zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ5~8

エピ5・6

小悪魔、リトルデビルあらわりゅ

4人は依頼人の少年の事など忘れ、赤ん坊ドラゴンの
愛らしさに夢中であった……。
 
「ねえ、チビちゃん、あなたのお名前もそろそろ考えなきゃね……」
 
「お……なまえ……?」
 
赤ん坊ドラゴンがきょとんした顔でアイシャを見上げた。
 
「そうよ、私達にも名前がある様に、チビちゃんにも、
ちゃんとしたお名前を考えてあげないとね!」
 
「おなまえ、おなまえ!」
 
赤ん坊ドラゴンは小さな尻尾をパタパタ振りアイシャに甘える。
 
 
「……いい光景だねえ、オイラ和んじゃうよお……」
 
ダウドがちーんと鼻紙で鼻をかむ。
 
「ねえ……、アイシャが元気になってくれて良かったのはいいんだけど……」
 
「何だよ、アル、何か問題あるか?お前がそう言う顔するとさ、
何となく嫌なんだけど……、思いっ切り眉間に皺が寄ってるし……」
 
「問題ありありでしょ……、それは……、今はいいよ、今は……、
だけど、現実問題として、いずれはどうするの……?いつまでも
ドラゴンはこのまま小さいままでいられないんだよ……」
 
「あっ、そうだよね、チビちゃんもいつかは……、親ドラゴンと
同じくらい大きくなるんだよねえ……」
 
「……いつまでも一緒にはいられないんだよ……」
 
「分ってるよ、んな事……、けど、今ぐらいいいじゃんか……、
せめて今ぐらいよ……」
 
そう言ってジャミルは楽しそうにじゃれているアイシャと
赤ん坊ドラゴンを見つめた。
 
「アルも、あまり今は何も考えない方がいいよお?
心配なのは判るけどさあ……」
 
「そうだぜ、だからお前将来、デコが広くなって絶対
ウスラハゲ……、あてっ!」
 
「……僕、絶対剥げませんから!」
 
パンチングボックスを弄りながらアルベルトが
口を尖らせた。……、と、揉めている処へアイシャが
赤ん坊ドラゴンを抱いて連れてくる。
 
「ねえ、皆も一緒に考えようよ、チビちゃんのお名前!」
 
「ようよ~、ね?ちびの……おなまえ?」
 
赤ん坊ドラゴンが首を傾げて皆を見た。
 
「……も、もう……、そのままでチビちゃんで……、
いいんじゃないかなあ~……」
 
きゅんきゅんな雰囲気にダウドはもう鼻血を出しそうであった。
 
「……かなあ~???ぴ?」
 
「そ、そうだね……、僕もそのままで……、い、いい様な
気がするけど……」
 
赤ん坊ドラゴンにじっと見つめられてアルベルトも困惑する。
 
(うーん、いずれでかくなったらデカになるのか……?)
 
