zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ65~68

エピ65・66

小さなポポタの大きな冒険

「じいさん、ちょっと……、まだ起きてるかい?」
 
ジャミルが慌ててポポタを連れ、じいさんの部屋へ。
 
「おお、ジャミルさん、寝られませんかな?どれ、
甘酒でもご一緒に……」
 
「いや、そうじゃねえんだけど、ほれ……」
 
ジャミルが後ろに隠れていたポポタを押しこくった。
 
「……」
 
「ポポタ、どうしたんじゃ?」
 
「おじいちゃん、……僕、お兄ちゃん達と冒険するの!」
 
「駄目だって言っても聞かねんだよ、一応、じいさん達の許可を
取れって言ったんだけど……」
 
「何と!ご迷惑をお掛けしまして……、ポポタ……、ジャミルさんを
困らせてはいかんぞ」
 
しかし、ポポタは爺さんの言う事を聞かず、返事を返した。
 
「行っていい?おじいちゃん」
 
「駄目じゃよ……、皆さんのお邪魔になってしまうじゃろう?」
 
「……やだやだやだ~っ、行くんだ行くんだ~っ!!」
 
「おいおい……、困ったな……」
 
泣いて暴れ出したポポタと爺さんを交互に見比べるジャミル。
 
「……いい加減にしなさい!第一、お前の父さんと母さんがどれだけ
心配すると思っとる!!」
 
普段の、のほほんとしたじいさんからの様子からは考えられない程、
今日はポポタを強く叱った。それでもポポタは泣き止むのを止めない。
相当ずっとこの日を待っていたんだろうなと、ジャミルにもポポタの
気持ちは痛いほど伝わって来たのだが……。
 
