ハイリ ハイリホ(25)(26)
一―十三 パパ・二―十三 僕
一―十三 パパ
泣かせる台詞だ。パパと一緒にだって。普段は、毎日、仕事が忙しいため、遊ぶことはもちろん、夕食も別々だ。休みの日ぐらい、父親と一緒に何かをしたい気持ちなのだろう。俺だって一緒だ。手を握ってやりたいし、いたいけな寝顔に俺のほほこをひっつけたい。この瞬間が、俺にとっては最高の幸せだ。一日の疲れた分伸びた不精ひげをいやがってか、眠りに落ちた子どもは顔の向きを変える。
愛情の拒否か。いや、そうじゃない。俺の存在を認めてくれたのだ。ありがたいことだ。そうだ。どうせ地獄に落ちるのなら、竜介と一緒がいいのかもしれない。いかん、いかん、何をたわけたことを言っているんだ、この俺は。竜介はこれからの成長していく人間だ。未来ある人間だ。
俺も、物理的には成長し続けているが、破滅に向けての階段を登っているに過ぎない。こんな、俺と一緒にしてはいけない。一緒がいいのに、一緒は駄目か。右斜め四五度の気分。どこにも下がれない。立ち尽くすのみ。ある意味で、じゃんけんの膠着状況。後だしじゃんけんで解決可能か。とにかく、竜介を危険な目に遭わせてはいけない。まずは、そのことから実行あるのみ。
「人食い大男も、雷さんも、金のハーブも、金のガチョウも見えないよ。だから、もう、パパの足から降りなさい」
二―十三 僕
そうきたか。何かしらないけど、昔読んだ、童話を思い出した。今のパパの言葉から推測すると、ジャックと豆の木の話らしい。でも、雷さんは登場しないはずだ。それとも、日本バージョン、パパバージョンでは、人食い大男の友だちに雷さまがいるのかも知れない。人食い大男が雷さまなのかも知れない。
だけど、これだけの情報では、話が掴めない。もっとパパのことを解りたいから、このまま話を続けてみよう。僕って大人だなあ。パパ、今度は、僕がボケるから、突っ込んでよ。
「ちょっと待ってよ。今から、すぐにパパの側に行くから。しまった、あー、いたたたたーあ」
ハイリ ハイリホ(25)(26)