zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ13~16

エピ13・14

愛と恋とは違うのりゅ・2

「チビちゃん、お薬よっ、我慢して、さあ飲むのよ」
 
「いやっ!」
 
船に戻り、チビに薬を何とか飲ませようとする4人であったが、
案の定、チビは薬を嫌がり拒否し、船中を飛んで逃げ回る。
現在、……悪戦苦闘中……、である。
 
「……チビちゃ~ん、苦いの我慢しないと、お腹の痛いのも……、
治んないよお……?」
 
「やっ!」
 
「でも、人間用の薬がチビに効くかもまだ判らないし……」
 
「それでも飲ませなくちゃ!……チビちゃんっ!めっ!」
 
「チビ~、いう事聞かねえと……、デコピンするぞ……?」
 
「いやっ、ジャミルのばかっ!!」
 
ぷぅ……
 
チビはジャミルにお尻を向け、小さいおならをすると
パタパタ飛んで逃げて行った。
 
「……お~い~……、屁は小せえ癖にすんげー強烈でやんの……」
 
「誰の口真似かな……?」
 
「うん、誰の口真似だろね?」
 
「……アルもダウドも何で私の方見てるのよ……、って、
こんな事してる場合じゃないわ!
こら、チビちゃん!!待ちなさあ~いっ!」
 
「きゅぴぴぴー!」
 
「前途多難だねえ……」
 
「全く……」
 
4人は嫌がるチビを捕まえ、数時間掛けてようやく
薬を飲ませ終える……。
 
「はあ、やっと飲んでくれたわ……」
 
「これで薬が効いてくれるといいんだけどねえ……」
 
「とにかく一晩様子を見るしかないよ、今夜は
僕らももう休もう……」
 
「……顔引っ掻かれまくりだわ……、俺……、
もう疲れた……」
 
チビを捕まえようと一番格闘したジャミルが
倒れて延びていた……。
 
「ありがとね、ジャミル……、お疲れ様、
今、お薬つけるからね……」
 
チビに引っ掛かれ、顔中傷だらけのジャミルに
アイシャが傷薬を塗った。
 
「……いてっ、しみる!……はあ、けど……、
親になるって半端じゃなく大変なのな……」
 
「……本当ね……」
 
「プ……」
 
「何だよ、アル……」
 
「何よ?アル……」
 
「いや、何でも……」
 
 
そして、次の日……。
 
「きゅぴー!チビもうおなかいたくないよー!」
 
「良かった、薬がどうにか効いたのね……」
 
アイシャもほっと一安心である。
 
「……けど、チビ……、今日は夕飯まで飯は
我慢だかんな……?分ったか?」
 
「きゅぴー……、みんなといっしょにごはんたべたい……、
さみしいよう……」
 
チビが羽を窄めてしまい、しょんぼりしてしまう。
4人と一緒にテーブルを囲んでご飯を食べる事は
チビにとって毎日の幸せと楽しみなのである。
 
「……刺激の強い物は控えないとだけど……、柔らかい
ミルクのおかゆなら大丈夫よね……、作ってあげる、
おいで、チビちゃん」
 
……普段、破壊料理を作る率が高い彼女にとって、おかゆ調理は
ほぼ安全圏レパートリーの中の一つである……。
 
「きゅぴ!ミルクのおかゆ!」
 
「今日はあまりチビ連れ回さない方がいいな……」
 
「だね、又途中で催したら大変だからね……」
 
「あ、じゃあ……、チビちゃんはオイラが見てるよお!」
 
ダウドにチビの子守りを頼み、3人でドムドーラに再度出向き、
昨日の少女にお礼を言いに行く事に……。
 
「ミルク粥は沢山作ってあるから、間を見てチビちゃんに
食べさせてあげて頂戴ね、お願いね……」
 
「いってらっしゃーい!」
 
「いってらっしゃーい!きゅっぴ!」
 
 
「……来たな……」
 
ドムドーラに入って行く3人を少年の姿のベビーサタンが
物陰から見つめている。
 
「ん?今日はあの根性なしのオールバックカリフラワー頭が
いないのか……、ふ~ん、そんなのはどうでもいいが……、と、
肝心のチビドラゴンも姿が見当たらないじゃないか、それじゃあ
困るんだよ……、どうせならあの厄介な野蛮猿がいなければいいのに……」
 
と、人間モードになってもブツブツ独り言を言うのであった……。
 
 
「さてと、昨日の女の子を探さないとな……」
 
「昨日、女の子と会った場所で誰かに聞いてみようか」
 
「行ってみましょ」
 
「……誰か……、お探しで……?」
 
「あっ……!」
 
「お前は……!!」
 
ジャミル達の前に少年の姿に化けたベビーサタンが
姿を現す。無論、ジャミル達は全くそんな事を知らない。
……この少年の正体がベビーサタンなどと。
 
「……お前こんなとこまで何してんだよ!詐欺師!!」
 
「僕にはそんな事は関係ありません、偶々この町まで
足を運んだらあんた達がいたんで声を掛けただけですっ、
それより……、どうしてくれるんですか……?」
 
「は?」
 
「あんた達が仕事を失敗したから……、僕も責任取らされて
組合をクビになったんですよっ!!」
 
(……無論、そんな組合は無いし、リトルは何処にも
属してないのりゅ……)
 
「そうだったの……、私達の所為で……、本当にごめんなさい……」
 
「えっ、い、いや…その…」
 
……急に素直に謝り出したアイシャに少年は面食らう……。
 
「アイシャ、別に謝る事ねーぞ、大体、そんな嘘くせー組織、
そもそも存在するか事態わかんねーんだから!」
 
(ぐっ、相変わらずむかつく糞猿め……)
 
