手が神竜であろうと、必ず、……絶対にチビを
取り戻す、そう思いながら……。
 
「もうすぐだわ……、この先にチビちゃんがいるのかしら……」
 
「ぜ、絶対に皆で離れない様にしようね、……うわっ!?」
 
「!きゃあっ!?えっち!ダウドったらっ!何してるのよっ!!」
 
……何かに躓いて転がったらしく、ダウドの前を歩いていた
アイシャのお尻にぼすんとダウドがぶつかった。
 
「あ、えへへ、ご、ごめん……、わざとじゃないんだよおお~……、
柔らかいなああ~……」
 
謝りつつ、ダウドは嬉しそうな顔をする。
 
「もうっ、……気を付けてよね……」
 
「はあーい!」
 
(絶対、わざとだ……、あの野郎……、ふざけたスケベヅラ
しやがって……)
 
腕を組んでダウドを睨み、ジャミルがブン剥れてみる。
 
「ん?どうした、アル……、またその顔はよ……」
 
ジャミルがアルベルトの顔を覗くと、いつもの如く、アルベルトの眉間に
皺が寄っている……。
 
「地響きが……、する……」
 
「平気だよ、どうせいつもの動く大仏だろ!」
 
「……石像だよ……、この塔はモンスター危険ランクなんだから、
動く石像、それ以上の……」
 
「うわあああっ!」
 
「!!」
 
ダウドがすっ飛びあがり、ジャミルの後ろに隠れる……。ジャミル、
アイシャ、アルベルトの3人は現われたモンスターに戦闘態勢をとった。
 
「……我はこの塔の守護神、天の門番……、侵入者は排除する……」
 
動く石像の色違いはそう言い、地を踏んだ。と、衝撃でジャミルの
後ろに隠れていたダウドが仰向けでひっくり返り、後ろに倒れた。
 
「何やってんだよ、お前は……」
 
「ああう~、痛いよおー……」
 
「此処を通してよっ、チビちゃんの所に行くんだからっ!」
 
勇ましく、アイシャが率先して天の門番の前に出る。続いてジャミルと
アルベルトも前に出た。
 
「……えーいっ!食らいなさいっ!メラゾーマっ!!」
 
しかし、巨大な身体に似合わず、天の門番は動きが機敏であり、
アイシャの詠唱よりも素早く、アイシャに向け拳を繰り出した。
 
「……えっ!?きゃあっ!いやーん!!」
 
アイシャはウサギの様にぴょんと慌てて飛び跳ね、拳を避ける。
 
「アイシャ、下がってろ、俺達がやる!」
 
ジャミルがアイシャを後ろに下がらせ、アルベルトも草薙の剣を構える。
 
「あの、オイラは……、どうしたら……」
 
「ダウド、私と一緒に賢者の石で二人を回復援護よ、サポートしましょ!」
 
「あ、うん……」
 
武器攻撃とは言っても、アルベルトはあまり力がある訳ではないので、
やはり攻撃メインはジャミルに頼り、任せるしかないのであった……。
 
「……会心の一撃っ!!」
 
「……お、おのれ!小僧めが……!!」
 
ジャミルに斬られた天の門番が、物凄い音を立て、その場に倒れ、
身体が崩れる……。
 
「はあ~、しんどいなあ……、運良くクリティカルも出たし、一匹だけ
だったから、よかっ……」
 
「あうううーーっ!!」
 
「きゃあーーっ!!」
 
周りを見ると……、ジャミル達は……、いつの間にか天の門番達に
囲まれていた……。
 
「おいおい、冗談じゃねえぞ、幾ら何でもこんなにいたら……、っ!?」
 
「出て行け、……侵入者めが……」
 
「!?ほ、ほぎーーっ!!」
 
「ジャミル!!」
 
天の門番の一匹がジャミルの頭を掴んで鷲掴みし、思い切り身体ごと
床に叩き付けた。
 
「次は……、お前だ……」
 
「えっ!い、やだやだやだーっ!!やめてよおおおー!!」
 
別の天の門番が、今度は逃げ回るダウドを捕まえて後ろ髪を乱暴に
掴むと、力いっぱいほおり投げ、同じく床に叩き付ける……。
 
「う……、畜生……、ざけんなこの野郎ーーっ!!」
 
「……おおっ!!」
 
切れたジャミルが後ろから天の門番へ、思い切り跳び蹴りを噛ました。
 
「……何をする、小賢しいハエめ!!」
 
蹴られた首の後ろを摩りながら天の門番が激怒し、他の天の門番達も
側に集まって固まり、巨体集団が4人を睨み、再び取り囲む。
 
「あうーっ!ジャミルーっ!!」
 
ダウドが慌てて起き上がるが、顔面から叩き付けられた為、その顔からは
鼻血が出ていた。
 
「駄目だよ、……この数を相手にしていたら……、とてもじゃないけど……、
神竜の所まで辿り着けないよ、いや……、辿り着けたとしても……、
本番では真面に戦えないよ……、僕ら、此処ではLVが低すぎるんだよ……」
 
