zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ69~72
エピ69・70
悪魔も乱心する
「やっぱり、リィトっていい奴だよね」
ダウドがニコニコしながらリィトの方を見た。
「……何がだよ……」
「だって、本当に悪い奴だったらラーミアに乗れない筈だもの、ね?」
「知らないよ、そんな事……」
ダウドの言葉にリィトは顔を赤くしてそっぽを向く。
「照れなくてもいいのよ~、ねえ、小悪魔ちゃーん……」
「うるさいりゅ!……あ……」
「ジャミルったら、からかわないのよ……!」
アイシャが注意するがジャミルはここぞとばかりに小悪魔を
からかうのを止めず。
「ジャミル、リィト、いじめちゃ駄目っ!!」
「……ぎぇっ、ふぇっ……!?」
チビもリィトを庇い、ジャミルの鼻の穴に爪を突っ込んだ。
「バカドラゴン……、結構お前、いい奴なんだな……、処で、
あんた達は一体何処に向かおうとしてる訳……?」
リィトの問いにアルベルトが速攻で話を纏めて要点を話した。
「そう……、竜の女王の城へね……、ふーん、知らないや……」
「だとさ、知識のない奴に話しても無駄だっちゅー事だな」
「お前に言われたくないよ、頭の中身がぽーぽぽぽぽぴーぽぽぽの奴にさ……」
「……言ってる意味がわかんねーよっ!!」
「ほら、理解出来ないじゃないか……」
「ハア、これからますます大変になるねえ……」
「本当ね……」
「……」
いつもの自分達を棚に上げ……、アルベルト、ダウド、アイシャが
顔を見合わせ揃って頷いた。
「と、まあ、変な二人は置いといて、そろそろ女王様のお城だ……、
……」
ふと、嫌な悪寒がし、アルベルトが上空を見上げた、と、その時……。
「きゅぴ~……」
「どうしたの、チビちゃん、……震えてるの……?」
突然急に脅えだしたチビをアイシャが優しく抱きしめた。
「怖い……、何だか怖いよ……、とっても怖い気がするの……」
「あーっ、あれ……!!」
「……?ああっ!!」
ダウドが指差す方向を見ると、竜の女王の城が黒い結界で
覆われていた……。
「な、何て事だ……!!僕らの船を襲ったあの時と同じだ……」
「大変だわ!ホビットさん達が危ないわ!!」
「ふん、中々やるね、誰だい?ただの結界じゃなさそうだね……」
「くそっ、やっぱ先回りしやがったか……、ラーミア、何とかして
あの結界までどうにかして近づいてくれ、頼む!!」
「クゥインっ!」
ラーミアは一声鳴くと、更に高く上空まで上がり、山脈を越え
城に近づこうとするが……。
「……クゥィィーーッ!!」
「うわっ!!」
「きゃあっ!!」
城に近づこうとしたラーミアが結界に弾き飛ばされ、
ジャミル達も面食らう。
「りゅー……」
「リィト、……リトルに戻っちゃったの?大丈夫!?」
ダウドが慌ててリトルに戻った小悪魔を助け起こした。
「……畜生……、ショックと反動で元にもどったりゅ……」
「駄目だよ、ジャミル!結界の力が強すぎるよっ!!」
「分ってるよ!だけどこのままじゃ……、どうにかして中に
入らねえと……」
「……グゥィィーーンッ!!」
「ラ、ラーミア……?」
プライドを傷つけられたのが癪に障ったのか、もう一度ラーミアが
結界を打ち破ろうと結界に突っ込もうと体当たりする。
「……ああーんっ!!」
「きゅぴーっ!!」
チビを庇いながらも衝撃に耐えられずアイシャが悲鳴を上げた。
「ラーミア、よせっ!これ以上やったらお前の身体も持たな……
うわわわわわっ!!」
ジャミルの言葉を無視し、更にラーミアは結界に体当たりし続ける……。
「こらーっ!!言う事聞けーっ、バカ鳥ーっ!!」
「よし、リトルにまかせろりゅ、……ラリホー!!」
何も考えずに、リトルがラーミアにラリホーを掛け、ラーミアは落ち着きを
取戻し……、そして、眠った。
「これで、よしりゅ」
「……何がよしかーーっ!!」
「あいて!!」
ジャミルが小悪魔の頭を思い切りぶん殴る。
「何するりゅーっ!!このバカ猿ーっ!!」
「状況を考えろっ!!こんなとこでラーミアを眠らせて
どうすんだっつーの!!」
「落ちるだけ……だよね……、あは、あは、あはは……」
悟りきった様にダウドが白目を向いた……。
「皆、しっかり掴まってるんだ!絶対落ちるし……、どうにも
ならないから……」
アルベルトがそういうや否や、意識を失ったラーミアはそのまま
下に落ち始めた……。
「……あああ~……、はあ、今回も何とか助かった……、たく、
冗談じゃねえや……」
気が付くとジャミルは見た事もない何処かの小島に振り落とされて
いた様であった。