「でも、あなたは密猟組織とは何の関係もないんでしょ?
良かった……」
 
「はあ……」
 
(なんなのりゅ、この女は……、今一わからんりゅ……)
 
「どーだかな!」
 
(そしてこの猿は……、殴りたいりゅ……)
 
「……二人とも、早く昨日の女の子を探そうよ……」
 
待ちくたびれた様にアルベルトが口を開いた。
 
「あっ……?」
 
「?」
 
「あなた、頭怪我してるわ……」
 
「えっ、これは……、別に……」
 
(馬鹿野郎、これはお前がこの間リトルの頭を殴った時の跡りゅ……)
 
「薬草持ってるからあげるね、これを傷に塗っておくといいわよ」
 
「はあ、どうも……」
 
(自分で頭殴っておいて……、本当訳わからん女りゅ……)
 
 
……やめて下さいっ!
 
 
「……?」
 
通りの方から悲鳴が聞こえ、トリオは急いで
声のした方に駆けつける。
 
「あっ、ジャミル……、あの人、昨日の……!」
 
アイシャの声にジャミルが見るとそれは雅に昨日
ジャミル達に薬をくれたピンクの髪の少女だった。
どうやらタチの悪いチンピラに小さな子供と一緒に
絡まれているらしかった……。
 
 
「……お姉ちゃん、こわいよ……、どうしよう……」
 
「わりィのはそっちだろ……?そのメスガキの肩がさ、
俺っちにぶつかったんだけど!?」
 
「ですが……、わざとではありませんし、こんな
小さな子を脅して……、あなた大人げないですよ!!
恥ずかしいと思いませんか!?」
 
「……お約束の展開だな、けど……、何処にでもいるな、
ホント、あーゆーのは……」
 
「そんな事言ってる場合じゃないよ、早く助けないと……!」
 
「……」
 
(ほっときゃいいのりゅ……)
 
「よし、行くぞ!」
 
ジャミル達が飛び出して行こうとした、その時……。
 
「……やめろ……」
 
眼鏡を掛けた青白い顔の青年が突然……、ジャミル達の
前にぬっと現われる。トリオは既に忘れてしまってはいたが、
此方も昨日、軽食屋で悶えていた兄さんであった。
 
「な、何だよお前……、邪魔だな……」
 
「……君達には関係ない……、レナさんは……、
レナさんは……、僕が助けるんだ……、頼むから
邪魔しないでくれ……、邪魔なんだ……」
 
「……はああ!?」
 
青年はそう言うとチンピラの処まで一目散に走って行く。
 
「ジャミル、早く止めないと……!大変よ!」
 
「見る限り……、その……、あれなんだけど……」
 
「……助けるってんだから、案外強いんじゃね?任せようぜ……」
 
「もう~!」
 
 
「……どうすれば、許して頂けますか……?」
 
「そうさなあ、姉ちゃんが俺といい事してくれたら、
そのガキはいらねーや、さあ俺と愛の巣へ、ラブホ行こうぜ!」
 
「……っ!?何をするんですっ!!」
 
チンピラが、少女レナの胸に触り、胸をむにゅっと掴んだ……。
 
「……お姉ちゃん!やめて、やめてよ!!」
 
「うるせーな!クソガキ!!」
 
「あっ!?」
 
「……ミミちゃんっ!!」
 
チンピラが子供を突き飛ばし、子供は地面に転がる……。
 
「……いたいよう、いたい……」
 
「……こんな小さな子に何て酷い事をするんですか!!」
 
「うるせー!てめえはだまって俺に侵されりゃ
いいんだっ!来いっ!!」
 
「……やめろっ!レナさんに……、レナさんに……、
手を出すんじゃないっ……!!」
 
「あーっ!?」
 
眼鏡の青年がチンピラの前に立つ……。
 
「何だ?おめえ……?」
 
「どなたか存じませんが、危ないですっ!……早く、
早く逃げて下さい……!!」
 
レナが必死で叫ぶが……、青年はチンピラに
殴りかかって行き……。
 
「……ウ~ン……」
 
「……きゃあああっ!!」
 
そして、ノックダウンした……。
 
 
「……バカだな……」
 
「……バカだね……」
 
「もうっ!ジャミルもアルも……!そんな事
言ってる場合じゃないでしょ!!」
 
(バカりゅ……)
 
「やれやれ、結局は俺達が出て行かなきゃなんねーじゃん、
手間掛けさせんなよな……、たく……」


愛と恋とは違うのりゅ・3

「……?」
 
「お姉ちゃん!お兄さんが目を覚ましたよ!」
 
「……此処は?」
 
「町の宿屋です、良かった……」
 
「はあ……、っ……つう!」
 
「あっ、まだ動いては駄目ですよ……!お怪我をされて
いるんですから……!」
 
「すみません、僕の眼鏡……、何処でしょう……、
あれがないと何も見えないんです……」
 
「はい、どうぞ……」
 
「すみません……」
 
青年がレナから渡された眼鏡をかけ直し、間近のレナの顔を
じーっと見つめた。
 
「あの、何か……?」
 
(夢じゃない……、本物だ……、憧れのレナさんが……、
僕の……、今、僕の側にいる……)
 
「こちらの方たちが助けて下さったんですよ」
 
「はあ……」
 
「暴走兄さん目覚ましたのかい?」
 
青年が目を覚ますのを待っていたらしき
ジャミルがレナに聞いた。
 
「ええ、先程……」
 
「あの……、どちらの方が……、僕を……」
 
アイシャとアルベルトが無言でジャミルを指差した。
 
「え、え……」
 
「あの変なのはジャミルがボッコボコに殴って
追い返したからもう大丈夫よ!」
 
「まーた、ストレスも溜まってきたからな、
丁度すっきりしたわ!」
 
(……嘘だ……)
 
「……そうですか、ご迷惑お掛けしてすみませんでした、僕、
今日はこれで失礼します……」
 
青年が怪訝そうな表情をしながらベッドから
降りようとする……。
 
「まだ寝ていなくては駄目ですよ……」
 
レナが青年を止めようとするが。
 
「いいえ、動けますので……、大丈夫です」
 
「ですが……、あまりご無理なさらないで……」
 
「レナさんは此処のお住まいで……?」
 
「……私は……、事情がありまして……、今は此処の
宿屋のご主人と奥さんにお世話になって住まわせて
貰っています、あ……、この子は此処の宿屋の娘さんの
ミミちゃんです」
 
「ミミだよー!」
 
「……耳ちゃんですか、ハア……、あの、又……、
遊びに来ても……、宜しいですか?」
 
「あっ、はい……」
 
「では……」
 
眼鏡の青年はそれきり振り返らずにのそのそと宿屋を出て
何処かに歩いて行った。
 
「……何だよ……、俺達には礼も言わねえでさ、
見向きもしねえで……」
 
無視されたのか気に入らないのか、ジャミルが膨れっ面をする。
 
「あんた達は視界に入ってないみたいだよ?目的が
違うんじゃないの……?」
 
「……」
 
「な、何……?」
 
「お前……、いつまでいるんだよ?」
 
トリオがじ~っとアップで近づき、少年を見た。
迫られて恐怖を感じたのか、少年は後ろに後ずさる……。
 
「いや、何となく……、面白そうだった……、から……」
 
「ところで、あなたまだお名前聞いてなかったわよね?
ね、なんて言うの?」
 
今度は更にアイシャが少年に詰め寄る。
 
「え?えーと……、リトル……、リ……、ト……、
リィト……」
 
「?」
 
「リィト……」
 
少年は咄嗟に思いついたいい加減な名前を適当に
アイシャに述べた。
 
「リィト?ふーん……、判ったわ!宜しくね、リィト!」
 
満面の天然笑顔をアイシャが少年に向ける。……途端に
少年の顔がぼ~っと火が付いた様に真っ赤になる。
……何故赤くなったのか、本人は分かっていない様だが。
 
「はあ……」
 
(うわー……、調子が狂うりゅ……、本当……、
マジでこの天パ女苦手りゅ……)
 
ちなみに、ここでの天パとは、天然パー……、
髪の事ではなく天然ボケを指す……。
 
「別に宜しくなんかする事ねーぞ、アイシャ!」
 
(そして……、この馬鹿猿は動物園に寄贈してやりたいりゅ……)
 
「いいじゃない!私達、もうお友達だもの!ね?」
 
「……はあ……」
 
一体いつ友達になったんだよと、少年バージョンの
小悪魔……、リィトは困惑する。
 
(何でそうなるのりゅ……、ジンマシンがでそうりゅ……)
 
「ねえ、そろそろ僕らも戻らないと……、チビも心配だし……」
 
「だけどさ、少しやばいかもしんねーんだよな……」
 
「何がさ?」
 
「何がよ?」
 
「こう……、ワンパターンだとさ、大概は仲間ぞろぞろ
引き連れて……、あとで仕返しに来るとか……」
 
「さっきの……、チンピラ達かい……?」
 
「ああ……」
 
「オチが見えてるね、レナ?……彼女、絶対連れていかれるよ……」
 
慌てて表情をツンデレ顔に戻し、ぼそっとリィトが口を開く。
 
「……だから、オメーいつまでいるんだよ!」
 
「リィトだっけ?君、何だか段々敬語使わなくなってきたね……」
 
半眼でアルベルトも(中身はベビーサタンの少年)……リィトを見た。
 
「あら?その方がいいわよ!だって、私達、もうお友達だもの!」
 
「ハア……」
 
(……うわー!また言ったりゅ!う……、あめてくれりゅ……!!
ジンマシン……、ジンマシンが……!!)
 
「どうしたの?……顔、ずっと赤いわよ?」
 
「が、が……、ががががが!」
 
リィトがガクガク震えだした……。アイシャの言葉に
相当困惑し困っている。顔には大量の冷や汗が浮かんでいる。
そして、一体何故、自分がこんな状態になってしまうのかも、
中身はモンスターのリィト自身がまだ気づくワケも当然無かった。
 