「あの、どうかしたんですか……?」
 
騒ぎを聞いてすでに床についていたアルベルト達も客室から出てくる。
 
「実はよう……」
 
 
「成程、そういう事か…、うーん…」
 
腕を組んでアルベルトが考えだした。こういう時、アルベルトは
頼りになる。……困った時のアル頼みである。ジャミルはアルベルトの
答えに期待するしかなかった。
 
「モンスターの心配はないけど、万が一の事があったら心配だしね……、
まだポポタは小さいんだし、無理よ……」
 
「……困ったねえ、ふぁ……」
 
アイシャも困り果て、急に起こされた為、眠くて仕方ないと言う様に
ダウドが欠伸した。
 
「じゃあ、こうしたら?完全に僕らと一緒に冒険に連れて行くのは
無理だけど……、一日だけの社会科見学と言う事にしたらどうかな?」
 
「あー……?」
 
さっぱり分からんと言う様にジャミルが首を傾げた
 
「僕らの船で、ポポタを連れて近場まで回るんだよ、村からあまり
遠くならない距離の範囲で、それなら、村長さんもご両親も安心だろ?」
 
「そうか、成程な……」
 
「しかし……、ご迷惑をお掛けしてしまうのでは……」
 
「ちゃんと、俺達の言う事聞けるよな?大丈夫だろ?」
 
「う、うんっ!」
 
「よしっ、決まったな、じゃあ明日連れてってやるから、早く寝ろよ」
 
「はあーいっ、お休みなさーい!」
 
ポポタは喜んで部屋に走って行った。取りあえずはこれで
どうにか収まりそうであった。
 
「本当に、申し訳ありません……、では、ポポタの両親にはわしから
話しておきますよって、我儘な孫ですが、何卒宜しくお願い致します……」
 
「ああ、俺達に任せてくれよ、爺さん!」
 
 
そして次の日、ポポタと一緒にスラリンも久々にジャミル達の船に
乗る事になった。
 
「ピキー!お船、久しぶりー!」
 
「また、スラリンと一緒にいられて嬉しいわ!」
 
「お姉ちゃん、ボクもー!!」
 
アイシャとスラリンがハグで抱き合う。そこにチビが割り込み無理矢理
アイシャに抱かってきた。
 
「きゅぴぴぴー!」
 
「はいはい、ちゃんとチビちゃんもね……」
 
「やれやれ、マジで幼稚園かっつーの……」
 
「ジャミルさん……」
 
「あ、はいー?」
 
仕事に行く前に、ポポタの両親がジャミルに声を掛けてきた。
 
「本当に、うちの息子がご無理を申しまして申し訳ありません、
……息子をどうか宜しくお願い致します……」
 
「大丈夫だよ、暫くの間、こっちもポポタを責任もって
預からせて貰うよ」
 
「お兄ちゃん、早く行こう!」
 
早く船に乗ってみたくて待ちきれない様子でポポタが
ジャミルを引っ張る。
 
「ポポタ、くれぐれも……、皆さんに迷惑を掛けるんじゃないよ、
分ったね……?」
 
「平気だよ、パパ、ママ、行ってきまーす!」
 
ポポタが元気に両親に手を振る。その背中を心配そうに両親が見送った……。
 
 
「うわあ、凄いねー!この船早ーい!!うわーっ!!あ、魚が跳ねたよーっ!」
 
何もかもが初めての経験にポポタは大騒ぎであった。
 
「ポポタ、凄く楽しそうだねえ」
 
「ああ、乗せてやってよかったな」
 
「きゃーっ!凄い凄ーい!……あ!」
 
「……こ、こら!あぶねっ!」
 
興奮したポポタが縁から身を乗り出し過ぎ、海に落ちそうになるが
慌ててジャミルが支えて止めた。
 
「ふう……、危ねえから気をつけろよ、頼むよ……」
 
「えへへ、ごめんなさーい、あ、あれなんだろう!スラリン、
行ってみよう!」
 
「ピキー!」
 
ポポタがまた甲板を走り回る。……見守っている保護者代理の
皆様達はハラハラドキドキモンである。
 
「おーい、頼むよー、本当に……、じっとしててくれー……」
 
「……チビ、そろそろうんちの時間……」
 
「また始まったーっ!アイシャーっ!!」
 
一時的だが、ポポタが加わった事で、更にPTは騒動で
やかましくなるのであった……。
 
 
「……はああ~……」
 
「ねえ、ジャミル、大丈夫……?」
 
疲れ、しゃがんでしまったジャミルをダウドが心配そうに見つめた。
 
「大丈夫っちゃ大丈夫かも知んねえけど、……お騒がせ者が
もう一人増えたからな……」
 
「何、その、お騒がせ者って……」
 
「♪~」
 
ジャミルはダウドから顔を背け口笛を吹いて誤魔化す。多分、
ダウドとアイシャの事であるが、ジャミルも充分お騒がせ者である。
 
「……」
 
アルベルトは我関せず、呑気に読書タイム。
 
「皆、お昼休憩タイムにしましょ?おにぎり作ったから……」
 
アイシャがお茶とおにぎりを甲板まで運んで来た。
 
「おー、腹減ったーっ!ムスビなら安心だしな!」
 
「……何よ、失礼しちゃうわね!私の作る物は心配ないわよ!ぷんっ!」
 
「きゅぴー」
 
「ピキー」
 
「うわあ、……もうムオルがあんなに遠くだあ……、僕……、
生まれて初めて本当にムオルを出たんだあ……」
 
「さあ、おチビさん達も……、ご飯にしましょ?」
 
「はーいっ、アイシャお姉ちゃん!」
 
「うふっ!」
 
 
午後になり、チビ、スラリン、ポポタのお子様軍団は船室で
昼寝タイムに入り船内は火が消えた様に静かになり、保護者代理の
皆様も漸く一息つけそうであった。
 
「何か、申し訳ねえかな……」
 
「ん?」
 
「もっと本格的な冒険をさせてやりたいんだけど……、何かあったら
困るしなあ、けど、折角の機会なんだし……」
 
「子供は何だって、冒険になるんだよ、初めて見る物、触れる物……、
経験した事、きっとそれはこの先、ポポタが大人になっても生涯
忘れられない宝物になるんだと僕は思うよ……」
 
