zoku勇者 ドラクエⅢ編 最終章

これにて完結です。此処までお付き合い下さった方がいらっしゃいましたら
感謝致します。次回からは作者が勝手に妄想したゾーマ撃破後、その後の続編の
物語を投稿致します。

その1

死闘、絶体絶命……

血を吹いてジャミルが床に倒れた……。床はジャミルが
吹いた血と身体からどくどく流れ出る流血で瞬く間に真っ赤に
染まる……。
 
「……い……、いやあああーっ……!!ジャミル……、
ジャミルーーっ!!」
 
泣きながらアイシャがジャミルの元へ駆け寄り重体の
ジャミルに必死で呼び掛けるが……。
 
「いや、いやよ……、返事して、ジャミル……、お願いだから……、
ねえったら……、ねえ……!」
 
「やだ……、こんなのやだよおお……!!ジャミルーっ!!」
 
パ二クリながらダウドも側で泣きわめく……。
 
「どうじゃ?……儂の恐ろしさを思い知ったか?まだまだ
こんな物ではないぞ……」
 
「……ゾーマっ!く、二人とも……、落ち着いて……、
まだ大丈夫だよ、心臓が動いてる……」
 
アルベルトがジャミルの胸にそっと手を当てる。小さくではあるが、
微かに心臓には鼓動があった。
 
「ア……、アル……、本当……!?」
 
絶望に打ちひしがれていたアイシャの瞳がぱっと輝く。
 
「ああ、これぐらいなら何とかべホマを掛ければ大丈夫、
だけど……、傷が深いと詠唱に時間が掛かるんだ……」
 
「……そうはさせぬ……、丁度良い……、今、此処でお前達も
纏めて全員殺してくれようぞ……」
 
「……ゾーマの奴め……!!」
 
アルベルトが歯噛みする。今此処でゾーマに邪魔をされては
何もかも全てが終わってしまうのだから……。
 
「……アル、ジャミルが回復するまで私が食い止めるわ……」
 
「えっ……!?だ、駄目だよ!アイシャ、君一人じゃ無理だ……!」
 
「……私の事なら大丈夫、アル、お願い……、ジャミルを守って……」
 
「アイシャ……」
 
「……ダウドも……、これ……、お願い……」
 
アイシャが再びダウドに賢者の石を手渡す。
 
「アイシャあ~……」
 
「……」
 
アイシャが立ち上がり、ゾーマを睨む。その表情は
大切な人を傷つけられた怒りと悲しみが心から溢れていた。
 
「……糞じじい!よくもやってくれたわね!!」
 
「……」
 
「アイシャ……、性格豹変した……」
 
だが、怒りMAXでついにアイシャまでもが
壊れたのであった……。
 
「怒ったんだから……、もうっ!絶対許さない……!!」
 
「……」
 
「メラゾーマっ!メラゾーマっ!えいっ!おまけにもう一発!
メラゾーマっ!!えーいっ!飛んでっちゃいなさーいっ!
……イオナズーーンっ!!」
 
アイシャは重体のジャミルを少しの時間でもゾーマから距離を引き離し、
守ろうと自身のMPの残りも顧みず、魔法を必死で連呼する……。
 
「す、凄いよ、アル……、アイシャってばゾーマ押してる……、
……ゾーマが爆風で向こうに吹き飛んでいっちゃったよお……」
 
女は怖いとつくづく思うアルベルトであった……。
 
「ねえ、ジャミルは平気……?」
 
「うん、大分傷が塞がってきた……、もう少し……」
 
「……調子に乗るな……、小娘めが……」
 
「……きゃああああっ!!」
 
「アイシャっ!!」
 
ゾーマもアイシャを波動で弾き飛ばしアイシャはその場に倒れる。
 
「……アルうー!まだあ!?早くしないとー!!」
 
「ゴミ屑めが……、ヌッ?」
 
「……行かせない……、行かせないもん……、ジャミルの所には……、
絶対……、行かせないんだから……」
 
痛みを堪えてアイシャが立ち上がり再びゾーマの前に立った。
 
「……傷は完全に塞がったけど……、意識がまだ戻らないんだよ……」
 
「そ……、そんなあああ……」
 
「ダウド、ジャミルを頼む……、どうか守っていてあげて欲しい……」
 
「アル……?」
 
「僕もアイシャに加勢しなきゃ……、後は本人の生命力次第なんだ……」
 
アルベルトもアイシャの元へと走って行く。ダウドは涙目で
それを見つめる事しか出来なかった……。そして……。
小さな体でアイシャはゾーマに抵抗し、立ち向かい、必死で戦う。
 
