「坊や」

 烏の声も遠く去った
 保安燈がおぼつかなげに点く午前二時
 二段ベッドの上階で
 座ったままに足を投げ出す
 昏いオレンジがわたしを射す
 おぼつかなげな保安燈
 神経質な心の眼が
 頻りに耳をそばだてる
 眠りたがらぬ虚心(そらごころ)
 両方の手はもはや
 力を捨てて絆創膏しかなくなった
 爪はすっかりさびくさく
 舐めてみたって肉の味はもうしない
 唇ばかりを撫でまわして
 リップはみるみる赤くなった

 あゝ坊や
 緋色で遊んではいけないったら

「坊や」

「坊や」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-02

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