「……ねえ、ジャミルも考えてよっ!」
 
「よっ?」
 
「うわっ!?」
 
アイシャが赤ん坊ドラゴンをジャミルの目の前に突き出した。
 
「じゃみる、じゃみる!」
 
赤ん坊ドラゴンがジャミルの顔をぺろぺろ舐めた。
 
「く、くすぐってえな……、よせよ……」
 
と、言いつつ……、嬉しそうなジャミルであった。
 
「ん~?どんなのがいいのかな?……、お前に似合う名前なあ……」
 
「なあ~?」
 
「ゴンザレス……、ゴン三郎……、ゴンちゃん……、ゴン太……、
タンスにゴン……」
 
「……みんなゴンゴンばっかりじゃないっ!」
 
「ごんごん~、ごん~」
 
アイシャは呆れて怒るが、それでも赤ん坊ドラゴンは嬉しそうに
ジャミルの手にじゃれて遊んでいる。
 
「ぴゅっぴ、だうーっ!」
 
「あはっ!今度はオイラの処に飛んできたよおーっ!もうっ、
本当にかわいいよおお、あははーっ!」
 
「ぴいー!あるー!」
 
「今度は僕だね……、はいはい……、ふふっ……」
 
「ゴン太郎……、ゴン之助……、ゴン吉……」
 
「だから……、ゴンから離れて考えてってば!!」
 
こんな調子で、一日中赤ん坊ドラゴンと遊び、4人は
出発するのを忘れ今日も日が暮れてしまった……。そして
又夜がやって来る。
 
「はあ、明日こそ、此処から動かねーとなあ……」
 
「そろそろ食料も尽きるよ……、街にも行って買い出しして
こないとね……」
 
「チビちゃんには、まだご飯は早いわよね、やっぱり……、
ミルクよね……?」
 
「みいく?」
 
「明日一旦また、リムルダールに寄るか……」
 
「だけど……、どうやってこの子を街の中に一緒に連れて
行くんだい……?」
 
「平気だよ、もし何か突っ込まれたら喋るぬいぐるみって事にしとけばさ……」
 
「無理があるよ……、ジャミル……」
 
アルベルトが溜息をついた。
 
「大丈夫だって!ほら、こうやって……」
 
「……」
 
ジャミルが赤ん坊ドラゴンの頭にハンカチを被せてほっかむりを作る。
 
「ぴいー?」
 
「な?あとは、アイシャのバッグの中のスラ太郎と一緒に
入れて並べときゃおっけー!どっから見てもラブリーな
ぬいぐるみだっての!」
 
「……おっけーじゃないでしょ……」
 
「チ、チビちゃん……、可愛い……」
 
ほっかむり泥棒スタイルの赤ん坊ドラゴンにアイシャが興奮する。
 
「あうう~……、かわいすぎるよおお……~」
 
「……ダウドまで……、たく、駄目だこりゃ……」
 
アルベルトが頭を抱える……。
 
「ちび?かわい?ある?」
 
赤ん坊ドラゴンがアルベルトの方を向いてちょんと首を傾げた。
 
「……ううう、うわ……、やばっ……」
 
やはりキュートさに堪え切れなくなってアルベルトも
必死で自分の顔を押さえる。
 
「そう言う事だ、さあ、寝る準備しようぜ!」
 
「ハア、もう……、どうなっても僕は知らないからね……」
 
「さあ、チビちゃんもねんねの準備しましょうね」
 
アイシャが赤ん坊ドラゴンを抱き、就寝準備を始めた。
 
「ねんねー、ねんねー」
 
「最近はもうモンスター出ねえし、見張り番も必要ねえから
夜もゆっくり寝られらあ!」
 
そう言うなりジャミルは早速横になって寝てしまった……。
 
「早いって、ジャミル……」
 
「早すぎるわ……」
 
ダウドとアイシャもジャミルの寝つきの素早さに呆れる……。
 
 
……ふふふ、そうはいかないのりゅ……
 
 
又……、陰から何者かが4人をこっそり見つめているのにも
気づかず……。4人は赤ん坊ドラゴンを間に挟み、川の字で
ぐっすり眠っていた。
 
「りゅ、りゅ、りゅ、りゅ……、やっと見つけたりゅ……」
 
何者かが寝ている4人にこっそりと近づいていく。
 
「けけけ……、やーっと……、ご対面りゅ……」
 
「ぴゅ……?」
 
何者かは赤ん坊ドラゴンに近づき、持っていたらしき
武器を振り上げた。
 
「……覚悟りゅーっ!」
 
「チビちゃんに何してるのよっ!!」
 
「りゅっ!?」
 
アイシャが素早く異変に気づいて目を覚まし、
赤ん坊ドラゴンを庇った。
 
「な……、なんだ、なんだい……!?」
 
「……どーしたのー?」
 
「ううんっ!?」
 
