zoku勇者 ドラクエⅢ編 13章

その1

新しい友達

やがて夜が明けてしまい……。
 
「ジャミル……、起きなよお……、起きろったら、おーい!」
 
「うー……、座布団……、座布団が足りない……」
 
「また起きないし……、しかも……、また意味の分からない夢を見てるみたいな……」
 
一度、ジャミルの夢の中を覗いて見たいと思うアルベルト。
 
「困ったわねえ、起こすのも何だか可哀想だわ……」
 
ダウドが耳元でメガホンで呼んでもアルベルトが声を掛けても、アイシャが揺さぶってもジャミルは目を覚ます気配がない。焚火番と昨夜のなんちゃらで相当疲れている様子。
 
「そうだね、焚火番……、交代でやろうって言ったんだけど……、今夜は俺一人で
見てるからいいって……、やっぱり無理させちゃったかな……」
 
「うんふふ~、アイシャがチュ♡してあげれば……」
 
「……もうっ、ダウド!!」
 
「す、すいません……」
 
「はうあ!?」
 
……チュ♡に反応したのか、ジャミルがいきなり飛び起きた……。
 
「びっくりした……、急に起きないでよ……」
 
「ジャミルが一番ねぼすけだよお……」
 
「ふん、何とでも言えよ」
 
「朝御飯食べたら出発しようよ」
 
「朝も何も……、もう11時近いけどね……、朝ごはんじゃなくて、もうお昼だよお」
 
「あら、ジャミル……、そのお人形は……?」
 
アイシャがジャミルが寝ていた側に置いてあった奇妙なツギハギだらけの人形に気づく。
 
「え……?こ、これ……、か……?」
 
「なあに……?」
 
「俺が作ったスラリン人形だ……」
 
「え?」
 
ジャミルは顔を真っ赤にし、人形の方を見ず、さっと人形をアイシャの方に向ける。
 
「……アイシャに……、やる……」
 
「ジャミル……、私に……?」
 
「下手糞だからさ……、不細工だし……、その、全然似てねえけど……、その……」
 
「……もしかして……、それを作る為に、焚火番を引き受けて……、夜通しで起きてたの……」
 
アルベルトが聞くとジャミルは顔を赤くしたまま、返事を何とか返した。
 
「ああ、そ、そうだよ……、い、要らなきゃ捨てていい……」
 
「ジャミル……、私の為に……、ごめんね、手が傷だらけ……」
 
アイシャがジャミルの手にそっと触れた。
 
「……こ、これくらい何ともねえよ」
 
「ジャミル……、ありがとうね……」
 
「……いや…悪いのは俺なんだし……、スラリンを置いていくって言ったのは
俺だから……」
 
ジャミルが横を向いてポリポリポリポリ、困って植○ま○し全開状態で頭を掻いた。
 
「でも、ジャミルの判断も、言った事も間違ってなかったと思うよ」
 
「アル……」
 
「これからの事を考えれば正解だったと思う、僕らだってこの先、
どんな危険な目に遭うか判らないんだから……」
 
「やっぱり私……、ジャミルが好き……、ずっと、ずーっと……」
 
アイシャがジャミルにぎゅっと抱きつく。
 
「……ヒ、ヒェッ!?」
 
途端にジャミルの心臓はどっきんこ、バクバクし始めた。
 
「ほら、始まった……、うーん、ニクイねえ、ジャミルう!!このバカ!」
 
ヒューヒュー状態でダウドが茶化した。
 
「うわわわっ!う、うるせーんだよっ!誰がバカだっ、バカダウドっ!」
 
「ふふ、僕らはお邪魔かな……?」
 
「え……、えーー!?ア、アルまでっ!」
 
「今日は特別サービスにしといてあげるよお!」
 
「……いつもサービスしてるよ……、ジャミル、僕ら向こうに行ってるからね」
 
「えー!?」
 
「でも、程々にねー!」
 
「そうだよお、くれぐれも制限しなよおー!お助平さあ~ん!」
 
「……何がだよっ!……たく……」
 
「ジャミル……」
 
「ん?」
 
人形を胸にぎゅっと抱きしめ、改めてアイシャがジャミルの顔を見る。
 
「大切にするね……、このお人形……」
 
「い、いいよ……、そんなに気ィ遣うなよ……」
 
「凄く嬉しいの……、本当に有難う……」
 
ジャミルもアイシャの身体を側に寄せるとそっと抱きしめた。
 
「ごめんな……、俺の所為で辛い思いさせて……」
 
「ううん……、そんな事ないよ……」
 
 
……
 
 
出発する頃にはアイシャはすっかり元気になっていた。嬉しそうにずっと人形を
抱いている。
 
「うーん、この子に名前つけてあげようかな……?どんなのがいいかなあ?」
 
「ジャミルニ世は?」
 
「プ……」
 
「……人をルパン三世みたいに言うなっ!このバカダウド!!」
 
「そのままで、スラリンじゃ駄目なのかい?」
 
「ううん、この子は違うの、新しいお友達だから」
 
「じゃあ、スラ太郎でいいんじゃね?」
 
「はあ?」
 
「なんて単純なネーミングセンスなのかしら……」
 
「……さっきからいちいちうるせーな!アホダウド!!」
 
「スラ太郎……、うん、スラ太郎ね!」
 
「はあ!?ホ、ホントにそれでいいの、アイシャ……」
 
「うんっ!」
 
ダウドが驚くも、アイシャは笑顔。どうやら、命名、スラ太郎……、に、決まったらしい。
 
「……13円の駄菓子みたいだよお……」
 
「ホ、ホントに適当に言っただけなんだけどなあ……」
 
「でも……、アイシャ、凄く嬉しそうだよ……」
 
「アイシャ、オイラのショルダーバッグあげるね、これに人形入れて持ち歩くといいよお!」
 
「うん、ダウドありがとう!」
 
アイシャはダウドからバッグを受け取ると、中に嬉しそうにスラ太郎を入れるのであった。
 
「うふふ、宜しくね、スラ太郎!」


未来への布石

それから、所々でラーミアを休憩させつつ、約一日でネクロゴンド付近まで辿り着く。
 
「どの辺にあるのかな、ギアガの大穴って……」
 
「バラモス城の近くって言ってたからな……」
 
「……」
 
「どしたい、アル」
 
「あれ……」
 
周囲を岩山に囲まれた奇妙な城が目についた。
 
「な、なんだあ……?」
 
「あんなのあったっけ……、バラモスの城以外にもお城があったんだあ……」
 
「ちょっと気になるな……、行ってみるか?」
 
「でも、怪物の城だったら……」
 
「だったら尚更僕らは行かなくちゃだよ、ダウド」
 
「あ~うう~、だよねえ~……」
 
ヘタレモードが発動しそうなダウドを抑えて、4人は城に行ってみる事に。
 
「ラーミア、頼む」
 
ラーミアの力を借り4人は山脈を越え、城の中へと足を踏み入れた。
 
「ようこそ……」
 
城の中には馬が二匹いてジャミル達を出迎える。
 
「ここは天空に一番近い竜の女王の城……」
 
「竜の女王……」
 
ジャミル達はエドで慣れているので馬が喋っても別に驚かなかった。
……内部には何人かホビットもおり、何かあったのか皆、嘆き悲しんでいた。
 
「おいたわしや……、女王様はあと幾何の命とか……」
 
「ご病気なんですか!?」
 
アイシャがそう尋ねるとホビット達は顔を曇らせたまま返事を返す。
病気は相当深刻な様でもう命は助からないらしい。
 
「ええ……、女王様は自らのお命と引き換えに……、卵を産むらしい……」
 
「……」
 
「女王様はそなた達の事が見えていた様だ……、そして必ず此処にも訪れると…」
 
ジャミル達は女王に謁見する事を許され、女王の部屋へと案内された。
 
「……待っていました、勇者達よ……、私は竜の女王です……」
 
女王はもう息も絶え絶えの姿で苦しそうだった。
 
「女王様……」
 
手を胸の前で組んでアイシャが心配そうな顔をする。
 
「もし……、そなたらが闇の魔王と戦う勇気があるならば……、この光の玉を授けましょう……」
 
ジャミルが頷き、女王から光の玉を受け取る。すると光の玉は淡く小さく輝いた。
 
「どうかその玉で一刻も早く平和を……、これから生まれ出る、私の赤ちゃんの為にも……」
 
「勇者様達、……女王様に会って頂き、本当に有難うございました……」
 
去り際にホビット達が揃って4人の所に来て挨拶をする。
しかし、女王の行く末を分っている為、その声には元気が感じられない。
 
「あのさ、俺がこんな事言っても……、気休めにしかならないけど、
絶対に希望を捨てないでくれよ、女王様が早く元気になる様に俺らも願ってるから……」
 
「……有難うございます、勇者様……」
 
「……」
 
ジャミル達は城を後にし、再びネクロゴンドへ向かいギアガの大穴を探す。
……バラモス場跡付近に湖と毒の沼地に囲まれた洞窟を発見した。
4人は早速洞窟の中へと入ってみる。
 
