花の季節に/新作短歌
早や春分の日、もう種を捲く時期だけれど・・・。
母を凌ぐ 背丈になりし君なれや
菓子を与えた日は 遠くに去りて
ベランダ越しに 手を振り名を呼ぶ 幼な子可愛い
好きな苺は まだ白き花
小さな手に 分けしチョコを掴んで散るは
近所の仲良し三人組
よかったと 孫の合格喜ぶ友に
はよ帰ろうよと 褪せる連れ犬
売れ残る 安き鉢花買い集め
土に植えれば はや夕暮れの鐘
畑に見えぬ 友はといえば なあるほど
センバツ野球に くぎ付けのはず
スキャンダラスな事件のニュース
もう驚かないさ こんなに続きゃ
よかったね 無事パスできて
でもそうでない子も いるんだよ
友は皆 希望の空へと旅立ちぬ
翼なき我を この地に残して
願えども 叶わぬことの悲しさを
身に染みて知る春よ恨めし
報われぬ父を偲びてこの歳に
その心根の侘しさ知る
末法と嘆くよりなお前を向き
為せることをばするを良しとす
うら若き 乙女の春の輝きを
人の花よと羨み讃えん
髭を伸ばし 自然を共に生きる君よ
春風のように 今日もさすらう
花の季節に/新作短歌