「……邪魔だと言っておろうが!ゴミは消えてしまえ!!」
 
「ああっ……!?」
 
ゾーマは再びアイシャを弾き飛ばそうとする、だが……。
 
「メラゾーマっ!!」
 
「……グッ……!?」
 
「アルっ!来てくれたの……?」
 
「アイシャ、平気かい!?」
 
「フン……、邪魔なゴミがもう一匹増えたな……、
目障りな……」
 
「……私の事よりも……、ねえ、ジャミルは……、
ジャミルは大丈夫なの……?」
 
「うん、傷は塞がったよ、ただ……、意識がまだ……」
 
「アル……、私……、ジャミルの事……、信じてる……」
 
「アイシャ……」
 
「いっつも心配ばっかり掛けて、無茶ばっかりして……、でもね……、
約束は絶対守ってくれるもん……、だからきっと戻って来てくれる……、
絶対に4人で一緒に帰るんだって……、そうよ、約束したんだから!!」
 
アイシャが目を見据えてゾーマを睨んだ。
 
「アイシャ……、うん、そうだね!僕も信じるよ!」
 
「アル……」
 
「信じよう、ジャミルはきっと戻って来てくれる……!」
 
「うんっ!目覚ましたらお仕置きしちゃうんだから!
ほんとうにも~!心配ばっかり掛けて!!」
 
「アハハ……」
 
「しつこいゴミ共め!!」
 
ゾーマが再び凍える吹雪を二人に向けて放とうとする。
 
「フバーバ!!」
 
「そんな物では無駄だと言うのが判らぬか!頭の悪いハエめ!」
 
「……くっ!!」
 
「ドラゴラム!!」
 
アイシャがドラゴンへと姿を変えゾーマへ炎のブレス攻撃をする。
 
「……無駄な事を…!!」
 
アイシャとアルベルトは気力を振り絞り戦い続けた。
だが二人のMPはもう限界に近かった……。
 
 
一方……、目を覚まさないジャミルを見守り続けるダウドは……。
 
「……ジャミルう~……、いい加減目を覚ましてよお……、
お願いだからあ~……、このままじゃ皆やられちゃうよお……、
もう話が半分真面目になっちゃったじゃん……、こんなのオイラ
耐えらんない……、い、いつものお気楽な話に戻してよお~、
……だからジャミルが早く起きて馬鹿やってくんないと……、
ううっ……、ば、馬鹿ジャミルーーーっ!!」
 
 
           ……ごっつん!!
 
 
「……誰が馬鹿だ……!ああ~んっ!?」
 
「いった……!ジャ、ジャミル……!!」
 
「さっきから何、人に向かってギャーギャー喚いてんだよ、
ったく……、あれ?そういや俺……、どうしてたんだっけ……」
 
「うわあーーん!!……じゃみるううう~!!
びええええーっ!!」
 
ダウドは意識を取り戻したジャミルに突進し抱き着き、
大泣き状態であった……。
 
「な、何……?ちょ、ダウドやめろよ!首絞めんなってば!!
いたたたた!」
 
「ぐすっ……、ひっく……、ゾーマに…、マ、マヒャド喰らって……、
意識不明の……、……ぐえっく……、大重体だったんだからさあ……、
ひっく……」
 
「そっか……、全然覚えねえや……、そうだ!アイシャ達は……!?」
 
「あ、こんな事してる場合じゃないよお!大変なんだよお!」
 
「何!?」
 
「目ぇ覚まさないジャミルを守ろうとして二人だけでゾーマと
戦ってるんだよお!!」
 
「!!」
 
「行こ、二人の所へ!!」
 
 
 
