少女



ひび割れた透明(とうめい)なグラスと
()(たび)をする(よう)な風の音
わたしはわたしの一部分(いちぶぶん)だけを
きっとどこかに置いてきたの


(ふえ)が聞こえるわ
上手でも下手でもないような

虹が見えたけど
2〜3色の半端なものだったり


此処(ここ)には何もなくて
わたしがひとり、ひとりのわたし
偶然(ぐうぜん)見間違(みまちが)うほどの憧憬(しょうけい)を見つけたの!
ああ この体を支配(しはい)して
ああ わたしがわたしでいられるように
ああ この体は支配される
右と左に生み出された 天使と悪魔
その
中心にて


完全に割れてしまった
思い入れもないようなグラスのかけら

破片(はへん)を踏んで怪我をしてしまったわ!
だけれどこれでおしまい
傷口はもう見当たらないもの


優雅(ゆうが)孤独(こどく)と読み間違えた
本の続きは産まれない

約束が何かあったはずだわ
もうなにも覚えていないけど



明けて 暮れて
太陽は忙しいみたいね
わたしの()(あま)る時間を
(わた)し合えたらいいのだけれど

昔話は苦手だった
登場人物はどこにもいないから!
冷めたコーヒーですら味があるというのに
あなたは失格ね
その次の言葉は言えないままに。


海よ、海
見渡す限りの海があって
わたしはそこに浮かぶ無人(むじん)の心
希望と呼ぶには相応(ふさわ)しい悪夢だったの!
ああ 指と指が重なって
ああ コントレイルすら曲がるのに
ああ 支配されたこの体が()ちて
おとぎ話のようなループ・タウン
くる
くる まわって
ひとりごと


海の数を数えてみたの
何度数えてもひとつだけ
告白はきっと届かないから
空に向かって絵を描くの。

輪郭(りんかく)一つ
体を一つ
(ひとみ)は二つ
心は…ひとつ

わたしはひとり
ひとりのわたし

ここには何もないがある世界



偶然と見間違うほどの空を(なが)めたの!
わたしもどこへだって()けるのよ
小さい船で

小さい船で、向こう(ぎし)まで

片道切符(かたみちきっぷ)
いいえ違うわ

私は私を支配する
支配された体は 私の意思で前へ進むの!



グラスはもう
水でさえ、飲めないままに。

少女

少女

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-21

Copyrighted
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