初夏の窓

 連休最後の、人がごった返す日に
 わざわざ出掛けることないと思ったけど
 どうしても気になって行ってみたんだ。

 向かいのペンキ屋が塗ったみたいな
 見事な青空だったけど
 いつもの黒い服を着た。

 バスに揺られる間中、初夏に染まりだす街を窓から眺めていた。
 まだ、売れてないといいな――。


 店から出た瞬間、あたたかい陽が僕に降り注いだ。
 僕のシャツは、目一杯その光を吸った。

 シングルが入った袋握りしめて、これからやってくるリリーの季節を想う。

 次は、プラネタリウムがみたいと思ってるんだ。
 人が少ないとき、また行こう。
 よかったら家まで迎えにいくよ。

 袖をまくる。
 微かにリリーの気配が触れた。

初夏の窓

初夏の窓

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-06

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