「そうだな、ずっと……、覚えててくれるといいな……」
 
「……やられたよおお~……」
 
と、其処へダウドがフラフラしながら甲板に上がって来た……。
 
「お前、何やって……、あ?」
 
「な、何だい、その顔……」
 
「……うっかり昼寝してたら……、顔に落書きされて……、
とほほのほ~……」
 
「きゃはははっ!」
 
「きゅぴー!」
 
「ピキー!」
 
「なるほど、犯人はあいつらか……、けど……、集団チビ共はお前より
先に昼寝した筈だぞ?……間抜けだな、お前……、いや、間抜けなのは
判ってるけどな……」
 
「……ほっといて下さあ~い、うううー……」
 
「さて、今夜の飯の準備すっかな、おーい、ポポター、
ちょっときてみー!」
 
「はあーい、何するのー?」
 
ポポタがちょこちょこジャミルの側に寄ってくる。
 
「釣りだよ、お前も自分の分の夕飯の魚を釣るんだ、ほら、やってみな?」
 
「で、出来るかな……?」
 
「何事もやってみなきゃ始まらない、レッツチャレンジ!」
 
「う、うん……」
 
ドキドキしながらポポタが竿に触れてみる。
 
「……お?」
 
「か、かかった……?」
 
「よしっ、そら、引いてみろ!」
 
「……それっ!あ、あーあ……」
 
ポポタ、お約束で見事に缶を釣り上げる……。
 
「諦めない、そら、次のを待つべし!」
 
「よーし、もう一回チャレンジっ!!」
 
結局、ポポタが数回チャレンジしたが、釣れたのはたった
一匹だけだったがそれでも初めての釣りにポポタは大満足であった。
 
「あー、釣りって楽しいねえー!」
 
「だろ?コツを掴めばもっと上手く釣れる様になるぞ!」
 
「うん!僕、もっと釣りが上手くなりたいっ!!」
 
釣りの後、甲板には……、大量の空き缶の山で一杯になっていた……。
 
「どうするのさ、これ……」
 
大量の空き缶の山を見てダウドが呆れ返る。
 
「後で片付けるんだよ、いいだろ、環境運動になって……」
 
「ジャミルも凄かったもんね、空き缶釣り上げた数……」
 
「……プッ」
 
「……腹黒もヘタレもうるさいっ!お黙りっ!」
 
 
そして、夜になり、一行は近場の島に船を留めて打ち上げ
バーベキューの準備を始めた。
 
「お肉焼けるわよー、どんどん食べてね!」
 
「おー!ジャンジャン頂きますっ!」
 
「……ジャミルったらっ!今日はおチビさん達に少しは遠慮しなさいよっ!」
 
「きゅぴー!今日はお肉がいっぱーい!」
 
「ピキー!おいしいねー!」
 
「チビちゃんも、お肉ばっかりじゃ駄目よっ!」
 
「……ぴきゅ~……」
 
「ポポタ、どうだい?自分で釣った魚の味は?」
 
「うん、凄くおいしいっ!自分で頑張って釣ったからかなあ?」
 
「良かった……」
 
「うんっ!」
 
アルベルトが微笑んで、ポポタも笑顔になった。
 
「ちょ、ジャミルっ!肉ばっかり食べちゃ駄目だって言われたじゃん!
これでも食べてなよお、はいっ!」
 
ダウドが、焼いたタマネギを10枚、串に刺したのをジャミルに差し出す。
 
「……幾らなんでもんなに玉葱食えるかっ!この野郎、
お前が食えーーっ!!」
 
仕返しで、今度はピーマンの大量串刺しをダウドに押し付けた
 
「ポポタ、あの二人はほっといていいから……、さあ次の肉が
焼けるよ……」
 
「でも、僕もお野菜食べるよ、おねぎの貰うね!」
 
「うん、偉いなあ……、ポポタは……」
 
「ねえ、アル……、ジャミルとダウドが大変なんだけど……、
取っ組み合いになっちゃって……」
 
「……はあ、何やってんだか……、たく……、じゃあ行きますか……、
久々だなあ……」
 
 
 
           ……パンッ!パンッ!!パンッ!!!
 
 
「おおお~……」
 
「……きく~っ……」
 
「うん、やっぱりこれじゃないとしっくりこないなあ……」
 
「凄いー!アルベルトお兄ちゃん……」
 
ポポタが感心してアルベルトを見上げた。
 
「これはね、秘儀・スリッパ乱舞だよ、ポポタにも教えようか?」
 
「……教えんでいいわいっ!!!」
 
 
そして、夜も更けて、楽しいバーベキューもお開きになった。
ジャミルは満腹になった自分のお腹をナデナデする。
 
「はあー、腹いっぱいだあー、世は満足じゃ……」
 
「……きゅぴー……」
 
「ピーキー……」
 
「チビちゃん達も寝ちゃったわ、ふふ……、私も久しぶりに
スラリンに会えて、本当に嬉しかったわ……」
 
アイシャが膝の上で眠ってしまった2匹をそっと撫でた。
 
「ああ、明日はムオルに帰らなきゃ……、何だかさびしいなあ……、
でも、約束だもんね……」
 
「ポポタ……、そうか、明日は戻るんだな……」
 
「僕にとっては凄く長い冒険の時間だったよ、とっても楽しかった、
ありがとうね、お兄ちゃん達!!」
 
「……大した事してやれなかったけど、……楽しかったかい?」
 
「うんっ、すっごく!!ムオルに帰ったら、おじいちゃん、
パパ、ママ、村の皆に大冒険の事、話すんだ!!」
 
「ああ、俺達もお前と冒険出来て楽しかったぜ、な、皆?」
 
アルベルトとアイシャも笑って頷いた。
 
「お兄ちゃん……」
 
「……うふふ、お肉ー……もう、入りませーん、むにゃ……」
 
ダウドも満腹で腹を出してすっかり眠りこけてしまっていた。
 
「ポポタ、これからもスラリンの事、宜しく頼むわね……」
 
「うん、アイシャお姉ちゃん、僕とスラリンはこれからも仲良しで
いるよっ、ずっと!」
 
 
……そして、夜が明けて、4人はポポタとスラリンを無事に
ムオルまで送り届ける。又いつか、ジャミル達と一緒に冒険する
日を夢見て、ポポタの大冒険はこれにて幕を閉じたのであった……。