「今日はかえりゅ……、じゃなくて……、か、帰る!」
 
猛ダッシュでリィトが宿屋を出ようとするが、アイシャが
リィトを呼び止めた。
 
「待って!リィト!」
 
「な、何……?」
 
「バイバイ!また、会おうね!」
 
アイシャがリィトに向って笑って手を振った。
 
「ふ、ふん……」
 
これ以上アイシャの顔を見ない様、小走りでリィトが
逃げていく……。振り返って又彼女の顔を見れば益々おかしく
なってしまいそうになったからである。
 
「さて……、話を戻そうよ、どうするの……?僕らも早く
船に戻らなきゃならないし……」
 
「でも、レナさんも心配だわ……」
 
「早い話……、戻ってダウドとチビを連れてくるか……」
 
「それで、……此処で暫く護衛するの?」
 
「でも、長時間チビちゃんにぬいぐるみの振りを
させるのは……、ちょっと無理よ……」
 
「……どうするか……」
 
トリオが結論を出せないでいると、厨房へ手伝いに行っていた
レナがミミを連れて戻って来てトリオに声を掛けた。
 
「皆さん、夕ご飯のご用意が出来ましたよ、食べて行って下さい、
ご主人も奥さんも是非と、お待ちしております、美味しいですよー!」
 
「今日のご飯はからあげでーす!お手伝いでミミが
味付けしましたー!」
 
「あら?もう一人のお友達は……?」
 
「あー、あれは友達じゃな……、いてっ!」
 
アイシャがジャミルの足を踏んだ。
 
「なんだよ……」
 
「先に帰っちゃったの!用事が有るみたい!」
 
「そうですか、残念ですね……、では皆さんだけでも……、
ご一緒に……」
 
「でも……、別の友人も待たせておりますので……」
 
「そうなんですか……、でも……、私、皆さんと色々
お話がしたいんです……、ご迷惑でしょうか、あの、ほんの
少しのお時間でも駄目ですか……?」
 
レナがそう言い出したのを見て、ジャミルはよし……、と、
独りで勝手に頷いた。
 
「あのさ……、びっくりしないでくれるかな……?」
 
「はい……?」
 
「……あんたを信頼して話すけど……、実は俺達……、
今、ドラゴンの赤ん坊を育ててるんだよ、チビって
言うんだけどさ……」
 
ジャミルがこっそりとレナに向かって話す。
 
「ジャミルっ……!」
 
アイシャとアルベルトが慌てるが……。
 
「この人なら……、大丈夫だって!」
 
「まあ、ドラゴンの……、赤ちゃんですか……?」
 
レナが驚いて手を口に持っていく。
 
「なーに、なーに?何のお話してるのー?ミミにも教えてー!」
 
ミミがレナの服の袖を引っ張って言う。
 
「玉に我儘で……、手を焼くこともあるんだけど、
頭は凄く良くて利口なんだよ……、その……、迷惑じゃ
なかったら……、此処まで連れて来ていいかな……?」
 
「もちろんですよ……!あっ、旦那さんと奥さんも
大丈夫ですよ!お二人ともとても優しい方ですから
事情を話せば分かって貰えますよ!」
 
「あの……、レナさん、チビちゃん連れて来て……、
本当にいいの……?」
 
アイシャがおそるおそる聞いてみると、レナはぱあっと
明るい笑顔を見せた。
 
「はい!私もチビちゃんに会ってみたいです!」
 
「……じゃ、じゃあ……、僕は急いで船に戻ってダウドと
チビを連れてくるよ!」
 
アルベルトが慌てて船まで戻って行った。トリオはレナの
心意気と、宿屋の夫婦の人柄の良さに心から感謝する。
 
 
そして一方、あの青白い顔の眼鏡の青年は宿屋を出た後、町を
ウロウロ徘徊していた。
 
「……負けるのは仕方ない、わかってた事だ、だけど……、
これで……レナさんにやっと近づける口実も出来たし……、
口も漸くきいてもらえた……」
 
青年は眼鏡を光らせ、そうぽつりと呟くと、目の前に広がる
果てしなき青い空を眺めた。

エピ15・16

愛と恋とは違うのりゅ・4

4人は宿屋の夫婦の計らいで夕食に招待される事に。
 
「本当、すみません、オイラまで呼んで貰っちゃって……」
 
ダウドがてれてれ、照れ臭そうに頭を掻いた。
 
「いいんですよ、私も主人も賑やかなのは
大好きですから、ね?」
 
「ああ、明るいのは嬉しいねえ」
 
夫婦はまだ二人とも若く、見た感じ30代ぐらいの
感じだった。
 
「チビちゃん、静かにしててね?あまり騒ぐと、他に
お泊りしているお客さんに気付かれちゃうからね?」
 
アイシャがチビに、しーのサインを出すと、
チビは元気よくお返事をした。
 
「きゅっぴ!はーい!」
 
ちなみに、食事は厨房にあるテーブルで取っている。
 
「……凄いわ、この子……、本当にドラゴンの
赤ちゃんなんですね……」
 
レナがそっとチビの頭を撫でると、チビも嬉しそうに
レナの手にすり寄る。
 
「そういや、チビが俺達以外に、他の人間に触れるのって……、
今回が初めてだよな……?」
 
「うん、ルビス様は人間じゃないしね……」
 
「ねえ、アイシャお姉ちゃん……、ご飯すんだら、
チビちゃん少しかしてくれる?」
 
「うん、いいわよ、ミミちゃん!」
 
「やったー!早くご飯たべちゃお!」
 
早速夕食を済ませ、ミミが自分の部屋にチビを
連れて行こうとする。
 
「ミミ、くれぐれも……、他のお客さんに
見つからない様にするんですよ……」
 
「はーい!お母さん!」
 
「あっ、このバッグの中に入れてあげて、チビちゃんは