はあはあ息を切らしながら、悔しそうにアルベルトがジャミルに
話し掛ける……。
 
「やっぱり、まだまだ俺達、力不足だな……、悔しいけど……、
今はどうにもなんねえ……、上には上がいるってこった……」
 
口から滲み出る血を拭きながら、ジャミルも天の門番集団を睨み返した。
 
「!ま、また!別のモンスターよっ!」
 
「何っ!?」
 
……今度は金と白色に輝く美しい鳥、鳳凰が突如出現し、
天の門番にべホマラーを掛け、傷を癒してしまう……。
 
「余計な事すんじゃねえよ!アホッ!!」
 
更に天の門番軍団は増殖し……、あっという間にジャミル達を塔の
外際へと追い詰める。
 
「くそっ、このままじゃ……、下に落とされちまう……」
 
「思い切って、このまま下に飛び降りて逃げようよおー!
下はゼニス王のお城だよ!い、一旦此処から……!」
 
ダウドは慌て手をバタバタさせ、平泳ぎポーズで宙を掻いて下に
飛び降りようとする……。
 
「……バカっ!今逃げたって同じだよ!何とか突破するんだっ!」
 
「だ、だってええ~……、ううう……」
 
「アル……、確かまだ……、祈りの指輪残ってたっけか?」
 
「うん、ダウドの道具袋の中に……、追加で手に入ったのが
何個かあるよね?」
 
「あるにはあるけど……、どうするの?」
 
「……ギガデイン強行突破だ!……後のフォローは頼むな……」
 
「駄目よっ、ジャミルっ!!又そんな無茶しないで!!」
 
アイシャが止めようとするが、ジャミルはもう詠唱を
始めていた。
 
「連発するぞ、……倒せても倒せなくても……、此処を一気に
駆け抜ける!!」
 
「分った……、皆!!」
 
アルベルトがアイシャとダウドの方を見た……。
 
「……うん、信じるわ……、ジャミル……」
 
「あうう~……」
 
「よしっ!……食らえーーーっ!!ばっきゃろーーーっ!!」
 
「何だっ!?う、おおおおーーっ!?」
 
ジャミルのギガデイン暴走に巻き込まれ、天の門番達は慌てふためき、
その場はパニック状態になる……。
 
「……今だっ!!走って!!」
 
アルベルトが皆に合図をし、4人は只管、必死で走って走りまくり……、
命からがら、上の階へと逃走に成功する……。
 
 
「……はあー、何とか逃げ切ったねえー、でも、まだ、この先……、
塔の最上階までちゃんとたどり着けるのかなあー、オイラ達……」
 
「ジャミル……、大丈夫!?しっかりして!ほら、祈りの指輪と
オレンジジュースよ!!」
 
まるで顔が汚れて力が出ない状態のジャミル。、アイシャが必死で
どうか指輪が壊れない様に祈りながら、MPを回復させ、献血後の如く、
ジュースをジャミルに飲ませる……。
 
「ふにゃ~……、やっぱ連発きついわ~……、これでも真面に
倒せねーんだからな……、神竜戦なんかどうなるんだよ……、
はあ……」
 
「でも……、頑張らなくちゃ……、チビの為にも、僕らは……」
 
「……チビ、そうだ……、チビ……、うっ……」
 
疲れて荒呼吸していたジャミルが立ち上がった……。
 
「行こう、こんなとこでモタモタしてらんねえ……、早く家出アホ
ドラゴンを捕まえにいかねえとな……」
 
「……ジャミル、大丈夫なの……?」
 
「ああ……」
 
アイシャの言葉に頷き、ジャミルが立ち上がり、再び先頭を歩き出す……。
 
が、その後も……、数歩歩いて、凶悪モンスターが出現する為……、
最悪の状況と化し、その都度、4人は危機に扮する……。
 
「んだよ!このエンカウントの高さはよっ!動けねーじゃねーかっ!!」
 
「あああー!やっぱり……、無理だよおお~、うう~……」
 
「でも……、新・〇太〇伝説よりはマシだと思うんだ……、
あれは酷かったよ……、一歩動く事に……、ブツブツ……」
 
急にしゃがみ込み、膝を顔に埋め、何かが乗り移った様にアルベルトが
モソモソと喋りはじめた。
 
「ジャミル、アルが何だかおかしいわ!!」
 
「……疲れて壊れたかな……、おい、アル!!」
 
「ん?な、何……?」
 
「はあ……」
 
上手く突破口を開けないまま、4人が疲れて座っていると……。
 
「……?誰か歩いてくるよ!!」
 
「はあ?俺達以外に……?こんなとこへ……?誰が……!?」
 
「……あー、まずい、まずいなあ、このコーヒー……」
 
此方へ歩いて来たのは……、丈が足元まである、やたらと
長いコートを羽織った変なおっさんだった……。
 
「おい、あんた!一般人がこんな所で何してんだよ!危ねえな!!」
 
ジャミルがおっさんに声を掛けると、おっさんはきょとんとした顔で
ジャミル達を見た。
 
「おじさんはコーヒーが大好きでね、美味しいコーヒーが飲みたくて、
神竜の所まで行ってコーヒーを貰って来たんだよ」
 
「……はあああ!?」
 
訳が解らない展開に……、4人は揃って声を張り上げる……。
 
「だけどね、折角、神竜にコーヒーを貰ったのに……、これが
とてつもなくまずかったんだよ……、とほほ~、神竜に頼んでも
駄目なんて……、究極の美味しいコーヒーは一体何処にあるんだろう……」
 
「……」
 
おっさんはとぼとぼと、ジャミル達の横を通り過ぎようとする……。
 
「おい、あんた……、ちょっと突っ込みたい事がありありなんだけどよ……」
 
「何だい?」
 
「どうやって、神竜のとこまで行ったんだよ……、第一……、
戦わないと願いを叶えてくんねんじゃねえの……?道中のモンスター
とか、平気だったのか?」
 
「別に?おじさんは大丈夫だったよ、神竜さんもすぐにコーヒーをくれたよ、
……でも、美味しくなかったよ、残念だよ……」
 
「……」
 
他にも突っ込みたい事が山程だったのだが……、ジャミル達はそれ以上
何も言えず……、おっさんの後ろ姿をただ黙って見送った……。
 
「要するに……、神竜は僕らだけを徹底的に排除したいんだね……、
そう思う事にしよう……」
 
「何だか納得いかないわ……」
 
「何か腹立ってきた……、よーし、神竜の野郎……、そっちが
その気なら……、こっちも徹底的にやってやらあ、……ふざけやがって、
んなろ……」
 
疲れ気味のジャミルに、再び闘志が燃えてきた様であった……。

エピ91・92

チビ、今度はツッパリになる……

4人は何とか強敵の目を掻い潜り、等々、塔の4階まで来たが……。
 
「あーっ!もうやだやだやだーっ!!これで神竜に負けたら俺ら
もうお終いだーっ!!」
 
疲れてもう嫌になってしまったのか、ジャミルが子供の様に
駄々を捏ねる。
 
「……ジャミル、静かにしなよ、折角此処まで来たんだから、
もう少しじゃないか……」
 
「何も戦わなくたっていいじゃない、……何とか神竜さんと
話し合いをして……、チビちゃんだけでも返して貰えれば……、ね?」
 
「チビを返して貰うのに、戦わなきゃならなかったらどうすんだよ、
相手は神竜だぞ、そんな話し合いに応じる奴じゃねえだろ……」
 
「でも、それは……」
 
「アイシャもジャミルも落ちつこ?ほら、宝箱があったよお」
 
ダウドが宝箱を見つけて持って来る。
 
「宝箱だと……?」
 
「何かしら!」
 
「何だろう……?」
 
少しでも気分を変えようと、4人は宝箱を覗く。
 
「……何だこら?て、鉄球……?」
 
「武器だね、凄いね……、これは物凄く攻撃力が高そうだね……」
 
「よし、アル!これはお前が装備しろ!」
 
「はあ?な、何で僕が……、こんな重いの僕には無理だよ!」
 
「いーや、誤魔化すな!これはお前用だ、しらばっくれても
駄目だぞ!俺にはわかんだよ!話の都合とはいえ、いい加減もう
草薙の剣じゃしんどいだろ!早く装備し……、プ、ププ……、
ぎゃはははは!」
 
……何か想像したのか、ジャミルがゲラゲラ笑いだす。
 
「ジャミル……、何考えてんの……?んー?僕と鉄球魔人
重ね合わせて変な想像しただろ……?それに、僕は出来れば
やっぱり、武器より魔法中心で戦いたいから……、お構いなく……」
 
アルベルトがジャミルの頭を拳でぐりぐりする……。
 
「いてて!いてててて!やめろこの、シスコンっ!腹黒っ!!」
 
「……こんな所でっ、二人ともやめなさいっ!!」
 
「そ、そうだ、アイシャ……、君が使えばいいよ、ジャミルと
喧嘩した時にでも……」
 
皺寄せがアイシャにも回ってくる……。
 
「ひ、ひっどーい!……アルったら!!私をそんな目で見てたのっ!?
私を女子プロレスラーか何かと勘違いしてない!?あんまりだわっ!
きーーっ!!」
 
「い、いや、その……、あの……」
 
「その通りだろ……」
 
「何ですってえーっ!……ジャミルっ、もう一回言ってみなさいよっ!!」
 
喧嘩にアイシャも乱入し、ダウドはレフリーと化し、辺りは大騒ぎになる……。
結局、この破壊の鉄球は武器の中でもほぼ最強の部類に入るのだが、
……喧嘩の火種になった為、4人はそのまま破壊の鉄球を放置し、
先へと進んだ。
 
 
そして、……ついにジャミル達は神竜とチビのいる最上階へ……。
 
「……いよいよ侵入者が来たか……、やれやれ、我が排除するのか……」
 
「きゅぴ……?」
 
「……神竜っ!!出て来い、コラ!!ウチのチビを返して貰うかんな!!」
 
「きゅ、きゅぴっ……!ジャミル、……皆……!!」
 
「チビ……」
 
最上階まで現れた相手を見てチビは仰天するが……。
 
「……だ、駄目っ!!」
 
いつもの様に……、皆にすぐ、飛びつきたいのを堪え、……チビは
態度を一身させる。
 
「あ、あんた達、誰っ!?チビはあんた達なんか知らないっ!!
……違う、もう、チビはチビじゃないんだ、……我は聖竜なりっ!
此処から立ち去れよ、人間共っ!!」
 
「チビ……、どうしたんだい……?迎えに来たんだよ、皆で……、
帰ろう、一緒に……」
 
「チビちゃあーん、本当にどうしたのさあ……、此処まで来るの
本当に大変だったんだよお、でも、……チビちゃんに会いたいから……、
それでも頑張って……、オイラ達、やっと此処まで辿り着いたんだ
よおお……」
 
チビは、ボロボロで傷だらけの4人の姿をじっと見つめ、
目を潤ませる……。
 
「チビちゃん、……淋しい思いさせちゃって、本当にごめんね……、
ちゃんと話し合いましょ……?私、チビちゃんと、きちんとお話が
したくて、故郷に帰るのをやめて戻って来たのよ……」
 
「……きゅぴ、アル、ダウ、アイシャ……、……で、でも、駄目っ!
嫌っ、帰らないっ!!」
 
「チビ……、いい加減にしろ……!俺ら皆がどれだけお前の事心配したと
思ってんだよ!……急に何も言わずいなくなりやがって……、ファラも
アリアハンの町の皆も、揃ってお前の事、心配してんだぞっ!!一体何が
不満なんだよっ、ちゃんと言わねえと分かんねえだろっ!!」
 
「……不満なんかないよお、……でも、チビはもう……、
皆の所には戻れないよ……、だって、チビがいれば……」
 
ジャミル達に聞こえない様、チビが小さく声を出す……。
 
「待ってろっ、今、其処まで行……」
 
「きゅぴ!?ジャミルっ!だ、駄目っ!!来ちゃ駄目だよお!」
 
 
「……そのドラゴンに近寄るな……」
 
 
「!?うわーーっ!!」
 
神竜とチビのいる祭壇まで近づこうとしたジャミルを神竜が
波動で吹き飛ばした。
 
「あてて、くそっ……」
 
「ジャミルっ、大丈夫かい!?」
 
「ああ、俺は大丈夫、回復は平気だ……、けど、チビ……、何で、
……何で何だよ……、本当に俺らの事嫌になったのか?理由を
聞かせてくれよ……、じゃないと……、折角此処までお前を
連れ戻しに来たんだ……、悔しくて帰るに帰れねえだろ……」
 
「……違う、違うよお……、ジャミル……、チビは……、チビは……」
 
「そうだ、このドラゴンは聖なる力を秘めたドラゴンだ……、
聖竜は我の後継者となる為、この塔に我が導いたのだ……」
 
……言葉を詰まらせ、ちゃんと説明出来ないチビに代わり、
神竜がしゃしゃり出てて4人に説明する……。
 
「……何だと?チビが……お前の後継者に……?」
 
「うそお、チビちゃんが……、神竜の後を継ぐのお……?」
 
「チビ……、ちゃん……」
 
「チビ……」
 
「お前達人間とは次元が違うのだ、……こやつももう覚悟を決めた、
それを理解し、自ら進んで我の声に耳を傾け、此処に来たのだ」
 
「きゅぴ……」
 
「チビ、お前……、本当にそうなのか……?」
 
神竜からの衝撃の言葉に……ジャミル達はそれ以上、言葉が
出なくなってしまう……。
 
「ぴ……、皆もうお願い……、帰って……、これ以上皆と一緒にいたら……、
チビ、本当に……、……ぴいいーーーっ!!」
 
「!?」
 
「チビちゃんっ!!」
 
「チビ、……もうグレるよお、ぎゅぴ……」
 
チビは頭にグラサンとリーゼントで……、80年代、ツッパリ暴走族の
格好に身を変えた。額には、〔特攻〕……、のマークの鉢巻が……。
 
「チビ、もう今日から不良ドラゴンなの!……だから絶対、
皆の所には帰らないよっ!特攻隊に入るぎゅぴ!!」
 
「……チーービーーぃぃぃ……、お前なああ……!!」
 
「ぎゅっぴ!ぎゅっぴ!」
 
「ジャミル、怒らないで……、チビ、おいで……、ちゃんと話そう?
……僕達に悪い処があれば治すよ……、ちゃんと言ってごらん?」
 
「ぎゅ、ぎゅぴ……」
 
アルベルトの言葉に……、再びチビの心が揺らぐ……。
 
「チビちゃあーん!!オイラとも話し合いしようよおー!
……だから、こっち来てええーー!」
 
ダウドもメガホンでチビに必死に訴え、呼び掛ける……。
皆はどうしてもチビに帰って来て欲しいと願っている。
そんな4人の姿に、チビは尚も心を痛め続ける。
 
「……ダウう~……」
 
「チビちゃん、……お願い……」
 
「アイシャ……、きゅっ、きゅぴっ……、皆……、嫌いだよおおー!!
どうしてこんなにチビにまだ優しくするの!?チビ、不良に
なったんだよおー!!」
 
「……だったら、尚更お前を更生させねえとな、……死んでも
帰らねえよ、お前は俺達が卵から孵したんだ、……俺らはお前の
親なんだぞっ!!」
 
(孵した……だと……?ただの人間のこやつらが……?今まで
このドラゴンを育ててきたと言うのか……?まさか……)
 
「……ジャミルはすぐ怒るし、おならは臭いし……、アイシャは
野菜食べないと怖いし……、アルは本ばっか読んでて遊んでくれない
時があるし……、ダウはすぐいじけるし……、でも、でも……」
 
