『猫として』
彼女は猫だ
ツンとそっぽを向きながら
しなりと寄り添う
『猫として』
嫌いよと言って
その口でまた愛を告げる
気侭さを褒めれば
嬉しくないわと拗ねる
どうしてそんなにも
君は愛おしい存在なのか
美しく生きるということを
知らずに実行してしまう
寂しくなったら
また来たらいいけど
寂しくないなら
もう来ないでと
ああ、これは駆け引きじゃない
人知れず暗い道を
歩いてきたなんて誰にも
言えるわけがないけど
君になら許してもいい
この胸の内にある
仄暗い秘め事を
君と共有してしまいたい
「然りとて逃げるが猫」
『猫として』