ラーミア乱心

ムオルを離れ、それから約一ヶ月ほど掛かり、レイアムランドへと
漸く辿り着く。
 
 
「これで、この船ともさよならだな、しかし……」
 
「……」
 
4人は遂に見事に揃ってしまった2体の船を暫く無言で眺めていた……。
 
「……か、返せばいいんだよな、今度はちゃんと、うん……」
 
「あはは、あははは……、さ、さあ、ラーミアに会いに行こう……」
 
「……オイラ知らな~いっ!」
 
「……こ、こうしてみると、何だか芸術的な感じするわね!」
 
無理矢理誤魔化しながらそそくさと神殿へと逃げるのであった。
 
「こんちはー!」
 
ジャミルが挨拶すると、奥から二人の巫女さんが出て来た。
 
「ああ、あなた達は……、勇者様達……ですか?」
 
「ああ、あなた達は……、勇者様達……ですか?」
 
「いや、時間ねえから……、ハモんないでくれ……、それより、
またラーミアの力を借りたくて来たんだけど、戻って来てるかい?」
 
「戻ってきておりますが……」
 
「戻ってきておりますが……」
 
……やはり、ハモリを止めるのは嫌らしい……。
 
「……様子が……おかしいのです……」
 
急に二人の巫女さんの言葉が一つに重なった。
 
「……何だって……?」
 
 
巫女さんに案内され、急いでラーミアのところまで行くと、
ラーミアは祭壇の中央にある台座の上で静かに横たわり、眠っていた。
 
「おい、ラーミア……」
 
「きゅぴ~?大きな鳥さんだねえ……」
 
チビは初めて見るラーミアに興味深々だった。
 
「ラーミア、どうしたの……、返事して……」
 
「……」
 
「病気なのかなあ……」
 
アイシャが優しく撫で、呼びかけるがラーミアは反応しない。
ダウドも心配そうにラーミアを見守る……。
 
「一体、いつからラーミアはこんな状態に……?」
 
アルベルトが聞くと巫女さん達は揃って顔を曇らせた。
 
「……4、5日前でしょうか……、急に何も口にしなくなってしまい、
あそこでずっと眠ったままなのです……」
 
「んな、困らあ……、おい、ラーミア、起きろよ……」
 
「きゅぴ……、おっきな鳥さん……、ご飯食べなきゃ駄目だよお……」
 
チビがパタパタ、ラーミアの側に飛んで行く。……その途端……。
 
 
「……消えよ、邪魔な小賢しい光めが…… 」
 
 
「きゅぴっ?」
 
突然、ラーミアが言葉を発したかと思うと、身体から黒いオーラを
放ちだす……。
 
「ラーミア……?」
 
「……キアアアアアアッ!!」
 
ラーミアは雄叫びを上げ、牙を剥き、側にいたチビに
襲い掛かろうとする……。
 
「……チビっ!危ねっ!!」
 
「きゅぴ~……」
 
咄嗟にジャミルがすぐに動いてチビを庇い助けた。
 
「ぴ~、ありがとう、ジャミル……」
 
「はあ、危なかった、けど……、どうしてだ……?」
 
「……ジャミル、ラーミアは何者かに操られてる……」
 
チビをいつでも守れる様、アルベルトも防御態勢モードに入る。
 
「そういや、目も何か変だな……、クソッ……」
 
 
「……光、すべての邪魔な光はこの世界から消滅せよ……」
 
 
「……きゅぴ~……?」
 
……操られたラーミアは目線を反らさず、じっとチビの方を睨んでいる。
 
「どうしようっ!ラーミアはチビちゃんを狙ってるよお!」
 
「アイシャ、チビを頼む……!」
 
「ええ、ジャミル、分ってるわ!……チビちゃんっ!!」
 
アイシャがチビを抱え、ぎゅっと抱きしめた。
 
「そうか、またチビを狙う刺客の悪巧みかよ……、ハン、
わざわざ先回りしてラーミアに手を出したって訳か、
ご苦労なこった……」
 
「オ、オイラ達の足取りとか……、皆、分っちゃうのかなあ……、
怖いよお……」
 
「……ラーミア、お願い……、チビちゃんには手を出さないで……、
この子は何も悪い事はしていないのよ……、どうして…?」
 
アイシャが必死でチビを庇い、震えながらラーミアに訴える……。
 
「なあ、何とかしてこいつの洗脳を解く方法はないのかい?」
 
ジャミルが巫女さん達に聞いてみるが……。
 
「……私達には……」
 
「…どうする事も……」
 
 
「……早く光を渡せ……、さもなくばお前達は此処で
全員消滅する事となる……」
 
 
「……っ!!」
 
ラーミアがジャミル達に向け、黒い波動を放つ……。
 
「何だこれ……、身体が……、う、……力が……」
 
「きゅぴっ!みんなっ!!」
 
「……チビちゃん……、あ、あああ……」
 
「ぴいっ!?アイシャっ、大丈夫!?しっかりして!」
 
チビを強く抱きしめていたアイシャから力が抜け、
チビを手放してしまう……。
 
 
……ククク、本当に君はおバカさんだね、君がちゃんと言う事を
聞かないから、こうなるんだよ……、全て君がバカな所為だよ……
 
 
「この声……、また?」
 
それは、チビが悪夢の中で聞いた声と全く声であった。
 
「チビ……?だ、誰と……喋っ……、て……」
 
「誰なのっ、隠れてないで姿を見せてよっ!!」
 
 
……だから、君が大人しく僕のいう事を聞けばいいんだよ、
さあ、おいで……
 
 
「……いや、いやっ!!誰だか分かんないけど、……お前のいう事なんか
聞かないっ!!」
 
 
フン、ならばそこで指を銜えて見ていたまえ、君の大好きなパパと
ママやらが死ぬ処を……
 
 
「……だ、だめっ……」
 
 
さあ、やるんだ、ラーミア……
 
 
「ギュアアア……」
 
操られたラーミアが動けないジャミル達に再び牙を剥ける。
 
「……駄目……やめてよおおおっ!!……きゅぴーっ!!」
 
 
「……チビ……」
 
「チビちゃん……」
 
チビが光の波動を放ち、それはラーミアの邪気を打ち消す……。
 
「……キュウウウウッ!!」
 
「ああ、ラーミアが……」
 
「正気に戻りましたわ……」
 
 
……くっ、生意気な……、何処までこしゃくな光なんだ……
 
 
「あれ?俺らも動けるぞ……?」
 
「本当だ、身体が自由になったよお……」
 
「きゅぴ……」
 
「!チビちゃんっ!!」
 
気を失って落下しそうになったチビをアイシャが慌てて受け止めた。
 
「アイシャ、チビは大丈夫かっ!?」
 
ジャミル達も慌てて駆け寄る。
 
