『日陰』
馬鹿な男を愛したものだと
君は笑ってくれますか
『日陰』
明日殺されるから
今日のうちに君を
囲ってしまおうと思うのです
もし君さえ良ければ
その垣根を越えて
こちら側に来てはくれないだろうか
解けかかった紅い帯を
その柔い手で庇いながら
君は何でもないように笑った
この世界に天国があるとすれば
それは詰まり君であるべきで
その天国を統べる神は
わたしであるべきだと思うのです
派手な着物は似合いやしない
これで充分ですと
君は何度も首を振るけれど
それでも受け取らなければならない
君がわたしを拒む訳がないのだから
その垣根には茨があってね
超える時に君の脚は傷だらけになるだろう
けれどその傷こそが
わたしたちの愛の証になるのです
「盗人猛々しいとはこのことだわ」
『日陰』