『彼方』

移動遊園地の夜
まやかしの美しさに酔う夜

『彼方』

小さい観覧車を強請れば
窮屈な席を二人で分け合う
小さなお願い事を叶えてくれるのは
いつも貴方だけだった

海の方を差すその指が
アタシのものになったらいいのに
目線の先には遠くキラキラ
あのキラキラに貴方は住んでるのね

ここで大人しく待つだけと
弁えたことを言えば悲しげに
ちょっとだけ笑ってくれるの
その顔が好きだった

たまにしか会えなくても
確かなものがなくても
アタシはずっとここで待つ
ママがそうしたように

キラキラを掴むのは
罪深いことよって言いつけを
ちゃんと守っているの
貴方の場所には行ったりしない

真夜中になる前に
貴方は去って行く
背の高いシルエットが
現実に戻って行く

神様なんか信じてない
アタシが信じるのは
ママと貴方だけ
今はただ貴方だけ

「少し泣いてアタシはまやかしに身を委ねる」