「でも、……何だ?」
 
「やっぱり、……皆……、大好きだよおお……、チビの大好きな……、
パパと、ママだもん……」
 
チビはそう言うと……、いつもの格好に姿を戻す……。
 
「……一緒にいたいよ……」
 
「チビ……、来いよっ!!」
 
「きゅ……、ぴ……」
 
堪えていたチビが遂に本音を漏らし……、皆の元に飛んで行こうと
した、その瞬間……。
 
「お前はもう決心が揺らいだのか……?……その人間達の未来が
どうなってもいい、構わないと言うのだな……?」
 
「……きゅぴいいいーーっ!!!」
 
「チビっ……!!」
 
神竜がチビを捕え、透明な石の塊を作ると、その中にチビを
閉じ込めてしまう……。
 
「お前がこれ以上、人間達と係れば、お前と係った全ての人間が
不幸になるのだぞ!」
 
「ぴ、ぴいい~、チビ、チビ……」
 
「……やっぱり……、チビに変な事吹き込んだのは、てめえ
だったのか……、チビ、安心しろよ!こいつの言う事なんか
気にすんなよ!分ったか!?」
 
「ジャミルううう……、みんな……、ごめんなさい……」
 
石に閉じ込められたまま……、チビが4人を見つめ、悲しそうな
顔をする……。
 
「でも、もうこれで……、遠慮なくチビを連れて行けるね……!」
 
「そうよ、……私達のチビちゃんに……、酷い嘘教えて
悲しませて……!あなたの本当の目的なんか知りたくないけど
絶対許さないわ!!」
 
「やっぱり……、大事な物は戦わないと……取り戻せないんだね……!」
 
「そう言うこった、……覚悟しとけよ、糞アホンダラ!何が何でも
お前からチビを取り戻すからな!!」
 
「フム……、やはり……、お前と係った所為でこの人間達の
不幸はもう始まっておるのだぞ、……可哀想にな……」


VS 神竜

ジャミル達4人と神竜はチビを巡って、互いに睨み合う……。
 
「我に本気で勝てると思っているのか……?愚かな……」
 
「最初から負けるなんて思ってたら何も出来やしねーんだよっ!
おい、皆、ちょっと……、作戦会議だ……、よう神竜、少し
時間を貰うぞ……」
 
「弱者の無駄な抵抗か……、まあ良い、好きにしろ……」
 
完全にコケにされ、ジャミルに更に怒りの闘志が沸いた。
……何が何でもこいつに絶対に勝ち、チビを連れて帰ると……。
 
「……で、どうするのさあ……」
 
ダウドが不安そうにジャミルに顔を寄せた。
 
「それなんだけど……、アルとアイシャは、確か、
モシャス使えたよな……?」
 
「う?うん……、覚えてるわ……」
 
「あまり使った事ないけどね……」
 
「……二人とも、俺になってくれや……」
 
「……え、ええーーっ!?」
 
アルベルトとアイシャが同時に揃って声を上げた……。
 
「い、嫌だよ……!」
 
「アルっ!速攻でストレートに言うなっつーの!」
 
「わ、私も……、だ、だって……、ジャミルになるのよ……?
……恥ずかしいじゃない……、えーと、ジャミルになるって事は……、
……きゃああーっ!!」
 
顔を真っ赤にして、アイシャも嫌々をする……。
 
「おいおい、何想像してんだよ……、これも作戦のうちなんだよ、
……チビを取り戻さなきゃ……、絶対、何としても……」
 
「そうなんだけど……」
 
「お前らは普通にMP多いだろ?だから、俺に変身してべホマズン、
ギガデイン連発して……、フォローしてくれればな……、と……」
 
「成程……、でもなあ……」
 
どうしてもアルベルトは気が乗らない顔をする……。
 
「アル、わ、私はやるわ……、チビちゃんを助ける為ですもの……、
頑張るわよ……!」
 
「……分った、アイシャがそこまで覚悟してるのなら……、
僕もやるよ……」
 
「覚悟って……、なんつー言い方だよ、たく……」
 
チビの為に……、アルベルトとアイシャも気持ちを決めた様であった。
 
「あの、オイラは……?」
 
「賢者の石で回復に回ってくれ、とにかく……」
 
「分ったよお……」
 
「よし、えーと、……ゴホン!」
 
ジャミルは咳払いをすると、もう一度神竜と向き合う。
 
「……モシャスっ!!」
 
アルベルトとアイシャが声を揃え、同時にジャミルの姿になる。
 
「……ほお、中々、手の込んだ事をするのだな……、
小賢しい……」
 
「うわ……、ジャミル増殖だあ……」
 
横で見ていたダウドがしかめっ面をする……。
 
「うるせー、バカダウド、黙れっ!!」
 
「はあ、何で僕がこんな……、はあ~……」
 
「……や、やっぱり、恥ずかしいわあー!きゃああーっ!!
もうお嫁に行けなーいっ!!」
 
アイシャが慌てて、おまたを押さえるポーズをとる……。
 
「よし、……いつでもいいぞ、掛ってこいや!」
 
ジャミルが神竜に挑発をすると、神竜も鼻を鳴らした。
 
「何を考えているのか知らんが……、全くお前達は命知らずだな、
……では、行くぞ……!!」
 
「こっちも行くぞーーっ!!……突撃ーーっ!!」
 
3人のジャミルが、神竜に突っ込んでいく……。
 
「……ギガデインっ!!」
 
「私もっ!ギガデインっ!!」
 
アルベルトとアイシャは惜しみなくギガデインを連発し、
神竜を押しまくる。
 
「……何だか、自分で実際使ってみると、あまりの凄さに
びっくりしてるよ……」
 
「本当ね……、凄い威力だわ……、手が痺れてるもの!」
 
「だろっ、だろっ!?」
 
「小癪な……、では、これでどうだ……?」
 
「……?あっ!!」
 
「元に戻っちゃったわ!」
 
神竜が凍てつく波動で二人に掛かっている補助魔法の効果を
解除したのだった……。
 
「んなろ……、むかつくな……」
 
「も、もう一度……!モシャス!!」
 
アルベルトはすぐさま、再びモシャスを唱えるが……。
 
「眠れ、小娘……!!」
 
「……?え、ええ……、あ……っ……」
 
「ああっ、アイシャがっ!眠っちゃったよお!」
 
神竜がカッとアイシャを睨みつけると、アイシャは一瞬で
眠ってしまった……。
 
「……おい、アイシャ、起きてくれよっ、頼むからさあ~!」
 
「……目覚ましなど掛けている暇はないぞっ!!」
 
「え?うぎゃあああああっ!!」
 
アイシャを起そうと隙を見せた処へ神竜が巨大な身体で
ジャミル達に圧し掛かり、一気に大ダメージを与え、4人は
神竜に潰され掛かる……。
 
「……ぐえええ……、重いい……」
 
「うう~、痛いよお~、か、回復しなきゃ……」
 
神竜に潰されそうになりながらも、何とかダウドが賢者の石で、
ダメージを回復する……。
 
「きゅぴ、皆……、もうチビの事は本当にいいよお……、
だから……、逃げて……」
 
「チビ、うっせーぞ、黙ってろ……、くそっ、今逃げたら、
何の為にマジで此処まで来たか分かんねーだろ?……大丈夫だ、
絶対勝つから、俺達を信じろ……」
 
そう言いながら、ジャミルがよろよろと立ち上がる……。
 
「ぴい~、……ジャミルう……」
 
やがてアイシャも目を覚まし、もう一度モシャスを掛け
ジャミルの姿になる。
 
「よくもやってくれたわねっ!えいっ、……べホマズン!!」
 
アイシャがべホマズンを唱え、瞬時に全員の傷ついた身体を全快させた。
 
「フバーバっ、スクルト!!」
 
「バイキルト!!」
 
「……無駄だと言っておるのだ!」
 
アイシャとアルベルトは、ありったけの補助呪文を掛け捲る。
が、神竜に悉く、魔法を解除されてしまう。その都度、魔法を
掛け直すのだが、その間に神竜は4人に容赦ない攻撃をバンバン
仕掛ける。
 
「あっ!?ま、また……!折角掛けた魔法を……」
 
「何度だってやるわよっ!……モシャスっ!!」
 
「愚か者めが!!」
 
神竜は4人に向かって噛み砕き攻撃をし、又一気に大ダメージを与え、
瞬く間に窮地に追い込む……。
 
「……ハア、……やっぱ、半端じゃねえなあ……、畜生……」
 
「もう、駄目だよお……、勝てないよ、……オイラ達じゃ……」
 
「……諦めちゃ駄目よ、ダウド……、信じるのよ、勝てるって、絶対に……」
 
「でも、幾らジャミルの姿になっても、短期でどうにかケリを
つけないと……、MPにも限りがあるし……、何とか……、くっ……」
 
「……どうだ?自分達の無力さを思い知ったか?このまま大人しく
撤退すると言うなら、此処で許してやってもよいぞ……?」
 
「……うっ、うるせーーっ!……黙れこんにゃろーーっ!!」
 
「!?こ、小僧……!!くっ!!」
 
ジャミルも負けじと無我夢中で神竜に突っ掛り王者の剣で
大ダメージを与える。間を逃さず、アルベルトとアイシャも
再びモシャスでジャミルになりギガディンを連発する。
 
「……はあっ、いい加減に倒れてくれよ、頼むからさ……」
 
「諦めろと言っておるのだ!しつこい奴らめ!!」
 
神竜は4度目の凍てつく波動をアルベルト達に掛け、
又も魔法を解除されてしまった……。
 
「……ああっ、ま、また……、くっ!どうしたら……」
 
流石に疲れが来たのか、アルベルトも少し弱気な態度を見せ始める。
 
「あいつのHPも、もう大分減ってる筈だ……、……もう
モシャスはいいよ、お前らのありったけの魔法をあいつに
ぶつけてくれ、俺が突破口を開く……!!」
 
「うん、……もうこれで終わりにしてしまおう……!」
 
「……ええっ!」
 
「ダウドも……、最後まで回復頼んだぜ……!」
 
「う、うんっ!!」
 
(……こやつらのこの異常なしつこさと精神力……、
一体何がこいつらを奮い立たせていると言うのか……)
 
