短歌
たわむれに落とした毛虫 今日もまた花投げ入れる水路の格子
湖に続きし道の碑(いしぶみ)を我ぐるぐると飽かずに廻る
通学路 暗き木々の道行かば隠されるらし 四ツ辻を曲がる
板鏡 畳に敷きて 逆しまの世界はそこに痛みはなきや
盆灯り 座敷の影の濃きところ 戻りし人の座る心地す
時ならず目覚めし夜半に祖母の背に砂利踏むものの何ものかと問う
山中にとうきび拾い汝に問わば「むじなの喰いし」と教えられたり
西空に飛び去るたませ 何処でか人逝かんとす 晩春の宵 ※
短歌
※わが祖母齢若き頃畑にてたませを目撃す。たませとは青き火なりて臨終近き人の魂なり。