「フン、リトルは悪くないりゅよ!」
「そういや、皆何処行ったんだ……、バラバラに振り落とされた
みてえだな……」
「リトルは知ったこっちゃねえりゅ」
「……何で、俺と一緒に近くに落ちたのがこいつなんだよ、たく……、
……最悪の状況じゃねえか……」
ジャミルが横目で小悪魔を見、疲れてしまったかの様にその場に
しゃがみ込んだ。
「……何か腹も減ってきたなあ……」
「お前、連中と逸れて落ち込んでるのかりゅ?け、けけけっ!」
「べ、別に落ち込んでねーよ!うるせー奴だな、んとに!」
「はあー、困ってるやつを見るのは気分がいいりゅ、けけっ、
けけけけー!」
まるでジャミルを嘲笑うかの様に小悪魔が踊り出す。
「此処でしゃがんでてもしょうがねえ、周りを見てくるか、
……お前は其処でずっと踊ってろ」
ジャミルが立ち上がり、小悪魔を置いて歩きだす。
「け、けけけ?」
「何か、変な島に落ちたみたいだな……、無人島か……?」
周囲は森だらけ、木に沢山の果実が生っている光景であった。
ジャミルは取りあえず森の中へ足を踏み入れる。その後を小悪魔が
ちょこちょこ着いてくる。
「おお、上手そうな果物りゅね、……これはリトルが全部食ってやるりゅ!!」
(何でパートナーが本当にこいつなんだよ……)
「好きにしろよ、俺は魚でも取ってくるわ……」
「けけっけけ、けけけのけー!!」
小悪魔はさっさと木に登り、生っている果実を自分だけむしゃむしゃ
食べ始めた。呆れたジャミルは小悪魔を放っておき、浜辺に戻ると木の棒で
器用に竿を作ると釣りを始める。
(それにしても……、あの厄介な結界をどうすりゃいいんだよ……、
ホビットのおっさん達が心配だなあ……、クソっ……、アル達も……、
一体何処に落とされたんだろう……)
「けっけ、けっけ……」
ふらふらしながら小悪魔……、森からリィトがジャミルのいる
浜辺に戻って来た……。
「……何だよ、またお前リィトになったのか、落ち着きねえ奴だなあ……」
「ジャミルさん、あちきを嫁に貰ってほしいんだりゅ……」
「……ハア?」
「あちきを貰って下さい……、りゅ、でありんす……」
突然、リィトの言動が挙動不審になる……。これも何かの洗脳なのか……、
リィトの目つきがおかしい……。顔も何となく……、ほんのりと赤い。
「おい、ふざけてんなよ……、って、お前酔ってんのか……?何で……、
もしかして……、さっき欲かいて食ってた果実の所為か……?」
「りゅーっ!!」
「……!?あうっ!!」
突然、リィトがジャミルに飛び掛かり、砂だらけの地面に押し倒した……。
「……くおら!マジでいい加減にしろっつーんだよ!!」
「ふざけてないでぁリンス!あちきは本気んあだりゅーっ!!」
……リィトは呂律がどんどん回らなくなり、様子がおかしくなっている……。
「あんさんを……あちきの……てぃんぽにぢゅうで……す……、
クワーーっ!!」
リィトの目が怪しく光り、ジャミルの身体を動けなくしてしまう。
ジャミルは金縛りに遭ったのかと思い、もがくが、とにかく身体が
動かない。
「く、くそっ……、や、やめろーっ!!そこはーっ、……あ、
ああっ、……ああああーっ!!」
と、ジャミルが絶叫し、状況がやばくなってきた処で……。
「……けけっ」
突然、パタッとリィトが眠ってしまった……。
「はあ~、マジでびっくりした……、今回は本当に俺もビクビクもんだあ……、
だったわ……」
……よほどびっくりしたのか、流石のジャミルも自分で何となく……、
顔が真っ青になって血の気が引いているのが分った様であった。
「やっぱり、……皆いないとこんなに不安になるモンなのかな……、
なーんか、俺らしくねえなあ…」
「りゅーっ、りゅーっ……」
そう言いながら、ジャミルは酔って寝てしまったリィトの姿のままの
小悪魔を見た。
「……珍しく今日は弱気な俺……、なのであった……」
「と、一人ナレやってねえで、早く他の皆を探さねーと!」
もう一度、自分に気合をいれ、ジャミルは一人、見知らぬ島を走り出した。
仲間はいずこ
「……しかし、もしもラーミアが此処に落ちたんだとしたら
すぐ分かりそうなモンだよな、あれだけでかいんだからよ……」
ジャミルはぶつぶつ言いながら更に島を歩いてみるが、
他にはモンスター、動物さえも一匹も見掛ける気配が無い。
「やっぱり後は森か、もう一度行ってみるかな……」
……と、再び森に向かって足を踏み出し、歩き出した瞬間……。
ガサガサ音がし、ぬっと木の陰から何かが出現した。
「……うわっ!カリフラワー頭のモンスター!?」
「失礼だな、誰がカリフラワー頭だよお!!」
