学生生活
まだ、途中ですが読んでもらえると嬉しいです。
山田 光一 Ⅰ
地味って辛いよな。
「卒業証書授与。」
悲しいよな。
「右の者は小学校の全過程を終了したことを証します。」
苦しいよな。
「おめでとう」
もう十分わかった。
「これからの活躍を期待してるよ。」
もういいよな。
もう平気だよな。
ゆっくり手を伸ばす。
目の前に差し出されたいつも学校でもらうより少し大きくてしっかりした紙。
『卒業証書』の文字。
六年間通った学校。
毎日校門のところで挨拶をしながら「声が小さい」なんて怒っていた校長も今だけは優しい笑顔を俺に向けた。
最後だもんな。
当たり前か。
親もいるんだしな。
当たり前か。
練習通り頭を下げて舞台を降りる。
階段に差し掛かった時ふと俺の頭の中に「この舞台から降りてしまったら誰も俺の事なんか興味無くなるんだろうな…」って考えが浮かんだ。
それでも…俺の足は何度も何度も練習通り一切の狂い無く動いた。
在校生代表の座席の後ろを回って席へ戻る。
舞台ではまだ同い年の学校で毎日同じ教室に居た人が次々にこの六年間の最後を締めくくっていく。
あぁ
最後か。
六年間、よく言うけど長いようで短かった。
淋しい一面嬉しかった。
どこかで聞いたことのある卒業ソングみたいに風に吹かれて桜が散ってゆく。
「お前地味だな~」
この六年で何度も言われた。
そのたび俺は唇を噛みしめて拳を握りしめた。
地味
もう言われたくない。
俺の正直な気持ちだ。
気がつけば俺の足は勝手に立ち上がって音楽に合わせてちゃんと行進を初めていて勝手に退場しようとしていた。
何度も何度も練習させられた。
もう体にしみ込んでる。
こんなにたくさんの人数の中に居たらもう誰も俺だけを見てくれない。
俺は地味だから…。
体育館を出ると克哉と実が俺の方へ走ってきて同時に俺にぶつかった。
あまりにもいきなりだったからバランスを崩す。
二人は俺を見て最後までボーっとしてんなぁと笑った。
少しくせ毛でいつも通りの黒縁眼鏡の川中克哉とそのへんを歩いてる子供となんの違いも無く俺と同じく地味な宮野実。
俺がこの六年間でつくった最高の友達だ。
「いきなりすんな」
「今さらなんだよ」
「…まぁそうだな。」
「今日でお前と学校来れるのも最後か」
実がボソッとつぶやく。
そう。
俺は私立中学に見事合格した。
だから今日で最後。
こいつらとこうやって何でもない事で笑えるのも最後になるかもしれない。
「大丈夫。引っ越す訳じゃないんだろ?いつでも会える。」
克哉は俺に笑顔ばかり見せた。
今日くらい悲しい顔でもすればいいのに。
悲しんでくれた方が嬉しいかもしれない。
俺がいなくなって淋しい、何か足りないって思ってもらいたい。
でもこいつは俺に笑顔しか見せない。
そりゃ泣き顔なんか見せたくないのもわかるし、しけた顔して別れんのも嫌だけど一瞬くらい悲しい顔見せたっていいじゃんか。
そんな俺の思いとは裏腹に克哉はまだ笑っていた。
「いつでも連絡しろよ!」
「わかってる」
「さ~て教室戻りますか。最後の授業だ。先生泣くかな?」
ニヤニヤ楽しそうに笑う実は今を確実に楽しんでいた。
俺たちはいつもみたいに馬鹿な事言いながらいつもの階段を上ってた。
最後なんて嘘みたいだ。
なんて思ってたのは昨日まで。
今日になった途端に気持ちが入れ換わった。
俺たちは良くも悪くも目立たなかった。
その代わり地味だと言われた。
きっと二人は何とも思ってなかっただろうけど俺は違った。
その言葉は確実に俺に蓄積されていった。
ここで一つのピリオドだ。
俺は変わる。
もう地味なんて呼ばせない。
「?光一どうした?」
「!いや、急ご。始まる。」
「!あぁ」
二人の後ろを走るのがなんだか嫌で抜いて階段を教室へと駆け上がる。
「!よぉ」
「あ!」
俺たちは教室の前で立ち止まった。
そこには俺たちと正反対のクラスの中心にいる男子グループが友達同士でさっきもらった卒業証書の筒型の入れ物を刀がわりにチャンバラみたいなことをしていた。
おもわず立ち止まってしまう。
「今日で最後だな」
また別のメンバーが口を開く。
「最後まで地味だなぁ」
また口が開く。
悪気がないのはわかってる。
ノリだってわかってる。
それでも…
わかってても…
俺は唇を噛みしめた。
岡崎 由里 Ⅰ
…どうして
どこから狂ったんだろう…