ぬいぐるみのフリが出来るからね」
 
「うん、アイシャお姉ちゃんありがとう、あれ?他にも
お人形が入ってるよ?」
 
「それはスラ太郎って言うの、良かったらこっちも宜しくね」
 
「はーい!」
 
ミミは喜んでチビを連れ、うきうきで自分の部屋に走って行った。
 
「でも……、本当に嬉しいです、私、此方の世界に
来てから……、不安な事ばっかりだったけど、とても
優しい方達に出会えて幸せです……」
 
顔を赤らめ、レナがぽつりと呟いた。
 
「ん?此方の……、世界?」
 
ジャミルがレナの方を見て不思議そうに首を傾げた。
 
「レナさんは上の世界からいらっしゃったんですよ」
 
食後のお茶をジャミル達に注ぎながら奥さんが答えた。
 
「……僕達も……、上から来たんですよ……」
 
びっくりした様にアルベルトも口を開く……。
 
「まあ、ジャミルさん達もなんですか……!?ああ、
嬉しいです、私達、一緒なんですね!」
 
「んーと、レナさんは何処の出身だい?」
 
相変わらず美味しい物には遠慮せず、残った唐揚げを
ひょいひょい摘みながらジャミルが話す。
 
「……ジャミルったら……、恥ずかしいんだから……、
もう……」
 
唐揚げを口に詰め込み過ぎで、ハムスター……、
或いはリス状態になってしまったジャミルの姿に
アイシャが恥ずかしそうに下を向いた。
 
「……私、アッサラームの元踊り子だったんです、
思い出すと懐かしいなあ……、団長さんや皆は元気かな……」
 
「……でも、レナさんはどうしてこっちの世界に来たの?」
 
「それは……」
 
ダウドが聞くとレナは顔を暗くして俯いてしまう。
……どうやら彼女が此方の世界に来た訳にはとても
複雑な事情がある様であった。
 
「あっ、ごめんなさい!オイラ気が利かなくて……!
誰だって話すの嫌な事だってあるよね!」
 
ダウドが慌ててレナに謝ると、レナはいいえ……と、
首を横に振った。
 
「まっふぁくだ!……ふふぉひはふーひほめよ!」
 
「……口いっぱい唐揚げ頬張って、そう言っても
説得力ないよ、ジャミル……」
 
スリッパでジャミルの頭を叩きたいが、今は
皆のいる手前、仕方無しに堪えるアルベルト。
 
「私……、嫌なお客さんに付きまとわれて……、
それ以来、踊るのが怖くなってしまって……、
上の世界の過去から逃げたくて……、こっちの世界に
逃げて来たんです……」
 
「ストーカーか……」
 
「怖いわね……」
 
「はあ、嫌だねえ……」
 
「それで……、トラウマになってしまったんですね……」
 
「はい……」
 
レナが言葉を飲み込み、再び俯いてしまう。
 
「……大丈夫だよ、今すぐじゃなくても、何年掛かっても
いいじゃん……、ゆっくりケアしたら、また踊れるように
なるって!」
 
「ジャミルさん……」
 
「そうだよ、レナさん……、私達も君が此処にいて
くれると凄く嬉しいんだよ、ミミもまるで君を本当の
お姉さんの様に慕っているし……」
 
「そうよ、あなたさえ良かったら遠慮しないで
いつまでも此処にいていいのよ……」
 
夫婦も揃ってレナを励ます。優しい夫婦の言葉に
顔を覆ってレナが泣き出す……。
 
「皆さん……、本当に有難うございます……、私、嬉しくて……、
本当に何とお礼を言ったらよいのか……」
 
「……」
 
「ねーねー、見て見てー!かわいいでしょー!」
 
と、其処へミミが再びチビを連れて部屋から戻って来た。
 
「!ち、チビちゃん……?その恰好は……?」
 
……変わり果てたチビの容姿を見たアイシャが
わなわなと震える……。
 
「ミミのお人形さんのお洋服とかつらでチビちゃんに
おしゃれさせちゃったー!」
 
「きゅぴ、にあう?チビおしゃれでしょ?」
 
「似合うって……、お前よう……」
 
「80年代ツッパリセットでーす!」
 
チビはいつぞやのダウドが上の世界での精霊の泉で
分裂暴走した時と同じ……、頭に金髪リーゼント、鉢巻、
グラサンに学ランと暴走族コスプレ状態だった……。
 
「……どういう趣味しとんのや……」
 
「まあ、ミミ!ふざけるのはやめなさい!!
どうもすみません、本当に……」
 
奥さんが慌てて注意するが……。ミミ、恐ろしい、
レトロな渋い趣味を持つ幼女……、であった。
 
「えー、だって~、かわいいでしょ?ね、お兄ちゃんたち!」
 
「やーん♡チビちゃん可愛いいー!きゃあ~!!」
 
アイシャまで異様に興奮しだす……。
 
「でしょー!」
 
「可愛いですよー!あっ、写真撮らせて下さーい!」
 
レナまで加わるのであった……。
 
「……駄目だこりゃ、次、行ってみよう!」
 
ジャミルがダミ声を出した……。しかし、レナも又、
元気になった様である。
 
 
……しかしその頃、外では案の定……、ジャミルの推測通り
復讐の準備が始まっていた……。
 
「おい、兄ちゃんよう……、本当に此処の宿屋にあの
ピンクの髪の姉ちゃんが泊まってんだな?」
 
「ええ、間違いないです……、昼間確かめましたから……」
 
「へっ……、随分楽しそうな声がきこえんなー、
どこの部屋だ?どいつが泊ってんだか……」
 
「んじゃ、いっちょ……、暴れてやるかねー!?」
 
(……レナさんは誰にも渡さない、レナさんは僕と、
……僕と一緒になるんだ……)
 
