宇宙で最後の魂は

 ここに、一人の少年がいます。
 是非一緒に、彼の人生を見てください。


 彼は、穏やかな少年時代を過ごしました。
 しかし、青年になると、彼は事故で父を失いました。
 その出来事は、彼を神経質にしました。
 彼はどんどん悲観的になり、彼の心はどんどん沈んでゆきました。
 彼には自然が必要だと考えた母親は、彼を田舎の農家の親戚に預けました。
 

 太陽の下、彼は鍬を振り、不安のない環境で育ち、彼は大人になりました。
 彼は都会に戻りました。
 けれども、都会での暮らしは彼を追い詰め、彼は死のうとしました。
 彼はすぐに死ぬことに失敗し、彼は意識のないまま生死の間をさまよいました。
 母親が病院にたどりつくと、彼に言いました。
「また、ここで死んでしまうのね」
 彼は死にました。


 驚かないでください。これは彼の魂が繰り返し見る夢なのです。
 一緒にいた母親の魂は、もうこれ以上ここにいることはできません。
 彼の母親の魂は、帰るべき場所へと帰りました。
 でも、自ら死ぬのをやめない限り、彼の魂はここから帰れないのです。
 父親も、母親も、恋人も、兄弟も、彼と一緒にいようとしました。
 けれども、それらの魂が、彼の魂が救われるまで一緒にいることは、ついに叶いませんでした。
 彼は、この宇宙にいる最後の魂になりました。
 彼はそれからまた人生を1031回も繰り返しました。
 でもついに、彼の魂の最後の人生がやってきましたよ。


 彼は、穏やかな少年時代を過ごしました。
 しかし、青年になると、彼は事故で両親を失いました。
 その出来事は、彼を神経質にしました。
 彼はどんどん悲観的になり、彼の心はどんどん沈んでゆきました。
 彼は親戚の農家の家に預けられました。

 太陽の下、彼は鍬を振り、不安のない環境で育ち、彼は大人になりました。
 彼は都会に戻りました。
 都会での暮らしは彼を追い詰めました。
 けれども、彼の魂が宇宙で最後の一人になっても、彼の夢は不思議と消えませんでした。
 彼の小説家になる夢は、消えませんでした。


「もし、家族が元気に今まで暮らしていたら」
 彼は、それを想像し、小説にしました。
 小説は売れませんでした。
 けれども、彼は老いるまで小説を書き続けました。
 老いた彼の部屋は、宝物でいっぱいでした。
「家族と世界一周旅行」
「弟とけんか」
 いろんな本を書きましたね。
 そして、彼の魂が、もう叶えられなくなった夢の一つがありますよ。
「恋人と、一緒に暮らす」
 老いた彼は、ゆっくりと目を瞑りました。
 

 お疲れ様でした。
 彼はやっと、1万回以上続いた地獄から抜け出したのです。
 彼の魂は、最後まで生きた証に、帰るべき場所へと導かれました。
 そこには、彼の父親も、母親も、恋人も、兄弟も、いるのですよ。

宇宙で最後の魂は

宇宙で最後の魂は

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-10

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