「衛士」
君の白き手に触れたるを
僅かに憶ゆは冷たきこの手
頬に、震えて触れたれど
割れたガラスの温度ばかりが
嘲笑ふやうに傷を生む
君のなつかしき白い手、…かなしい手
哀れをになう處女の手
まるで山奥に幽閉された
何も知らない幼い姫君のやう
こはれた水晶の懐時計たづさえて
水辺に咲く冬の白百合みつむれば
鳥と唄って
湖に泣くうつくしの我が君
手毬の刺繍羽に持つ
赤い鳳蝶の草に眠るを慈しみ
青い星に身体ゆだねて
なげ出した御足は力無けれど
うぶに恥じらう頬はすなおに頷く
うつくしの君…白百合の君
どうか私の微笑みなど忘れて
遠い故郷でしあわせになってください
衛士は宮を守れり
今でも一人守れり
「衛士」