「月のカンテラ」

 落陽のカンテラの音
 搖れるカンテラ…からころと
 ()れかが吊らしてゆらす音
 夕陽は搖れる…影を落として
 夕陽は搖れる…誰が下げ持つ?
 日暮の空の垂幕を
 横一文字にふり切って
 橙色から噴きあげ飛沫(しぶ)いた夜の闇
 Sprinkleはしとしとと
 僅か乍らも止む事せず
 黒い血は町を今宵に染めた
 空に
 夕陽の弱々しい残火は消え
 冴ゆる月のカンテラ…白い炎
 凍鶴のくずれて死んだ羽の色
 巴のやうに後ひいて
 毬のやうに擽りまろぶ
 ころんころん…ころんろん
 しとやかに…なつかしい微笑み
 月のカンテラ
 空に浮んで見えない虹の羽のばし
 鏡の水面(みのも)にゆらゆら遊ぶ
 赤い躑躅が肉体(からだ)ひたして
 水月と…たわぶれる
 白は涙を孕んだ黒眼
 赤はモノクロのはみ出し者
 天を仰いで水を見つめて
 接吻(くちづけ)するは冷たい躯…
 月のカンテラは白い炎
 いつか躑躅を抱きしめて
 夜明の(ともし)となれる日を…

「月のカンテラ」

「月のカンテラ」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-11

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