「だよお……?もしかして、ダウド……、か?」
「シャミル……?あはっ、ジャミルだあ!無事だったんだねえ!!」
ダウドが喜んで飛び出してきたが、後の二人とチビの姿が
見当たらないのがジャミルは気になった……。
「ダウド、お前だけなのか?アイシャとアルとチビは……?」
「ううん、気が付いたらオイラ一人だけ、森の中に
取り残されてたんだ、ついさっき、目が覚めてね、ジャミルの
方こそ、どうしてたのさ?」
「俺の方は……浜辺に倒れてた、リトルも一緒に……」
「そっか、リトルも大丈夫だったんだ、良かった……」
「……はあ~……」
ダウドが聞くと、ジャミルは溜息をつく。
「どしたの、何かあった?」
「……いや、別に……、それよりも、二人とチビを探そう、
後、ラーミアも……、特にアルは今、魔法が使えねえ状態だから、
何かあったら心配だな……」
「うん、でもリトルはどうしてんの?一緒にいるんでしょ」
「あいつは寝てるから暫く放っておこう……、ダウド、お前森の方から
来たんだよな?他になんかなかったか?」
「奥の方まで行ってないから分からないよ……」
「そうか、なら森の奥まで足を踏み入れてみるか」
「うん……」
ジャミルはダウドを連れて森の奥を目指し、一緒に歩いて行く。
……ヘタレでも、やはり、仲間がいれば多少は心強さがあった。
「凄いね、密林みたいだあ……」
辺り一面、草と木が生い茂る場所で……、行けども行けども同じ様な
場所ばかりでジャミルは方向感覚が可笑しくなりそうだった……。
「何だか、美味しそうな果物が生ってる、お腹すいたなあ……」
ダウドが指を銜え、木の上の果実を見上げた。
「おい、うかつに食うなよ……、頼むからよ……」
「でも……、お腹が空いて……、我慢出来ないよお~」
「実はよ、……さっき……」
ジャミルはさっきの小悪魔の暴走をダウドに話した……。
「あはははっ!それで、ジャミル襲われたわけ?ぎゃはははは!!」
「……笑うなっ、こっちはマジでもう……、婿に行けなくなるかと……」
いやにジャミルが真剣な顔をして話す為、更にダウドが爆笑しだした。
「おい、バカ猿!このリトル様を置いて逃げるとは……、どういう
根性してるりゅ!?」
「……うわああっ!!」
突如、ジャミルの後ろから小悪魔が出現した。
「あ、リトル、お帰り……、残念だったね、ププ……」
「何がりゅ?」
「……オメーは少し黙ってろバカダウド!!」
「ヘタレも無事だったりゅ、ふーん……、後は、団子娘と金髪と
バカドラゴンがいないのりゅ?」
「うん、後、ラーミアもだよ……」
「?フンフン、フフン……」
突然、小悪魔が森の奥の方を見て鼻の穴を広げ、クンクンし始める。
「普段、ねえくせにどっから鼻が出てくんだよ……、んとに……」
「……りゅ~、この奥から……、とても香ばしくて、美味しい香りが
するりゅ~……」
「ホント?食べ物があるのかな……」
「ダウド、あんまりこいつの言う事間に受けんなよ……」
しかし、お腹の空いたダウドはどうしても鼻をクンクンしている
小悪魔の様子が気になってしまう。
「ご馳走りゅ~……」
小悪魔はふらふらと森の奥に勝手にどんどん進んで行く。
「ジャミル、リトルが行っちゃうよ、オイラ達も行こうよお!」
「……仕方ねえな、たく……」
小悪魔を追ってジャミル達も更に森の奥深くへと足を踏み入れる。
「りゅ、りゅ、りゅりゅ~……」
「……何か奥へ進めば進む程……、凄い臭いがするんだけど……、
オイラ、気分が悪くなってきた……」
口を押えながらダウドがぼやいた。
「おい、本当に香ばしいモンなんかあるんだろうな……」
「りゅ~、あったりゅ……」
「あれって……」
漸く、小悪魔が香ばしい匂いと言っていたらしき物まで辿り着く。
……しかし、それは何と、物凄い悪臭をまき散らす巨大な人食い
植物であった……。
「……ラフレシアじゃねーか!何が香ばしい香りだっ!!」
「お、おえええええ~……」
「だから、こいつの言う事真面に聞いちゃ駄目なんだよっ!!」
「お前ら野蛮人にはこの、美麗な香りがわからんのりゅ、
イヤりゅねー!」
「どっちがだよっ!!」
小悪魔はルンルンな足取りでラフレシアに近づいていき、ラフレシアを
平気でガツガツ齧り始めた。
「……く、くさいよおお~!!」
「む、むぐっ、駄目だっ……!おげええええ~っ!!」
ジャミルとダウドは耐えられず、一旦その場を逃げ出し、
森の外へと走って避難した……。
「おほほ、美味りゅ、美味りゅ!!」
「やっぱり、オイラ達と、全然感覚が違うんだねえ……、おえっ……」
「そりゃそうだよ、あいつは悪魔族なんだから、大体普段だって
