「哀しきは」

 哀しきは
 こんぺい糖の落ちる音
 砥石に水を掬びて離す如くに
 散らばる はじける きざむ、音。
 知らず知らずに置き去りにして
 ふためと逢えない落した忘れ物に
 捧ぐる両手ですくっては
 場所も分らず
 撒く
 撒く
 撒く
 力無く膝を垂れ
 過呼吸の虚しい恐怖は胸に溜まり
 滲む視界
 潤む世界に
 がらす細工の赤人魚

「哀しきは」

「哀しきは」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-15

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