笑顔、あいさつ
それは自然と友達が出来る魔法なんて誰が言ったんだろう。
嘘じゃん。
…いや、嘘じゃないか。
でも…。
親友は出来ないじゃん。
「おはよう」
いつも通り学校へ向かう電車に乗って本を読んでいる私にいつもの声が降りかかった。
いつも通りの車両。
いつも通りの時間。
いつも通りの風景。
いつも通りの人々。
いつも通りの私。
いつも通りの友達。
窓の外には4,5階建てのビルが何件か並んでいる。
その中には小さなオフィスだったり、秘密基地みたいなカフェでもあるのかな?
降りたことないから知らないけど。
目の前にはいつもみたいにちょっと茶色っぽい髪を綺麗にポニーテールにして優しい笑顔を向けている白井千春がいた。
千春の白い肌が眩しい。
「おはよう」
その声を聞くと千春はまた眩しい笑顔を向けた。
その大きい目にははっきり私が映っていた。
でもほんとは私なんてどうでもいいんじゃないかな?
ただ成り行きで私が映ってる。
映したくないんじゃないかな…?
ときどき思う。
千春が乗ってきたってことは次は降りるべき駅だ。
私の家は学校から遠い。
登校には1時間ちょっとかかる。
遅刻した時なんかは家が近い千春が羨ましくなる。
中学受験をして今の中学へ通ってる。
入学当時は嬉しかったし友達が出来るか不安もあったけど楽しかった。
毎日新しいことだらけで毎日毎日学校に通うのが楽しみで仕方なくて。
でも、今は違う。
学校に行っても不安になるだけだ。
「眠いぃ~」
私が膝に乗せている鞄にうつ伏せになりながら言うと千春は小さく笑った。
「何時に寝た?」
「ん~…ご想像にお任せしま~す」
「大体わかった。またマンガ?」
「んん。まぁ」
「また貸してよ」
「いいよ!次は何がいい?恋愛系?友情系?それともホラー?少年もの?」
「友情かな」
「じゃあ明日持ってくる!」
「先生に見つかんないでよ」
「わかってるわかってる」
なんて話してるうちに窓の外の景色は変わって次の駅へと向かう。
周りにはうちの中学の制服がちらほら目立つ。
あちこで先輩や後輩の声が聞こえる。
中3の私達だけど6年一貫教育だから高校まである。
最高学年だけど違うわけだ。
妙な圧力を感じながら毎日を過ごしている。
雲がジトーとして雨が降りそうだ。
こんな日はテンションが上がらない。
元からだけど…。
改札を出たらすぐ学校だ。
いつもみたいに生徒会の先輩が校門のところで挨拶をしていた。
少し会釈をして前を通り過ぎる。
さっきから千春は今人気のアイドル歌手の話しをして楽しそうにはしゃいでいる。
正直私はアイドルに興味はない。
それでも笑顔を絶やさなかった。
少しでもつまらなそうな顔を向けたらこの関係が壊れちゃうだろうから…。
「昨日見た?すっごくかっこよかったよ!」
「あ…ごめん。昨日すぐ寝ちゃって…見てない」
「そっか」
嘘。
見るつもりなんて無かったし、そんな番組のこと自体忘れてた。
「そうそう、英文法今日テストだね」
「あ~…。なんにもやってない」
さりげなく話しの内容をそらす。
千春はきづかない様子だった。
「私も…」
「休み時間やる」
「今日は遊んでる暇ないね…」
他愛も無い会話をしながら下駄箱から上靴を取りだし地面へ向かって投げつけるわけでもなく落とす。
「あ!千春!」
千春のその言葉で私は固まった。
しかしずっとそのままで居る訳にもいかず上靴を履いた。
きた
きちゃった
美奈ちゃんの声が聞こえる。
明るい声
元気な声が私をすり抜けて千春へ届く。
「あ!美奈、晴香!」
まるで私なんていないかのように千春の元へ2人は歩いて行った。
きっと2人の目に私は映ってない。
そのへんにいる知らない先輩とか後輩みたいにただの背景なんだろう。
「おはよ!」
「おはよ~」
「早く教室行って英文法勉強しよ!私なんにも手つけてない。」
「あ…」
千春が私の方を見た。
優しい千春はきっと気を使ってくれてるんだろう…
「あ、私職員室行くから先行って」
「わかった。じゃあ教室で!」
三人は私を残して教室へ向かう階段へ向かった。
楽しそうな笑い声を奏でながら…。
一人取り残された。
毎朝の事だ。
話しかければみんな返事をしてくれる。
でも話しかけてきてくれるのなんて千春ぐらいだ。
千春は優しいな…。
正直千春は学年一かわいい。
なのになんで私なんかに話しかけてくれるんだろう?