何が主食なんだかわかりゃしねえよ、さっきの果実だって……」
「……?」
また騒動を思い出したのか、ジャミルが嫌な顔をするがすぐに思い直し
ダウドに声を掛けた。
「そろそろ食い終わった頃だろ、森に戻るか……」
「うん……」
二人は立ち上がって再び森の奥へと歩き出し、小悪魔がいるであろう
先程の場所へと戻った。
「……げーっぷりゅ……、腹ぽんぽこぴんりゅ……」
「ありゃりゃ……」
どうやらラフレシアは小悪魔がすべて食い尽くした様で、跡形も
無くなって消えていた……。
「すげえな、マジで全部食ったんか、はあ~……」
「でも、これでもっと先に進めるね……、良かったじゃん、一応……」
「あははは、はは……」
取りあえず、ジャミルは笑っておくしかなかった。
「ねえ、リトル……、オイラ達先に行くよ?起きなよお、
ねえったら……!!」
「りゅりゅ~……」
ダウドが膨れた小悪魔の腹を揺さぶってみるが、小悪魔は
気持ちよさそうに眠っているだけで起きず、返事もせず……、
実に幸せそうだった。
「ま、いいさ……、ダウド、このまま静かに眠らせてやろう、
……短い間だったけど、一応は世話になったな、安らかに眠ってくれ……、
起きてこないでくれ……、頼むから……」
「……まだ死んでないってば……」
小悪魔を放り、二人は更に森の奥へと進んで行った。
「……誰かいるよお!」
「マジか!?」
ダウドの言葉にジャミルが身構える。
「……」
「アイシャ……!!」
森の奥から出てきたのは……、アイシャであった……。
「良かったあ、アイシャも無事だったんだねえ!」
「ああ、後はアルとチビとラーミアだけだな!」
「死んで……、お願い、メラミ……!!」
「え?ええ?ええええっ……!!」
突然、アイシャが二人に向けて呪文の詠唱を始める。
「ダウドっ!ボーっとしてんな!!」
「……うわあああっ!?」
アイシャがそのまま魔法を放ってきた為、ジャミルが慌てて
ダウドを突き飛ばし魔法を避けさせた……。
「あー、危なかった……、でも、どうして……、アイシャ……?
……チビちゃんは一緒じゃないの……?」
「ダウド、んな事聞いても無駄だよ、アイシャも洗脳されてる……、
目を良く見てみ……」
「ああっ、う、嘘でしょ……、アイシャにまで……あの変な奴の手が
のびちゃったの……?」
「洗脳者2人目か……、たく……、ラーミアは人間じゃねえから
カウントしねえとして……」
「え?ふ、2人……?」
「お前も2回、小悪魔に洗脳されたんだよっ!」
ジャミルがダウドの背中を引っ叩いた。
「あはは、そ、そうだったねえ~……」
「ふざけないで頂戴……、あなた達、……死になさい……!!」
アイシャがジャミルとダウドに向けて再び詠唱を始める……。
「アイシャ、やめろよ、よせ……」
「ジャミルっ!!」
しかし、ジャミルは動じずアイシャの傍まで近寄って行く。
「……来ないでっ、ほ、本当に……、ま、魔法……、
……ふええええ……」
自分に近寄って来たジャミルの姿を見て、突然アイシャが
泣き出した……。
「こ、こんな事……、したくないのに……、身体がいう事聞かないの、
助けて、ジャミル……」
涙ながらにアイシャがジャミルの顔を見て訴えた。
「やっぱり、無理なんだよな……、こんな優しい泣き虫、完全に
洗脳するのはよ……、卑怯な事しやがって……、許さねえ……」
「……ぐすっ、泣き虫じゃないもん!……もう~!!」
「ジャミルっ、危ないよおおー!!」
「大丈夫だ……」
ジャミルはそう言うと、アイシャを強く抱擁した……。
「ジャミル……、私……、あ……」
「落ち着いたか……?」
「うん、もう大丈夫みたい……、私の中の変なのがどっか
行っちゃったよ……」
「ありゃ~、凄いねえ……、完全に元に戻っちゃった……」
呆れるやらで感心するやらで、ダウドが二人の様子をじっと見ていた。
エピ71・72
会える日を信じて
「……とにかく、お前も無事で良かったよ、後はアルとチビと
糞鳥だけだな……」
「うん、ありがとう、ジャミル、ダウド……、心配かけて
ごめんなさい……」
「ああ、いつもの事だからな、気にすんなよ、俺も別に気に
してねーからな!」
「……そうね、いつもの事よね……、どうせ私はお騒がせ娘よ……」
不満そうにアイシャが膨れてみた。
「ねえ……、やっぱりアルも洗脳されてたりするのかなあ……」
「……可能性はあるな、スリッパ持って襲い掛かってくるかも
知んねーぞ、何せ、魔法が使えないからな……」
「何で、そこ、武器持って……に、しといてあげないのさ、
間抜けすぎるでしょ……」
「とにかく、いつ何が起きても平気な様に、身構えとけよっ!」