騒ぎに気づき、他の男3人もようやく目を覚ました。
 
「変質者よっ!チビちゃんを狙ってきたのよっ!!」
 
「何だと!?」
 
「……変質者じゃないりゅ!それにリトルは野蛮な
人間じゃないりゅ!」
 
「モ、モンスター……?……!べ、ベビーサタン……!?」
 
眠い目を擦りながらアルベルトが確認する。
 
「ええーっ!?な、なんでええーっ!?」
 
ダウドも突然の久々のモンスターの襲来に慌てふためく。
 
「……ベビースターラーメン……?」
 
「ふざけんなりゅ!何処をどうとったらそうなるりゅ……!
やっぱりお前は只の馬鹿だったりゅ!」
 
ベビーサタンはアホのジャミルにキレてカッカカッカと
ジャンプしまくる。
 
「はあ~?な、何だよ!おらあオメーなんか知らねえぞ!?
バカ呼ばわりされる覚えもねえし!」
 
「うるさいりゅっ!!オラ!さっさとそのドラゴンよこせりゅっ!!」
 
「アイシャ、チビを守ってろ……」
 
「……分ったわ!」
 
アイシャと赤ん坊ドラゴンを後ろに下がらせ、男衆は久々に
戦闘態勢を整える。


動き出す伏線

「大丈夫だよ、確かこいつはMPが無いのに無理に
高LV魔法を使おうとしてこける奴で有名だから……、
それ程大した相手じゃないよ……」
 
「フン……、リトルを甘く見ない方がいいのりゅ!
……ザラキッ!」
 
「え……?わああっ!?」
 
「ダウドっ!」
 
ベビーサタンの放ったザラキはダウド目掛けて
当たりそうになるがアルベルトが慌ててダウドを
突き飛ばして庇い、事無きを得る……。
 
「……あー……、びっくりしたあ……」
 
「どうして……?」
 
「おーい、何が大した相手じゃねえんだよ……!アルー!」
 
「おかしいなあ……、だって……」
 
「フン、……リトルはそんじょそこらのベビーサタンと
違うのりゅ……!MPはいつでもたっぷり、もりもりりゅ!!」
 
ベビーサタンが鼻息を荒くして威張る。
 
「厄介な奴って事だよな、分ったよっ!」
 
「くらえりゅ!ザラキっ!」
 
「……通じねえよっ!」
 
ジャミルが王者の剣を構えてベビーサタンに突っ込んでいく。
勇者の盾がザラキの魔法を瞬く間に打ち砕いた。
 
「……バカの癖に威張ってんじゃねーぞりゅ……!
クソ生意気りゅ……!」
 
「ぴゅ、ぴゅ……?あいしゃ……、こわい……」
 
アイシャに抱かれた赤ん坊ドラゴンが心配そうに
彼女を見上げた。……赤ん坊ドラゴンにとって、
生まれて初めて芽生えた、怖い、不安……、という感情……。
 
「大丈夫、大丈夫よ、チビちゃん……」
 
(取りあえず……、この厄介な野蛮馬鹿猿だけ何とか
抑えられれば……、後はどうでもいい雑魚りゅ……)
 
ベビーサタンが、持っているフォークの様な武器を構え……、
一歩後ろに下がった。
 
「……今日は帰るりゅ、次は容赦しないりゅ……!必ず
そのちっこいドラゴン頂くりゅ!」
 
「あっ!?」
 
「消えちゃったよお……」
 
「何なんだよ、あいつ……、すげー腹立つなあ……」
 
ジャミルが舌打ちしガッと地面を蹴った。
 
「皆、大丈夫……?」
 
「じょ……ぶ?」
 
赤ん坊ドラゴンをしっかり抱いたまま、アイシャが
心配そうに皆に声を掛けた。
 
「今日の処はな……、追い返したっつーか、逃げられちまった……」
 
「そう……」
 
「ぴゅ?」
 
「お前、モテモテだなあ、密猟者といい、あの変な小悪魔といい……」
 
「もて?」
 
「……冗談言ってる場合じゃないわよ、ジャミル……、
チビちゃん狙われてるのよ……?」
 
「分ってるよ、けど……、今はただ守ってやるしか俺達には
どうにも出来ねえじゃんか……」
 
「ぴい?」
 
ジャミルがそっと赤ん坊ドラゴンの頭を撫でた。
 
「なんかまーた……、夜寝られなくなりそうだよお……」
 
突然の厄介な来訪者に不安を感じながら……、4人は
寝れなくなってしまった夜を過ごす。
 
そして、朝……、眠い目を擦りながらも4人は又リムルダールヘと
買い出しに出掛ける……。赤ん坊ドラゴン、(チビ・仮名)をアイシャの
バッグに入れ、リムルダールの街の中へ入った。……やっぱり
ほっかむりは余計目立つからとアルベルトがジャミルに注意したので
していない。
 