「……くうっ!!……」
 
アルベルトが手を床についてしゃがみ込む。
 
「どうした?ゴミが、もう終わりか?」
 
「……ま、まだ……、戦える……、ジャミルが戻って来るまで……、
頑張んなきゃ……」
 
「まあ、ゴミはゴミなりによくぞ頑張ったのう……、褒めてつかわそう……」
 
「……うあっ!!」
 
もはやボロボロで動けないアルベルトをゾーマが蹴り飛ばし、
ほくそ笑む。
 
「フン……」
 
「……ま、負けるもんか…」
 
「おや……、頭上の小うるさいハエももはや限界の様じゃぞ……」
 
「わ……、私、もう……、駄目みたい……」
 
「……アイシャっ!!」
 
MPが無くなり力尽き、元の姿に戻ったアイシャは地面へと
急降下で落下していく。
 
「アイシャーーーっ!!……も、もう……駄目だっ!!」
 
 
(……ジャミル……、皆……ごめんなさい……)
 
 
しかし、次の瞬間……、アイシャが地面へと叩きつけられる寸前……、
彼女を受け止め抱きとめる温かい手があった。
 
「……ジャミルっ!!」
 
アルベルトも思わず叫ぶ。……気絶しかけたアイシャが
うっすらと目を開けると……、其処にはいつもの……、
大好きな人の変わらないいつもの笑顔。
 
「……ジャミル……?」
 
「よっ、御無沙汰!」
 
「ジャミル……、……ジャ……」
 
アイシャの目がみるみる潤み涙目になり……。
 
「ごめんな、心配かけ……い……、いででででで!!
こらやめろっ!!」
 
ジャミルのほっぺたを掴み思い切り横に引っ張った……。
 
「あでででで!やめろってば!頬が伸びちまうよっ!」
 
「……バカ!バカ!バカっ!ジャミルのバカっ!!
心配ばっかり掛けて……!!本当に死んじゃえ……!!
もうっ!絶対許してあげないんだからっ……!!」
 
アイシャはジャミルの首っ玉に噛り付いてわんわん泣き喚く。
 
「……ごめんな……、最後の最後まで……、俺、お前の事……、
泣かせてばっかりだ……、アホでどうしようもねえな……、本当、
ごめんな……」
 
「お帰りなさい……、ジャミル……」


ジャミル、再び

「……良かった、本当に……」
 
アルベルトもほっとし安堵の溜息を洩らした。
 
「アルーっ!大丈夫ー?今回復するよおー!」
 
ダウドもパタパタと走って来る。すぐにアルベルトに
賢者の石を翳し、傷ついた体を癒す。
 
「ダウド、有難う……」
 
「おーい!」
 
アイシャをお姫様抱っこしたままジャミルも走って来た。
 
「……しかし……、ちょい重いなあ……」
 
「何よ!そんな事言うなら降ろしてよっ!ジャミルのバカバカ!」
 
「いててて!」
 
「……全くもう……、本当に心配ばっかり掛けて……、
大変だったんだからね……」
 
腰に手を当ててアルベルトがジャミルを横目で見た。しかし、その表情は
いつもと変わらないジャミルの姿を見て、心から安心した表情に満ちている。
 
「みんな、本当ごめんな……、心配掛けて悪かったよ……、
って、俺、よく考えたら悪くねえじゃん……、やったのは
ゾーマじゃんよ……!」
 
「……」
 
「何か……、腹立ってきた……」
 
「……フン、ゴミ共が……、ゴミ共が集まって粗大ゴミに
なっただけではないか……」
 
「てめっ、ゾーマっ!……さっきはよくも……!!」
 
「そろそろカタを着けようではないか……、この世界の支配者は
闇の国の王、このゾーマ様こそがふさわしいのだ……」
 
「……でも……、どうしよう……、私……、もうMPが残ってないの……」
 