「……」
そそくさとジャミルが前に走り出だした……。
「チビちゃんも大丈夫かしら……、逸れちゃって寂しい思い
してないかなあ……」
「うん、だから一刻も早く、アルとチビちゃんとラーミアを探して
あげなくちゃね!」
「そうね!」
ダウドの言葉にアイシャが微笑んだ。
「おー、そうだ、又思い出したけど、アルとダウド、前に糞トリオに
変な粉掛けられておかしくなっただろ、あれも洗脳のうちに入るんだよな、
んじゃ結局はアルも1回は洗脳されたっちゅー事だ!俺は完全に
おかしくなる前に何とかなったけどよ、だから……、ダウドは合計
洗脳3回だな……」
先頭を走っていたジャミルが急に戻ってきて又ベラベラ喋り出した。
「そうだけど……、ジャミル、オイラはリトルに洗脳されたのは事実上、
1回だけだからね、1回は自分の夢の中で自分で自我を忘れたんだよ!
忘れないでよ!」
「そうか……、って、威張って言う事じゃねーだろ!」
「あいたっ!!」
「……洗脳話してないで、先に進みましょ……」
「そうだな、何か最近洗脳ブームだな!」
「……嫌な流行よねえ……」
「本当だよお……」
ブツブツ言いながら、ジャミル達は森の奥の最深部へと
たどり着いた。
「……此処で終わりか……?何もねーな……」
森の終着地点には大きな木が一本立っているだけであった。
「……どうしよう、アルもいなかったし、チビちゃんもだわ……」
アイシャががっかりしてしまい、俯いた……。
「弱ったな……、んじゃあ、アル達はこの島には落ちなかったって
事なのか……?」
「うふふ、あなた達……」
木の上の方から不思議な声がした……。
「何だ何だ?……ん、あ……」
ジャミルが木の上を見上げると……、妖精が降りてくる。
「あなた達があの、くっさーい、ラフレシアを退治して
くれたんでしょ?すっごく困ってたのよ……、どうも有難う!」
妖精はジャミル達にお礼を述べる。
「え、い、いや……、あれはリトルがやったんだけどな、ま、いいか……、
えへへ……」
「妖精さんはこの森に住んでるの?」
アイシャが妖精に訪ねると、妖精は嬉しそうに羽をパタパタ広げ、
くるっと回った。
「そうよ、でも近頃おかしいのよね……、私、もう500年ぐらい
この森に住んでるけど、最近まであんなの住み着いてなかったわよ、
……どうしちゃったのかしら……」
「500年……、随分、長生きさんなんだねえ……」
「あ、あなた、私の事を一瞬、ばーちゃんって思ったでしょ、
ねえねえねえっ!」
妖精は、ずけずけとダウドに顔を近づける。
「そんな事言ってないよおおお~……」
「……こらりゅ~!バカ猿ー!!まーたリトルを置いてきぼりに
したりゅねー!!」
罵声を喚き散らし、リトルが走ってくる。
「まーた、うるせーのが復活しやがったか……」
「お友達……?随分と変わったお友達ねえ」
「い、いや……、それより……、聞きたい事があるんだけど、
俺達の他には最近、この島で誰か見掛けなかったかい……?」
「知らないわ……、ごめんなさい……」
妖精は申し訳なさそうに首を横に振り、ジャミル達に頭を下げる。
「そうか、ならいいんだよ、別に気にしないでくれな……」
「お役に立てなくて本当にごめんなさい……」
「チビちゃんが自分自身で……、又私達の所に来てくれれば……」
「でも……、チビちゃんも今どんな状況なのか、それが分らないから
心配だよねえ……」
「……あの変態男に捕まってねえ事を祈るだけさ……、無事でいてくれよ、
アル、チビ……、と、後、ラーミアもな……」
やがて日も暮れ、ジャミル達は森の中央付近まで戻ると
焚火を焚いて夜を超す。
「食えそうなモンだけ、妖精が集めて用意してくれたから助かったぜ……」
「でも、明日からどうしよう……、アル達がこの島にいないって
分ったんだから早く此処を出ないと……、本当に何処に落ちちゃったの
かしら……」
「……ふんが、ふんがーりゅ!!」
「リトルったら……」
「ったく、あれだけ食って、んで、また食って寝ちまったか、
静かでいいけどな……」
「はあ、暫くお風呂も入れないねえ……、やれやれだよお……」
「……」
「……」
ジャミルとアイシャが揃ってダウドの方を見た……。
「な、何……?オイラの顔、おかしい……?」
「ダウドったら、髪おろしたの……?」
アイシャがじーっと、オールバックを解き、仕切に髪をとかしている
ロングストレートヘア状態のダウドを見つめる。
「うん、玉にはね……、オールバックばっかりだとジャミルに
カリフラワー言われるし!」
「凄ーい、髪の毛おろしただけで、こんなにイメージ変わるのねー!