 
「もうー!ジャミルったら……!食べるだけ食べて寝ちゃったわ!
……明日はきっと牛になってるわね……」
 
「……ンモ~、ふにゃ~、唐揚げ……、うめえ……」
 
食事の後片付けを手伝いながら、テーブルに突っ伏し、
寝てしまったジャミルにアイシャが呆れた。
 
「ふふっ、アイシャさん、お手伝いどうも有難うございます」
 
「いいえ!奥さん、美味しいご飯を頂いたんだもの、
これぐらい当たり前ですよっ!」
 
「あーあ、チビちゃんも寝ちゃったー!ミミも
もうねむーい……」
 
「駄目よ、きちんとお風呂に入って、歯磨きしてから
寝るのよ!」
 
「はーい、お母さん……」
 
「ジャミル、まだ起きないね……、これじゃ鳥を食べた
牛だよお……、もう……」
 
寝ているジャミルの鼻の穴にダウドが鉛筆を入れ、
ちょんちょん突っついてみる。
 
「夢の中でも、ま~だ唐揚げ食べてるんだよ、まったく……」
 
呆れつつも、休憩時には本を手放さないアルベルト。
 
「はう~、でも、唐揚げ、ほんと美味しかったもんねえ……、
オイラ、あんなにスパイシーで美味しい唐揚げ食べたの
初めてかも……」
 
「あっ、奥さん……、明日の朝食の分のサラダの
レタスと、その他のお野菜さんが足りないみたいです……」
 
レナが空の野菜籠を持って来て奥さんに見せた。
 
「あら~?この間大分買い溜めしておいたと
思ったんだけど……、困ったわねえ……」
 
「何か、代理で他の物を出すか……、お客さんには
予定変更で我慢して貰って……」
 
「あなた……、そうねえ……、でも、ウチの朝食の
サラダを楽しみにしてくれてる馴染みのお客様もいる
事だし……、けれど……、今からじゃちょっと遅いわよね……」
 
「あ、私、買ってきます!、まだ何処かお店あいてるかも
しれませんし!」
 
「アイシャさん……、でも……、悪いわ……、大事な
お客さんに……」
 
「奥さん、大丈夫ですよ!じゃあ行ってきまーす!ダウドも
アルも、チビちゃんをお願いねー!……ジャミルは寝てるから
知らないっ!」
 
「気を付けてね……」
 
アルベルトとダウドが見送る中、買い物カゴを持って
元気にアイシャが外に飛び出して行った。
 
それから、暫くのち……。
 
「……んーぴー、きゅう……、アイシャ……、
どこ……?」
 
寝ていたチビが急にぐずり出してアルベルトに抱き着く。
 
「チビ……?どうしたの……、又お腹痛くなったの……?
よしよし、大丈夫だよ……」
 
アルベルトが優しくチビの背中を摩るが、チビは震えている……。
 
「ぴい……、こわい、こわい……、こわいひと……、
いっぱいくるよお……」
 
「……旦那さん、奥さん……!」
 
ロビーにいたお手伝いさんが慌てて厨房に
駆け込んで来た。
 
「どうしたんだ……?」
 
「その……、ロビーに変な人達が急に来て……!
レナさんを出せと暴れてるんです……!!
他のお客様がパニックになってしまって……」
 
「……!!」
 
事態を察し、レナの顔が真っ青になる……。
 
「あなた……」
 
「大丈夫だ、私が行こう、お前はミミを部屋まで……」
 
「はい……、さあ、ミミ……、部屋まで行きましょう……、
今日は特別にお風呂も歯磨きもいいわ……」
 
「……な~に~、どーしたのお~……」
 
ミミが寝ぼけ眼で奥さんを見つめた。
 
「や~っぱり……、来やがったな……」
 
「ジャミル!いつの間に起きたの……?」
 
「俺達も行くよ、女衆は皆隠れてた方がいいな……、
レナさんもさ……」
 
「でも……!あの人達は、私を……!」
 
「レナさん……、ジャミル君の言う通りだ、
ミミと家内を頼む……」
 
旦那が首を横に振り、レナの肩に手を置いた。
 
「ですが……、私……、私……」
 
「大丈夫だって!んなクソ集団、すぐに又追い返してやるよ!
安心しな、チビの方も頼むよ、今すごく脅えちゃってんだ……」
 
ジャミルがレナに震えているチビを預ける。
 
「……分りました……、皆さん……、本当にすみません……、
チビちゃん、おいで……」
 
「ぴい~……」
 
レナがチビを優しく抱くとチビは安心した様に又眠った。
 
「さーてと、俺達は後始末に行くか!ま、俺らもどうせ
恨み買ってるだろうしな!」
 
「あの……、オイラも入ってるの……?」
 
「当然でしょ……、僕達もだよ、当たり前だろ?」
 
「……や~っぱりぃぃ~……、オイラ昼間はいなかったのにぃ~、
とほほ~……」


愛と恋とは違うのりゅ・5

「おーい、レナさんはよ?いるかい……?」
 
「なんなんですか?あなた方は……、他のお客さんの
迷惑ですよ、お帰り下さい……」
 
旦那が応対するが……、チンピラ集団のガラの悪い男の
一人が旦那に近づくと強く襟首を掴んだ。
 
「それでな、うちのモンがよ、此処の宿屋にいるらしい
バカガキに随分世話になっちまったと聞いて、ついでに礼を
言いにきたんだがね……、……コラ、ああ~んっ!?」
 
「……あなたっ!……やめてっ!乱暴はやめて下さいっ……!!」
 
旦那の危機に隠れていた筈の奥さんが飛び出して来てしまう……。
 
「お前っ……!隠れてろと……、言ったろう……!う、うっ……」
 
「……よせよ、その人達には関係ねえ、話があるんは
俺らだろ?」
 
ジャミル達がチンピラ達の前に姿を現す。チンピラの
リーダー格らしき男が出て来たジャミル達を見て唖然とする……。
 
「おめえ、本当にこんなガキ共にやられんたか……?
もし本当なら、おめえも冗談じゃすまされねえぞ……、コラ……」
 
「すみません、でも本当なんです……、その……、
真ん中の背の小さい茶髪のガキが……、これが
おっそろしく、糞小生意気で強かったんス……」
 
「まあ、いいや……、俺達もな、おめーらに
忘れモンを届けに来てやったんだ、有難く思えよ……、
おい、連れてきな……」
 
「……忘れモン……?」
 
 
はなしてよー!はなしなさいよーっ!!
 
