『煙草の灰』
初めての顔で
何にも知らないみたいに
『煙草の灰』
ひとつひとつ数える
その指が落とす灰
アタシの胸の内も
ひとつひとつ落として
蝶がとまっただけよ
気にするほどのことじゃない
だけどどうしてこんなに
貴方の指は求心力があるの
あの蝶はあの蝶で
とても綺麗だった
次の蝶も綺麗なんだろうけど
貴方の前で叩き落とし
ぐちゃぐちゃに
踏みつけてしまえるものなら
ねえ、それでも笑うの?
笑えるの?
暴力的な支配欲を
軽く躱して素知らぬ振り
でも解ってるはずよ
満たされない欲は
いつかコップから溢れるわ
アタシの指にとまった蝶を
凝視した貴方の目の奥に
消せない火
「だから言ったのに」
『煙草の灰』