『私の男』
お行儀よくしていたわ
貴方以外の前では
『私の男』
バレエ教室の帰り道
夕暮れの坂の向こうに海
この時間が好きよ
貴方と指を絡める時間
欲張りなのは性分だから
そこは諦めて欲しいの
ひとりぼっちの貴方を
慰める術だけ知っていた
世界でたった独り
寄る辺なく震える白い指を
温めるみたくギュッと握る
これがアタシの存在意義
いつか転がるみたいに
破滅が待っているのかも
でも怖がらないで
アタシだけは裏切らない
貴方がお爺さんになった時
アタシの気持ちを思い知るわ
どんな姿でもどんな不幸でも
宝箱に隠した玩具の指輪と一緒
大切に大切に引き出しに仕舞うから
永遠に輝くものもあるのだと
しっかり思い知って
またアタシに恋してね
「一生続けば大したものでしょ」
『私の男』