‪✕‬印

俺のさあ、俺の

頭上にある‪✕‬印(ばつじるし)を消してくれよ

こいつ今まで頭ん中に収まってたのにさ

外に出ちまったんだよ急にな

みっともねえよなあ

でもどうしようもねえんだよ、俺じゃあ

為す術なしってこった、そんでお前さんに泣きついてるんだけどよ

いや自分でも信じらんねえよ全く

生まれてこのかた他人に頼ったことなんかただの一度もなかったってのに

見ず知らずの、ゆきずりの他人を捕まえて泣きついてんだもんなあ

酷えザマだよほんとに、性質(たち)が悪いったらありゃしねえ

なんでこうなっちまったんかなあって

何遍(なんべん)繰り返してもわからねえんだよ

もう手遅れなんだよ

自分はこうならない、なるはずがないってお前、そう思ってんだろ?目が、目の微かな泳ぎがそう自白してるぞ

まあ心配すんなや兄ちゃん、この奇病の胚芽は

全員が生来的に持っているから

‪✕‬印

‪✕‬印

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-14

Copyrighted
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