ファンタジー系4 最終話
おはようございます。最終話をお届け致します。ついに終戦。ついに大団円!お楽しみに!
最終話
「ファンタジー系4」
堀川士朗
最終話
王暦39年4月。
身長150パルカ(15.4メートル)にまで巨大に成長した、北の国ツラン地方の双子の巨人姉妹スギサクとメチエが敵の城を攻略しようとしている……!
二人は森林首都エルトポへの強襲部隊の先鋒を務めた。
撹乱と破壊が目的である。
全身タンジムン鋼の重甲冑に身を包んだ彼女たちは易々とズドルマバフチェー宮殿の高い塀を乗り越えて、手に持った馬鹿デカい鬼棍棒でもってタリホー帝国兵たちを次から次に叩きのめしていった!
タリホー兵らは混乱に陥った!
姉妹は鬼棍棒をブンブンと振り回しながら満面の笑みを浮かべていた。
甲冑のあちらこちらからは、できたてのサンパウロ一番のようにシュンシュンと湯気が立っていた。
姉妹は、自分たちの名前をつけてくれた大魔王アルノのためにこの日こうして役に立つ事が、この上なく嬉しいようだった!
ゲンブ一輌につき六門、五十輌、合計三百門の戦車砲の視認カメラ搭載徹甲弾はあらゆるものを人間ごと破壊した。
森林首都エルトポには死が充満していた。
タリホー帝国陸軍部隊らの死体の山が次々と築かれていった。
しかし彼らは、生きるもの全てに対して死ぬのだ。
無駄死にでは決してない。
それは北の国の兵士とて同じ事だった。
鍛え抜かれた身体と流れる血でもって、お互いに魂の会話を交わしていた……!
……だがそれも終焉が近づいていた。
タリホー帝国にも巨大鳥グロイデルは存在する。
中立国へーカップ王国から輸入した卵を無事に孵化させ、数羽を軍用輸送鳥として飼っている。
敗色濃厚となったタリホーは皇帝始め首相や閣僚らを第三国に逃がし、亡命政府を立ち上げて北の国に反抗するつもりだった。
しかし彼らを乗せた輸送鳥グロイデルは、北の国の気象変動兵器『ハーデス零型』(魔導博士ザコシュの発明品)の落雷によって撃墜され皇帝ら一派は全員死亡した。
(発雷確率95パーセクチョ(%)で目標物に落とせる)
ズドルマバフチェー宮殿に北の国のピンクの旗が上がった!
市民への虐殺や略奪行為は北の国の鉄の軍規がこれを許さなかった。その後の治世を容易にする目論見もあった。
捕虜の交換が成され、次々と展開される和平交渉。
かくして、ついに、タリホー帝国に勝利する北の国!
国力差3対1をものともせずに!
タリホーはその後15の小国に解体され新たにタリホー連邦として北の国の管理下に置かれ、大魔王アルノの手によって完全掌握される事となる。
広大なる領土を手中に納めた北の国は、これで名実ともに東州最大最強国家となった……!
……。
…………。
……………………。
時は流れて…………。
☆王暦5年。
人口4200。金720。
食料1680。鋼量150。
兵力500。文明度20。
驚異的な速度で北の国は膨れ上がった。
↓
☆王暦112年。8月。
人口58039700。金85207100。
食料95242300。鋼量27658500。
兵力1275500。文明度34250。
73年前のタリホー戦役を大勝利で飾り、ネルネ共和国や東国諸侯連合などを傘下に納め、その後二度のベビーブームにより超大国となった北の国。
だが魔導博士ザコシュや四天王の面々は、もうこの世にはいない。
ヴォンソン(盆尊)の季節。
今日はあまり暑くない様子だ。
何もないのどかな草原。
コーカシャイン地方。
92歳の年老いたラシャが車椅子に乗っている。
ラシャの真っ白な髪は風に揺れている。
車椅子を押しているのは今も16歳の大魔王アルノ。
二人は麦わら帽子をかぶっている。
周りには護衛もおらず、二人きりだ。
アルノが摘んでやった花をラシャに渡すと、ラシャは少女のように微笑んだ。
ラシャがまたゴムのボールを震える手から落としてしまったので、アルノはそれを拾ってあげた。
これからラシャの父親とスードンのお墓参りに、二人は行く。
お供え用のスピカ薔薇のブーケは、もう用意してある。
THE END
(2022年8月~9月執筆)
ファンタジー系4 最終話
最後までご覧頂き本当にありがとうございました。少しお休みを頂いてまた新作を発表致しますので宜しくお願い致します。