仮名遣ひについて(景勝府告示)
旧昭和二十一年内閣告示第三十三号及び昭和六十一年内閣告示第一号の各旧前告示の定めるところを踏まへ主にそれらの維持改善する各点を示しそれらに代る現代社会に於ける新たな仮名遣ひの一般生活口語上の基準としてこれらを例示する
よって昭和六十一年内閣告示第一号は之を廃止するが、この告示に於て特に言及されない部分については各旧前告示のそれぞれ示すところを蹈襲することとし、各旧前告示の何れもの内容は参考資料としてこの告示に附されることとする
・訓読はすべて、明治から旧昭和二十一年内閣告示第三十三号による時代以前に於ける所謂歴史的仮名遣ひを以て行われることとする よって以下の各旧前告示からの各変更例を参照されたい
❶「い」を「ゐ」とする例
ゐ(居)、ゐる(居る)、くらゐ(位)、ぐらゐ、まゐる(参る)、あゐ(藍)、ゐど(井戸)、いぬゐ(乾)、ゐのしし(猪)、もちゐる(用ゐる) ※「用ゐる」については「用ひる」とすることも否定されるものではないが、当該基準としては「用ゐる」とすることとする
❷「え」を「ゑ」とする例
ゑ(絵)、こゑ(声)、ゆゑ(故)、すゑ(末)、うゑる(植ゑる)、すゑる(据ゑる)、こずゑ(梢)、ゑむ(笑む)
❸「わ」を「は」とする例
かは(川、皮)、には(庭)、まはる(回る、廻る)、まはり(周り)、かはる(変る)、あらはす(表す)、こはす(壊す)、けはしい(険しい)、かはいい(可愛い)、にはかに(俄に)、かはせ(為替)
❹「い」を「ひ」とする例
おもひ(思ひ、想ひ)、こひ(恋)、たひ(鯛)、はひ(灰)、たひら(平)、うぐひす(鶯)、ものいひ(物言ひ)、ちひさい(小さい)、たましひ(魂)、ならひごと(習ひ事)、つひやす(費やす)、つひに(遂に)
❺「う」を「ふ」とする例
あふ(合ふ、会ふ)、かふ(買ふ、飼ふ)、こふ(乞ふ、請ふ)、おもふ(思ふ、想ふ)、ちがふ(違ふ)、うかがふ(伺ふ、窺ふ)、とまどふ(戸惑ふ)、いふ(言ふ、云ふ)、あやふい(危ふい)、きのふ(昨日)
❻「え」を「へ」とする例
うへ(上)、まへ(前)、いへ(家)、かへる(帰る、変へる)、かへす(返す)、そへる(添へる)、そなへる(備へる)、たとへる(例へる)、ふまへる(踏まへる)、まちがへる(間違へる)、うかがへる(窺へる)、~さへ、いけにへ(生贄)、とこしへ(永久)
➐「お」を「ふ」とする例
たふす(倒す)、あふぐ(仰ぐ)、あふる(煽る)
「お」を「ほ」とする例
とほい(遠い)、おほきい(大きい)、なほす(直す、治す)、もよほす(催す)、とどこほる(滞る)、かほ(顔)、しほ(塩、潮)、ほほ(頬)、こほり(氷)、おほかみ(狼)
「お」を「を」とする例
をる(居る、折る)、をどる(踊る)、をかしい、あをい(青い)、をしい(惜しい)、をす(雄)、みを(澪)
❽「こう」を「かう」とする例
いかう(行かう)、きかう(聞かう)、おかう(置かう)、かう(斯う)、たかう(高う)
「ごう」を「がう」とする例
つがう(継がう)、いそがう(急がう)、つながう(繋がう)
「そう」を「さう」とする例
ださう(出さう)、さがさう(探さう)、うながさう(促さう)、さう(然う)、たのしさう(楽しさう)
「しゅう」を「しう」とする例
よろしう(宜しう)、あたらしう(新しう)
「しょう」を「せう」とする例
しませう、やりませう、~でせう
「とう」を「たう」とする例
たたう(立たう)、はなたう(放たう)、たうげ(峠)、ありがたう(有難う)
「のう」を「なう」とする例
しなう(死なう)
「おう」を「はう」とする例
あはう(会はう)、つかはう(使はう)、~してしまはう
「ほう」を「はう」とする例
はうき(箒)、はうむる(葬る)
「ぼう」を「ばう」とする例
とばう(飛ばう)、あそばう(遊ばう)、はこばう(運ばう)
「ひゅう」を「ひう」とする例
ひうが(日向)
「もう」を「まう」とする例
やすまう(休まう)、たのまう(頼まう)、まうす(申す)、まうける(設ける、儲ける)、せまう(狭う)
「よう」を「やう」とする例
おはやう、やうか(八日)、やうやく(漸く)
「ろう」を「らう」とする例
をらう(居らう、折らう)、のぼらう(登らう)、もどらう(戻らう)、くらう(暗う)、あかるからう(明るからう)、つらう(辛う)、つらからう(辛からう)
❾「じ」を「ぢ」とする例
あぢ(味)、ふぢ(藤)、とぢる(閉ぢる)、はぢる(恥ぢる)、ねぢる(捻ぢる)、わらぢ(草鞋)、おぢいさん
「じゃ」を「ぢゃ」とする例
~ぢゃない(※但し「~じゃない」も広く認められたい)
「ず」を「づ」とする例
みづ(水)、うづ(渦)、きづな(絆)、いなづま(稲妻)、けづる(削る)、たづねる(尋ねる、訪ねる、訊ねる)、はづかしい(恥かしい)、しづか(静)、まづ(先づ)
❿その他の例
あふぎ(扇)、あふひ(葵)、あふみ(近江)、おほきう(大きう)、きうり(胡瓜)、けふ(今日)、さふらふ・さうらふ(候ふ)、さへづる(囀る)、たふとぶ(尊ぶ)、をぢさん
・訓音混合の言葉に於ける場合も含め音読には所謂歴史的仮名遣ひを用ゐないこととするが、次に掲げる各例の場合は所謂歴史的仮名遣ひに基くこととする
❶ゑ(衛)
❷しゃうがない、しゃうもない(仕様がない、仕様もない)、~のやう(~の様)、やうす(様子)、その他「様」を「やう」とすることができるすべての場合
❸せゐ(所為)
❹ぢ(地、治)、づ(豆、図、頭)
❺てふ(蝶)、てふてふ(蝶々) ※但し「ちょうちょ」とする場合は之を例外とし、また「ちょうちょう」とすることも必ずしも否定されるものではない
❻はふる(抛る、放る)
➐あは(阿波)、びは(琵琶、枇杷)等の音読としての「は」を「わ」と発音するもの
❽すはう(周防)
❾法令上特別に所謂歴史的仮名遣ひを採用して居る場合
※前述の例は「衛」「為」「抛(放)」「防」を他の音読語として使用する際の例とは区別されることとし、例えば「防衛」は「ぼうえい」とされ、「行為」は「こうい」とされる
※また東野(とうの)、高村(こうむら)、甲本・河本(こうもと)、合田(ごうだ)、中条(なかじょう)、長野(ちょうの)等の苗字を含む訓音混合の人名に於ける仮名遣ひについても前述の例を除いては音読部分には所謂歴史的仮名遣ひを用ゐないこととする
※給する(きゅうする)、講ずる(こうずる)、有する(ゆうする)、要する(ようする)等の場合もまた前述の例を除いて音読部分には所謂歴史的仮名遣ひを用ゐない
仮名遣ひについて(景勝府告示)