「……でけえ穴があいてるからあそこなのか?」
 
大きな穴の前に男がいて何かウンウン喚いていた。
 
「全く、最近の若いモンは命を粗末にする奴ら、アホモンばかりだ、
こんな穴に飛び込んで自殺なんぞ……、何考えてんだ……」
 
「こんちは……」
 
「なんだお前ら、おりゃあ此処に派遣された見張り番兵士だが……、何か用か?」
 
「おっさん、俺達、ギアガの大穴っつーのを探してんだけど、ここでいいのか?」
 
「確かに、ここはギアガの大穴だが……、数日前に凄い地響きがして
罅割れが走ったんだ、そしたら更に穴がでかくなって拡大してな、そして
何者かが此処を通って行ったのさ……」
 
「えっ!?私達の前に此処に入った人が……!?」
 
「誰……!?そ、そんな命知らずな人がいたなんてっ!わわわ……」
 
「何……?あんたらもこの穴に入るのかい?バカな事言ってんじゃないよ、帰んな、
この穴はなあ、飛び込んで自殺する奴が後を絶たねえんだ、確かにいるよ、お前らが
バカな事を思いつく前でも、この穴に飛び込んだ輩がよ、……おりゃあ、そんな奴らを
止める為に此処に監視として派遣されたんだよ!」
 
「それでも僕らには使命が有ります、行かなくてはならないんです……」
 
「私達、この先の伝説の世界に行くのよ、決して自殺なんか……」
 
「オイラは嫌だけど……」
 
「だからバカ言ってんじゃねえよ、ガキ共!冒険ごっこは余所でやんな!ホラ、
帰れ帰れ!!」
 
「ちょ、ちょっと待……」
 
「きゃっ!」
 
兵士はジャミル達を無理矢理押し返そうとする。……4人の為を思って
くれての事なのだが、はっきり言って大きなお世話である。
 
「……だぁーっ!かまってられるかっ!!おい皆、さっさと飛び込むぞ!!」
 
ジャミルが負けずに逆に男を突き飛ばした。男は泡食って転倒する。
 
「おい!何をする!!」
 
「ありがとう、おじさん、心配してくれて……、でも、私達は平気よ!」
 
「死にてーのかおめーら!!今まで此処に入った奴で本当に戻って来た奴は
いねーんだぞ!?」
 
「け、けっこう深そうだねえ……」
 
ダウドがごくりと唾を飲み込み、穴を覗き込んだ。
 
「行くぞっ!」
 
そして、ジャミルの言葉に3人が頷く。
 
「……やめろお前ら!!」
 
「せーのっ!!」
 
「おーいっ!!」
 
4人はいつ底が見えるのか分らない、深い闇の穴の中へと飛び込んで行った……。

その2

アレフガルド編

闇の大地へ

「……ジャミル」
 
「……う……」
 
「……ジャミル……」
 
「う……、アイシャ……?」
 
「平気?」
 
「ああ、何とか……、大丈夫みたいだ……」
 
アイシャの呼び掛けでジャミルが目を覚まし、身体をよっこら起こした。
 
「良かった……」
 
「けど、まだ何か身体が変な感じだなあ……」
 
「私達……、どれぐらい深く落ちて来たのかな…?」
 
「……それは分んねえけど……、とにかく、今は……」
 
ジャミルが立ち上がり、まだ倒れているアルベルトとダウドを揺さぶって声を掛ける。
 
「アル、起きろよ……」
 
「ん?ジャミルかい……?」
 
「……ほれ、おめーも起きろ、ダウド」
 
「……んーあー……?」
 
「……ここがアレフガルドなのかしら……」
 
アイシャが辺りを見回す。気が付いたとき、4人はだだっ広い野原の上に倒れて
いたのだった。
 
「だろうな……」
 
「今は夜なのかな…?やたらと周りが暗いんだけど……」
 
「とにかく町か村を探して宿を取ろう、話はそれからだな……」
 
「ラーミア……、平気かしら……」
 
「平気だよ、用がなけりゃ勝手に神殿に帰るさ」
 
「……」
 
「どしたの、ダウド」
 
アイシャが尋ねる。異様に身体がガクブルしている。……この予兆は
ダウド特有の物であり、何か悪い悪寒を感じた時に大概発生する。
 
「……なんか悪寒がするんだよお、オイラの悪寒は当たるから……」
 
「は?何言っ……」
 
 
ドスン!!ドスン!!
 
 
「うわ!な、何!?また地震か!?」
 
「ま……、また……?きゃあっ!?」
 
 
ドスッ!!ドスッ!!
 
 
「……違う!地震じゃない……、これは……」
 
「……マジ……?」
 
4人の目の前に……、バラモスの城でお目見えした動く石像が出現したのである。
 
「う、動く石像……?」
 
「……なんでこんなとこにィー!?」
 
しかも石像は一体だけでなく、3体もいる。
 
 
ドスッ!!ドスッ!!ドスッ!!
 