小学校から同じ山田光一君は今やクラスの中心人物だ。
正直私は彼の存在をあまり知れあなかった。
知ってたけど話しかけようとも思わなかった。
同じ中学だって聞いて仲良くしようと思ったけど彼は地味だった。
山田君には悪いけど入学そうそうから地味な奴と仲がいいと第一印象が地味になる。
友達が出来るか不安だった私にとってそれだけは避けたかった。
それなりに花のある人物には人が集まると母が言ってた。
あとは毎日挨拶を続けることだと言った。
そうすれば友達がたくさんできるって言った。
でも…
親友ができるとは言ってなかった。
結局私にずっと一緒にいてくれる『親友』はいない。
山田君は中学に入ってこの2年で完璧に地味から卒業した。
私は…地味になった。
いつの間にか私は自分の席に座って窓の外を頬杖をついて眺めていた。
チャイムが時間を知らせる。
みんなばたばた席に着いた。
静かになった教室に先生の姿。
号令がかかる。
また…
一日が始まった。
山田 光一 Ⅱ
「おはよ」
「!よお」
また一日は始まる。
靴箱に手をかけた俺と錬太の前に賢駄が姿を現した。
「英文法やべえ」
「あ…俺も」
「俺なんてもうダメなのわかってるから勉強すらしてねえ」
そんな二人の会話を聞きながら笑う。
この学校じゃ珍しい不真面目感を醸し出す三人組にみんな少し距離を置いている。
小学校一緒だった岡崎もだ。
あいつがしゃべらなくて助かった。
小学校の頃の俺が見たらきっと驚くだろう。
けど、コレが俺の今まで目指してた地位だ。
目立つグループの人間。
地味で見向きもされない本当の俺とは真反対。
それが今の俺。
「なあ、明日カラオケ行こうぜ!」
「お!いいねえ」
「俺ファミレスがいい」
「光一は?」
「?俺はどこでも」
「ファミレスだろ!俺、あそこのチキン食いたい」
「別にどこでも一緒だろ」
「あそこのが良いんだよ」
ふざけた他愛のない会話でもこの位置に居ると地味な頃とは違うきがする。
結局目立った奴は勝ち組。
地味は負け組だ。
俺は小学校の頃気付いたからさっさと抜け出した。
克哉と実は良い友達だけど地味だった。
あいつらは負け組だって気付いてない。
馬鹿だなぁ…。
さっさと気付きゃあ抜け出せたのに。
演じてでも俺はこの地位を守りたい。
「じゃあじゃんけんって事で!」
「よっしゃっ」
廊下のど真ん中で繰り広げられるじゃんけん大会を横目にいかにも私立な生徒どもが歩いて行く。
地味
心の中で呟く。
もう戻らない。
「じゃんけん、ぽんッ…あいこでしょ…よっしゃぁ」
「うわーーーーーーーーーーーカラオケか…」
転がり込んだ賢駄に錬太は勝利のピースサインを向けた。
「賢駄、次行こうや」
「わかった!次絶対ファミレス!」
「さっさと教室入れ」
「三皿!三皿食うから」
「わかったわかった。自腹でガンバ」
ぽんっと賢駄の肩を叩いて先に入った2人に続いて教室へ足を延ばす。
賢駄も渋々後に続いた。
「あ!錬太おはよ」
白井千春を含む女子数人が錬太を囲む。
「相変わらずあいつはモテるなぁ」
賢駄が隣りでぶつぶつ言っている。
「確かに」
答えて自分の席に向かう。
女子になんて興味ない。
ただココに居られるなら…。
「そうそうこないだのマンガ返す」
「!サンキュッ」
「最高だわ!」
錬太からマンガを受け取り鞄に掘り込む。
「やべっブタ来た…じゃあな」
錬太は席に向かった。
ブタってのは担任で単純にブタみたいだから。
まるまる太ったその体は針でさしたら風船みたいに飛んで行くんじゃないかってレベルだ。
タオルで汗を拭きながら短い足を急いで動かしながら教卓へ向かって前進する。
そんなに暑いか?