4人はもう一度、揃って神竜を睨んだ……。
 
「いくぞっ、これが俺達に残された最後のチャンスだ!
……やあああああっ!!」
 
「メラゾーマっ!!」
 
「イオラっ!!」
 
神竜に突っ込んでいくジャミルの後にアルベルトと
アイシャが持てる限りの魔法を神竜へと叩きこんだ。
ジャミル達にはもうMPが残っていない。……それでも……、
信じたかった。必ず勝てると……。そして、奇跡が起こる。
 
「お、おのれえええっ、……グ……アアアアアーーーっ!!」
 
「……ジャミルっ、やったよおお!会心の一撃だよおっ!」
 
ジャミルに止めの一撃で大ダメージを与えられた神竜は苦しみ、
遂にその場に倒れる……。
 
「頼む、頼むよ……、これで……」
 
「……ふざけおって、人間共め……」
 
しかし……、神竜はあっさりと立ち上がる……。先程、
死に物狂いでジャミル達が与えたダメージも……、まるで
何事も無かったかの様に……。
 
「ああっ……、嘘だろ……、マジか……?」
 
「もう、駄目だよ……、僕のMP……、も……」
 
力尽きたアルベルトもその場に崩れ落ちる……。
 
「……嫌、嫌よ……、これで終わりなの……?私達……、
負けたの……?……チビちゃん……」
 
……アイシャが涙目で石に閉じ込められたままの
チビの姿を見つめる……。
 
「……う、うわああ~ん!やだっ、いやだよおお~!
オイラ達……、こんなに頑張ったのに~!!いやだああーーっ!!」
 
……ダウドも悲しさと怒りがこみ上げ、悔し泣きで大号泣する……。
 
「ぴっ、や、やだ……、嫌だよおお~!チビも嫌だ……、
……きゅぴーーっ!!」
 
「何っ!?こ、これは……、何だと……!?」
 
チビが炎のブレスを吐き、自らを閉じ込めていた石を破壊する……。
そして神竜の前に立ち塞がったのであった……。
 
「チビっ……!!あぶねえよっ!逃げろっ!!」
 
「何のつもりだ……?聖竜よ……、我に刃向かうのか……?」
 
「きゅぴ……、神竜さん……、チビの大切な……、大好きな
パパとママをこれ以上傷つけたらチビも許さないよ……、
チビももう子供じゃないよ、……本気で戦うよ……」
 
「チビ……」
 
「チビちゃん……」
 
身体こそはまだ小さい物の……、もうチビの力は神竜と
互角に戦える程、気迫のオーラを放っているのが神竜には
分かっているのだった……。
 
「無駄な争いは避けるべきか……、やれやれ、我も疲れたわ……」
 
「ぴっ!?」
 
「……気持ちを抑えよ、聖竜、……そして、人間達よ……、
我の負けだ……」
 
「!?」
 
「え?えええええっ!?」
 
「どうして……、です……?」
 
「私達……、負けたんじゃ……」
 
神竜は4人に向け、オーラを放つ。すると4人の傷とMPが
忽ち全快した。
 
「神竜……」
 
「これはまあ、サービスと言うのか、我は不死身、……倒されても
何度でも蘇る……、確かにお前達はこの私のHPを0にした……、
事実上、力の面ではお前達が勝っていたのだ…」
 
「じゃ、じゃあ……、俺達……」
 
「……時間が掛かり過ぎだ……」
 
「……えっ!?」
 
ジャミル達4人は揃って声を揃えた……。
 
「我を倒したとしても……、短時間で決着を付けなければ完全な
勝利者とは認めん……、……もう一度修行して出直して来い……」
 
 
「「……がっちょーーーん!!」」
 
 
……4人は又揃って声を揃え、変顔になる……。
 
「だが、お前達のその嫌らしい、しつこさと根性は認めてやる……、
中々気に入ったぞ、人間にしてはな……」
 
「……嫌らしい……?しつこい……???」
 
ジャミルが不服そうな表情をする。
 
「聖竜よ……」
 
「きゅぴ……?」
 
そして、神竜がもう一度チビを見つめる……。
 
「本当に、この人間達が、お前を卵から孵し……、今まで
育てていたと言うのか……?」
 
「……そうだよお、……チビの側には、悲しい時も嬉しい時も……、
ずーっとずーっと……、大好きな皆が一緒にいてくれたんだよ?
いつも皆がチビを助けてくれて、支えてくれたの……」
 
チビが真剣な眼差しで神竜を見上げ、そして、ジャミル達の
方を振り返る。又、神竜もジャミル達の方を改めて見ると、
言葉を洩らした。
 
「……人間達よ……」
 
「……」

エピ93(本編最終回)

冒険は果てしなく

「……お前達は……、これからも本当にこの聖竜を守り……、
共に生きていく覚悟と自信があると言うのか……?」
 
「……も、勿論さ!な、皆!!」
 
ジャミルの答えに仲間達も強く頷いた。
 
「ふむ……、聖竜よ……」
 
「ぴいい……?」
 
「このまま此処に残り、我と共に暮らし、静かに下界を見守るか……、
それとも……、又下界に戻り、人間達と暮らすか……、それはお前に
任せよう……、どちらを選ぶとしてももう、我は何も口を出すまい……、
選んだ選択はお前の一生だ……」
 