 
動く石像は3体揃ってリズミカルに地面を踏む。
 
「……うおっ!?」
 
「……きゃあーっ!!」
 
アイシャは地べたに座り込んでしまい、動けなくなってしまう。
 
「大丈夫か!?」
 
慌ててジャミルが助け起こすがアイシャは腰が抜けてしまったらしい。
 
「おぶされ、ホラ」
 
「ジャミル……、ありがとう……」
 
「ずるいよおー、……アイシャばっかり……、ぶうー……、オイラがヘタレるとすーぐ
怒るくせにさ……」
 
「とりあえず今は逃げよう、今の僕達じゃとてもじゃないけど
こんなのを数体相手にしている余裕もないよ……」
 
「ああ……」
 
「で、でも……、囲まれちゃってるよお、……どうやってここから逃げるの……?」
 
「おい、お前ら、3人で一斉にこれをあいつらにブン投げるんだ」
 
「……か、癇癪玉……?」
 
「そんなの効かないよおー!」
 
「何もしねーよりマシなんだよっ!!」
 
「なるほど……、目くらましで石像がひるんだ隙に逃げるんだね……」
 
「そうだ」
 
……こう言う事だけは直ぐ頭が回転する(悪知恵が働く)なあと、アルベルトは感心する。
 
「あ、あんな大きい敵に……、こんな小さい玉……、無理だよお……」
 
「……いくぞっ!」
 
ピッチャーの様に振りかぶり、玉を石像へとジャミルが思いっ切りぶつけた。
 
「!!!!」
 
「……うっそ……」
 
効いている。確かに石像達には効いている。
 
「よしっ!次はお前らだっ、どんどんぶつけちまえ!」
 
「……よ、よーしっ!」
 
「あわわわわ!」
 
アルベルト達も癇癪玉を石像に投げる。
 
「でも、勇者がそんな物持ち歩いてちゃ駄目でしょ!」
 
「うるせー!んな事言ってる場合か!!」
 
「ジャミルもダウドも早く逃げよう!」
 
「おっと!」
 
ジャミルが腰を抜かして動けないアイシャを再び背負う。
 
「ごめんなさいジャミル……、私……、その……、やっぱり重いかな……?」
 
「平気だって!ホラ飛ばすぞ!しっかり捕まってろ!!」
 
「……うん……」
 
4人は急いでスタコラその場を逃走する。
 
「……後で覚えてろ、デカブツ!!絶対いつかシメてやるかんな!」
 
「ジャミルう~……、聞こえちゃうよお~……」
 
……やがて、動く大仏を煙に巻き。
 
「……もうあいつ追いかけて来ないかなあ……?」
 
「いや、他にもモンスターはいるだろ……」
 
「そうだよ、いつ何処からか出てくるか判らないよ」
 
「……来るんじゃなかったよお……、帰りたい……」
 
ダウドのいつもの後悔愚痴が始まる。
 
「お、ほこらだ……」
 
「とりあえずあそこで休憩しよう……」
 
「助かった~……」
 
4人は急いでほこらの中へと避難するのだが、既に人がいた様であった。
 
「お、お客さんだ、こんな場所に……」
 
「こんにちは……」
 
父親と娘らしかった。娘は三つ編みヘアに歳は10歳ぐらいのおませな感じ。
 
「こ、こんちは……」
 
「……あんた達……、もしかして上から来たんですか?」
 
「え?そうだけど……」
 
「やっぱりなあ……」
 
「何で分るんですか?」
 
「上から来たそうな顔してたから……」
 
「はああ!?」
 
「これから朝御飯なんですよ、良かったらご一緒に如何ですか?」
 
「朝って……」
 
「……こんなに暗いけど……、今は夜じゃないの?」
 
ダウドが尋ねると、父親が、ああ、お客さん、やっぱあなた新人だね!の、様なツラをした。
 
「午前7時半ですが……」
 
「……何いいいい!?」
 
「本当よ、嘘じゃないわよ、ホラ」
 
娘が枕時計を見せる。確認すると、確かに時刻は早朝の7時半。一日の始まりである。
 
「とりあえず御飯です、御飯ですよ!江戸むらさき!」
 
「……はあ……」
 
「どうなってんのお?今、どう見ても夜だよねえ?」
 
ダウドがジャミルに聞いてくるが。
 
「俺に聞かれても……」
 
4人は取りあえず行為に甘え、朝食を一緒にご馳走になる事にしたが
何とも不思議で奇妙な気分だった。
 
「お姉さん、それ……、玉葱のお化けのぬいぐるみですか?」
 
娘がアイシャが持っているダウドから貰ったバッグの中のスラ太郎に興味を示す。
 
「ああ、これ?」
 
「一応……、スライムなんだけど……」
 
ジャミルが口を尖らせる。
 
「ブサ可愛いですね……、いいなあ、私も欲しい……、何処で売ってるんですか?」
 
「これはね、大好きな人が作ってくれた……、世界でたった一つの大切なお人形なの」
 
「わあ、凄いんですねえ~」
 
「……まいったなあ~……」
 
ジャミルがデレデレ、ノロケ状態で頭を掻く。
 
「惚気てんじゃねえよお……、この、バカジャミル……」
 
……横目でぼそっとダウド。
 
「ダウド、何か言ったか……?」
 
「なんでも~!」
 
「良かったら貸してあげる、はい」
 
「お姉さんどうもありがとう!わーい!!私のブス夫君人形とおままごとしよ~」
 
娘が嬉しそうに人形を抱っこし、自分の持っている人形と一緒に遊び始める。
 
「評判良いなあ~、俺、雑貨屋でも開くかなあ~……」
 
「……やめた方がいいよ、どうせすぐ閉店するから」
 
「……アル……、おめえも何か言ったか……?」
 
「何でもございません」
 
「みなさん、大した物はありませんけど、どうぞ召し上がって行って下さい、
実家を出る時に持参した非常食の缶詰ばかりですが、この味付けグリンピースの
缶なんか……」
 
「……実家?」
 
「どうしておじさん達は此処に住んでるの?」
 
アイシャが聞いてみる。
 
「いや、住んでると言うか……」
 
「家に帰れなくなっちゃったの……」
 
「……?」
 
「私達はラダトームと言う町に住んでいました」
 
「ラダトーム……?」
 
「此処から東にある城下町です」
 
「へー……、町があんのか、情報教えて貰って助かるよ」
 
「いえいえ、……はあ、一年前、カカアと大喧嘩してそれはもう、
血が飛び散るほど凄かったんですよ…」
 
(どんなケンカだよ……)
 
「もう止められなくなって、とうとう別れる程の騒ぎになっちまいまして……」
 
「……」
 
「結局、こっちが出ていく事になったんですが……、娘をどっちが引き取るかで
また一悶着、揉めた訳です……」
 
「ふんふん」
 
野次馬ジャミルも話に段々興味が出てきた。
 
「で、こっちが娘を引き取る事になりまして、この場所に移り住んだんです、
新しい住居が見つかるまでの間として」
 
「ふ~んふん……」
 
「……でも、娘はやっぱり母親の方が良かったんでしょう……、毎晩、家に帰りたいと
泣いてばかりでした……」
 
「……」
 
「で、結局……、私も折れまして……、父さん謝るから家に帰ろうと言う事になったの
ですが……」
 
「……お父さんの馬鹿……!!」
 
「ど、どうしたい……?」
 
娘が急にぎゃんぎゃん泣き出す。突然泣き出した娘に事情を知らない4人は……。

「お父さんの、お父さんの所為で……、……ああ~ん!」
 
「泣かないで……、お姉ちゃん達に何でもお話して、ね?」
 
泣き出した娘をアイシャが落ち着かせ、何とか宥める。
 
「……帰ろうと……、したんですがね、その、どうした事かモンスターが大量に
歩いていたんですよ、ぞろぞろと!!」
 
「でも、モンスターが徘徊し始めたのは昔からですし、最近の事じゃないでしょう……?」
 
「だよねえ……」
 
「いや、ここら辺はスライムやスライムべス、ドラキー辺りでしたので、突いたり
しなければ別に向こうも大人しいですし、それ程気にはならなかったんですが……」
 
父親の表情が段々困った表情に変わっていく……。
 
「それがここ近年ではどうした事か……、雑魚モンスターも凶悪になり、トロルや
動く石像などの凶暴モンスターが此処にも普通に出てくる様になっちまいまして……、
やはり大魔王の力がより一層増しているという事なのでしょうか……」
 
「それで危なくて帰れなくなった訳……?」
 
「はい……、私はモンスターと戦えませんし、娘を連れて歩くのはとても……」
 
「……」
 
「私たち……、ずっとここから帰れないの……、お風呂の代わりに
モンスターに見つからない様に近くの海までこっそり行かなきゃならないし……」
 
「ううう……、何というサバイバル生活……」
 
ダウドがハンカチで顔を拭いた。
 
「なあ、ラダトームってこっから近いのか?」
 
「ええ、それ程遠くはないと思いますが……」
 
「よし、俺達も行ってみっか、丁度いいや」
 
「え~……、モンスターが…」
 
「ダウド、お前ずっと此処にいる気か?」
 
「わかったよお……」
 
「いいなあ、私もラダトームへ……、お母さんの所に帰りたい……」
 
娘が落ち込み下を向いてしまう。それを見たジャミルの頭の中にある考えが浮かんだ。
 
「うーん、少々……、危険かもしんねーけど、俺達がラダトームまで一緒に送って
やろうか?」
 
「でも、まだ動く石像ともまともに戦えるか判んないのに、こっちも命懸けの
大移動だよお、大丈夫かなあ……、守り切れる……?」
 
「心配すんなよ、まだ何発か、癇癪玉も残ってるしよ」
 
「お兄さん、本当ですか?い、一緒に行っていいの?」
 
「ああ……」
 
「あなた方は一体何なんですか……?」
 
ジャミルが親子に自分達の素性を話すと、娘の方がぱっと嬉しそうな表情を見せるが、
父親の方は、特にこれと言って、驚く素振りも見せず、ああ、凄いですね、状態。
 
「……なんと、あなた達が……、バラモスを……、はあ……、しかもその上を倒しに
上からやって来たんですか……」
 
(何言ってんだ、この親父……)
 
「お父さん、寒い……」
 
「すまん……」
 
「……」
 
「あのね、お兄さん……」
 
「ん?」
 
「アレフガルドでは昔からずーっと言い伝えがあるのよ、世界が危機になった時、
勇者様が現れて魔王をやっつけてくれるの!凄いね、お兄さんが勇者様だったのね!」
 
「一応な……」
 
「でも、お父さんは弱いの!お母さんと戦っていつも負けてるのよ!」
 
「こ、こら……」
 
(……誰かさんと誰かさんみたいな……)
 