「大丈夫よ、気絶してるだけよ……、ああ、良かった……、
チビちゃん……」
 
「ピィーーっ!!」
 
「……ラーミアも、大丈夫の様です……」
 
「正気を取り戻しました……」
 
「……ハア、もう勘弁してくれや…、冗談じゃねえよ…」
 
流れ出る冷や汗を拭いながらジャミルはその場に座り込む……。
 
 
「……フフフ、あはははははっ!!」
 
 
「……何だよ、アル……、んな時にバカ笑いしてんなよ……」
 
ややヤケクソ気味にジャミルがアルベルトの方を見るが、
アルベルトは慌てて否定する。
 
「!ちょっと待ってよ、……何で僕になるのっ!!」
 
「じゃあ、ダウド、お前かよ……」
 
「ちょ、オイラじゃないよっ!!」
 
 
「……君達は本当に面白いね……、僕もそろそろお披露目の時かな……?」
 
 
「この声……?マジでどっから……?気味わりィなあ……」
 
「……あっ、ああっ!!」
 
チビを抱きしめるアイシャの手が震えだした……。
 
「……初めまして、皆さん……、お嬢さんには一度、ラダトームで
お会いしていますね……、覚えていらっしゃいますでしょうか……、フフフ……」
 
「何だよ、アイシャ……、知ってんのか……?」
 
「覚えているわ……、ラダトームで……、落としたスラ太郎を拾ってくれた……」
 
ジャミル達の前に突如現れた、黒いコートを纏った白髪の男……、
紛れもなくアイシャがラダトームで出会った青年だった……。
 
「僕も皆さんとお話がしたくて、こうして等々姿を現しました……、
闇よりの遣い……?とでも呼んで下さい、どうぞ宜しく……」
 
青年は礼儀正しく気取ったポーズを取り、ジャミル達に挨拶した……。
 
「……気を付けて下さいっ……!!」
 
「この男、只ならぬ邪悪な気配を感じます!!」
 
いつもは大人しい巫女さん達が必死でジャミル達に向かって
注意を呼びかけ必死に叫んだ。
 
「そうか……、ラーミアを操ったのもテメエか……?」
 
「そんなに怖い顔をなさらないで下さい、今日はご挨拶代わりに
皆さんにお見せしたい人……では、ないですが、連れてまいりました……」
 
「ふざけてんじゃねえぞ、この野郎……!!」
 
ジャミル達はチビを庇いながら強く青年を睨む……。
 
「フン……、全く下賤な奴らだ……、猿以下だな……、
まあいい、おいで……」
 
「……ぴい……」
 
青年がそう言うと……、青年の陰から何かが姿を現した……。
 
「?……あ、あああっ……!!」
 
「な、何で……」
 
「チビちゃんが……、もう一匹……?」
 
「嘘でしょ……」
 
ジャミル達は戸惑いを隠せず、突如現れたチビと瓜二つの
紫色の小さなドラゴンを交互に見る……。
 
「君達が今、匿っているそのドラゴンが光の力を持つのなら……、
この子は闇の力を持つ、ダークドラゴンなのですよ、……バカな君達に
分かりますか……?」
 
「……う、うるせっ!!ちゃんと説明しやがれっ、だから、
そのドラゴンが何だっつーんだよ!チビと何か関係があるってのか!!」
 
「おや、分かっているじゃないですか……、ふん、……この子達は、
元々一匹で一つの存在だったのですよ……」
 
「どういう……、事だ……?」
 
「光の力と……、闇の力を持つドラゴンなのです……、どうやら誕生の際に
精神が分裂し身体も二つの存在に分かれた様なのです……」
 
「な……、んだと……?」
 
「……もう一つ、付け足しておきましょう……、その鳥を操ったのも
この子が生まれつき持った邪悪な闇の力によるものです……、
まあ、襲う様に指図したのは僕ですがね……、早い話が、僕達の
共同作業ですよ……」
 
……突如現れた謎の男からの衝撃の真相にジャミル達は更に
苦しめられる事になる……。

エピ67・68

もう一匹のチビ

「……結局の処……、あなたはチビちゃんをどうしたいの……?」
 
戸惑いつつも気丈な目でアイシャが青年に訪ねる。
 
「ですから、先程も申しました通り……、この子達は元々
一つの存在……、身体が別れたままではお互い、負担が
掛り過ぎるのですよ……、このままほおっておけばいずれは
2匹とも徐々に力が衰え、消滅するでしょうね……」
 
「……!!」
 
「そ、そんなあ……」
 
「チビちゃんが……消えてしまうかも知れないの……?」
 
「……」
 
「生き永らえさせる方法は一つだけありますよ……?」
 
「……何だと?」
 
「……闇の力、光の力……、一つの身体で両方を持つなど
不可能に近いのです……、この子たちは禁断の兵器として
誕生してしまった……、恐らくその為に精神も身体も半分づつに
別れたのでしょう……、ですから……」
 
「何だよ!勿体ぶらず言えよ!」
 
「……2匹のうち、片方の存在を主体とし、もう片方の存在を
消してしまえばいいだけの事ですよ……、ですから僕としては……、
闇の力の方を主体として生きて貰いたい、……その為には光の存在が
邪魔なのです……」
 
「……テメエはチビの方を消せって言う事なのか……!?冗談は
顔だけにしとけ……!!」
 
「そうよ……、そんな事絶対許さないわよ……!!」
 
ジャミル達は揃って青年を睨見続ける……。
 
「おやおや、気性が荒いですね……、ですが、あなた達の方こそ
どうなんです?光が生き残れば闇は消えるんですよ、すなわち……、
あなた方こそ、この子を消せとおっしゃっているんでしょう……?」
 
「……それは……」
 
逆に青年に問い詰められ、今度は何も言えなくなってしまう……。
 
「……早い話、両方消滅する前に片方が力尽きて死ねば
いいだけの事ですが……、先に闇のこの子の方が死んで
しまったら困るのでね……、手っ取り早く光の方を消して
しまいたいんですよ……」
 
「……酷い……、なんて事言うのよっ……!」
 
アイシャが再びキッと青年を睨んだ。
 
「あの……、どうにかして両方共……、生かす事は出来ないの……?」
 
「無理ですね!」
 
「そんな……、ストレートに言わないでよお……」
 
青年の余りにも即答な言い方にダウドは肩を落とした。
 
「……まあ、僕はこの世界を再び闇に落とす為に邪悪な
力の方を持つこの子の力を借りたい……、そう、女王の城で
卵の中から感じていた闇の力……、そうですよ、……この子は
邪悪な闇の力の方が遥かに強かった筈です……」
 