疑問が浮かぶ。
きっと近くは汗臭い。
ココで良かった。
俺は自分の席替えのくじ運の良さに感謝した。
岡崎はいつもみたいに一人で外を見ていた。
隣りになったのは初めてだ。
気付けばこいつは一人になってた。
数年前は中心で笑ってた奴が…。
地味になったな…。
心の中で呟き自分と地位に安心し笑いがこみ上げてくるのを必死で抑え込んだ。
チャイムが時間を知らせた。
みんなばたばた席に着いた。
静かになった教室にブタ。
号令がかかる。
また、
最高の一日が始まった。
長岡 来星 Ⅰ
「なーがーおーかー」
「あ、おはよ」
寒い…。
学ランのボタンを一番上まで止める。
きっと前を歩いてるあのキラキラした二人はこんなことしてないだろう。
山田光一を中心にキラキラしたメンバーが入学と同時に集まっていった。
取り残された俺と原口大助は何となく一緒にいる。
目立たない方が何かと楽だ。
授業前のHRでも調子に乗ってふざけて注意されんのはキラキラした奴ばっかり。
俺たちはそれを見てるだけだ。
楽でいい。
「英文法やった?」
「まあ一応…。」
本当はめちゃくちゃやった。
でも口に出さない。
それが俺たち。
「お前は?」
「ん?まあ」
こいつも俺と一緒だろう。
口に出さないで楽に生きる。
そこが一致するから俺たちは一緒にいれるんだ。
「ばっかじゃねーの」
「うっせえなっ」
少し前を歩く山田くんと一丘くんが大声で笑い始めた。
何となく俺たちは黙り込む。
あまりこいつらの後ろを歩きたくない。
肩身が狭い。
「お前馬鹿だからなあ」
「バカバカうっせえな」
声が聞こえるだけで黙り込む自分達は嫌いだ。
でも仕方ない。
大人数で行動したい時はメンバーに入れられてどうでもいい時は見向きもされない。
傍から見れば真面目な子達なんて言われる。
実際は違う。
「脳みそ変えたら?」
「できるかよ」
ただ…
「医者行くか?馬鹿治すびょ―いん」
「俺は正常だ」
いいように利用される…
「さっさといこうぜ」
「話そらすなよ」
『駒』だ。
遠ざかる二人のキラキラした背中が眩しく…羨ましい。
もし俺があんな風になったら…。
考えないわけじゃない。
「俺たちも急ぐか。時間ギリギリだし…勉強もしたいし」
「っああ」
すぐそこに学校が見えてる。
今日は二つもテストがある。
勉強しなきゃ…。
靴箱は混雑していた。
同じ電車のメンバーだ。
山田くんも一丘くんはもちろん、さっき合流したんだろう京橋くんを含めた三人がカラオケがどうのこうの騒いでいた。
また黙ってしまう俺たちにうんざりする。
あ…。
白井千春…。
階段を友達と楽しそうに笑い声を奏でながらトントンと上っていく彼女がそこでしゃべってる三人組なんかよりずっとキラキラしてる。
どうやら俺は彼女が好きらしい。
彼女に似合うのはそれこそ山田くんみたいな人達だ。
ただ見てるだけで幸せだ。
しゃべった事なんて無い。
目に入ると追ってしまう。
きもいと思われても仕方ない。
不意に突っ立っている岡崎さんが目に飛び込んで来て我に返る。
岡崎さんはどちらかというと俺たちよりだと思ってる。
そう俺たちは目立たないのが一番。
そう自分に言い聞かせながら大助と階段を上る。
今日も一日目立たずに過ごそう。
教室に入るとすぐ自分の席に付いて問題集を開く。
シャーペンを動かすたびに頭の中が英単語で埋め尽くされていく。