「……そ、それって……、チビっ!」
 
「やったあ!神竜がチビちゃんに選択肢をくれたよおお!」
 
「チビちゃんっ!私達と一緒に帰れるのよっ!」
 
「チビ、おいで……、さあ……!!」
 
「……ぴいい……、でも……、チビと皆が一緒にいたら……、
きっとこの先も……、これからも……、いっぱいいっぱい……、
皆に迷惑掛けちゃうよお……」
 
「……チビっ!」
 
「きゅぴ……?」
 
ジャミルが腕組みをして、チビの前に立った。
 
「それ以上言ったら……、いいか?デコピン100発
お見舞いするぞ……?」
 
「いやっ、やっ、デコピン嫌っ!……びいい~、ジャミルの
バカっ!!」
 
「……じゃあ、来いよ、チビっ、ほらっ!!」
 
「……ぴ……、ぴいいーー!!」
 
チビはジャミルの胸に飛び込み、今度こそ本当に……、
帰りたかった大好きな皆の元に戻って来たのだった。
 
「びいっ、びいっ……、びいい~……」
 
「バカだな、お前は……、んとに、不良ドラゴンめ……」
 
「うふふ、チビちゃんたら……、こういう時は本当に赤ちゃんに
戻っちゃうのよね……」
 
「……うう、良かったよお~、チビちゃん……、オイラ達、何度も
何度も引き離されたけど……、これで本当にいつまでも一緒だね……、
ふふ……」
 
「さあ、僕らも戻ろう、……アリアハンの皆がチビを待っているよ……」
 
「……」
 
「あ、神竜……、色々と悪かったな……、俺達はこれで帰るよ……」
 
「人間達よ……」
 
神竜が去り際にもう一度ジャミル達に声を掛ける。
 
「あ?」
 
「これからも、聖竜の力を狙い……、何者かが狙って来るやもしれん……、
それ程、聖竜の力は重く……、避けられん宿命なのだ……」
 
「ああ……、それでも……、俺達は……」
 
「ぴいい……」
 
ふと、ジャミルとチビの目が合う……。
 
「……お前達なら……、大丈夫だな……」
 
「神竜……、俺達を……信じてくれるのか……?」
 
「きゅぴ、神竜さん……」
 
「しっかり、守ってやってくれ、頼むぞ……」
 
「ああっ!任せてくれよっ!!」
 
「それから、又我と相手をしたければいつでも挑戦を
受けて立つぞ、一度ゼニスの城まで来ればもう、いつでも
此処まで来れるであろう……」
 
「……と、言う事は……、ゼニスの城までは、ルーラで来れるんですね?」
 
アルベルトが訪ねると、神竜はそうだ、と頷いた。
 
「っしゃあ!んじゃあ、又来らあ!今度こそ制限時間内に
叩きのめしたるわ!」
 
「フン……、小生意気な……、その台詞そっくりそのまま返してやる……、
だから今日は早く帰れ……」
 
「へーい、帰るよーっ!んじゃ、またーっ!」
 
「全く……、つくづくおかしな奴らだ……、だがこの先……、奴らが
どれだけ成長するかそれも又、見物ではあるな……」
 
神竜はそう呟きながら、塔を去って行く4人の姿を見送った……。
 
 
そして、アリアハンの城では、その夜、ジャミル達4人とチビの
無事の帰還を祝い、盛大なパーティが行われた。テオドール国王も、
城の兵士達も、町の民も皆集まり、それは賑やかで楽しく明るい宴となった。
 
「それでは……、世界を2度も救ってくれた勇者、その仲間達……、そして、
聖なるドラゴンへ……、栄光を称える……!!」
 
「おおおーーっ!!」
 
国王の号令で、皆が一斉にグラスを掲げ、祝杯を上げた。
 
「何か、照れんなあ、へへ……」
 
「……だから、別に君は照れる玉じゃないんだからいいって、
前にも言ったでしょ……」
 
「はあ!?うるせーな!このシスコン!!」
 
「もうっ!やめなさいったらっ!!」
 
「んーっ、お肉うー、おいしいねえー、チビちゃん!」
 
「きゅっぴー!」
 
ダウドとチビは幸せそうに肉を頬張った。
 
「あっ、チビちゃんいたっ!ちょっとダウド、あたいにも
チビちゃん貸してよっ、皆が待ってんのよ、ほらほら!チビちゃん、
行こう!一緒にお相伴よっ!」
 
「ぴー?おしょーさん?」
 
「あ、あああ……、チビちゃ~ん、行っちゃったあ~……」
 
一緒に彼方此方回りたいらしく、ファラがチビを抱えて
連れて行ってしまった……。
 
「しっかし、チビは本当に引っ張りだこだなあ……」
 
「本当ね、明日から又忙しくなりそうね……、チビちゃん……」
 
「……これで本当に一区切りついたし……、僕も明日、ラーミアとまた、
一緒に旅に回ろうと思うんだ……」
 
「そうか、……アルは修行の旅か……、アイシャはどうするんだ……?」
 
「うん、私も今度こそ故郷に帰らなきゃ……、チビちゃんも、もう
大丈夫みたいだしね……」
 
「はあ、いよいよ、本当の凱旋だねえ……、アルもアイシャも……、
絶対又会おうね、約束だよお……」
 
「ダウドったら……、お肉食べながら泣かないでよ、もう……、
ほら……」
 
「うっ、このお肉……、しょっぱいよお……」
 
「ジャミルも頑張りなよ?早く伝説になれる様にさ……、
じゃないと……、ろっと!……の、称号貰えないよ……?」
 
「……な、何の称号だよ……、俺は、んなモンいらねーよ……」
 
「……ふふっ、ふふふっ……」
 
珍しくアルベルトが声を出して笑った。
 
「たく……、はあ、でも、まだ神竜だってちゃんと倒してねえんだし……、
まだまだやる事は沢山あんぞ?……だから……、お前ら絶対
又来いよ……?」
 
「アル、アイシャ……、また会えるよね……」
 
「……会いに来るわ、……絶対……」
 
「その日まで……、さよならだね……」
 
 
 