「……!?待って……、もしかして……、あなたが城から
卵を盗んだの?……ねえ……」
 
アイシャに問い質され、青年は一瞬、アイシャの方を見たが
すぐに目を伏せた。
 
「まあ、そうですが……、それについては今は話す必要は
有りませんね、この子もそろそろ今日は限界の様ですし……」
 
「グ、グウウウ……ウ、ウゥ……」
 
青年の足元にいたもう一匹のチビドラゴンが苦しそうに呻いた。
 
「それでは今日はこの辺で失礼致します、下賤な皆様、ごきげんよう……」
 
「ちょ、ちょっと待てよ……!おいっ!!」
 
ジャミルが止める間もなく、青年はもう一匹のチビドラゴンを
連れ、姿を消す。
 
「……このままじゃ……、いずれチビは消えるのか……?」
 
取り残された4人はどうしていいのか分からない状況になり……、
その場に立ち尽くす……。
 
「あの男、闇よりの者と言っておりましたね……」
 
「……大魔王ゾーマの志を継ぐ者なのでしょうか……」
 
「……きゅぴ?」
 
アイシャに抱かれていたチビが目を覚ます。
 
「チビちゃん……、大丈夫、大丈夫よ……、何も心配する事なんか
ないんだからね……」
 
アイシャが優しくチビを撫で、頬ずりする。
 
「皆さま……、今日は……」
 
「神殿でどうぞごゆっくりなさっていって下さい……」
 
「有難う、気を遣ってもらっちゃって悪いな……」
 
「いいえ……」
 
「いいえ……」
 
4人の心情を理解してか、巫女さん達が優しく微笑んだ。
 
「ジャミル、……皆、今夜は此処でお世話になろう……」
 
アルベルトの言葉にジャミル達が頷いた。
 
 
そして、夜……、チビはあの後、一旦目を覚ましたものの、
力を使った為、疲れてしまったのか、またすぐに眠って
しまった……。
 
「ね、ねえ……、ジャミル……、チビちゃん消えたりしないよね……、
ね……?」
 
震えながらダウドがジャミルに訪ねる……。
 
「当たり前だろ、……お前らあまりビクビクすんなよ、
普通にしてろよ、チビに気づかれる……」
 
「最近チビちゃんがよく眠るのは……、もしかして……」
 
「やめろよ……、アイシャまで……、頼むからさあ、
止めてくれ……」
 
「……あの人、ラダトームで初めてあった時もやたらと光と闇が
どうのこうのって私に聞いてきたのよ……、闇は邪魔なんでしょうか……、
とか……」
 
「それにしても……、またチビに隠し事が増えてしまったね……、
ごめんよ……」
 
謝りながらもアルベルトがそっとチビに優しく触れた。
 
「……俺は絶対にチビを消させねえぞ……、例え何が
あっても……だ」
 
皆の方を見ながらジャミルが静かに立ち上がる。
 
「消えるとしたら闇の方だ……、闇のドラゴンは破壊の為、
利用される為、産まれたんだ……、このままじゃ、あのクソ野郎に
利用されるだけだ……、だとしたら……、チビの方を主体にしなきゃ……、
何としてもチビを守る……!!」
 