have take can
カラフルな声が聞こえる。
stop you tought example
楽しそうだな…。
Today feel now
羨ましいな…。
あ…先生来てる。
チャイムが時間を知らせる。
みんなばたばた音を立てて席に着いた。
静かになった教室に先生が満足そうに前に立つ。
号令がかけられる。
また、
一日が始まった。
山田 光一 Ⅲ
「さっさと行こうぜ」
「走んなよ」
「声かれるまでやるからな!」
鞄を振り回しながら錬太が叫んだ。
「分かったから落ち着け」
「もう声かれるぞ」
「やべーやべ、そういや昨日の英文法どうだった」
「さっき返ってきた奴?」
「そうそう。俺マジやばかった。」
「俺なんてブタに『もう少し…頑張ってみては…どうですか』って言われた」
賢駄がブタのまねをしながら言う。
正直似てる。
気が弱そうなとことか。
「似てる似てるっ」
「やべえ。それで文化祭出ろよ」
「無理に決まってんだろ」
「案外いけるかもしれねえぜ」
「無理だって」
「そういや、誰だっけ?満点だった奴」
「ああ、長…先」
「長松じゃね?」
「長…」
「長岡だ!!」
「それそれ」
「すげえよな。何時間勉強してんだよ」
「一日中じゃね?」
「まあこんな規則破ってカラオケ行かねえだろ」
「うわー無理だわ。真面目君」
「俺もーー」
その二人の言葉が俺に突き刺さる。
名前も覚えてもらえない。
小学校では5年でやっと名前を覚えてもらった記憶がある。
5年かかった。
長岡はきっとこいつらに一発で思い出せる程度には覚えてもらえないんだろう。
「光一?大丈夫か?元気ないな」
「英文法そんな悪かったか?」
「っそうなんだよ…。」
何となく流れに任せる。
二人の話しはどんどん進んで行った。
もう長岡の話しは出なかった。
そんなもんだよな…。
自分もそうだった。
霧みたいな存在。
空気じゃない。
空気は見えないけど、霧は存在はわかる。
が、見向きもされない。
そのまま存在に気づきながらみんな興味無下げに通り過ぎて行く。
時々話題になってもさっきみたいにもみ消される。
あー、やだやだ。
ココでよかった。
また心の底からココにいる俺に感謝する。
盛り上がってる2人につられて叫びながら歌う俺がいる。
「おお!」
「結構上手いな」
「だろ?」
歌い終わって座り込みコーラを口に運ぶ。
よく一人で練習したからな。
「次は?」
「ちょいきゅーけー」
「そういやもうすぐ中間だな」
「ヤな事思い出させんなよ」
「俺んとこの地元中学明日からだってさ」
「俺らの方が遅いじゃん」
「どうせ一緒だろ」
「…まあな」
「お!そろそろ帰るか」
「!じゃあこれラストな」
画面に曲名が映し出される。
「よっ待ってました!!」
錬太のお決まりだ。
この曲は必ずラストに来る。
俺的には流行りの曲なんかより20年くらい前に
大ヒットしたこの曲の方がずっと好きだ。
「俺!錬太歌わせて頂きます」
「おおおおお」
曲が始まって錬太が歌ってた本人のまねをしてマイク片手にポーズをとった。
「うまいうまい」
俺たちは爆笑しながら時々ファンみたいに「きゃぁぁぁ錬太く~ん」なんて言ってみた。
そのたびに錬太は「やめろよ」って叫んだ。
それが面白くてたまらない。
俺は『ココ』が気に入っている。
学生生活
ありがとうございます!