「置きざり」

 夢の私は笑ってる
 身体がかるく踊って
 唇よりも紅さした頬
 白歯もまぶしく笑ってる

 ゆめの私は微笑んでいる
 絶えず両眼を滲ませては
 水彩絵具のパレットばかり
 唇だけは
 薄桃色のぷるめりあ

 雨は滔滔降りました
 川に溶けて
 雪をつくって
 空に涕いて
 海に溺れて
 湖に沈む

 花は死なない
 何故死なない?
 もう(のこ)ってはいないのに
 水面(みなも)を冬の白鹿が駈ける音だけが…

「置きざり」

「置きざり」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-02

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