「そ、そうだよ、……ジャミル……!このまま悪事に利用される
ぐらいなら……、闇の方が消えるべきだよ、絶対に……」
 
「アル……」
 
一瞬言葉を濁したが、アルベルトがジャミルの目を見て喋り終えた……。
 
「何にしても……、まずはホビットのおじさん達とも
話をするべきだよ、此処まで来たんだから……、早く女王様の
お城に行かなくちゃね……、ハア……、チビちゃん……」
 
ダウドも心配そうに眠ったままのチビに触れる……。4人はその夜、
神殿内にある古びたベッドを貸して貰い、疲れた心と身体を
休める事にした……。
 
「……きゅぴー、きゅぴー!」
 
「クィィィー!!」
 
「……?チビ……」
 
祭壇の方から声が聞こえ……、ジャミルも目を覚まし、
祭壇の方へ行ってみる。……其処ではチビとすっかり元に
戻ったラーミアが何か話をしている様な雰囲気であった。
 
「あ、ジャミルー!今ね、チビ、目が覚めたから、ラーミアと
お話してたのー!」
 
「ど、どうしたの……?チビちゃん……?」
 
元気になったチビの声に釣られたのか、ダウドまで起きて来た……。
 
「お前……、身体何ともないか……?苦しいとか……」
 
「何でー?チビ、元気だよお!」
 
「ね、ねえ、ジャミルっ!」
 
ダウドがジャミルを引っ張る。
 
「んだよ、ダウド……」
 
「もしかしたら……、消え掛ってヤバいのは闇の方かも
知れないよ……、チビちゃん、あんなに元気じゃん、……ほら、
闇の方は何か大分弱ってた様な感じだったし……」
 
「そうか……、そういや、あの変態野郎も何だか焦ってた様な
感じだったしな……」
 
「そうだよ、チビちゃんは心配ないよっ!うわーいっ!
チビちゃんの方が勝つんだーーっ!!」
 
「きゅ、きゅぴ……?ダウ……?」
 
ダウドは喜んで発狂し、チビに駆け寄るとチビを思い切りハグした。
 
「ぎゅうう~っ!はぐぎゅうう~っ!」
 
「ぴい~、……ダウ、おならしたぴい?」
 
「何にしても……、希望を持たないとな……」
 
ジャミルはじゃれあうダウドとチビを見つめる。……ダウドの
過激な愛情に少々オーバー過ぎるんでないかいとジャミルは思ったが。
 
「ねえ、こんな夜中に何してるんだい……?巫女さん達も
眠ってるから……、静かにしないと……」
 
「どうかしたの……?」
 
……結局、アルベルトとアイシャも目を覚ましてしまう。
 
「まあ、取りあえず、元気になったみたいだ……」
 
「あっ、チビちゃんっ!!」
 
アイシャも驚いてチビに抱き着き、ハグする。
 
「……きゅぴ~、アイシャもダウもー、本当にどうしたのー?」
 
あまりにも今夜はチビへのハグが激しいのでチビは戸惑い、
首を傾げる。
 
「皆、お前が好きなんだよ、うるせーだろうが勘弁してやってくれや」
 
「……う、うるさくないよお!チビだって、皆が大好きだもん!!
きゅぴーーっ!!」
 
負けじと、チビも二人にスリスリし返した。
 
「……やれやれ、負けず嫌いな奴らばっかりで困るな……」
 
「そうだねえ、プッ……」
 
「……何でそこで俺の顔見て吹くかな、アル……」
 
 
……例えチビの半身をこの手で掛ける様な事になったとしても……、
チビを守る事が出来るなら……、そう強く思わずにはいられない
ジャミルであった……。


お帰り、小悪魔

「きゅぴ?今日からラーミアに乗って行くの?じゃあ、もうお船は
乗らないんだね……」
 
今度こそ、本当に船旅も終了である……。名残惜しそうにチビが船の周りを
パタパタと飛び回る。
 
「そうだよ、それにしてもよ、たく、こんのバカ鳥めが、洗脳なんか
されやがって、弛んでるからんな事に……、あ、あてっ!」
 
「……ギュイ!!」
 
ラーミアが嘴でジャミルの頭を突っついた。……流血する後頭部を押えながら
ジャミルが喚く……。
 
「何しやがるっ!この糞鳥っ!!」
 
「よしなよっ、ジャミルはっ!……もう~、僕、今は回復魔法が
使えないんだから……、余計な仕事増やさないでよね!!」
 
「皆さま……」
 
「皆さま……」
 
「どうかお気をつけて……」
 
「どうかお気をつけて……」
 
「ご無事をお祈りしております……」
 
「ご無事をお祈りしております……」
 
再び巫女さん達がハモりながらジャミル達を見送る。
 
「へへ、んじゃ暫くの間、又ラーミア借りてくよ、よいしょっと……」
 
ラーミアの背に乗り、ジャミルも巫女さん達に挨拶する。
そして4人とチビを乗せたラーミアは再び大空へと飛び立った……。
 
「……んーと、此処から竜の女王様の城までどれくらいかなあ……?」
 
周囲を見渡しながらダウドがジャミルに話し掛けた。
 
「なーに、空飛んでいけんだからそれ程時間掛んねーだろ」
 
そう言いながらジャミルはラーミアの上で胡坐をかいた。
 
「きゅぴ……」
 
「ど、どうしたの、チビちゃん、具合悪くなっちゃった!?」
 
アイシャが心配してチビを手元に抱き寄せる。チビはううんと、
首を振って返事を返し、ちらっとアイシャの顔を見る。
 
「違うよ……、チビ、リトルの事……、思い出してたの……」
 
「リトル?ああ、あの小悪魔か、けど急にどうしたんだよ……」
 
「うん、突然思い出しちゃったの……、どうしてるかなあと思って……」
 
「……本当にお前変わったなあ、あんなに嫌ってたのによ、
……まあ、殺しても死なねえから心配しなくても大丈夫だよ」
 
「チビちゃんは優しいのよ、ね……?心配になっちゃったのよね?」
 
「……きゅぴ、会いたいよう……、リトル……」
 
 
 
    ……りゅーーーーーー……
 
 
「りゅ……?」
 
「りゅ……?」
 
「……何処かで聞いた様な声がしたわ……」
 
「したねえ……」
 
 
       りゅーーーっ!!
 