それから……、穏やかに時は流れ、又2年の歳月が流れた……。
 
 
「……ジャミルーーっ!いつまで寝てんのーーっ!!起きろーーっ!!」
 
「う、うわっ……!?」
 
又ファラにフライパンでブン殴られるのかと思い……、ジャミルが
慌てて飛び起きる。
 
「うん、宜しい……、ちゃんと起きたねっ!……今日は又お城に
呼ばれてるんでしょ?一体何なんだろうね?」
 
「……うーん、なーんか悪い予感しかしない……」
 
「何言ってんの、早く支度しなよ!」
 
「うう……、一番最初の頃を思い出すなあ~……」
 
「ジャミルー!支度出来たー?お城に行くんでしょー!早く、早くー!
……まーだ支度出来てないんだあー!」
 
「ぴいいー!」
 
支度を始めた頃、ダウドがチビを連れて勝手に部屋に入って来る……。
 
「んだよ、お前、随分早いな……」
 
「えへへ、今日は朝、5時に目が覚めちゃった!」
 
「……ご、5時……?」
 
「きゅぴー!ジャミル、近所のおじちゃんがゆで卵くれた、はいっ!」
 
チビが串に刺した硫黄臭いゆで卵をジャミルに差し出す。
 
「いいよ、お前が貰ったんだから、お前食えよ……、それより……」
 
「ぴきゅ?」
 
「よっと、……うーん、お前……、あれから全然大きくならなくなったなあ……」
 
ジャミルがチビを抱き上げベッドに寝転がる。
 
「ドラゴンは長寿だから……、これから……、ゆっくり、ゆっくり……、
時間かけて成長するんじゃないの?」
 
「そうか……、んじゃあ、まだまだお前も子供だなあ……」
 
「ぴきゅ!チビ、もう大人ー!」
 
チビがジャミルに飛びつき、ジャミルの顔に悪戯する。
 
「……あたたた!だから、鼻の穴に爪突っ込むのはいい加減よせっ!」
 
「じゃあ、ゆで卵は入る?」
 
「……入らねーよっ!」
 
「こら、あんたら何やってんの!もう時間だよ、早くお城いきなよっ!
まーだもたもたしてんの!?」
 
……包丁を持ったファラが部屋に顔を出した……。
 
「へえへえ、んじゃ……、行きますかね!」
 
「うん……」
 
「いってらっしゃーい!」
 
ファラに急かされ、チビに見送られて、ジャミルとダウドは
アリアハンの城へと向かう……。
 
 
「おお、よくぞまいった、勇者達よ、久しぶりであるな」
 
「こんちは、国王さん、で、今日は何の用だい?」
 
「……実はな……、再び、ギアガの大穴が開いた……と、言う噂が
流れておるのだ……」
 
「ええっ!?」
 
「マ、マジでか……!?今更……」
 
「また何かの前兆かなあ……」
 
いつもの如く、ダウドがオロオロし出した。
 
「それでな……、実はこの城に、こんな物が届いておったのだ……」
 
テオドールは城に届いたと言うレトロなテープレコーダーと
カセットテープを二人に見せた。
 
「おいおいおい、何なんだよ、マジで……」
 
「とりあえず……、聞いてみようよお……」
 
ダウドがテープレコーダーのスイッチを入れると、……聴こえて
来たのは……。
 
 
……おーほほほほ!馬鹿勇者達ー!お久ー、なのねー!
 
なのねー!
 
なのねー!
 
 
「なのね……?なーんか、懐かしい様な……、聞いてて
腹の立つ様な……」
 
 
ボクら、カネネーノネー3兄弟はこのたび、凄ーい力を
手に入れたので、世界を制覇する大魔王になるのね!
 
のね!お前らはこの、どえらーいボクらにひれ伏すが良いぞ!
なのね!
 
謝ったって、もう許してやらんのね!
 
と、いうわけで……、ギアガの大穴も又開いたので、ボクらは
下の世界にこれから又行くのね!
 
数年前、お前の連れに飛ばされた時、ボクら何故か上の世界に
戻って来ちゃったのね!だから、今まで上の世界のどっかに
隠れてたのね!
 
 
「……冗談言うなよ……、たくっ、何処まで得体が知れない
奴らなんだよっ!」
 
 
と、言う訳で……、さいならー!なのねー!!ちゃんと聞いてる!?
さいならなのねえー!!
 
 
録音の最後には……、嫌味なのか、巨大な屁の音がついでに入っていた……。
 
 
「おおお、俺……、マジで生きるのが嫌になってきたわ……」
 
ジャミルがコテンと首を思いっきり曲げた……。
 
「……そう言う訳なのだ……、勇者達よ……、これはもしや世界の
危機ではないであろうか……」
 
「どこが危機なんだっ!!あ~っ、たくも~っ!!」
 
「要するに……、又オイラ達に行けって事ですよねえ~?」
 
「う、うむ……、手っ取り早く言うと……、そう言う事だ……」
 
テオドールは……、申し訳なさそうな……、困った様な顔を
ジャミル達に向けた。
 
「……行くよ、ったく……、これじゃ無限ループだな、くしょ~……」
 
「しょうがないよねえ、これが勇者としてのジャミルの
お仕事だもんねえ~……」
 
 
仕方なく、又覚悟を決め……、城の外に出ると……、其処に……。
 
「……ジャミルっ、ダウド!あはっ!久しぶりー!!」
 
「アイシャ……?戻って……、来たのか……?」
 
アイシャはジャミルの姿を見つけると、駆け寄って思い切り
ジャミルに飛びついた。
 
「……僕達も、国王様に連絡を受けて……、又アリアハンに
来たんだよ、世界の危機だって……」
 
「アルっ!お前も来てくれたのか!?」
 
アルベルトも、ゆっくりとこちらに歩いて来た。
 
「う~ん?世界の危機?……、に、なるのかなあ~???
……で、でもっ、又二人に会えて嬉しいよお!これで4人
そろったねえー!」
 
ダウドもアルベルトとアイシャに駆け寄ると、喜びと再会の
握手を交わした。
 
「……何回世界の危機になるんだかな、はあ~……」
 
「きゅっぴ!チビもまた、皆と冒険行くー!」
 
アイシャの足元からチビもひょっこりと顔を出す。
 
「……やれやれ、これじゃ本当に……、何も変わんねえや……」
 
そう言いつつも……、何だかジャミルの顔は嬉しそうであった……。
 
「それじゃ、行きましょっ!まず目指すはギアガの大穴よっ!」
 
「行こう、ラーミアも待たせてるよ!」
 
「行こー!行こー!」
 
「きゅっぴー!」
 
「んじゃま……、行くかっ!!」
 
4人とチビは再び新しい冒険の第一歩へと踏み出すのであった……。
 
 
 
……その後、このお調子者の勇者が伝説になったのかは……、
それは誰にも分らない……
 
       けれど、……多分、きっと……         
 
 
                                       fin

zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ89~93

zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ89~93

スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 続編 オリキャラ オリジナル要素・設定 クロスオーバー 下ネタ 年齢変更

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-29

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. エピ89・90
  2. エピ91・92
  3. エピ93(本編最終回)