 
「まさか……」
 
嫌な予感がし、男3人衆が顔を合わせる……。
 
「静かにしてろっ!オラッ!!」
 
「乱暴しないでよっ!えっち!」
 
「……アイシャっ!!」
 
縄で縛られ拘束されたまま、アイシャがチンピラ子分の
一人に連れて来られる……。
 
「……ごめんなさい、皆……、途中でこの人達に
会っちゃって……、捕まっちゃったの……」
 
申し訳なさそうにアイシャが皆に頭を下げた。
 
「……たく……、本当によく捕まんなあ、お前……」
 
「ほっといてよっ!ジャミルのバカっ!」
 
「早く、レナ嬢ちゃんを連れてこいや、俺達だって
鬼じゃねんだ、そうすりゃ別にこんなのいらねーから、
すぐ返してやるぞ?」
 
「……失礼ねっ!こんなのとは何よっ!!」
 
アイシャが頬を膨らませて怒鳴る。
 
「お前ら何でそんなにレナさんに拘ってんだよ、
怒られて注意されたのがそんなに気にいらなかったのか?
だとしたら相当の規模が小さい馬鹿だぞ、お前ら……」
 
「うるせー!余計な口聞くんじゃねえ!さっさと
レナを連れてこい!!じゃねえと、このガキが
どうなっても知らねえぞ……?」
 
やっぱりワンパターン行動で、チンピラの下っ端が
アイシャに刃物を突き付けた。その時……。
 
「私なら……、此処にいます……!」
 
「レナさんっ!……駄目よっ!!」
 
「駄目だよお!出て来ちゃ!!」
 
「……確かにな、あん時……、オラあ、滅茶苦茶に
むかついたさ、偉そうな口ききやがって、何様だと思ったよ、
けどな、金貰った以上はな……、仕事はこなさねーとなあ……」
 
あの時、レナを襲い、ジャミルに殴られたチンピラが
ぼりぼりと股間を掻いた。
 
「アル……、あの怖い人、何言ってんの?オイラ理解出来ない……」
 
「僕にも言ってる事が……、さっぱりで理解不能なんだけど……」
 
「まあ、本人に説明させるさ、来な、兄ちゃん……」
 
「……」
 
「お前っ……!!」
 
「あなたは……、どうして……?」
 
現れたのは……、チンピラに無謀に突っかかって行き、
そして倒れ……、レナに介護を受けたあの眼鏡の青年だった……。
 
「……あなた……、この変なおじさん達の仲間だったの!?
……答えなさいよっ!!」
 
喚きながらアイシャが青年を問い詰める。
 
「いえ、仲間ではありません、僕は……、ただ、
レナさん、あなたが……」
 
そこまで言うと青年は唇を噤んだ。すると、リーダーの男が
説明をし出す。
 
「てっとり早く、俺達から説明してやんぞ?サービスだ、
えーと……、昼間こいつがこの兄ちゃんをぼこった後に、
何故かこの兄ちゃん、俺達の処に大金持って頼みに来たんだよ、
レナさんを連れて来て下さい……、とさ」
 
「……レナさん、僕はあなたが好きで好きで堪らないんです、
初めてあなたを見た時から……、僕だけの物にしたいと思った……、
お願いです……!あなたを誰にも渡したくないんです、どうか……、
だから、僕の処に……、来て下さい……!!」
 
