初めて寿司を食べたときの話

自分は本当に擦れた、本当にほんとうの意味で嫌な子どもだった。「焼いてない魚なんてなんでみんな喜んで食べるんだ」そう思っていた。寿司が嫌いだった。食べもせず「焼いてない肉を食うなんて野蛮では?」と思っていた。全くの嫌な子どもだった。

そんな私も大人になりコンビニでバイトをしていた。当時の私は使えないバイトだった。初めてのバイト。レジで立ち尽くし、客を待つことしか知らなかった。品出しが苦手だった。客を待たせることが不安だった。そんな私にベテランのパートさん(Yさん)はいつも苛立っていた。夕方のバイトはYさんと二人きり。Yさんは私の面倒を見ながら仕事をしてくれていた。

バイト先のコンビニの斜向かいに葬儀屋があり、時折余ったお寿司など分けてもらうことがあった。その日の夕方、店長は「夕勤の人と夜勤の人でわけて食べてね」と言い残して帰っていき、Yさんと二人きり。そんなとき、「焼いてない肉は食わない主義なので」と言い出せず「私、お寿司食べたことないんです!」と咄嗟に出た言葉に、Yさんは絶句し、その翌日から優しく接してくれるようになった。不遇な愚図だと思ったに違いない。

初めてのお寿司はわさびが辛かったが、大人なので普通に食べることができたし美味しかった。

私の実家は何週間かに一度、土曜日はお寿司が夕食に並ぶ日があった。(多分学校が半ドンの日だな)
「焼いてない魚なんか食べるもんか」と子どもながらに拒絶し、その日はいつも私の為にメンチカツが用意された。
今日、久しぶりにメンチカツを買ったつもりが牛肉コロッケだったので思い出した話。

初めて寿司を食べたときの話

初めて寿司を食べたときの話

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-17

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