あはっ!」
「そ、そうかなあ……?」
アイシャに褒められ、ダウドがテレテレ頭を掻く。
「かっこいいわよ!このままイメチェンしてみたらどう!?」
「オ、オイラ……、思いきって、モデルさんに応募してみようかなあ……、
チビちゃんにも見せてあげたらびっくりしちゃうかなあ?あはは!」
「……却下」
「……」
ねっ転がったまま、二人に尻を向けてぷうとおならをし、
ジャミルが即答で答えた。
「ジャミル、もしかして、オイラに妬いてます?イメチェンした
オイラがかっこいいからでしょー?ん?ん?ん?どうなのかなー?」
嫌味ったらしく、ダウドがジャミルの頬をちょんと突っついてみる。
「……は、早く、ヘアスタイル戻せっつーんだよ!……殴りづれんだよ!!
あーっ!!別に俺は、お前の長髪なんか何回も見た事あるし、ただ単に
殴りづらいだけだっ!!」
「わっかりましたよーだっ、……たく!」
不機嫌な顔をしながら、ダウドがヘアスタイルを戻しに掛った。
(……何かやばかったな、あいつ……、急に男らしくなったか……?)
何となく、ダウドから危機感を感じたジャミルであった……。
そして、次の日の朝……。
「おい、バカ猿……、起きろりゅ……!」
「……?てめっ、誰がバカ猿だっ!!」
「いいのかりゅ?また、ヘタレと団子娘がいなくなってりゅよ……」
「な……!?又かっ、ダウド、アイシャっ……!!」
ジャミルが慌てて飛び起き、二人を探すが何処にも姿が見当たらない。
……再び起きた事態にジャミルは呆然と立ち尽くす……。
「いねえ、何処にもいねえ……、んな事あるかよ……」
「森の奥まで又見に行ってみたらどうりゅ?リトルはめんどくせーから
此処にいりゅ」
「そうしてみるか……」
「よし、さっさと行けりゅ、しっしっ!あーしっし!」
手でジャミルを追っ払う様に小悪魔が行け行けをする。
「……はあーっ、んとに役に立たねえな、あの小悪魔はよ、
まあ昨日はラフレシアの件でどうにか助かったけどさ……」
又一人になってしまったジャミルだったが、必ず又、仲間を全員
見つけ出してみせるとそう思いながら再び森の奥へと踏み出して行った……。
地獄島からの脱出
……ジャミルがもう一度、森の最深部まで再度足を運ぶと……、
其処で見た物と、待っていた者は……、昨日、ジャミル達に親切に
声を掛けてくれた、あの妖精であった。妖精は側に巨大なラフレシアを
従えていた。そして……。
「うふふ、来たわね、お馬鹿さん!」
「……ダウド、アイシャ……!!」
ラフレシアの蔦に捕えられ、意識が無い二人の姿であった……。
「どう言う事だよ、おい……、二人を放せよっ……!!」
「あたしは妖精なんかじゃないさ、……この島を支配してる
ラフレシアの精さっ!こうやってこの島で美味しい獲物が掛るのを
待ち続けてんだよ、さあ、あんたもおねんねしてあいつらと一緒に
栄養になんなっ!!」
先程まで森だらけだった周囲は一瞬にして無くなり、只のだだっ広い
砂浜と化す。妖精自らもSM女王の様な姿になり、ラフレシアに向け
鞭を振ると、従えているラフレシアがジャミルに向けて蔦を伸ばしてくる。
「お断りだねっ、誰がっ!」
ジャミルは急いで背中の鞘から王者の剣を抜き、素早く蔦を叩き切る。
「おや、中々やるね……、これこそ何年もあたしが待ち望んでいた
獲物!食べごたえがあるってもんだよっ!!」
「……何だっ!?」
ジャミルの周囲から更に何十匹のラフレシアが生え、ジャミルの
手と足に絡みつく。もはや周囲はラフレシア地獄で埋め尽くした
光景であった。何とか手を動かして、王者の剣で蔦を切ろうとするが
手に蔦が絡まり自由が効かないのであった。
「何だよ、この島は元っからラフレシア島だったのかよっ、……あっ、
く、くそっ……!!」
ジャミルは掴んでいた王者の剣を地面に落としてしまう……。
「ははっ、いい光景だねえ!そのまま辱めをうけなっ!!」
「……あっ!?あ、あ、あ、あああーーーっ!!ああ、ううー!!」
蔦はジャミルの体内の中にまで入っていこうとし、耐えられないジャミルは
