『日陰』

馬鹿な男を愛したものだと
君は笑ってくれますか


『日陰』


明日殺されるから
今日のうちに君を
囲ってしまおうと思うのです

もし君さえ良ければ
その垣根を越えて
こちら側に来てはくれないだろうか

解けかかった紅い帯を
その柔い手で庇いながら
君は何でもないように笑った

この世界に天国があるとすれば
それは詰まり君であるべきで
その天国を統べる神は
わたしであるべきだと思うのです

派手な着物は似合いやしない
これで充分ですと
君は何度も首を振るけれど
それでも受け取らなければならない
君がわたしを拒む訳がないのだから

その垣根には茨があってね
超える時に君の脚は傷だらけになるだろう
けれどその傷こそが
わたしたちの愛の証になるのです


「盗人猛々しいとはこのことだわ」

『日陰』

『日陰』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-31

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted