俺と時空と他人と
くだらない毎日
俺はくだらない人間だ。
友達はいないし、彼女なんてもちろんいない。
金は無い、挙げ句のはてに5年勤めた仕事を辞めて、無職だ。
「………………。」
最近は独り言さえ言わなくなった。
「いらっしゃいませ~」
元気よく挨拶してくれる 行きつけのコンビニの店員。
なぜか軽く頭を下げる俺。
最近は出かけるといえば、このコンビニだけだ。
弁当もパンも変わらないこのコンビニ。
まるで俺みたいで、俺が行くに相応しいコンビニだよ。
店長が厳しいのか、店員の愛想はよく、店内は清掃が行き渡り綺麗だ。
特に見たいわけでもないが、雑誌を手に取り立ち読みをする。
男性ファッション誌なんて敷居が高いな。
まるで俺が普通の男みたいじゃないか。
特に読まずにパラパラと写真だけながめ雑誌に傷がつかないように、そっと元にもどす。
「はぁ~…」
深いため息をついて、店を後にした。
くだらない家。
俺は母と二人暮らしだ。
母と二人暮らしだからといって、親父が死んでいるわけではない。
親父は家族を支える為に単身赴任で働きにでている。
親父も母も、もう何も俺に言わない。
それが、楽でもあり苦でもある。
母との関係は良好だ。
俺にとって、唯一話す他人が母だ。
「ただいま~」
無気力な帰りの挨拶
「おかえり~」
俺の今の状態をまったく気にしないかのような明るい返事。
それ以上の会話は思い付かず、そそくさと部屋に逃げ込む。
ここからは俺の人生の一番安心する時間。
俺の部屋は決して広く無く、特に面白味の無い部屋だが
他の誰にも邪魔されず、傷つけられる事の無い
俺にとって、絶対領域。
すぐに横になり目をつぶる。
他にやらなきゃならない事が沢山あるが、俺はとりあえず目をつぶる。
こうして俺の毎日は無駄に過ぎていく。
この時の俺にはまだこれから自分の身におこる事をまだ何も予測できずにいた。
始まり
夢を見ていた…
俺が正義のヒーローのとして、悪と闘う夢を…
弱気を守り、非道な悪と闘い、華麗な技でかっこよく…
「はっっ」
目が覚める
ぼ~っとした頭で周りに目をやると…
「あれ?」
「ここは?」
すぐに周囲の異変に気付く
そして、同時に今まで感じた事の無い痛みに襲われる
「いってーなんなんだよ、あぁいぁ」
それは我慢しきれない痛みで目からは涙がでてくる
身体は包帯だらけだ
足はパンパンに膨らんでいる、顔にも包帯が巻かれているようで
片目だけ見えるように巻かれている。
狭い視界で、隣を見ると隣にも誰かが包帯を巻かれて寝ている。
そして、その服装は
「軍服?」
隣の奴が着ている軍服らしき服と同じような服も俺も着ている。
そして、俺が寝ているのはどうやらテントの中のようだ…
そして、この嗅いだ事の無い悪臭が明らかにおかしいを物語る。
「なんだよ…ここ…」
目が覚めて、いつもの自分の部屋にいない事実。
そして、この圧倒的な激痛が夢では無い現実であることを実感させる。
痛みであまり頭が働かない、でもこの非日時の光景に変な汗をかき、
心臓の動きを早くさせる。
戦争
頭のなかが真っ白になっていく。
深く考えていけない…
目だけがグルグルと動いていた
このいじょうな光景と身体の痛み…
鼻につく血の臭い…
気が狂う…
気がついたら世界が変わっていて、
死にかけているなんて、なんの冗談だ
俺と時空と他人と