苦痛で悶える……。
「バカ猿っ!!何やってりゅ!真面目にやれりゅ!!……メラメラ凜子の
メラゾーマりゅ!!」
「な、何だと……!?」
「リトルっ……!来てくれたのか……!?」
小悪魔が辺り一面にメラゾーマを放ち、周囲のラフレシアを
あっと言う間に焼却させた。
「もったいないりゅ……、けど、幾らリトルでもこの量は
食えないりゅ、無念……」
「くそっ、厄介なのがいたんだねっ!!」
「取りあえず助かった……、おい、リトルよう……、俺の手に
絡みついてる蔦……、どうにかしてくんね?これじゃ動けねんだよ……」
屈辱に耐えながらも……、ジャミルがどうにか小悪魔に頼んでみる……。
「おっほーっ、いい光景りゅ!!けけけのけーっ!!暇だから
わざわざ見に来てやった甲斐があったもんりゅねーっ!!」
「くそっ、この野郎……、けど、今はこいつに頼るしかねえんだ……、
……そうだな、どうにかしてくれたら、一回だけ、お前のいう事
聞いてやらあ……」
「ホントかりゅ?嘘偽りないりゅね?」
「本当さ、但し一回だけだぞ……、本当に……」
「んだらば、リトルの夕ご飯は暫く飽きるまで大盛り牛飯丼に
しろりゅ!お前の分もみんなよこせりゅ!!」
「……分ったよ、仕方ねえな……」
「遊んでる暇なんかあるのかい、あんた達!!そらそらそらそら!!」
「ま、またっ……!!」
ジャミルと小悪魔が交渉している間にもラフレシアの精は
間髪入れずにどんどん違うラフレシアをジャミル達の前に召喚する。
「頼む、リトル……!!このまんまじゃ俺ら全滅だぞ……」
「仕方ないりゅ、特別にこの、どエラ~イ、リトル様が魔法で
援護してやるから、馬鹿猿はさっさとあの厄介なSMババアを
やれりゅ……!!」
小悪魔はそう言うと速攻でジャミルを拘束している蔦を自身の
フォークで叩き切った。
「やった……!!よしっ、ダウド、アイシャ、待ってろよっ、
今行くからな……!!」
「くっ、小癪なっ……!!」
「一気に燃やすりゅよーーっ!!べギラゴンっ!!」
小悪魔の魔法があっと言う間にどんどんラフレシアを燃やしていく。
「……やっぱり、本当に悪魔族の王子だったんだ……、口だけじゃ
なかったんだなあ……」
呟きながらジャミルが王者の剣を片手にこの島の首領格であろう
ラフレシアの精の元まで走る。
「くっ、……こうなったらお前だけでもあたしの中に取り込んでやるっ!!」
「俺をなめんなよっ!!」
ラフレシアの精張本人もジャミルに向け、長い蔦を伸ばすが
ジャミルは速攻で蔦をたたっ斬る。
「……!!う、嘘……ぎゃああああーーっ!!」
…そして、王者の剣が身体を斬り刻み、ラフレシアの精は
その場に崩れ落ちた……。
「おい、ダウド、アイシャ、しっかりしろよ、おいっ!!」
拘束していたラフレシアも叩き斬り、何とか二人共助けるが……。
「ふん、体力を吸い取られてるから暫くは目を覚まさないりゅよ、
どうせ……」
「……よし、俺のべホマズンで……、なんとか……」
「く、くくく……、このままで済むと思うな……、あたしが
消滅する前に……、お前らも消滅させてやるよ、この島ごとね……、
道連れさ……」
「何っ……!?あ、あああっ!?」
「りゅりゅーーっ!?」
ラフレシアの精は最後の力を振り絞り、大量のラフレシアを
その場に召喚させ島は大量のラフレシアで埋め尽くされた
地獄絵図と化す……。
「冗談じゃねえよっ、こんなにいたら幾らなんでも、俺達コイツで
埋まって窒息死しちまうよっ!」
「ぎゃあああーーうううー!!バカ猿ーーっ!!何とかしろりゅーーっ!!」
「……もう駄目か……?此処までなのか……?」
……島もどんどん沈み掛けて行く……、ジャミルが諦めかけたその時……。
「ジャミルーーっ、リトルーーっ!掴まれーーっ!!」
「ア……、アル……!!」
「きゅぴーーっ!!」
上空からラーミアに乗ったアルベルトとチビがジャミル達に
向かって手を差し出す。
「無事だったのか、お前ら……!!」
「話は後だよっ、早くっ!!」
