My eyes

joy, anger, sorrow, pleasure (喜怒哀楽)

天使の少年リジュは眼(め)の不自由な少女シルキーと一緒に暮らしていました。
シルキーは家で僅かの内職しか出来ず、二人の暮らしは貧しいものでした。

ある時リジュは思い立って大サタンの住む城を訪ねました。
「僕の感情を差し上げます。そして代わりにシルキーの眼を自由にして上げたいのです」
その頃、感情というハートは天使から人へ。人から天使へと売買出来たのです。
勿論、秘密の悪い取引です。

悪魔の商人は、こう言いました。
「いいだろう。ただ売値と買値の双方の天秤が一致すればの話しさ。眼を治すには中々高くつく。喜びが500£, 楽しみが450£, 怒りは150£でどうかな」
「怒りは150£にしかならないの」
元々リジュは喜怒哀楽の4つの感情のうち1つだけをサタンに売り渡すつもりでした。
「両の眼を治すには、それなりの費用が掛かるってものさ。喜と楽の両方は人間にも人気の商品だけれど怒りは引き取り手が少ない上に使い途が無い。奇特な人間が怒りを起爆剤に使うくらいかな?今回は特別にこのサタンが前金で買い取る話し。喜怒楽の3つを渡せば、お前さんの好きなシルキーの眼を治すに充分な治療費になる」

哀を残して喜怒楽の3つを
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joy, anger, pleasure (喜怒楽)
リジュは頷くしかありませんでした。

そうして3年と3ヶ月が達ち、シルキーの眼は自由になって二人の暮らしは以前よりも少し裕福になりました。けれど3つの感情を売り渡し哀しみの感情しか遺されていないリジュは毎日、泣いてばかり。二人で、はにかむ事はもうありません。

少女シルキーは悲しみました。そして大サタンの城を訪れたのです。
自分の両の眼の自由とリジュのハートを返して貰う為に。
悪魔の商人は、健気な少女の申し出を愉快に思いました。
「残念ながら、もうその天使の3つの感情は人間の手に渡ってしまっている。遠い何処かの誰かに。今さら返す話しでは無いよ」

シルキーはこのままでは帰れない。愛するリジュの為に1つの提案をしました。
「それでは大サタン様お願いします。私の両眼(りょうめ)の自由と引き換えにリジュの哀を愛に変えて下さい」
「愉快、愉快」
大サタンは面白がってシルキーの望みを聞き入れました。

リジュとシルキーの生活は3年3ヶ月前と何ら変わりなくなってしまいました。
でも二人は今、愛に包まれて満ち足りた暮らしを送っているのです。

(了)

My eyes

My eyes

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-08

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