 
「……っつ……」
 
「りゅ……」
 
その変な物体は……、突然ジャミルの頭の上に落下し、
ぶつかって来たのであった……。
 
「あうあ~っ!!……まーた流血しちまったあ~っ!!」
 
「きゅぴ、リトル……!」
 
チビがジャミルの頭の上に落ちた物体を見上げて叫ぶ。
 
「りゅ、りゅりゅりゅ……」
 
「な、何で此処に……?」
 
「うそ……」
 
「はええ~……?」
 
突然の小悪魔の出現にアルベルト達も驚きを隠せず……。
 
「きゅぴーっ、リトルーっ!!」
 
チビはリトルに喜んで飛びつき、顔をペロペロ舐めた。
 
「?……バ、バカドラゴン……!?何でリトルの目の前にいるのりゅ!!
それに……、此処はどこりゅ!?」
 
「こっちが聞きてえよ、此処は上の世界だぞ……?」
 
「何りゅーっ!?コラ、ちゃんと説明しろりゅーっ!!」
 
小悪魔は状況が解らず、ジャミルに掴みかかる。
 
「だから俺が聞きてえって言ってんだろうがよ!!」
 
「だ、駄目だよ、抑えて……!又ラーミアの機嫌が悪くなったら
どうするんだよ!!」
 
アルベルトがジャミルと小悪魔を宥める。
 
「とりあえず……、何処か降りましょう、話を聞きたいわ……、
ラーミア、あなたも少し休みましょ……」
 
アイシャがそう言うとラーミアは急降下し、地面に着陸した。
 
 
「……久しぶりだねえ、リトル……、元気だった?」
 
ダウドも嬉しそうに小悪魔に声を掛ける。
 
「別におめーらに心配される筋合いねーりゅ、それより早く
下の世界に早く戻せりゅ!」
 
「相変わらず、可愛げのねえ奴だな……、第一おめえ……、
どうやって此処に来たんだよ、……何の用があって……」
 
「何も用なんかねーりゅ!空間に変な穴が突然開いて、
いきなり吸い込まれて此処に来たのりゅ!」
 
「嘘つくなよっ、俺らだって上の世界に戻るのに相当大変だったんだぞ、
それをだな……」
 
「きゅぴ……、チビね……、リトルに会いたい会いたいって
思ってたら……、リトルが飛んで来たの……」
 
「チビ、ちょっと黙ってろよ……」
 
「まさか……」
 
何か感じたのか、アルベルトの顔が青ざめた……。
 
「何だよ、アル!」
 
「もしかして、チビが……、リトルを呼んだのかい……?」
 
「……!?」
 
「りゅーっ!?」
 
「……えええええ~っ!?」
 
「きゅぴ……?」
 
 
「……信じらんねえ……、ルーラみたいなもんかよ……」
 
自分がした事を今一分かっていないチビは向こうの方でダウドと
ボール投げをし、遊んでいる。
 
「いや、ルーラとは違うんじゃないかな……、何て言ったらいいか……、
さっきのはサイコキネシス……、みたいな物かも……」
 
「自分が今思ったモンを瞬間的に呼び寄せちまう、アレか?」
 
「でも……、女王様のお城からだって自分で移動して
しまったんだもの……、チビちゃん本人にも分からない
未知の力がどんどん目覚めているって言う事なのかしらね……」
 
「……本人に自覚がないのがなんとも言えないけれど……」
 
「……おい、リトルはどうなるのりゅ?呼び寄せる事が可能なら、
元の世界に戻す事も出来る筈りゅ、早く返せりゅ……」
 
「無理だよ……」
 
「何りゅーーっ……!?」
 
「何でチビ自身が自分でも理解出来てねえ様な力を使う事が
出来たのか……、まだ本人に自覚がねえんだよ、はっきりとした事が
分る様になるまで無理だろ……」
 
「……な、なんつー迷惑な奴りゅ……」
 
「おめーに言われたくねーっての!」
 
「……ねえ、折角だから暫く私達と一緒に行きましょ?
もしかしたら、あなたの転生したお友達は上の世界にいるかも
知れないわよ、ね?」
 
アイシャが小悪魔の手を取り、優しく握った。
 
「……ふ、フン……!」
 
「おっ……」
 
すると小悪魔はくるっと回転し、リィトの姿になる。
 
「仕方ないね、責任とってこの僕をちゃんと護衛して貰うからね、
分ったかい!?」
 
リィトは気取って前髪を掻きあげ、ジャミル達の方を見た。
 
「……なーにが護衛だ、ボエーみてえなツラしやがってからに……、
バーカ!アホッ!」
 
「じゃあ、そういう事で、話は纏まったね、……おーい、チビー、
ダウドー、おいでー!」
 
「はーい!」
 
「きゅっぴー!」
 
アルベルトが呼ぶと遠くの方でチビと遊んでいたダウドが
チビを抱いて走って来た。
 
 
「…そういう訳で今日から暫く、小悪魔……、リィトと行動する事に
なるけど、いいかい?」
 
「うん、オイラは大丈夫だよおー!」
 
「チビも大丈夫ー!きゅぴーっ!」
 
「……うわああっ!この馬鹿ドラゴンめっ、人の顔を舐めるのはやめろっ!
大体、お前達のしつけがなってないからこんな……」
 
「おい、お前……、最初はチビにブレス吐かれるほど嫌われてたんだぞ、
それが今じゃこんなになったんだから、ラッキーだと思えよな……」
 
「何がラッキーだっ!冗談じゃないっ、あわわわわ!!」
 
「うふっ、何はともあれ、これから宜しくね、えーと、今はリトルじゃなくて、
リィトよね……、うんっ!」
 
「えへへ、改めてオイラも宜しくね、リィト……」
 
「……僕は絶対お前らに宜しくなんかしないぞっ、うわあああーっ!!」
 
「ぺろぺろー、ぺろぺろー」
 
「おいっ!バカ猿っ、この糞ドラゴンを何とかしろーっ!!」
 
「俺、最近耳が遠くなってさあー、齢かなあー……」
 
耳をほじくりながらジャミルがすっとぼけてみる。
 
「……誤魔化すなーっ!!……ああああーっ!ジンマシンがでりゅーーっ!!」
 
「やれやれ、これから暫くの間……、ますます騒がしくなりそうだなあ……」
 
賑やかな状況を見つめつつも、……アルベルトが笑った。
 
小悪魔の突然の加入は、この処状況が緊迫していたジャミル達の
旅路を少しは明るく照らしてくれそうであった……。

zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ65~68

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スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 続編 オリキャラ オリジナル要素・設定 クロスオーバー 下ネタ 年齢変更

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-11

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