「……どうして……?あなたも……そう……、
なんですか……?」
 
「レナさん……?」
 
青年がレナに近づこうとする。動揺し、脅える
レナの瞳には涙が浮かんでいる……。
 
「やめてっ!来ないでっ……!!」
 
「やめろよ……、あんた……、何でレナさんがこっちの
世界に逃げて来たか、理由知ってんのかよ……、また心の傷を
ほじくり返す気なのか……?」
 
「……ジャミルさん……」
 
ジャミルがレナを庇いながら青年をきっと睨んだ。
 
「そんな事知らない……、僕はただ……、レナさんが好きで……」
 
「いい加減にしろよっ!!」
 
「……!!!」
 
ジャミルが拳で青年の頬を殴り飛ばし、青年は床に倒れた。
 
「ただ、好き好き好きで喚いてるだけでしつこく付き纏って
そーいうのは好きと言わないんだっ!!あー、苛々すんなあ!!
こいつもう一発ぶん殴ったろか!?」
 
「……ジャミルさん、もういいです……!!お願い、
やめて……!!」
 
倒れた状態のままの青年にもう一度殴り掛かろうとした
ジャミルをレナが必死で止める。
 
「けど、こう言う融通の利かねえ厄介な奴はもう少し
シメとかねえとあんた、この先何回も狙われるぞ……!?」
 
「……いいんです、私……、辱めを受けた事で過去の
傷から逃げてばかりいた……、でも……、もう前を向いて
歩き出さないと……、強くならなきゃ……」
 
レナはそう呟き、青年の方を見る。
 
「……レナさん……」
 
「私、もう一度踊れる様になりますっ!ステージで踊りたいっ!!」
 
レナは目を見据えて目の前のチンピラ達を睨み……。
 
「……はああーっ!!」
 
「う、うごっ……!?」
 
華麗なステップと足さばきでくるくると回転しながら
チンピラ達を次々と蹴り倒していく。
 
「な、何だ……、このアマ……、何かさっきと全然
雰囲気が違うんだが……」
 
レナの突然の変化にチンピラ達が動揺し、オロオロし出す。
 
「レナさん……、あんた……」
 
ジャミル達も驚いて口が半開きになる……。
 
「……黙っていてごめんなさい、私……、実は下の
世界に来てから護身用に舞踊武術も習っていて、本当は
こんな人達……、全然平気なんです……」
 
「すごいっ、レナさん、かっこいいよお~!」
 
ダウドが興奮し、目を輝かせる。
 
「てめえっ、このクソアマっ!……こいつがどうなっても
いいのかっ!」
 
「あっ!?」
 
しつこいチンピラは尚もアイシャに刃物をちらつかせる。
 
しかし、レナは動揺せず、素早く動くと、蹴りで
チンピラから刃物を叩き落とす。
 
「ヒッ……、て、てめえ……!」
 
「……あなた達みたいな卑劣な人は本当に大嫌いですっ!!
お覚悟をーーっ!懺悔なさいっ!!」
 
「……うぉぉぉーっ!アッ……!!あべし……、
げええ……、げふ……」
 
レナに顔面パンチされ、アイシャを人質に脅していた
チンピラは床に倒れた……。
 
「アイシャさん、大丈夫ですか……?」
 
レナがすぐさまアイシャの縄を解き、拘束から解放する。
 
「ありがとう、レナさん!」
 
「……ひっ、ヒッ……、ひいいいい~っ!!
化けモン集団だあ~っ!!」
 
「……もう終わりかよ……」
 
最後に残ったらしきチンピラの親分は倒れた子分を置いて
自分だけ猛ダッシュで外へと逃げていく。
 
「……」
 
眼鏡の青年は蹲ったままそのままずっと動かない。
旦那も心配そうにレナに声を掛ける。
 
「……レナさん、どうするんだい……?」
 
「大丈夫です、……あの、顔を上げて下さい……」
 
青年がレナの声に反応し、顔を上げ、レナをじっと見つめる。
 
「……僕の事……、怒ってないんですか……?」
 
「いいえ、怒ってます……、正直……、一発、
二発ぐらい殴りたい気分です……、いえ、もっとかも……、
殴り足りない気持ちです……」
 
「うわ!……はっきり言うなあ……、何か段々
吹っ切れてきたのかな……」
 
「かもね、……でも、今のレナさん、何だか表情が
生き生きしてきた気がしないかい、ジャミル?
僕が思うに何だか重い鎖から解放された様な……、
そんな感じがするよ……」
 
「そう言えばそうかもな……」
 
「うわあ……、レナさん素敵……!!美人な上に
その上強かったなんてね……!」
 
アイシャもきゃんきゃん胸をときめかせる。
 
「本当、いいなあ……、オイラも何だか
ファンになっちゃいそうだよお……」
 
「私ね……、上の世界にいた時、嫌なお客さんに
傷つけられてから……、ずっとずっと……
怖かった……、人と触れ合うのも、踊る事も……、
もう消えてしまいたかった……、そして、下の世界に
逃げて……、こうして優しい人達に巡り合えて……、
そう考えると……、あの時受けた傷は決して無駄
なんかじゃなかったのかなって……」
 
レナはそう呟くと青年の手を取った。
 
「……僕は……、この町に来てあなたを一目
見た時から……、ずっと……、ずっと……、
一目ぼれでした……、あなたのそのどこか
寂しそうな笑顔に惹かれた……、守ってあげたいと
思った、あなたの事がずっと知りたくて……、
やっと分ったのは名前だけだった……、いつからだろう、
守りたいと思う気持ちが独占してしまいたいと思う
独り善がりな気持ちに変わったのは……」
 
「……あ、あ、あ、あ……、だ、駄目だ……、
く、く、く、くっ、せ……え……」
 
……痙攣を起こしかけたジャミルのケツをアルベルトと
アイシャが左右、両方から抓った。
 
「レナさん、僕……、あなたの事はもう
諦めます……、きっとあなたへの気持ちは……、
恋と云うよりも、僕の単なる行き過ぎた過激な
愛情だったのかも知れません……」
 
「あの、どちらへ……?」
 
「……さようなら、この町を出て遠くに行きます……」
 
眼鏡の青年は又……、のそのそと歩きだす。
 
「……いつか、私……、また踊れる様になったら……、
その時は……、私のステージを観に来て貰えますか……?」
 
「はい、勿論です……、レナさん、あの……」
 
「はい……?」
 
「幸せに……、なって下さいね……」
 
「はい……、ありがとう……、あなたもね……」
 
眼鏡の青年はレナに向って小さく微笑むと
宿屋を出て行った……。
 
「さてと、この残りの倒れている人達を
お片付けしないと……、すみませんが、皆さん、
お手数お掛けしますが手伝って貰えますか?」
 
「あ、ああ……」
 
レナが倒れているチンピラの足をズルズル
引っ張って外へと連れて行く。
 
「凄くタフだったんだねえ、彼女……」
 
アルベルトが笑った。どうやらどうにか無事に
今回の事件も終了しそうであった。
 
「だな……」

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  • 小説
  • 短編
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  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-23

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