経済、生命、エニアグラム! いろんなところにあった大事なトリプルの話
分配なくして成長なし? 成長なくして分配なし? あとひとつ、忘れてません?
どこかの国のえらい人が経済政策について、「成長なくして分配なし」だか、「分配なくして成長なし」だとかいうような内容を語ったことがあるらしい。筆者としてはその真意は大層興味がないが、この文で対比されている成長と分配ともう一つの要素については興味がある。
まぁ、引っ張っても仕方ないので、経済政策の三種の目的についてさっさと話してしまおう。経済政策は、成長政策、再分配政策、安定化政策の三種類に振り分けられる。経済政策はこの三つが要なのだ。どれか一つが欠けてはいけないし、どれか一つを優先してもいけない。三つがバランスよくまとまっていることが重要だ。この、成長、再分配、安定化であるが、それぞれの理想は、GDPや生産性の増加、年金や市場システムの維持、不景気の解決に振り分けられる。これは余談になるが、安定化政策のために国債を発行して、好景気時につけを回すことは有向であるが、年金システムや所得格差是正に国債を用いるとそれによって財は回収できなくなるため再分配に国債を発行するのは芳しくはない。
閑話休題。この成長・再分配・安定化の三つ組であるが、実は様々な分野に類似したものが存在する。例えば、生物学、とくに生理学において、ホメオスタシスと呼ばれるメカニズムがこの三つ組と深く関係がある。ホメオスタシスはすべての生命がもつ体内を一定に保とうとする傾向である。勘の鋭い読者ならわかると思うがこれは再分配政策に相当するものである。どちらもその目的は系の維持にある。では、他の二つの政策に相当する生命のメカニズムは何であろうか。安定化政策に相当する生命の傾向とはアロスタシスである。アロスタシスについてはあまり耳にすることはないかもしれないが、自律制御や神経科学に興味のある読者であれば耳馴染みがあるだろう。アロスタシスは将来に訪れる問題を想定して、事前に解決する仕組みである。具体的には、外敵の発見に対してストレスホルモンを発生させ、事前に逃走闘争反応を動かし問題解決するのに役立っている。では、成長政策に相当する生命のメカニズムはなにか。それは、進化である。生命は進化というメカニズムを持つことによって、系をより素晴らしいものに作り変えていくことができるのである。そのためにはいくつもの世代をかける時間といくつもの失敗からの淘汰が必要である。成長のために長期な視点と倒産を受け入れることが必要であるのと同様である。
他にも、この三つ組に相当するものが存在する。例えば、エニアグラムのタイプ3は成長、タイプ6は安定化、タイプ9は再分配に相当する。タイプ3は常に自己の成長をもとめており、タイプ6は将来の安定を求めており、タイプ9は自己と社会の調和を求めている。エニアグラムの様々なタイプもこの三つ組の要素の組み合わせと考える事ができる。例えば、タイプ1は再分配と成長の組み合わせであり、タイプ8は安定化と再分配の組み合わせである。
さて、では、この類似した三つ組達はなぜ似ているのだろうか。おそらく、開放自律システムの理論にはこの三つ組が必要になるからであろう。しかし、まだ私はその論拠を持っていない。
いつか、開放自律システムの数理が完成し、様々な分野を結びつける日が来るのだろう。商業の算術と設計の測量術が結ばれた過去のように。
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