「何だ、ダウド」
 
「何よ、ダウド」
 
「二人してこっち睨まないでよお~……、もう……、心の声なのにい……~」
 
「……お父さん、お兄さん達にお願いして私達も一緒にラダトームへ帰ろう……?」
 
「いや、今はやめよう……」
 
「どうしてだい?送ってくのに……」
 
「いいんです……」
 
「じゃあ、この子だけでも……、ね?一緒に行こう」
 
「お姉さん……」
 
「これは私達、家族の問題です、あなた方には関係ない事です……、
娘も今はまだ一緒に此処に置きます、放っておいて下さい……」
 
「……お父さん!!」
 
「おーい……」
 
「これは困ったねえ……、どうして帰らないんだろう……」
 
頑固親父の対応にどうしたもんかとアルベルトも頬をポリポリ掻く。
 
「俺の推測だけど、早い話が……」
 
ジャミルがじーっと父親の方を見た。
 
「……」
 
「やっぱりまだ、奥さんに謝る覚悟が出来てなくて帰りたくなくなったんだろ……?」
 
「……うっ……、ウチの女房は本当に怖いんです……」
 
「たく……」
 
「そう言う訳で……、私達はもう少し此処にいる事にします」
 
「私は帰りたいのっ!」
 
「すまん……、今は耐えてくれ……」
 
「お父さんキライ!!」
 
そんな親子のやり取りを見ながらジャミル達が苦笑する。
 
「でもさ、親父さんさあ……」
 
「はい……」
 
「あんたはいいかも知んねえけど、娘さんはこんなに帰りたがってるじゃん……」
 
「そうですよ、どうしてこの子だけでも送って行ったら駄目なんです?」
 
「……駄目な物は駄目なんです」
 
ジャミルとアルベルトが説得するも、父親は断固として考えを変えない様子。
 
「色々と今のこの情けない心境を娘の口から妻へチクられるのも情けなくて
嫌なんです……、あなた方には分らないでしょうが、一家の主としてのプライドを……」
 
「はあ……」
 
「私……、お母さんに何もお父さんの事言わないよ……、だから……」
 
「駄目だ……」
 
「ですが……、小さいお子さんがこんな所にずっと住むなんて可哀想じゃないですか……」
 
アルベルトも呆れて掛ける言葉も少なくなり、段々苛々してきた。
 
「でも……、この一年、何とか生活出来ましたし、家から持ってきた非常食も有りますし……」
 
「……それは我慢してんだよっ!!」
 
「それに、もしも食べ物が底ついたらどうするのさあ……」
 
「それはそれで、その時になったら考えればいいかなと……」
 
「帰りたいよー!!お父さんの馬鹿ー!!」
 
娘がアイシャに泣きつく。アイシャも困って嗚咽する娘の背中を
只管撫でてやる事しか出来なかった。
 
「……うわああ~ん!!」
 
どれだけ皆で説得しても、父親は娘が帰る事を断固として許さず。
……ジャミル達も娘も結局根負けし……、結局はジャミル達だけで出発する事になった。
 
「しつこい様だけど……、本当にいいんだな……?」
 
「いいんです」
 
「マジ頑固親父……」
 
「……」
 
娘はこれからラダトームへ向かおうとするジャミル達を羨ましそうな目で見ていた。
 
「……とにかく、あんた達がいつでも安心して家に帰れる様に俺達も頑張ってみるよ……」
 
「ハイ……」
 
父親はそれでもどうしても家に戻りたくなさそうな顔をした。
 
「さようなら、お姉さん、お兄さん達……、色々ありがとう……」
 
娘が淋しそうに4人に挨拶した……。
 
「元気出してくれよ……、力になれなくてごめんな、じゃあな……」
 
「いいえ、お兄さん達に会えて嬉しかったです、皆さんもどうかお気をつけて……」
 
複雑な面持ちでジャミルも娘に手を振った。しかし、まだ小さな歳の割には
我慢強く、しっかりしている娘さんだなあと、ジャミルは心底思うのであった。
道中は幸い大したモンスターにも遭遇せずラダトームらしき場所に無事辿り着く。
 
 
ラダトーム
 
 
「……うは、でっけー町だなあ……」
 
「迷子になっちゃいそうだわ……」
 
4人は暫く町の中をプラプラと歩いて見て回る。
 
「武器はいかがですかー!ちゃんと装備して歩かないとモンスターに襲われるぞー!!」
 
「薬草いらんかねー!!」
 
「秘境の地からの不思議な食べ物、焼きまんじゅう如何ー!!」
 
「ね、ここら辺で宿屋を借りて暫くLV上げしておかないかい?」
 
アルベルトが提案する。
 
「そうだな……、動く石像に手こずってるようじゃこの先進めないしなあ……」
 
「それ以上のモンスターってやっぱりいるのかなあ……」
 
「当たり前でしょ……、大魔王ゾーマが支配している所なのよ……」
 
「あ~う~……」
 
ダウドがコテンと首を90度ひん曲げた。
 
「ちょっと聞きたいんだけどさ……」
 
ジャミルが通りすがりの女性を呼びとめた。
 
「今、何時だい……?」
 
「はい?午後3時半ですが……」
 
「何で昼間なのにこんなに暗いんだ?」
 
「もしやあなた方は上の世界の方達ですね……?」
 
「あ、ああ……」
 
「この世界アレフガルドは大魔王ゾーマによって光を奪われてしまったのです……」
 
「なっ!?」
 
「そんな……!!」
 
「酷い……!!」
 
「冗談じゃないよお!ひ~……、暗闇の世界……」
 
「大丈夫だ、ゾーマは俺達が倒す!!」
 
「倒すって……、そんな無理でしょう……」
 
「平気さ!バラモスだって倒したんだ!!」
 
「バラモス……?まさか!あなた達が……!!」
 
女性はジャミル達の話を聞いて驚き、不思議そうな顔をした。
 
「任せとけって!」
 
「でも、バラモスなんて……、ゾーマの手下の一人に過ぎませんわ……、
偶々、上の世界の支配者にと選別され送り込まれただけの事ですよ…」
 
「そりゃそうかも知んねーけど……」
 
「はあ、こんな時にラダトームの国王様は一体何をされているのかしら……」
 
「ん?国王がどうかしたのかい?」
 
「行方不明なんですよ、噂によればゾーマが怖くて何処かへ逃げたとか……」
 
「ヘタレ国王かよ……」
 
「何だよお?」
 
「別にオメーの事なんか言ってねえよ!」
 
「ねえ、ジャミル……」
 
アイシャがジャミルの方を見た。
 
「行ってみよう、お城へ……」

その3

哀愁のラルス一世

道沿いに歩き、ジャミル達は国王の行方を確かめる為、まずはラダトーム城へと向かう。
 
「ようこそ……、ラダトームのお城へ……、ハア」
 
あまり元気の無い兵士二人がジャミル達を出迎えた。果たしてこんなんで城を
ちゃんと護衛する気が有るのやら。
 
「どうしたんだよ……」
 
「……元気も何も……、フー……、ゾーマは恐ろしいし……」
 
「この国もお終いです……、国王様に逃げられてしまったのでは……」
 
「大丈夫ですよ」
 
「何がです……?」
 
「……え?」
 
「ゾーマは俺達が倒すんだ!!」
 
「ちょ、ちょっと待て……!」
 
城の衛兵達は顔を見合わせ頷く。
 
「はあ?」
 
「もしかして、あなた達がバラモスを倒したという……、上の世界からの……」
 
「そ」
 
「……勇者様ーっ!!」
 
「わあっ!?」
 
突然兵士達の態度が変わりジャミルに飛びつく。……飛び付かれたジャミルは困惑。
 
「お願いです……!どうかどうか、この国に平和を取り戻して下さい……!
王にも逃げられた以上、どうしたらいいか判らないのです……!!」
 
(国王だけじゃなくってこの国は兵もヘタレなのか……)
 
「……何だよお……」
 
「だから何も言ってねえっての、ま、大丈夫だ、俺達に任せとけ!」
 
「勇者様……、ううう……、有難うございますう……」
 
「……」
 
ジャミル達は城を出ようとした。其処に城の女中さんらしき女性が走ってくる。
 
「勇者様ー!」
 
「ん?」
 
「私は昔、勇者オルテガ様のお世話をさせて頂いた者でございます……」
 
「……」
 
(どうもこの話になると嫌な顔するんだよね……、ジャミルは……)
 
アルベルトがちらちら、ジャミルの表情を覗う。
 
「それは酷い火傷でした……、城の外に倒れていたのです……」
 
「オルテガさんはその後、どうなされたんですか?」
 
「……火傷が完全に治るといずこともなく何処かへ向われました……」
 
「そうなんですか……、心配だね、ジャミル……、オルテガさんは今、何処にいるのかな……」
 
「だってさ、さ、行こうぜ皆」
 
「あ、ジャミル……」
 
アルベルトがそう気遣うも、ジャミルは一人で先に歩き出そうとした。
 
       が。
 
 
「勇者さまーーーっ!!」
 
 
「……ゲッ……!!」
 
町中の者がジャミル目掛けて走って来たのである。
 
「聞きましたよ、勇者様!上の世界からいらっしゃったとか……」
 
「お願いします!ゾーマを倒して下さい!これ、差し入れのフウキのお焼きです!!」
 
「……またこのパターンかよっ!」
 
「勇者様!リンゴ食べて下さい!」
 
「みかんの方がいいですよね!?」
 
「焼きまんじゅうどうぞ!!」
 
「おお……、勇者様……、ありがたやありがたや……」
 
何を勘違いしているのか、感激して涙を流している老婆の姿も……。
 
「拝むなーっ!!俺は仏様じゃねえっ!!」
 
「あの……、握手して下さい……、やっぱり駄目ですよね……?」
 
「……だからさあ……、俺は……」
 
「ジャミル、困ってるわ……」
 
「勇者は嫌だって言ってたのが……、今なら僕も分る気がするよ……」
 
「うん……、そうだねえ……」
 
「……退場致すっ!!」
 
「あっ!勇者様が……!!」
 
「みんな、後を追うんだ!!」
 
「ジャミル!」
 
アルベルト達も慌ててジャミルを追おうとするが町人が邪魔をして一向に追いつけない。
ジャミルは仲間達から引き離されてしまい、無我夢中で町中を走り回っている間に
気が付くと……、迷子になってしまっていた。
 
「何処だ此処、……連中を巻いたのはいいけど、大分大通りから離れちまった……」
 
「……こっちですよ……」
 
「誰だっ!?」
 
見ると、路地裏から誰かジャミルに向かって手招きしている。エプロンを着けている
青年の様である。
 
「な……、何だ……?マジで誰だよ……!」
 
「いいから、早く……!!」
 
ジャミルは急いで路地裏に隠れた。
 
「此処を通れば私の家に行けますから……」
 
「あんたは……」
 
「此方へ……」
 
ジャミルは言われるまま青年の後について行った。暫く青年の後に付いていくと、
やがて路地裏の奥にひっそりと建つ、素朴な一軒家が見えた。
 
「ここって……」
 
「表向きは武器屋です、私の家です、普段は此処でひっそりと営業しています、
此処を選んだのも、私は静かな場所が好きなので」
 
「なあ、あんた何で……」
 
「詳しい話は中でしましょう……」
 
ジャミルは青年の後に続いて家の中に入った。青年はジャミルをリビングに連れて行き、
ソファーに座らせた。
 
「暫く立てば町の連中も飽きると思います」
 
「そ、そうなのか……?」
 
「ええ、この町の人々は皆、珍しい物が大好きなんです……」
 
「珍しいって……、俺……、天然記念物かよ……、とにかく助かったけどよ……」
 
ソファーの上でジャミルが安堵の溜息を洩らした。
 
「でも皆、あなたに縋りたいのは本当なんです……」
 
「え?」
 
「こうしてまた、勇者が現れるなどとは夢にも思わなかったのでしょう……、
突然オルテガ様が消えてしまわれて……、皆は希望を失っていたのです……」
 
「聞きたいんだけど……」
 
「ええ、分っています……、あなたに会わせたい人がいらっしゃるんです、
此処でちょっと待っていて下さい」
 
「は?」
 
青年は突然話を勝手に進めだし、ジャミルが首を傾げている中、
部屋を出て行ったかと思うと、数分後、直ぐにまた戻って来た。
 
「さあ、2階へ……」
 
ジャミルは頭を掻きながら2階へ上がって行った。そして、案内された部屋の中で、
……ベッドに横たわっていた人物とは……。
 
「あんた……」
 
「おお……、そちが上の世界から参ったと言う……」
 
「このおっさん、……誰?」
 
「儂はラダトームの国王……、ラルス一世じゃ……」
 
「へー、そう……、……って、何ーーっ!?」
 
「シーッ!声が大きいです……!」
 
青年に注意され、ジャミルは慌てて自分の口を押えて声のボリュームを下げた。
 
「あんたが逃げ出した国王様ってワケかい……、ふーん……」
 
「いかにも……」
 
「……んなとこで何してんだよっ!国民置いて自分一人だけ隠れやがって!!」
 
「勇者様……!!」
 
国王にキレ掛かるジャミルを青年が必死で押しとどめる。
 
「な、何だよ……」
 
「……お願いです……、国王様を責めるのはどうかやめて下さい……」
 
「いいのだ……、ジョニー……」
 
「でも……」
 
ジョニーと呼ばれた青年が俯いた。
 
(……あーっ……、近頃本当に話が真面目になってきやがった……、おーっ!!)
 
ジャミルが混乱して頭を掻きむしる。
 
「勇者様……」
 
「あ?」
 
「ご病気なんです、王様は……」
 
「病気……?」
 
「お可哀想に……、王様はすっかり心を痛めてしまわれて……」
 
とうとうジョニーが泣きだしてしまう。
 
(……情緒不安定の精神病か……、けどまいったなあ……、これじゃ俺がまるで
虐めてるみたいじゃねえか……)
 
「……今まで幾多の勇敢な若者達が儂の元へと趣きゾーマを倒すと旅立って行った……、
しかし……、誰一人として帰って来た者はいなかった……」
 
「……」
 
「のう、勇者よ……、悪い事は云わぬ……、もうゾーマを倒すなどと愚かな事はやめるのだ……」
 
「……じゃあこのまま何もしないでいろっつーのか!?黙ってたって殺されるんだぞ!
俺はそんなの御免だね!!」
 
「しかし……、そなたも命を落とす事になるかも知れぬのだぞ……」
 
「今ここで誓ってやるよ!」
 
「……お主……」
 
「ゾーマは俺達が何が何でも絶対倒すんだっ!分ったかバーロー!!」
 
「……ちょっとあなた!さっきから黙って聞いていれば!国王様に向かって!
口の聞き方も知らないんですか!?」
 
「よいのだ、……ジョニー……」
 
「ですが……」
 
ラルスはジョニーを宥めると、改めてジャミルと向き合う。
 
「勇者殿……」
 
「……」

「ジョニー……、この者と大事な話がしたい」
 
「はっ!はい……」
 
「勇者よ……、そなたにこれを授けよう……」
 
ラルスがジャミルに差し出したのは、黄金色に輝く石であった。
 
「……お、王……、国王様……!?」
 
「これ……、何だい?」
 
「この国に伝わる宝、太陽の石だ」
 
「……王っ!!……そんな……、国の秘宝を……!!」
 
「ジョニー……、儂はこの若者に希望を託す事にした……」
 
「へ?」
 
「そなたの目は違う……、輝きをおびておる……」
 
「……」
 
「勇者殿……、どうか、このアレフガルドの大地に平和と光を取り戻しておくれ……」
 
「ああ、任せとけよ!」
 
ラルスが差し出したその手をジャミルが強く握り返した。
 
「勇者様……、先程は失礼な事を……、本当に申し訳ありませんでした……」
 
「いや、別にいいよ、俺、こう言う性格なんで……、へへ」
 
「……勇者様」
 
ジャミルが笑うと、ジョニーがこくりと頷いた。
 
「アレフガルドに伝わる古い言い伝えです……」
 
 
雨と太陽が合わさるとき……、虹の橋が出来る……
 
 
「太陽?もしかして……、この石の事なのか……?」
 
ジャミルが貰った太陽の石を握りしめた。
 
「……勇者よ……、ゾーマはとてつもなく強い……、しかし……、
かつてこの城にあった伝説の武器達があれば……」
 
「武器?」
 
「ゾーマによって盗まれてしまったのだ……、伝説の武器と防具を……、
かつてこの城に存在していた王者の剣がその一つなのだ……」
 
「それがありゃゾーマに勝てるかも知れねえって事か……」
 
「しかし……、もう幾つかは破壊されているやも知れぬ……」
 
「ま、探してみなきゃわかんねーよ?」
 
と、ジャミルが言葉を呟いた、その時……。
 
 
 
     ……ジャミルーーっ!!
 
