『煙草の灰』

初めての顔で
何にも知らないみたいに


『煙草の灰』


ひとつひとつ数える
その指が落とす灰
アタシの胸の内も
ひとつひとつ落として

蝶がとまっただけよ
気にするほどのことじゃない
だけどどうしてこんなに
貴方の指は求心力があるの

あの蝶はあの蝶で
とても綺麗だった
次の蝶も綺麗なんだろうけど

貴方の前で叩き落とし
ぐちゃぐちゃに
踏みつけてしまえるものなら
ねえ、それでも笑うの?
笑えるの?

暴力的な支配欲を
軽く躱して素知らぬ振り
でも解ってるはずよ
満たされない欲は
いつかコップから溢れるわ

アタシの指にとまった蝶を
凝視した貴方の目の奥に
消せない火



「だから言ったのに」

『煙草の灰』

『煙草の灰』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-18

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