「チビちゃん、ちょっとの間、いい子にしててね……、お願いね……」
 
「ぴいー?ねー?これ、ちゅらたろ?ねー?」
 
判ってるのか、判らないのか、チビが首を傾げてアイシャを見た。
 
「早く買いモン済ませちおう……」
 
「こんなハラハラな買い出しって初めてだよお……」
 
「ぴー!」
 
ダウドも心配そうにバッグの中で尻尾ふりふり、スラ太郎と並んで
お愛想を振りまいているチビを覗き込んだ。
 
「あっ……!あなた達っ……!!」
 
「……え……?」
 
一行が呼び声に恐る恐る振り向くと……。
 
「げっ!!」
 
そこにはあの依頼人の青い髪の少年が立っていた……。
 
「……あんた達生きてたんですか?なら、何処行ってたんですか!?
仕事ほっぽり出してっ!立派な契約違反ですよっ!!」
 
「……なーにが契約違反だっ!!この糞詐欺師野郎めっ!!」
 
「ジャミルっ!!声が大きいよっ……!!」
 
アルベルトが慌てるが、案の定、騒ぎに気づき、街の者が
こちらを振り向き、一斉に見る。
 
「何の事です……?」
 
少年が不思議そうな顔をする……。
 
「てめえ、密猟関係の組織ぐるみだろうが!!」
 
「……人聞きの悪い事を言わないで下さい!!何なんですか?
僕は皆さんが洞窟へ入られた後、ずっとお帰りをお待ちして
おりましたが、中から全然出て来られる様子がないので、落石
事故にでもあって死んだのかと思いましたので先に帰りましたけど……!?」
 
「はあ~!?とぼけてんじゃねえぞ!この野郎……!!今まで
何人もの密猟者と契約結んでドラゴンの卵を取って来させようと
してたんだろうがよ!!何で俺達にだけ仕事の内容に嘘つきやがった!」
 
「……言われている意味がわからないのですが!!……もういいです、
これ以上あなた達と話しても無駄の様ですね……、仕事は失敗したと、
……そう言う事でいいですね……?では……」
 
少年はそう言って話を速攻で纏めて歩いて行こうとする。
 
「……ちょ、ちょっと待てよ……!この……!」
 
「ジャミルっ……!」
 
アルベルトがジャミルを押さえる。
 
「……アルっ!邪魔すんなよっ!何でだよっ……」
 
「今は抑えよう……、あまりこれ以上変なのと係らない方が
いいんだよ……、チビの為にも……」
 
「分ったよ……、くそっ……」
 
「あっ、当然ゴールドは支払いませんよ、仕事は失敗ですからね、
ではっ!」
 
少年が去り際に4人の方を振り返り、ニヤニヤと笑った。
 
「……何だ、もうケンカは終わりか……」
 
「つまらんね、もっとやらないのかい」
 
騒動が終わると街の者は又皆何処かへと散って行った。
 
「はあ~……」
 
アイシャも安心してほっと胸を撫で下ろした。
 
「アイシャ、チビは……?」
 
「うん……、スラ太郎に寄りかかって寝ちゃってたから
大丈夫だったのよ、大人しくしててくれたし、誰も見て
なかったわ……」
 
「生きた心地しないよお~、もう……、ジャミルってば……」
 
ダウドがへたっとその場に座り込む。
 
「……だってさ、このままだと何かすっきりしねーじゃん……、
本当にあのガキが何か密猟と関係があんのか気になるだろ……?」
 
「それでも今は……、チビにもしもの事があったら大変だよ……」
 
アルベルトはバッグの中ですやすやと眠るチビを見つめた。
 
「ぴゅぴ……」
 
「たく……、んとに、幸せそうなツラしてらあ、こいつ……」
 
ジャミルも寝ているチビの鼻をちょんと突っついた。
 
 
そして、少年は……、薄暗い街の路地裏へと姿を消し……。
 
「ふん、野蛮集団共め……」
 
少年はベビーサタンへと姿を変えた……。
 
(……確かにあの時、リトルは奴らが信用出来なかったから、
他の奴らに洞窟探索の仕事を頼みに行ったりゅ……、けど……、
他に真面な取引相手が見つからなかったりゅ……、だから一旦
仕方なく、あの洞窟まで戻ったりゅ、けど奴らが全然出てくる
気配も無かったから中で落石にでもあって死んだのかと思ったの
りゅ……)
 
「……そうか、チビドラゴンは、あの洞窟に眠ってたのりゅね……、
ふ~ん、新しい洞窟はすでに密猟者達が目をつけてたのりゅ、
これはリトルがうかつすぎたりゅ……、けど、結果的に奴らが
ドラゴンを見つけてくれたから、まあ、これはこれで結果オーライ
りゅ……、ふふ……、それにしても、あの野蛮猿め、偉大なる魔界の
王子、リトル・デビルと人間の無能糞密猟団と一緒にすんなりゅ、
リトルは無関係りゅ……、一緒になんかされて……、あー、胸糞
悪いりゅね……」
 