 
「あ……」
 
窓の外から聞き覚えのある、やかましい声が聞こえた。
 
「ジャミルーっ!どこ行ったんだーい!スリッパで叩かないから出ておいでー!!」
                       ↑多分嘘。
 
「少しだけオイラのおやつあげるよーっ!!」
 
「ジャミル……、どうしよう……、ジャミル……」
 
「……あ……、アイシャあ~!大丈夫だよお!ジャミルは何処にも行ったり
しないからあー!!多分、催して何処かにトイレを探しに行って迷子になってるのかも!」
 
「……何やってんだよ、あいつら……、てか、ダウドの野郎……」
 
「お仲間ですか?あなたを探している様ですが……」
 
他のメンバーもジャミルを探し回っている内に、こんな場所まで
足を広げ探しに来てくれたのである。
 
「ああ、そうなんだよ……」
 
「そうだったんですか、お忙しい処お時間を頂いてしまいまして……」
 
「いや、こっちこそ、あんたのお蔭で助かったよ、サンキュー!」
 
「もう町の方もそろそろ落ち着いた頃だと思います、それと、これはこの世界の地図です、
どうかお役に立てて下さい……」
 
「本当色々悪いな……、んじゃあ、俺はこれで……」
 
「勇者よ……」
 
「ん?」
 
「気を付けてゆくのだぞ、くれぐれも無理はするな……」
 
ジャミルはジョニーと国王にVサインをすると武器屋を出た。
 
「さてと、……奴らと合流しねえと、……あ!」
 
「本当に何処行ったんだよ、もう!」
 
「トイレを探し過ぎてどっか他の場所に行っちゃったのかな……」
 
「……そんな……、だって……」
 
 
いつもの3人がこっちへ走って来るのが見えた。
 
「おーい!」
 
ジャミルが3人に向かって手を振ると、ジャミルの姿に気づき、慌ててすっ飛んで来た。
 
「何してんの……、お前ら……」
 
「……もー!散々あちこち探し回ったのよ!何してんのじゃないでしょ!
ジャミルのバカ!!」
 
「足、疲れたんだよおー!!」
 
「あんまり心配させないでよ……、まあ、いつもの事だけどさ……」
 
「悪かったよ……」
 
そう言いつつもジャミルも3人も漸く再会出来、お互いに一安心した表情を見せた。
4人は大通りの方へと再び歩き出す。
 
「とりあえず宿屋に行って話そうよ」
 
「けど、町の連中は?……本当に大丈夫か?」
 
「皆飽きて帰っちゃったみたいなの……」
 
「そっか、良かった……」
 
「あ、ジャミル……、もしかしてそれで今まで隠れてたのかい?」
 
「その事なんだけどな……」
 
 
ラダトームの宿屋
 
 
「そうだったんだ……、国王様がね……」
 
「良かった……、ゾーマが怖くて逃げだしたんじゃないのね……」
 
宿屋のロビーには、3、4人、人がいたが、昼間と違い静かな物で、
皆ジャミル達には見向きもしない。カウンター越しの店員は宿帳に何か記入している。
 
「それで……、今後の事はどうするの……」
 
「そうだなあ、どうすっか……」
 
アイシャに聞かれ、椅子にもたれてジャミルが考える。
 
「おい、兄ちゃん達」
 
斜め先のテーブルでトランプをしていた男がジャミル達に近寄ってきた。
 
「旅行かい?この緊迫した時代に……、ハッ!」
 
ジャミルは少しムッとしたが何も言わず黙っていた。
 
「しかしまあ何だ、この世界も国もお終いだあな、国王まで逃げ出す始末たあ」
 
「……とりあえず……、昼間言った通り明日から暫くレベル上げしておこうよ、
2、3日は宿屋に泊らないといけないけど……」
 
「シカトか、ふんっ!クソガキ共め!」
 
ガラの悪い男は自分のテーブルに戻って行った。
 
 
それから3日後……。
 
 
ジャミル達はどうにか動く石像ぐらいは真面に相手に出来るぐらいにLVを上げ、
成長を遂げる。
 
「♪みてみてー、私、ドラゴラム覚えたのー!」
 
アイシャはそう言うと呪文を唱え、巨大な竜へと姿を変えた。
 
「おおーっ!!」
 
「えへっ!」
 
「ジャミルが浮気したら燃やしちゃえ!」
 
「……余計な事言うんじゃねえよ、バカダウド……」
 
「痛あーっ!」
 
「あ、僕もやっとべホマラー覚えたよ!」
 
「何それ?」
 
「これ一つでべホイミが皆に掛けられるんだよ」
 
これがあるのと無いのでは随分違う、本当に頻繁にお世話になる重要魔法の一つである。
 
「すげえな、アル!!」
 
「……オイラは更に逃げ足が速くなってしまいました……」
 
「よかったね……」
 
「……」
 
「アルまでぇ、そんな目で見ないでよおー!」
 
「あ、俺も俺も!」
 
「ジャミルもかい?」
 
「ああ、やっとべホマ覚えた、ほら」
 
「わあ!これでもっと戦闘が楽になるね!」
 
アイシャが笑った。
 
「有難いけど……、やっぱりジャミルはなるべく物理攻撃に回って貰った方が……」
 
「何でだよ!」
 
「そうよ、アルだって楽に戦えるじゃない!!」
 
「ただでさえ君はMPが少ないんだから……」
 
「あっ、そうか……、だよな……」
 
アルベルトに言われ、ジャミルが自分のMPの現実に気づき、少し項垂れる。
 
「多用してるとあっと言う間にMP終わっちゃうからもしもの時に温存しておいて」
 
「あのー……、オイラ……」
 
「何?ゴキブリダウド君」
 
「ゴ……、ゴキぃ……!?」
 
「……ゴキブリみたいにガサガサ逃げ足が速いっちゅー事」
 
「ま、まあまあ……、ジャミル……」
 
「うわああーん、ジャミルがいぢめるう~……!!」
 
「……だから!気色悪ぃんだよ!いい歳こいて!!」
 
「オイラ何歳……?」
 
「……いくつだっけ……」
 
「僕に聞かれても困る……」
 
彼の実年齢は原作でも不明である。……ジャミルと同じ年齢なのか、それとも年下なのか。
 
「……」
 
「……まあいいや、今日は宿に戻ろう……」
 
と、アルベルトが呟く。
 
「くそう……、オイラだって……、レミラーマ……!!……きゃーっ!?」
 
「!?ダ、ダウド!お前何してんだよ!!」
 
「……地面に何か埋まってないかと思ってえー!魔法で掘り起こしたら大量の
犬のうんち!!……あっ!人間のも混ざってる!」
 
「何でオメーはそうやって余計な事ばっかすんだっ!!バカダウド!!」
 
「きゃーっ!ごめんなさーい!!」
 
結局……、宿に戻る前にジャミル達はダウドが発掘した犬のフンを掃除する
羽目になった……。
 
「環境美化になってよかったねー!」
 
「……よくねーっつんだよ!」
 
「あいたっ!!」

その4

伝説の盾の行方

夜までまだ時間が有る為、ジャミル達はラダトームの町で少し情報を集める事にした。
 
「時計ないと昼も夜も何も分かんないんだけどね」
 
「時間の感覚おかしくなるよねえ……」
 
「……あ、おっさん、ちょっと……」
 
「なんだい」
 
「この付近で他に町か村があるかい?」
 
「そうさなあ……、ここから一番近い町だとマイラかな?」
 
「マイラ?」
 
「あ、マイラは町じゃねえや、村だ!温泉があるぞ、観光がてらに行ってみるといい」
 
「へー、温泉かあ……」
 
「でも、マイラは船がねえと行けねえぞ、こっから先、あちこち移動するには
船がないと色々不便だからな、町を出て西に波止場があるからそこで聞いてみるといい」
 
「また船復活かあ……」
 
ダウドが嫌そうな顔をする。ラーミアのいないこの世界を彼方此方動き回るには
船が絶対不可欠。
 
「何だか最初に戻ったみたいねえ……」
 
「とりあえず今日は宿屋で休もう、大分レベルも上がったし明日には動けんだろ」
 
 
ラダトームの宿屋
 
 
「ああ、お帰りなさい、勇者様達!」
 
ジャミル達は宿屋の店主やおかみさんとすっかり馴染みになっていた。
 
「お疲れでしょう、今、食事をお持ち致しますね」
 
4人はロビーに有るテーブルに着き、椅子に腰掛ける。
 
「今日も疲れたなあ……、夕飯なんだろ?沢山動いたから腹減ったよ、飯が美味い
だろうなあ」
 
ジャミルが嬉しそうな顔をする。此処での宿屋の美味しい食事は4人にとって
お楽しみの一つとなっていた。
 
「動かなくても動いてても君はいつもお腹空いてるでしょ……」
 
「アル、お前いちいちうるさい……」
 
「お待ちどうさま」
 
おかみさんが美味しそうな食事を運んで来た。今日の夕ご飯はお魚の定食と海鮮スープ。
 
「勇者様達はいつまで此処にいられるのですか?」
 
「明日には出発するよ」
 
「そうですか……、お寂しいですね……、疲れたら又いつでも泊まりに来て下さいね」
 
「ありがとうな、おばさん!」
 
4人はご飯を食べ終え、お腹もいっぱい。……その夜、就寝前の一時、
ロビーで寛いでいたジャミル達の前に変な客が来た。
 
「おお!古き言い伝えの勇者たちに光あれ!!」
 
客はそれだけ言うと帰って行った。
 
「……何?今の……」
 
「さあ……?」
 
 
次の日。
 
 
「ジャミル、起きて!」
 
「ん……?」
 
「大変なの!早く!!早く!!」
 
恒例の朝の大変モーニングコールでジャミルは起こされる。
ちなみに本日のモーニングコール担当枠はアイシャであった。
 
「今度は何だ……」
 
ジャミルは欠伸をしながら部屋を出、1階に降りていく。
 
アルベルトとダウドももうすでに支度をして店主と話をしていた。
 
「……また何かあったのかい……?」
 
「ああ、勇者様、大変なんです!モンスターが……」
 
「?」
 
「モンスターが集団で北の洞窟へ歩いていくのを見かけたんだって!」
 
「洞窟?近くか?」
 
「ええ、確かに北にあります、でも……、どうしてなんでしょうね……」
 
「何かありそうだな……、俺らも行ってみるか?」
 
アルベルトとアイシャも頷く。
 
「え~?でも……、出発遅れちゃうよおー?」
 
「仕方ねーじゃんか……」
 
「う~……」
 
ジャミル達は嫌がるダウドを無理矢理引っ張って北の洞窟へと向かった。
 
 
北の洞窟
 
 
「外も暗いのに……、洞窟の中なんか余計暗いな……」
 
「暗いね……」
 
「暗いわ……」
 
「……帰ろうよお……」
 
松明を翳し、薄暗い洞窟の中を4人は進んで行く。
 
「こんな場所……、モンスターに何の用があるってんだ……」
 
「だから帰ろうよお……」
 
「待って!」
 
突然アルベルトが立ち止まった。
 
「気配がする……、モンスターだ……」
 
アルベルトがそう言った途端……。
 
「ヨバレテトビデテジャジャジャジャーン」
 
「きゃっ!?」
 
アイシャが声を上げた。壁から剥げた頭の変な顔のモンスターが
にゅっと這い出て来たのである。
 
「うわーっ!気持ち悪いよお!!」
 
「……こ、こらっ!」
 
ダウドは慌てて逃げようと準備。それを阻止しようと、アルベルトがダウドの
服の裾を思い切り掴んで引っ張る。
 
「たく、変な所から出てくんなよ……」
 
「グゥルルル……」
 
「ト、トロルなの……?恐いわ……」
 
「でも、トロルにしちゃ色が違わねえ?どぎつい色してるし」
 
「ボストロール……、でもなさそうだしね……」
 
「オイドンハトロルキングダス!」
 
「……ダス……?」
 
「トロルノナカデモイチバンエライノガトロルキングナンダス!!」
 
「あ、そう……」
 
「ゾーマサマノゴシジ、バカユウシャタチ、ウゴキダシタ、コノサキニ
ジャマナモノアル、ソレコワシテシマウノダ!!」
 
「邪魔な物?」
 
「ユウシャノタテ、コノオクニアール!オイドンタチ、ソレコワスタメキタ、
ゾーマサマゴメイレイ!!……ゾーマサマ、ユウシャノタテヌスンダ、
シカシ、タテハゾーマサマヲキョヒシ、ドコカヘミズカラトンデイッタ!」
 
「……恐らく、盾が自己防衛で自らゾーマの手を逃れたって事なのかな、、
不思議だね、その盾がこの場所に……?」
 
「凄い盾さんなのねえ……」
 
「ハハハ!モウオワリダ!ゾーマサマニアクエイキョウヲオヨボスタテメ、
スグニハカイシテクレヨウ!」
 
「へー、壊す前に俺らにも見せてくれる?」
 
「イイゾ、タダシ、オイドンヲタオセレバナ、オマエタチニハムリ!!」
 
トロルキングは醜い顔で汚い歯を見せゲラゲラ笑う。アイシャが
即座に嫌な顔をし、そっぽを向いた。
 
「どうしても見たいんだけどなあ」
 
「ナラハヤク、オイドントタタカエ!!」
 
「だってさ、どうする?」
 
仕方ないねと言う様にアルベルトが頷いた。
 
「じゃあ……、こっちも遠慮しねーよ?」
 
「ナニオーッ!!」
 
「……メラゾーマ!!」
 
アイシャが覚えたての呪文を詠唱しようとするのだが。
 
「えっ!?何これ……、魔法が発動出来ない……」
 
「ガァーーーッ!!」
 
「きゃああーーっ!」
 
「……アイシャ!危ねえっ!」
 
アイシャを狙い攻撃してきたトロルキングの攻撃をジャミルがすかさず稲妻の剣でガード。弾き返した。
 
「ありがとう、ジャミル、でも呪文が唱えられないのよ……」
 
「……ヒャド!ああ……、僕も、やっぱり……」
 
アルベルトも軽く呪文を詠唱してみるが……。
 
「アル、お前の方も駄目か?」
 
「うん、中に入った時から何だか変な感じがしていたんだけど、
どうやらこの洞窟の中じゃ魔法が使えないみたいだ……」
 
「きゃーっ!!それじゃどうするのさあ!!」
 
ダウドがキャーキャーパニックになる。
 
「武器オンリーで行くしかねえな……、アル、行けるか?」
 
「ああ、僕は大丈夫!」
 
「アイシャは今回休んでろ、俺達だけで何とかするから」
 
「うん……、ごめんなさい……」
 
「じゃあ、オイラがアイシャを守って……」
 
「……攻撃に参加してくれる……?」
 
半目でアルベルトがダウドを見た。
 
「はい……」
 
魔法サポート無しのバトルだったがそれでもジャミル達は3分でトロルキングを倒す。
 
「強くなったなあ、俺達も……」
 
「貧弱体質なのは変わんないけど……」
 
と、ボソボソダウド。
 
「……いつも一言余計なんだっ!おめーはっ!!」
 
「いた……、いたいですう……、ジャミルさん……、いたたたた!」
 
「先を進もうよ、二人とも……」
 
「あ、わりい」
 
「いたーい……」
 
「攻撃魔法が使えないって言う事は……、当然回復魔法にも頼れないのよね……」
 
不安そうな表情でアイシャがアルベルトに話し掛けた。
 
「うん、何とかここにいる間だけ、苦しいけど薬草で乗り切るしかないよね……」
 
「ううー、早く出たいよお……」


……お久しぶりのピンチです!

洞窟の最深部へと進むと不気味な霧が立ち込める場所へと辿り着く。
 
「あの亀裂、なんだろう……?」
 
「だ、誰がこんなのあけたの……?」
 
ダウドが地面に大きく裂けた亀裂の穴を覗いた。
 
「俺が知るか……」
 
「どこかへ続いているのかしらね……、この下……、いざないの洞窟の時みたいに」
 
何となく、あの時亀裂に落とされた時の事を思い出してしまうアイシャ。
 
「……ダウド、お前試しに落ちてみろよ」
 
亀裂を指差してジャミルが笑いを洩らした。
 
「酷いよお!!何て事言うのさあ!!」
 
「……冗談だよ……、マジで怒るなよ……」
 
本気で涙目になってダウドがジャミルを睨んだ。
 
「あ、宝箱よ……」
 
アイシャが指差す先、亀裂の左側に宝箱が置いてあった。
亀裂に落ちない様に気を付けながらジャミル達は宝箱に近づく。
 
「インパス使えないから、くれぐれも気を付けて……」
 
「仕方ねえ……」
 
ジャミルが宝箱を開けようと、宝箱に触れた瞬間……。
 
 
……ドサドサドサッ!!
 
 
「ひぃぃぃぃーーっ!!」
 
ダウドの顔がムンクの叫びになった。……突然天井から大量の
モンスターが落ちてきたのである。
 
「……ド〇フのコントかよっ!!」
 
「あわわわわ……、こ、腰がぁ……」
 
「ワレラ、ゾーマサマにチュウセイチカウモノ、オマエタチニコノタテハワタサナイ……!!」
 
「やっぱり……、この中身は勇者の盾らしいな……」
 
「……もうひと頑張りだ、行こう……!!」
 
アルベルトが前面のモンスター集団を睨んだ。
 
「ああ……!!」
 
しかし、敵も呪文中心の系統だったらしく、此処では相手も呪文が使えない為、
それ程苦戦せず、あっさりとバトルは終了した。
 
「……ゾーマって頭足んねんじゃね、こんな所に魔法使い系のモンスター送り込んでくるとかさあ」
 
「知らなかったのかな、この場所の事を……、でもそんな事はないと思うんだけど……」
 
「頭足らないなんてジャミルに言われたらお終いだねえ」
 
「そうだなあ?……うるせーよバカダウド」
 
「いたっ!」
 
(……本当にこの二人は頭のLV同じなんだなあ……)
 
