七ならべ 2024年4月
駅舎が淡く
光り出すころ
遠い記憶が
近づいてくる
あの頃ぼくは
海賊王に
なれないことを
自覚していて
瑕疵ひとつない
紙ふうせんを
作ることだけ
考えていた
それが何かの
役に立ったか
ポストはいまも
赤らんだまま
どんよりとした
日々が続けば
白い音楽
聴きたくもなる
晴れないけれど
雨も降らない
午後の窓辺で
風もないのに
揺れるカーテン
均衡を得た
うたた寝のなか
とどく手紙が
沈黙を断つ
開いてみれば
八分休符が
ただ一つだけ
記されていた
誰も知らない
道をさがして
ただ闇雲に
歩きたかった
ぼくの地図には
色とりどりの
抜け殻だけが
記されていて
どの方角に
進んでみても
空虚な風に
吹かれるばかり
それでも星は
輝いてるし
羽さえあれば
なんとかなると
音の鳴らない
ウクレレ持って
人差し指の
旅をはじめる
七ならべ 2024年4月