「僕もだよ、どうしたら……」
 
「だけど、どうしてかしら……、MPが無くなっても
どうにか身体が大丈夫なのよ、不思議ね……、もしかしたら
ルビス様が守ってくれてるのかしら……」
 
「……二人とも……、そんなになるまで戦って
くれてたのか……、ごめんな、俺の為に……」
 
ジャミルが悔しそうにぎゅっと唇を噛んだ。しかし、
そんなジャミルを見てアルベルトは首を振り、ジャミルの肩に
そっと手を置いた。
 
「いいんだよ」
 
「アル?」
 
「友達だから……」
 
そして、アルベルトが笑った。
 
「……アル……」
 
「ま、世話の焼ける困った友達だけど……」
 
「……なにいっ!?」
 
「ジャミルっ!」
 
「アイシャ……」
 
「えへへ~♪」
 
ジャミルの手を取ってアイシャも笑う。
 
「大好きだよ、ジャミル……」
 
「な、何だよ……、いきなり……、たく……」
 
……嬉しい癖に相変わらず素直になれず、顔を赤くしてジャミルが困る。
 
「きゃー!ちょっとお!ずるいよお、みんなして!オイラも、
オイラもーっ!!」
 
そして、焼きもちダウド……、ジャミルに覆い被さるのであった。
 
「……こらーっ!上におっかぶさるなーっ!……重いなあーっ!
このバカダウドーーっ!!」
 
「♪えへへ~!だよお!」
 
「だから、絶対に帰ろう……?皆で一緒に……!!」
 
「アル……、よおーーしっ!」
 
ジャミルが再び王者の剣を強く握りしめ、気合いを入れ
元気を取り戻す。
 
「……最後の悪あがきは終わったか……?こうして待っていて
やるのだから儂も優しいものだ……、蕁麻疹がでるわ!死ね!
皆殺しにしてくれるわ!!」
 
「うるせ、バーカバーカ!クソじじい!てめえにだけは絶対負けね!」
 
「……マヒャド……!!」
 
「……おっと、同じ手は食うかよっ!」
 
ゾーマが再びジャミルに向け、マヒャドをぶつけようとするが、
とっさに素早く避けてマヒャドをかわす。
 
「すんごい運動神経……」
 
「勇者の盾……、もう要らないんじゃ……」
 
「ぐぬう……、小生意気な!!」
 
「ヤッ!!」
 
「……何っ!?」
 
ジャミルはゾーマの正面まで迫り、思いっきりゾーマ目掛け
王者の剣を振り下ろす。
 
「……くう……、やるな小僧……、さすがルビスに
選ばれただけの事はあるな……、やはり貴様は只の
ゴミではなかったか……」
 
……ジャミルに斬られた胸を押さえ、呻きながら
ゾーマが呟いた……。
 
「今頃判ったか、バァーカ!」
 
鼻を擦りジャミルが満面の笑みを浮かべた。……直後。
 
「……ふんっ!」
 
傷ついたゾーマの身体が一瞬で元に戻ってしまう……。
 
「……そんなっ!」
 
「え~……?そんなの……、あり……?ずるくない……?」
 
アイシャが叫び、ダウドの口が開いたままになる。
 
「フフフ……、フフフフ……」
 
「くそっ……!フライングだぞ!糞じじいーーっ!!」
 
再びジャミルがゾーマに立ち向かい斬り掛る、しかし……、
何度斬りつけてもゾーマの身体はすぐに元に戻ってしまう……。
 
「……ちくしょう……!」
 
「ククク……」
 
ゾーマは流石のジャミルが焦り出したのを見て、自身の勝利を
確信したのか不気味な笑いを浮かべた。
 
「我とて……、こんな屑剣にいつまでも怯えてはおられぬ……、
3年の歳月を費やし……、王者の剣を破壊したのち……、
……剣に対抗出来る新たな力を身につけたのだ……」
 
「……さ、3年も……?前の王者の剣……、破壊するまで
そんなに掛かったの……?」
 
「じゃあ……、あの変なトリオに当然壊せる訳ないよね……」
 
「何だ……、あん時心配して損した……、クソッ……」
 
「もう諦めよ……、貴様らにはもう残された手立ては
残っておるまい……」
 
「絶対諦めねえぞ……、負けるもんかよ……!」
 
「……も……、もう終わりだぁ~っ……」
 
「縁起でもねえ事言うな!ダウド!」
 
「あうう~……、だってぇ~……」
 
「諦めたら負けだ……、そこで本当に終わっちまうんだぞ……」
 
「……そうよっ!私達はしぶといんだからっ!」
 
「……キングヒドラ戦の時の勇気を思い出すんだ、ダウド……」
 
「アル……、だけど……、もう本当にどうしようもないよお……」
 
……成すすべの無くなった4人はじりじりとゾーマに
追い詰められていく……。

その2

最後の賭け

「……よしっ、イチかバチか……、こいつに賭けてみっか!」
 
「な、何するの……、ジャミル……」
 
また変な事を考えているんじゃないかと、不安そうにダウドが
ジャミルを見た。
 
「……この剣に俺の残りのMPと……、ギガデインの魔法力を
剣に全部注入して……、ゾーマをもう一度叩き斬る……、これが
俺らに残された最後のチャンスだ……」
 
「えっ……、ちょ、ちょっと待って……、そんな事したら……」
 
「無茶だよお!」
 
「無茶でも何でも、もうこれしか方法がねんだよ!」
 
「……や、やめて……、ジャミル……、お願い……」
 
「君のMP全部使っちゃうんだよ!?」
 
「……まーた、アイシャを泣かす気なの!?いい加減に
しなよお!」
 
……ダウドにまで怒られるジャミル。
 
「何だよ、何だよ!まるで俺が死ぬみてー!」
 
「だけど……」
 
「……えっと……」
 
他の3人の顔を覗いつつ、ジャミルが頭を掻く。
 
「ま、確かに……、当たればでかいけど、外れたら大損だあな、
それで俺達終わりだ……」
 
手をぴらぴら振ってジャミルがおどけてみせる。
 
「もう……」
 
「けど……、少しでも希望があるなら……、それに
賭けてみるしかねえだろ、なっ?」
 
「……分ったわ……」
 
アイシャがそっとジャミルの手に触れた。
 
「私もついてる……、絶対大丈夫だよ、ジャミル!」
 
「オ、オイラだって……!!」
 
アルベルトもジャミルの顔を見て黙って頷いた。
 
「……皆……、ありがとな……」
 
「よくもまあ此処まで屑が頑張ったものだ……、だが、
それももう終わりだ……」
 
ゾーマの最後の凍える吹雪が今まさに放たれようとしていた。
 
……ふと何処からか……、ルビスの声が聞こえてくる……。
 
 
皆の気持ちを一つに……、信じるのです、ジャミル……
 
 
「ルビス様……」
 
ジャミルは最後にもう一度仲間一人一人の顔をじっと見据えた。
 
俺……、最初は……勇者なんてとんでもねえモン
押し付けやがってなんて……そう思ってばっかだったけど……、
皆と旅が出来て……、凄く楽しかったよ……
 
 
……こんな俺について来てくれて……、今まで……本当にありがとう……
 
 
「死ね……!!虫ケラ共……!!」
 
「……精霊ルビスよ……!!」
 
「何っ……!?」
 
「我に力を……!邪悪な者を打ち倒し力を……!!」
 
「……何だと……!?」
 
「……ああああ……!くううううっ……!!」
 
全身全霊の力を込めてジャミルが王者の剣に自身の全MPと
ギガデインの魔法力を注ぎ込むが、王者の剣から溢れでる
凄まじく強い魔法力にジャミルは耐えられず剣を手放しそうになるが
……その手を仲間達が支え一緒に強く握る。
 
