「冬の夜」

 凍鶴の
 ひとり残れる片割の
 うつむく瞳長い睫毛
 静かに閉ざして何を待つ?

 月は頭上に青き後光
 雲の(くら)きに虹の絵具筆から滴り…滲む

 凍蝶の
 死にし(ころも)にぽたり落つ
 春先のゆきどけの(かげ)なつかしく
 またゆきどけの哀しき泪なつかしく
 赤いつゝじの霜おびて
 なほも心を捧ぐる姿
 枯れにし燕子花の
 雪に埋められし微笑み…

 月は青く
 何にも刺さらぬ氷柱のように
 冬の夜と
  ともに眠りてゆめを見る…

「冬の夜」

「冬の夜」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted