ウェルテルの覚醒

ウェルテルの覚醒

日が昇る
溢れんばかりの歓喜をたたえ
ありのままの充実うたいて
おお 今ぞ
日は昇る
 日は昇る…

おお
この黎明を迎えるに
幾夜を吾は耐えけりや
君がために吾が胸は
嵐の如く波打ちて
眠るに眠れず
月向かい
毎晩 苦悶を吟じたり

吾は気づきぬ
吾が最も望しは
真実の愛 
あなたへの誠を吾が身に宿すことであると

おお
いざありのまま
内なる広野を謳わんぞ!

吾は青年なり
手には果たすべき使命があり
胸には正義の血潮刻々と脈打ち
足踏みて立つは安国の大地!
吾が見つむる先
未来の世界こそ
吾が人生の主戦場であり
情熱の檜舞台なのだ!

何事のあろうとも
吾がありのままのこの生命
正義に燃える焔の止みたるはなく
使命の道を前進せざるはなし

おお
だからこそ
だからこその
あの夜の喘ぎであった!
ああ
君や知る!
月に嘆きし吾が慟哭を!
使命を自覚すればこそ
真を求めて嵐と舞いゆく
青春の歓喜
友と奏でし春の曲
頬染まる紅き血潮に
吾が身は踊った
なれどもなぜか!
吾が征く道などつゆしらず
君への情熱(おもい)
収まりしらず
意(こころ)かなたへ飛びゆかんとす!

友は言いけり
ありのまま
今に夢中になればよし
未来(さき)への憂いにたつよりか
その恋慕の求むるままに
心燃やして
城をば落とせ と

ありのまま!
ありのままだからこその
月光ではなかったか!
抑えんとするもおさまらで
二心に息も絶え絶えに
吾が身 双手に引き裂かれんとの
必死の哀訴!

吾は叫びぬ
月よ!
この世のなんと 無惨かな!
ありのまま
姫君(きみ)を愛してこの胸を
漲らすのは この時と
愛の焔 今に今にと猛けれど
その幸薄く 束の間に
未来は鎖に縛られて
鳳雛 哀れ 檻の中
地平はいよいよ暗かりき
ああ 月よ 
なんと無情の世なるかな!

そはしかし
この世のなんと妙なるぞ
時と忍耐 知るものに
真の幸は訪れん

あたりは静まり 闇深く
無数の星斗
予感湛えて 光さす

見上ぐれば
淵源の空
神秘の光
吾が胸の中
こだまする

転た
無量の想いに
一念と
深淵の月に祈りけり

真実の愛
姫君(きみ)との幸
青春の勝利
生命の飛翔…

おお
吾が祈りの信実なるに感じてか
星は輝き 地は哭きて
草木 風に萌え騒ぐ

一条の光
か弱き闇夜(カオス)をつんざきて
雄々しく吾を照らしけり

思議の外なるその光
命の煌めき
生の情熱(いし)
あまりの生命力(ちから)に万物は
眠りより醒め 鮮やかに
意気もようよう 冴えわたる
とたん
ものみな一斉に
青春(はる)の凱歌(かちうた)奏でたり


遠く彼方の地平より
晴れ晴れと威風払いて
おお 今ぞ
日は昇る
 日は昇る…

気づけば吾が目
精気(ひかり)帯び
未来の躍動 息づけり
恋慕は鎖の仮象(すがた)変え
鳳雛 天空(そら)に舞いゆくか

頬は紅に色づきて
鳳雛 吾は定めけり
春嵐 
悠と 勝ちなん と
吾が青年の気概もて
進むこの道 朗らかに
桜の咲くよ 歓喜舞
情熱 炎々 燃やしては
姫君(きみ)への想い
伸び伸びと
白日の下 天に舞う

かつての夜
弱き一の因子たりし吾
無限の詩力溢れいで
支配されるにはあらで
他でもなしに
吾こそが
四界を歓喜と包みけれ

おお
君を想うほど
吾があゆみは加速する
人のため
己が弱きを炙り出し
荒野に獅子と交えんぞ
君想えばこそ
吾は激烈なる戦幕を切る

これぞウェルテル
これぞ青年
これぞ獅子吼
最極の芸術 
生命の輝き
おお 朝(あした)の決意秘め
今ぞ 燦として
日は昇る
 日は昇る…
黎明
今ここに
勝ち歌轟けり!

ウェルテルの覚醒

ウェルテルの覚醒

好きな人ができたけど、今は恋愛する時じゃない…。 大学に進学して、時間もお金も有限な中、初志を果たすために妥協ない努力と向学を送ろうとして過ごしていた矢先、心を鷲掴みにする素敵な人が目の前に。 その人と楽しく交流する時間は、本当に楽しく、幸福に感じられました。 熱情がひっきりになしに胸の中に押し寄せますが、恋愛と向学を二元対立してとらえる当時の私の理性は、その想いには従うべきではないと、強く囁きます。 気づけば、想い慕う彼女への熱情が、誤解を恐れず言えば、自身にとっての「邪魔者」「悪」であるように感じられていきました。 だけど、それはとても辛く、不幸だとも強く思いました。このような想いで彼女にアプローチしても良い事はない。それは、非常に失礼だ。 変わりたい。乗り越えたい。 この山を”乗り越えた”と実感した際の満腔の喜びを、拙詩として表現しました。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-26

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