「……ジャミル、大丈夫だよ、僕らもいる……」
 
「私達、最後まで……、ずっと一緒よ……」
 
「……諦めないよお!」
 
「……皆……、くっ……、も、もう少しだっ……!
……ああああーーっ!!」
 
「これですべて終わりにしてくれるわーーっ!!滅びよ
人間共めがーーっ!!」
 
「滅びるのはてめえだーーっ!!……闇に帰れゾーマっ……!!
だあああああーーっ!!」
 
王者の剣から流れ出る凄まじい電撃剣がゾーマの身体を貫いた……。
 
「……まさか……こんな……小僧に……この闇の大魔王が……、 
……グゥォォォォォォーーーっ!!」
 
電撃はそのまま更にゾーマの身体を包み込んでいく……。
 
「……くうっ……!」
 
ゾーマは力尽き、そのまま床に倒れた……。
 
「……っ!!」
 
「ジャミルっ!!」
 
「こ、こっちもだよお……!!」
 
「うそ……、ジャミル……、約束したよね……、4人で一緒に
帰るって……、ねえ……」
 
「……だ、大丈夫だ、アイシャ……、だから……、もう
泣かねーでくれ、頼むから……」
 
ふらふらする頭を押さえながらジャミルが立ち上がり、
安心させる様にアイシャの頭をポンポン叩いた。
 
「……ジャミル……、良かった……」
 
アイシャが震えながらジャミルにぎゅっと抱き着く。
 
「だから……、MPが一気に減ったから……、
急にくらっと……、けど、悪いな……、マジで心配ばっか掛けてさ……」
 
「……これで……、本当に……、本当に……
終わったんだよね……」
 
「アル……、ああ……、終わったんだな……」
 
「でも、これでやっと帰れ……!?う、うわああああーーっ!!」
 
「どうした!ダウド!?……あっ……!!」
 
「……きゃあ!!」
 
「いやだいやだーーっ!!取って取ってーーっ!!」
 
息絶えたはずのゾーマの手がしっかりとダウドの
足首を掴んでいる……。
 
「……目ぇつぶってろ、ダウドっ!」
 
「ひいっ……!!」
 
速攻でダウドの足首を掴んでいる手を斬り落とす。
 
「……ひえええええーーっ!!」
 
「……ジャミルよ……、よくぞこの儂を倒した……」
 
床に這い蹲った姿勢のままゾーマが静かに喋る。
 
「……」
 
「だが、儂には見えるのだ……、遠い未来が……、光もある限り、
闇もまたある……、いずれまた何者かが闇から現れよう……、その時は
流石にお前も年老いて生きてはいまい……、フ、フフフフ……」
 
……それだけ喋り終えるとゾーマは完全に事切れ完全に
動かなくなった……。ジャミルは無言で王者の剣を背中の
鞘にしまう……。
 
「ま、今は何も考えたくねーや!やーっと終わったんだしさっ!」
 
いつもの調子で明るく皆に笑ってみせる。
 
「さあ皆、急いでここから……」
 
アルベルトがそう言った途端、城が軋む音がしだした……。
 
「……やべ、崩れるっ!!」
 
「は、早く……、逃げないとお~!大変だよお!!」
 
「急ごう!!」
 
4人は出口目指して走り出そうとするが……。次の瞬間……、地面に
亀裂が走り地割れが4人を飲み込む……。
 
 
……折角……、ゾーマ倒したってのに……、こんな処で
死んじまうのかよ……、くそっ……
 
アイシャ、俺……、泣かせてばっかで……本当……
何もしてやれな……んんっ!?
 
           
       ……わあああああっ!?
 
 
4人は……、ゾーマの城からいつの間にか見覚えのある
場所へと放り出されていた……。
 
「……な、何がどうなって……?」
 
「私にもさっぱり……」
 
「……いちちちち……」
 
他の3人が首を傾げる中、ジャミルが腰を押さえた。
 
「ねえ、この地割れの穴って……、確か勇者の盾が
あった洞窟の……、だよね……」
 
「ゾーマの城から此処に繋がってたのか……?訳わかんねえな……」
 
「……何でもいーよお~、助かったんだしい~……、オイラもう
へとへとだよお……」
 
「ジャミルっ!!」
 
「おわっ!?」
 
アイシャがジャミルに飛びついた。
 
「ここが盾のあった洞窟なら……、私達、本当に
帰って来れたのね……!ゾーマの城から……!!」
 
「そうか……!そういやそうだよな!戻って来れたんだな、
俺達……!!」
 
「急ごう!出口はすぐの筈だよ!!」
 
アルベルトも立ち上がリ正面を向いた。
 
「♪んじゃあ、わーい!オイラ一番先ー!」
 
「あ、……オイ……、コラ待て、ダウドっ!!」
 
「じゃ……、僕は2番目で……、おっさきー!」
 
アルベルトもダウドの後を追い、走って行ってしまった。
 
「……せっかちな奴らだなー、ったく……」
 
「ジャミル……」
 
「ん?」
 
アイシャがジャミルの手を握った。
 
「……連れてって、一緒に……!!」
 
「アイシャ……、よーし、あいつら追い抜くぞ!!」
 
「うんっ!!」
 
二人は手を繋いで洞窟の出口目指し、走り出す。二人が目指す
洞窟の出口からは眩しい光が溢れていた……。


エピローグ ~いつか伝説になる~

「カンダタ親分~……」
 
「あー?」
 
「あいつら……、等々戻って来ませんでしたねえ……」
 
「でも、モンスター共の奴ら……、急に大人しく
なりましたねえ……」
 
「と、云う事は……、あいつら本当にゾーマをやったんスね、
すごいなあ……」
 
「でも……、等の本人達は……、戻ってこないんスね……」
 
「ぐす……、アイシャさぁ~ん……」
 
「やっぱり……、死んじま……」
 
「てめーらうっせーぞ!少し静かにしろ!!」
 
「ヘ、ヘイ……」
 
「……死に急ぎやがって……、バカガキ共……」
 
「親分……」
 
「おい、お前ら」
 
「へ、へい?」
 
「俺はたった今から……、賊稼業から足を洗う……」
 
「へ?そ、それって……」
 
「ここの土地ならまだそんなに顔も知られてねーし、
何とかやってけんだろ」
 
「へーい!……親分~っ!!俺ら何処までも親分に
ついていきまーっす!」
 
「こんなマスクも……、もう用済みだな……」
 
 
 