……と、少年の正体、ベビーサタン事、小悪魔リトルは独りでぶつぶつと
長い独り言を言うのだった……。
 
……謎の密猟組織、魔界のモンスター……、ジャミル達の
知らない処で又大きな何かが動き出そうとしているのを今の
4人は知る由もなかった……。

エピ7・8

子育て4人組

ジャミル達はリムルダールでの買い出しを終え、一旦自分達への
船へと戻った。
 
「これからどうしようか?」
 
「そうだなあ、何処かチビが安全に過ごせる場所でも
あれば……」
 
「ルビス様の処はどうだろう……?」
 
「おっ、アル!それいいぞ!」
 
「ルビス様の処なら、これから僕らがどうしたらいいのかも何か
助言をくれると思うんだ……」
 
「決まりだね、行こうよお!」
 
しかし……、アイシャはルビスの処へ行くのに余り乗り気では
なかった……。
 
「アイシャ……、どしたよ?」
 
ジャミルが尋ねてみるが、アイシャははっとし、
慌てて返事を返す。
 
「えっ……?え、えーと、何でもないわ……」
 
「そうかい?だったらいいんだけどよ……」
 
「……」
 
(私だって……、最近随分胸が大きくなったと思うの……、
負けないんだから……)
 
……一年前の事にまだ執着心を燃やすアイシャであった……。
 
「ぴ……、ぴい~……」
 
チビが急にぐずりだし機嫌が悪くなる。
 
「あっ、チビちゃんどうしたの?お腹空いたのね、
はいはい」
 
アイシャが哺乳瓶で丁寧にチビにミルクを与える。
 
「ちゅっ、ちゅっ……」
 
「しかし、こうして見ると……、小せえ内はドラゴンも
人間の赤ん坊と変わんねえな……」
 
「……」
 
アルベルトがジャミルを見た。
 
「なんだよ……」
 
「いや、何でも……」
 
「はっきり言えよ!」
 
「い、いや……、何か君らの子……、みたいだなあ……、
と、プッ……」
 
「……すごく殴りたいんですけど……、アルさん、
一発殴りますよーっ……!」
 
しかしアルベルトは笑いが止まらず……と、
また騒動が起きる……。
 
「きゃーっ!チビちゃんがおしっこしちゃったわあーっ!」
 
「……オイラの顔に……、発射されたし……」
 
「ぴーっ!」
 
まだ子育てに慣れていない一行は時にあたふた、
ドタバタになるのであった……。
 
「処で……、こいつは男なのかな?女なのかな?」
 
ジャミルがチビの股を覗いて確認しようとする……。
 
「ちょっ、よしなさいったらっ!ジャミル!!」
 
「ぴ?」
 
アイシャが顔を赤くし、慌ててチビをジャミルから
取り上げる。
 
「いいじゃん、ちょっとち〇この確認するだけだよ……」
 
「ち……こ?」
 
「……チビちゃんが覚えちゃうでしょーーっ!!」
 
アイシャが火を吐いた……。
 
「さすが……、母親ドラゴン……」
 
ダウドがぼそっと呟く……。
 
「基本的にドラゴンは無性別だから……、どっちでも
ないんだよ、アイシャ」
 
「えっ?そうなの、アル……」
 
「でも、竜の女王様は女王様なんだから……、
女の人だよね……」
 
