七ならべ 2023年12月

象形文字の
生まれる夜に
見上げる星は
偽物だけど
ことばにのせる
感情だって
ホントかウソか
わからないから
抱えきれない
固い結び目
鞄に詰めて
止まない雨に
影を溶かそう



なにかを閉じて
冬がはじまる
それがなにかは
わからないまま
葉がなくなった
木々の向こうに
まだ体温は
あるのだろうか
ふたしかなこと
いくつかぞえて
もうすぐ街が
にぎやかになる



知らないことを
知らないままに
しておけなくて
星のかけらを
数えはじめた
望んだものが
手に届くとは
限らないけど
十二月だし
願いごととか
秘めていたって
不自然じゃない
星のかけらは
夜明けの人に
みつかることは
ありえないから
独り占めして
このまま夜に
居続けるんだ



つめたくなって
痩せた昨日の
ぼやけた景色
見てしまったら
あたたかい手は
どうすればいい?

殺し合うのが
仕方ないなら
夜も秩序も
焼いてしまおう
まだその方が
救われるから



雪の迷いを
知ってしまえば
目を逸らすなど
出来るわけない
どんなに寒い
夜だとしても
ここにいること
伝えたいから
星座になんか
なれないけれど
消えないように
揺れないように



感情なんて
花火のように
消えるものだと
思ってたけど
花火のように
記憶に残る
ものと気づいて
凍える窓に
書いたことばが
まるで真理の
ように嘯く
煌めく街に
戻りたいとは
思わないけど
冷めてしまった
缶コーヒーを
手放すことは
できないだろう



星の会話に
耳をすませば
ひとりの夜も
寂しくはない
しあわせなひと
そうでないひと
そのどちらにも
なれないぼくは
ぶっきらぼうな
よろいを脱いで
もう一度だけ
歌ってみるよ
きみが見てても
見ていなくても
あの約束を
歌ってみるよ



青い夢から
覚めてしまえば
色とりどりの
孤独な世界
記憶は海で
できているから
その断片が
忘れた頃に
押し寄せてくる
そしてぼんやり
ずぶ濡れている
波がすっかり
消えてしまえば
わたしの中の
あなたも消える
ただ穏やかな
海だけになる



居心地の良い
部屋を探して
何度も生まれ
消えてきたけど
結局それは
どこにもなくて
書くことさえも
雪雲になる



夜更けを待たず
雪は降り出す
希望のような
おまけのような
いずれにしても
ぼくは今夜も
中途半端に
やさしいきもち
持て余しては
ひとりの酒を
奏ではじめる
届いて欲しい
わけじゃないけど
埋もれて欲しい
わけじゃないから



なくしたものと
また出会えたら
どんな表情
すればいいのか
わからないまま
冬の節目を
見送っている
聖夜にひとり
プリンのような
揺れる思考に
溺れちゃうけど
白いなみだを
流せば、あとは
よあけのおとが
すべて飲み込む



なにを探せば
良いのかさえも
もうわからなく
なってしまった
それでも道は
続いているし
歩みを止める
わけにいかない
来年という
未知は昏くて
振り返っては
既知も昏くて
最終回が
来ないドラマの
火を消したいと
思ったりもする
そんな戯言
吐いているけど
朝はふつうに
やってくるよね



月のなみだに
触れたひとなら
やさしい闇に
守られている
重力なんて
幻想だから
たいせつなもの
ポケットに入れ
その衝動で
空も飛べるよ
それを夢だと
言うのであれば
すべてが夢で
かまわないから



凍てつく夜の
宙を見上げて
星の数だけ
後悔がある
ぼくのことばは
毒を抜かれて
味も匂いも
拍動もなく
淡い星座を
結び始める
届かなくても
書き続けると
言えるほどには
強くないけど
きみを笑顔に
したい気持ちが
雪に埋もれて
動けないんだ



時の行方を
追いかけたくて
もう捲れない
日めくりをみる
手にしたものや
うしなったもの
それらはすべて
霧だったから
気持ちはきっと
騒めくけれど
ぼくはあしたも
ことばならべて
風を待つしか
できないだろう

七ならべ 2023年12月

七ならべ 2023年12月

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-05

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