ジャミル達はアルベルトとチビ、ラーミアの機転でどうにかこうにか
危機を回避する事が出来たのであった……。
「……おーお、ラフレシアの重みで小島が沈んじまったりゅ、
すげーりゅ……」
高みの見物で小悪魔が沈んでいく地獄島を眺めた……。
「助かったぜ……、ホント、ありがとよ……、けど、お前らは
どうして……?」
「うん、……僕らも違う場所に漂流したんだけど……、チビが君達の
気配を感じ取ってこの島まで辿り着けたんだよ、本当に凄いね、チビは……」
「きゅぴ~、皆、無事でよかったよおお~…」
チビがジャミルと小悪魔にスリスリする。
「へへっ、お前らもな……、けど本当にすげえな……、
感謝するよ、チビ……」
「……きゅぴ~……」
「……ジ、ジンマシンがでりゅ……、けど、今日は特別りゅ、
も、もっとスリスリしてもいいのよ~、りゅ……」
「じゃあ、お鼻に爪入れてもいい?」
チビが爪を光らせ、目を輝かせる……。
「あたっ!な、何すりゅ!このバカチンめがーーっ!!」
「リトルはチビに任せて……、と、……おい、ダウドとアイシャは
大丈夫かな……」
心配そうにジャミルがアルベルトの方を見た。
「うん、大分憔悴してるけど、このぐらいの症状なら貧血みたいな
物だから……、暫く休ませてあげて様子を見てみよう……」
「あんまり時間もねえな……、早く女王の城に行かねえと……、
けど、どうしたら結界を破れるんだ……」
「……大丈夫だよお、何とかチビが頑張ってみる、チビが皆をお城の中まで
連れて行くよ……、あのね、何だか力が少しだけど……、自由に使える様に
なったみたい……」
小悪魔とじゃれていたチビが急にジャミル達の方を振り返り話す。
今までは無意識に発動していた潜在能力を段々と自覚し、目覚めてきた
様子であった。
「大丈夫なのか……?今回は大人数だぞ……」
「フン、リトルはメンドクせーから、ラーミアと地上でまってりゅ、
さっさと行って来いりゅ……、んなとこ行きたくもねーりゅ」
「……ま、いいか……、さっきも頑張って貰ったし……」
(約束も上手い具合に忘れてるみたいだしな……)
「うーん……、あれ?……私、どうしてたのかな……」
「ふぁあ、なーんか……、オイラ……、さっき起きた様な気が
したんだけど……、うっかりして又寝ちゃってた……?」
「アイシャ、ダウド……!!大丈夫か!?」
「ジャミル……、何とか平気みたい、……あ、あれ?どうして!?
アル、チビちゃん!無事だったのねっ!!」
「きゅぴー!アイシャ、ダウも!又会えてよかったよおー!!」
チビも喜んでアイシャに飛びつく。
「チビが俺らの危機を感じて、……居場所を探して充ててくれた
みたいなんだよ」
「ホントっ!?うわあ、チビちゃん凄いねえ!!ありがとうー!!」
「どういたしまして、きゅぴっ!!」
ダウドとチビは手を取り合って喜びあう。
「アル……、私も昨日、森で何かに操られたの……、凄く怖かったわ……、
ジャミルが助けてくれたけど……、それがラフレシアの精の力だったのか、
あの白髪頭の変な人の力だったのか分らないけれどね……」
「そうだね……、もういつ何が起きても不思議じゃない……、
本当は僕もこのまま魔法が使えないままなのは凄く不安だよ……」
「大丈夫さ、なる様にしかなんねえ、そうだろ……?」
ジャミルが立ち上がってアイシャとアルベルトを見た。
「うん、そうね……、アル、魔法は私が頑張るから……、
心配しないで、ね?」
アイシャが微笑んでアルベルトの手を取った。
「オイラもいるよお、あてにならないとは思うケドさあ……、でも、
チビちゃんもいるし!」
「きゅっぴー!」
「ううん、そんな事ないよ、有難う、アイシャ、ダウド……、
チビもね……」
「リトルは何もしてやんねーりゅ、……お前ら、くせー馴れ合い
してねーでとっとと行けりゅ!」
「へえへえ、んじゃま、行きますかね……」
ジャミルの言葉に3人も頷き、上空を見上げた……。
zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ69~72