「もしも人間の姿になったとしたら……、ねえ、その辺
どうなのかしら?」
 
「教えてよお、……〇井さあん……」
 
「……おい、ダウド、誰に言うとんねん、誰に……」
 
「ちびのちこある?」
 
「!!!」
 
「やべえ……」
 
ジャミルがこっそり逃げようとするが……。
 
「……ジャーミール、どうするのー?チビちゃんが……、
もう変な事覚えちゃったんだけど……?」
 
アイシャが腰に手を当ててジャミルの前に仁王立ちになる……。
 
「せ、性教育だよ、うん、性教育……」
 
「……なーにが性教育よっ!!待ちなさーいっ!!
ジャミルーーっ!!」
 
「ひええええーーっ!!」
 
「……ま、まあ……、このPTじゃ、碌な事覚えるのも
時間の問題だね……」
 
「このPTって事はアルも一緒に含まれてんだけど……」
 
「うえっ……、そうでした……」
 
「ぴ!きゃっきゃっ!」
 
船内でドタドタ追い掛けっこする二人を見て
チビが異様に喜ぶ。
 
「でも……、大分チビちゃん……、最近ちゃんとお喋りが
出来る様になってきた様な気がするんだけど……、ホント
凄いよねえ……」
 
ダウドがチビを抱き上げる。チビはダウドの顔にすりすり、嬉しそう。
 
「やっぱり頭はいいんだね……、この分だと成長が凄く早いかも
しれないね……」
 
「ねー、あるとだうは、ちこある?」
 
「……一旦そこから、離れようね、チビ……、さあミルクの
続きだよ……、沢山飲んで大きくなるんだよ……」
 
アルベルトがアイシャの後を引き続いて、ミルクをチビに飲ませた。
 
「ちゅっ、ちゅっ……」
 
 
そして、夜中……。
 
「困ったなあ……、どうしよう……」
 
「……びいいーっ!びいいーっ!」
 
 
「ん?どうしたんだ……?」
 
「甲板の方だよ……」
 
「チビちゃんかなあ……」
 
男衆が甲板に行ってみると、チビを抱いたアイシャが戸惑いながら
オロオロしていた。
 
「アイシャ、何かあったか……?チビの具合でも悪いのか……」
 
「あっ、ジャミル、皆……、困ったわ……、チビちゃんが急に
鳴き出して……、お腹はいっぱいの筈だし……、おしっこもうんちも
したし……、どうしたのかしら……」
 
「……情緒不安定なんだよ、人間の赤ん坊の夜泣きと同じだよ……、
心配ないと思うよ……」
 
「うん……」
 
アルベルトもそっとチビに触れ、アイシャが優しく
チビの身体を摩る。
 
「みんないるから大丈夫だよお、ね、チビちゃん……」
 
「ほーら、ねろねろ、チビ~、……何も心配いらねえぞ~……」
 
「ぴ……、ぴ……」
 
チビは皆の顔を見ると落ち着いた様で、漸く眠った……。
 
「……今日はこのまんま皆で此処で寝るか……?」
 
「うん、星を見ながら寝るのもいいね……」
 
「今夜は凄く綺麗な夜空だねえ~……」
 
「ふふ、みんな来てくれて良かったわね、チビちゃん」
 
「ぴぴゅう~……」
 
 
チビを囲んで4人は幸せな夜の一時を過ごしたのであった。
 
「ぴ……」
 
(ずっと……、いつまでもこのままでいれたらいいのにね……)
 
