な、貴方だから
だから。
「助けてぇ」
力を入れると今にも壊れてしまいそうなチェーンロックを解除し、2年前配属先で仲良くなった会社の同期である友人から助けを求められている。何時だと思ってんだ。寒い。
「お前…今、夜中の3時だぞ…?殺すぞ…。」
「違う。いや、違くはないけど…ごめん謝るから助けて。まじで殺されるんだおれ。」
何言ってるか検討もつかないし、自分には関係ない事だとため息混じりつつドアを強制的に閉めようとする。
「人助けだと思って俺を匿って下さい。女と飲み行ったのばれて、まじで、彼女から刺されそう〜」
ほらな、俺には微塵にも関係ない。だが奴は無理やり部屋に入って(力及ばず)ヒーターを付け暖を取り出す。
「お前だから助けを求めたのよ。俺可哀想でしょ。」
「可哀想じゃない。死ね。」
憐憫なお前を誰が許すのだ。飲酒してきたのだろう、ほんのり赤い血色の良い顔に崩れた笑顔を見るのは自分だけだと思う事実を感じ少し苦笑いする。可哀想なのは、俺だ。きっと、これからもお前は気付かない。理解も難しいだろうな。来年自分は結婚する予定の彼女がいる。勿論、誰にも話してない。だからお前は来年からここには来れない。ざまあみろ。不憫な惨めな貴方だから好きなのだ。
な、貴方だから