「ねえ、おじいちゃん……」
 
「ん?何じゃね、ポポタ」
 
「おにいちゃんたち……、いつかえってくるの……?」
 
「……それは……」
 
「やくそくしてくれたもん……、ゾーマやっつけたら……、
またあそびにきてくれるって……」
 
「ピキー……」
 
「ねえ、スラリン……、ぼく、いいこでなかないで
まってるのに、どうしておにいちゃんたちかえってきて
くれないの……?」
 
「ピキキ……」
 
「どうして……」
 
「じゃあ、ポポタがあいにいけばいいよ!」
 
「えっ?」
 
「ポポタがもうちょっとおおきくなんないと
だめだけどねー!」
 
「スラリン……」
 
「きっとおおきくなったポポタみたら、ジャミルもおねえちゃんも
びっくりしちゃうよ!」
 
「うん……」
 
「そのときは、ボクもいっしょにつれてってくれる?」
 
「うん、もちろん!いっしょにぼうけんしようね!」
 
「ピキー!」
 
「おじいちゃーん!」
 
「ポポタ、どうした?」
 
「ぼく、ぼうけんするの!スラリンと!」
 
「へ?」
 
「それでね、おにいちゃんたちをさがすの!」
 
「……それはちと……、無理があるのう……」
 
「でも……、ぼくまだこどもだし、なきむしだから……、
なにもできないから……、だからもうすこしおおきくなって
つよくなるの!」
 
「そ、そうか……」
 
「ぼく、すーぐおおきくなって、おにいちゃんたちに
あいにいくからねー!」
 
(……その間に……、帰ってきてくれるといいんじゃがのう……、
ジャミルさんや……)
 
 
 
「……きゃっ!?あーあ……、また割っちゃったわ……」
 
「大丈夫かい!?弥生……!!」
 
「平気よ、またお皿割っただけよ……」
 
「もうー、この子は……、そんな皿洗いなんかあたしが
やりゃいいんだから……!休んでなさいと言ったろう……!?」
 
「……大げさよ、お母さんは……、もう……」
 
「ほらほら、もうあんただけの身体じゃないんだよ……?」
 
「分かってるわよ……、あっ……!」
 
「どうしたんだい……?」
 
「また蹴ったわ……、うふっ、やっぱりこの子……、
元気がいいなあ……」
 
「あたしとしては……、女の子がいいんだけどねえ……」
 
「あら?私は男の子がいいわよ、ジャミルさんみたいな……、
元気な男の子……」
 
「弥生……」
 
ジャミルさん……、またいつか……、きっと会えますよね……?
あなたに見て欲しいの……、私の中に宿った小さな命……
 
 
「……お父さん……」
 
「んー?」
 
「いい加減に……、お母さんの所に帰ろう……?」
 
「……んー?最近耳が遠くなって……、齢かな……」
 
「……お父さんっ!!」
 
「弱ったなあ……」
 
「あ、外見て……、お父さん!モンスターがいなくなってるし、
うわあ……、明るいお日様が出てる……!!」
 
「……何?」
 
「わーい!これでお家に帰れるー!私一人でも先帰るね、
じゃあね!お父さん!」
 
「……こ、こら……、待て……、待ちなさあーい!!」
 
 
 
「ジョニーよ……、どうだ、民の様子は……」
 
「は、漸く……、この国に満ち溢れた光に……、皆、喜びと感声を上げております……」
 
「そうか……、やってくれたのだな、あの若者達が……」
 
「国王様……、、国王様もそろそろ玉座にお戻りになられては如何ですか……?」
 
「しかし……、儂は……」
 
「やはりあなたはこの国に必要とされているお方です……、
民も皆、それを待ち望んでいる筈です……」
 
「……」
 
 
 