アイシャがそっと寝ているチビに触れた……。
 
 
次の日……。
 
「……???……っ!!」
 
朝、変な違和感で一番最初にダウドが目を覚ました……。
 
「濡れてる……、オイラ、まさか……、も、洩らしちゃった訳……?」
 
口に手を突っ込んでダウドがオロオロしていると……。
 
「ぴいー!」
 
「チビちゃん……?あ、そうか……、君がオイラの処で……、
そうかあ……、とほほ~……」
 
皆に見つからない様……、こっそりダウドがズボンを取り換えに
船室まで下りて行った……。
 
 
段々と……、日が経つにつれ、チビの成長も目覚ましい
物があった。
 
「後、どれぐらいでルビスの塔だ?」
 
「えーっと、もうそんなに時間掛らないと思うよ……」
 
「……うわーっ!チビちゃーん!駄目だよお!!火吹いちゃあ!
船燃えちゃうよお!!」
 
「♪ぴーーっ!」
 
「この頃、小さいブレス吹ける様になったからね……、もう、どんどん
大きくなるわね……」
 
チビはパタパタと嬉しそうに飛び回る。
 
「ジャミルーっ!チビとあそぼーっ!!ぴーっ!」
 
「へえへえ、お前大分カタコトも卒業したな……」
 
「ぴーっ!!」


チビの秘密

ジャミル達が塔へ向かうと、すでに1階付近でまるで
一行が訪れるのを判っていたかのようにルビスが出迎えた。
 
「ルビス様……、えーと……、ご無沙汰……」
 
「お待ちしておりました、ジャミル、皆さん……、
お久しぶりですね……」
 
「ええと、ゾーマを倒してから、一度、光の鎧返しに
此処に来て……、それからもう……、大分立ってるっけ……」
 
「ええ、その後、皆さんはおかわりありませんでしょうか……?」
 
「ああ、元気だよ、取りあえず……」
 
「このひとが?ルビスさまなの?」
 
気になる事があると、きょとんと首を傾げるのは相変わらずで、
チビがアイシャに聞いた。
 
「うん、そうよ……」
 
「ぴーきゅー」
 
「まあ、その子は……、ドラゴンの……?一体何処で……」
 
ルビスが驚いた様にチビを見つめ、そして抱き上げた……。
 
「話せば長くなるんだけどさ……」
 
「分りました……、お話を聞かせて下さい、こちらへ……」
 
ルビスはワープルートで一行を最上階へと案内する。
 
 
「そうでしたか……、そんな事が……大変でしたね……」
 
「まだチビには自分の本当の親の事話してねえんだ、ま、頭いいから
いずれすぐ理解しちゃうんだろうけどさ……」
 
チビにはまだこういった重い話をあまり聞かれない様、
ダウドにチビを預けて向こうの方で一緒に遊んで貰っている。
 
「実は……、上の世界の方でも……、大変な事が起きている
様なのです……」
 
「えっ……」
 
「竜の女王様のお子様が……、一年以上……、現在も
行方不明なのだとか……、何者かに卵を盗まれた様なのです……」
 
「……あの、現在の女王様は今どうなされているのでしょうか……、
僕らが訪れた時にはすでにお身体の方も芳しくなかった様なのですが……」
 
アルベルトがルビスに尋ねると、重苦しい雰囲気で
ルビスが口を開いた。
 
「……ええ、女王様は卵を産んだのち……、すぐに他界されたそうです……、
どうやらその後で卵が盗まれた様なのです……」
 
「んじゃあ……、俺らが此処に来て……、すぐぐらいか……?」
 
「でも……、女王様のお城にいとも簡単に忍び込んで
卵盗むなんて普通じゃないわよね……」
 
「ああ、タダモンじゃねえぞ……、やばい感じが滅茶苦茶する……」
 
「ジャミル、あのドラゴンの子を……、私に少し見せて下さい……」
 
「え?あ、ああ……、いいよ、ダウドーっ!」
 
「あっ、はーい!」
 
ジャミルがダウドを呼んでチビを連れてくる。
 
「……」
 
「ぴ?」
 
ルビスがチビをじっと見つめ額に手を当てる。
 
「あの、ルビス様……、チビちゃんに何か……?」
 
アイシャが心配そうにルビスに聞いてみる。
 
「このドラゴンの子は……、封印されていた洞窟の中で……、
卵の時に見つかったのですよね……?」
 
「ああ、そうだけど……」
 
「この子は恐らく、普通のドラゴンではありません……、
とてつもなく凄い力を秘めています……」
 
「なっ……!?、ルビス様……、マジでか…!?」
 
「チビちゃんが……!!」
 
「それは……、チビの成長の度合い、凄い知能が有るのは
僕らでも見ててわかります……」
 
「この子の力は一歩間違えば……、破壊にも再生……、どちらにも
なる力を秘めている事でしょう……」
 
「そんなに凄いの……?チビちゃんて……」
 
「もしかしたら……、この子の本当の親は……、恐らく……、
竜の女王様の……」
 
 
「……ええええーーーっ!?」
 
 
ルビスの衝撃の言葉に思わず4人が一斉に声を揃える。
 
「……待って下さい、ルビス様!チビちゃんの本当の親は
洞窟の中のドラゴンさんじゃなかったって言う事なんですか!?
……あっ!?」
 
「……アイシャっ!」
 
アイシャが思わず声を張り上げてしまい、ジャミルが慌てて
アイシャに注意を促すが……。
 
「ぴーっ!ちがうよお!チビのパパとママはみんなだよ!」
 
「ダウド……、わりぃけど、また、チビを頼む……」
 
「う、うん……、チビちゃん、また向こうでオイラと遊ぼう」
 
「はーい!」
 
話を聞かれない様、再びダウドがチビを向こうに連れて行く。
チビはあまり気にもしていない様子ではあったものの。
 
「先程、私がお話した竜の女王様の城から卵が盗まれた事、
そして……、あなた達から聞いた密猟組織、魔族の事……、
これらと全て何か深く関係が有り、答えが結びつく様な気が
しているのです……」
 
「じゃあ、……密猟組織やあのベビーサタンとは又……、
別の何かが陰で動いていたって事だよね……?」
 
「うわ……、話がどんどんややこしくなってきたな……、けど、
何でわざわざ違うドラゴンのとこに卵隠しておいたんだか……、
それがわかんねえよな……、それにあの洞窟は俺らがゾーマを
倒すまで封印されてた筈……、それまで卵をどうしてたのかも気になるな……」
 
 
更に複雑になってきた事態に3人はダンマリになってしまった……。
 
 
「……うーん、何かこんがらがってきたぞ、俺……、頭が
おかしくなりそうだ……」
 
「もしも上の世界に戻る事が出来れば……、また竜の
女王様のお城に行く事が出来たなら……、その子の真相が
明らかになるかも知れませんが……、けれど今の私の力では
あなた達を上の世界まで送れる力がもう無いのです……、
昔よりも遥かに私の力は劣っていますし……」
 
「どうにか戻る手段があればなあ……」
 
ジャミルが腕を組んで考える。
 
「ですが、方法は無い訳では有りません……、それはとても
難しい方法なのですが……」
 
「戻れる方法あんのかい!ルビス様!?」
 
「……ルビス様!?」
 
アルベルトとアイシャも身を乗り出す。
 
 
「うーん、向こうは何話してんだろう……、気になるよお……」
 
「ダウーっ!ブーメランもっととおくになげてー!
チビ、とってくるよおーっ!」
 
「あ、はいはい……、わかったよ、チビちゃん」
 
 
「竜の涙の宝石が3つ揃えば……、もしかしたら竜の女王様のお城まで……、
戻る事が可能になるかもしれません……」
 
「竜の涙……?あっ……」
 
「これかしら……?一つだけ私達持っています……、洞窟にいた
ドラゴンさんが最後に流した涙が宝石に変わったんです……」
 
あの時の事を思い出したのか、複雑な思いでアイシャが
ルビスに竜の涙を見せた。
 
「だけど……、やっぱりドラゴンが死なないと……、
宝石にならないのかい……?」
 
「いいえ……、涙だけを何とか流して貰えればよいのですが……」
 
「……それは相当難しいね……、うーん……、ドラゴンに
泣いて貰うとか……、並大抵な事じゃないよね……」
 
アルベルトも首を捻り考えてしまう。
 
「タマネギ大量持参でとか……、駄目か……?」
 
同意を求める様にジャミルがアルベルトとアイシャを見る。
 
「……無理だよ……」
 
「無理よ……」
 
「そんなあっさり言うなよ……」
 
「ジャミル、とにかくまずはこの世界にいるドラゴンを
尋ねてみる事が先決かも知れないよ……」
 
「……成程……」
 
「ええ、封印が解けた幾つかの塔や洞窟にまだドラゴンが
存在しているかも知れません……、ゾーマが生前に狙っていた様に、
この世界には普通のドラゴン達よりも強大な力を持つドラゴン達がいる筈です」
 
「そうだな、まずはドラゴン探しか……、変な依頼屋の前に
俺達が情報聞いて行ってみた洞窟にはいなかったよな……」
 
「行きましょ!、急がないとまた密猟者達が動き出すわ!」
 
「ダウドーっ、そろそろ行くぞー!」
 
「あ、はーい……」
 
チビを連れてダウドがぽてぽてとジャミル達の方に戻って来た。
 
「……チビを匿って貰おうと思ったけど、やっぱり今は
俺達と一緒にいる方がいいかな……」
 
「ええ……、この子は今が一番成長が大切な時期かと……、
その為にも皆さんの力が必要なのです……」
 
ルビスはそう言ってもう一度チビの頭を優しく撫でた。
 
「ぴーっ!」
 
チビがルビスに尻尾を振り、スリスリとお愛想する。
 
「皆さん……、どうかお気をつけて……、又何か困った事が
あればいつでも訪ねて来て下さい……」
 
 
……複雑に絡み合う糸を解く為、そして、チビの為……、
4人は新たな冒険の扉へと再び歩き出す……。

zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ5~8

zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ5~8

スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 続編 オリキャラ オリジナル要素・設定 クロスオーバー 下ネタ 年齢変更

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-17

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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