「……よっこいしょっと……!ふう~、朝のゴミ出し終わりっ!」
 
「ねえ、ファラちゃん……」
 
「な、何だい?おばちゃん……」
 
「あんたんとこのジャミルちゃん、あれから又何処か
行ったみたいだけど……」
 
「さ、さーねえ……、フーテンだからね、あいつ、
またどっかで遊び歩いてんだろ……」
 
「へえー、それでもちゃんとあの子は勇者やってんだねえ、
凄いねえ……」
 
「……話はそれだけかい?」
 
「え、ええ……、ああ…」
 
「……用がないんなら、あたい帰るから……!じゃあね、
おばちゃん!」
 
「何だい、カリカリしちゃって……、全く今時の子は
カルシウムが足りないねえ……」
 
「フン……、あんたに一体ジャミルの何が解るっていうんだい!」
 
あのさ、ゾーマの事は町の奴らには言うなよ?
皆、バラモスがいなくなった事で安心してんだ……
けど、奴が下っ端だったなんて判ったら……、また皆が
不安になんだろ?
 
「……早く帰って来なよ……、ジャミルの……ばぁ~か……」
 
 
 
「こうしてこの国には再び光が戻りました……」
 
「ねえ、おうたのおにいちゃん」
 
「ん?何だい?」
 
「ゆうしゃのおにいちゃんたちは……、そのあと、
どうなっちゃったの?」
 
「それはね……」
 
「……しんじゃったの~……?」
 
「……」
 
「二人ともー、夕ご飯の時間ですよー!」
 
「あ、おかーさんだ!」
 
「おかーさん!」
 
「あら、こんばんは、ガライさん」
 
「どうも、今晩は」
 
「勇者様のお話ですか?」
 
「あ、はい……」
 
「ふふ、いつも有難うございます、子供達がいつもとても
楽しみにしているんですよ」
 
「そうなんですか……、それは嬉しいなあ……」
 
「さ、帰りますよ、それでは……」
 
「おうたのおにいちゃん、またねえー!」
 
「またねえー!」
 
「ああ、気を付けて帰るんだよ……」
 
「はぁーい」
 
「はぁーい」
 
「……」
 
……ジャミルさん、どうか……、この物語を語り終えられる様……、
力を貸して下さい……
 
いつまでも……、あなた達の物語を語り継いで行けます様、どうか……
 
 
 
「……ねえー……、ジャミルうー……、やめようよお……」
 
「うるせーなっ、馬鹿ダウ!行くっつったら行くんだよ!」
 
「言い出したら聞かないから……、この人……」
 
「折角、皆お城で待っててくれてるのにさあ~……」
 
「願いを叶えてくれる竜だぞ……!?これを無視してどーするよ!」
 
「本当に……、そんな竜が住んでいる所があるのかしら……」
 
「全く……、余計な情報聞いちゃったからねえ……」
 
「でも私は、ジャミルが行く所だったら何処へでもついていくもん!」
 
「はいはい、お熱い、お熱いですね……」
 
「……で、仮に願いを叶えてくれるとしたって、
ジャミルは何をお願いすんの?」
 
「俺……?んー、金銀財宝も捨てがたいけど……、
山盛りステーキもいいなあ……」
 
「……バカっ!金銀財宝の方がいいに決まってるじゃん!
何考えてんのさあ!」
 
「何だよ!バカはおめーだろ、阿保ダウ!」
 
「……ずるーいっ!私だって綺麗なドレス着たい!!」
 
「あの……、僕もいるんですけど……」
 
「……ハア、んなとこで揉めてたってしょーがねーっての、
探してみるっきゃないと」
 
「竜さん探しに行こう!?新しい冒険ね!」
 
「ったく……、しょーがないなあ……」
 
「結局……、いつもジャミルのペースに乗せられちゃうよね、ま……、
楽しいからいいけど」
 
「へっへーん!」
 
「ふふっ……」
 
「さあ、行くぞーー!!神竜探しにれっつごー!!」
 
「おおーーーっ!!」
 
 
……4人のお気楽な冒険は……、これからも、果てしなく続くよ、
何処までも……。
 
 
                                   Fin

zoku勇者 ドラクエⅢ編 最終章

zoku勇者 ドラクエⅢ編 最終章

スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 クロスオーバー 年齢変更 オリジナル要素・設定 オリジナルキャラ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-10

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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  1. その1
  2. その2