心の中でアルベルトが感心してみた。
 
「強くもなかったし、余裕だったけど、数が多かったからなあ、疲れたかも……」
 
「ジャミル、この宝箱光ってるわ…」
 
「光ってる?」
 
確かに宝箱から光が漏れている。ジャミルはそっと宝箱を開けてみる。
 
「やっぱり盾だ、あいつらが破壊しようとしてたやつか……?」
 
「何かジャミルに反応してるみたいだよ……」
 
「俺に……?」
 
ジャミルが盾に触れると輝きが強くなった。
 
「これは君専用だと思うよ」
 
「え……」
 
「勇者の盾って言うぐらいだもの、ジャミルのよね……」
 
「うーん……、んじゃ、ダウド、お前試しに触ってみ?」
 
「えー?」
 
「えーじゃねえよ、早く!」
 
「わかったよお……」
 
ジャミルに脅され、ダウドがしぶしぶ盾に触れると盾は全く輝かなくなってしまった。
 
「うー……」
 
「……日頃の行いが悪いからな……」
 
「うわあーん!」
 
「でも、私でも駄目よ……」
 
「僕も……」
 
アイシャとアルベルトでも駄目だったと判りダウドが安心する。
 
「やっぱりこれはジャミル専用なんだよ」
 
「そうか、んじゃこれ貰っていこうかな」
 
ジャミルが背中に盾を背負った。
 
「やっぱり今日はまだ出発出来ねえな、もう一晩宿屋に世話になるか」
 
ジャミル達はラダトームの宿屋へと戻る事にした。宿屋に戻ると
心配していた様子で店主の旦那とおかみさんが出迎えてくれる。
 
「ああ、お帰りなさい、皆さま!いかがでしたか……、洞窟の方は……?」
 
宿屋の店主に事情を話し、もう一晩泊めて貰える様お願いすると
店主の主人もおかみさんも喜んでくれた。
 
「今日もお疲れ様でしたね、すぐにお食事をお作り致しますね」
 
ジャミル達は夕食を取り早目に床につく事にした。
 
風呂から出て部屋に戻ろうとすると部屋の戸口の前にアイシャが立っていた。
 
「何してんの?」
 
「あ、ジャミル……、アル達は?お風呂一緒じゃなかったの?」
 
「部屋にいるだろ?疲れたんだろ、飯食ったら二人ともすぐ寝ちまったから、
……明日には二人ともツラが長くなって馬になってるな」
 
以前ダウドに牛豚と言われた事の仕返しである。
 
「もうーっ!……ジャミル、あのね、ちょっといい?」
 
「?」
 
「ねえ、まだ寝ない?」
 
「もう少し起きてるかな……」
 
「良かったら少しお散歩しない?」
 
「いいけど、本当、少しだけだぞ、湯冷めしちまうからな」
 
「うんっ」
 
二人は宿屋の外に出て、夜のラダトームを歩いてみる事にした。
朝でも昼でも夜でも変る事の無い暗闇の世界。光が戻らない限り。永遠に。
 
「静かだね……」
 
「たりめーだろ、一日真っ暗でも今は本当に夜なんだぜ」
 
「いいじゃない……、まるで雰囲気無いんだから……」
 
そう言ってアイシャは大きく溜息をついた。
 
「ねえ……」
 
「ん?」
 
「私達のいた地上だと……、もう春だよね……」
 
星空を見上げてアイシャが言った。光の無い世界でも、星だけは輝き、
夜の一時の間だけ、この暗闇の大地を照らしてくれている。
 
「そうだな……、旅に出てからもうすぐ一年だもんな……」
 
「頑張ろうね、ジャミル、アレフガルドの人達が明るい暖かい春を迎えられるように……」
 
「ああ……」
 
「戻ろうか」
 
「あいつらが起きたらうるさいしな」
 
「ふふっ!」
 
二人は声を合わせ顔を見合わせて笑った。
 
「……」
 
「アイシャ……?」
 
(ずっと……、ずーっと……、ジャミルと一緒にいたい……)
 
心の中で小さく祈りながらアイシャはジャミルの手をそっと握り締める。
 
……翌朝、ジャミル達は西の波止場まで船を借りに行く事にした。
 
「船?ああ、勇者様達ですか、どうぞどうぞ!」
 
船の管理者はジャミル達を勇者一行だと分るとあっさりと船をタダで提供してくれる。
 
「よしっ!出航っ!!」
 
久々の船旅でジャミルが張り切り号令を掛けた。
 
「もうっ、ジャミルったら……、うふふ、張り切ってるわね」
 
「……あれ?今度は勝手に動かないね……」
 
「前のが特殊だったんだよ……」
 
舵を取りながらアルベルトが呟いた。
 
「前の方がよかったなあ~……」
 
と、ダウドがぼやく。……あんなに優秀な船が何体もあって堪るかとアルベルトは心で思う。
 
「なあ、アル……」
 
ジャミルが舵をじーっと見ている。目を輝かせ。その瞬間即座にアルベルトは理解する。
 
「……駄目です……」
 
「何も言ってねーのに何で分んだよ!」
 
「君に操縦させたら船が壊れる……」
 
「むかつくーっ!」
 
「どうぞ……、幾らでもむかついて下さい……」
 
「……ギィーッ!!」
 
「ねえ、あの城何かしら……」
 
「あ?」
 
遥か遠くに不気味な城が見える。
 
「……もしかしてあれがゾーマのお城なのかしらね」
 
「うーん……、どうだろな?」
 
「とにかく今は色々情報を集めないと……?」
 
「アル、どうしたの……?」
 
突然アルベルトが舵の手を止めた。何か不具合が起きたらしい。
 
「……何か乗り上げたのかな……、いやに……」
 
「あっ……!!」
 
水しぶきをあげてモンスターが飛び出して来た。触手がオレンジ色ぽい、
巨大なイカのモンスターであった。
 
「……イカ……、大王イカ……?」
 
「いや、もっと上ランクのモンスターだよ……」
 
「そういや、こいつも色が違うな……、強そうだ……」
 
ジャミルが攻撃態勢を整える。
 
「みんな、サポート頼むぜ!」
 
「うんっ!!」
 
アルベルト達が頷き詠唱準備をする。……ダウドはオロオロで相変わらず。
 
「ジャミル!」
 
「ん?」
 
「このイカはクラーゴンだよ!昨日、モンスター図鑑で調べた!」
 
「……わ、分った……」
 
クラーゴンは獲物を待ちきれない様子で甲板をバシバシ触手で叩いている。
 
「この手の奴は触手が厄介だからな……、気を付けねーと……」
 
ジャミルは呼吸を整え稲妻の剣をぐっと握りしめる。
 
「……いくぞっ!」
 
ジャミルがクラーゴンに切り掛るが……。
 
 
バキッ!!
 
 
「あ……」
 
「……ジャミルっ!!」
 
「嘘だろ……、稲妻の剣が折れるなんて……」
 
「ジャミル下がって!ここは僕らの魔法で……」
 
「きゃあーっ!!」
 
「アイシャ!?」
 
アイシャの背後から更に別のモンスター、キングマーマンが集団で海から現れた。
 
「……ちいっ!!」
 
「うわあ!!囲まれちゃったよおお!!」
 
「アイシャ!こっち来い!!」
 
ジャミルが慌ててアイシャを手元に引き寄せる。
 
「……大丈夫よジャミル、ちょっとびっくりしただけ……、戦わなくっちゃ……、
ごめんね、詠唱の手も止めちゃって……」
 
「無理すんなよ……」
 
「ううん、平気……」
 
そう言ってアイシャは心を落ち着け、キングマーマンへ向け再び呪文の詠唱を始めた。
 
「ダウド、お前のムチ貸せっ!」
 
「え?ええー……、これじゃ無理……」
 
「いいから貸せっ!!」
 
ジャミルはダウドから鞭をひったくると、もう一度クラーゴンへ突っ込んでいく。
 
「……無茶だよお……、ジャミル……」
 
「ジャミル!無理しちゃ駄目だよ!」
 
「アル、俺は平気だからアイシャの方、援護を頼む!!」
 
「分った……!!」
 
「負けないんだから……!えいっ!イオラ!!」
 
「バギクロス!!」
 
アイシャとアルベルトのW魔法が次々とキングマーマンを海に沈めていく。
 
「はあ、……オイラ本当何してればいいの……」
 
「……くっ……」
 
「ジャミル!どうしたの!?」
 
ダウドが慌てて膝をついてしまったらしきジャミルに駆け寄る。
 
「……さすがに一人じゃ疲れちまって……、ちょっときつい……」
 
珍しくジャミルが弱音を吐いている。意地っ張りのジャミルが……。
それを見たダウドは慌てて道具袋の中を探り薬草を探す。
 
「や、薬草……、薬草!!」
 
「平気だ……、べホマが……、あ……!!」
 
「ジャミルっ!!」
 
「やべえ……、MPも殆ど残ってねえ……」
 
「頑張って!もうすぐアル達が来るから!!」
 
「……う~……、それまで身体が持つかなあ……」
 
 
バシッ!!バシッ!!
 
 
「ひっ!!」
 
こうしている間にもクラーゴンは容赦なく甲板を叩いて挑発する。
 
「……るせーイカだな……、焼いて食うぞ……」

その5

屈辱

「うう……」
 
「アイシャ!大丈夫かい!?」
 
「……わ、私……、もう……」
 
アイシャは今にもMPが尽きそうであるが必死に耐えている。
 
「……うあああっ!!」
 
「ジャミルっ!!」
 
遂にジャミルもクラーゴンにふっ飛ばされてしまう。
 
「ジャミルうー!しっかりしてよおー!!このままじゃみんな全滅だよお~!」
 
「ち……、ちくしょ……、う……」
 
「みんなっ、逃げるよっ!!」
 
「ま、待てよ、アル……」
 
「ラダトームに戻ろう……、悔しいけど……」
 
「こっから逃げるの!?まさか……、海に飛び込むとか……、ああ~っ!オイラ無理無理
無理ーーっ!!」
 
 
「……ルーラっ!!」
 
 
心配するダウドを尻目に間一髪、アルベルトのルーラでジャミル達はラダトーム近くの
海上へと間一髪逃れる事が出来た……。
 
「アル……?だ、大丈夫か……!?」
 
「うん……、流石に船ごと転送させたから……、MPが半端無くて……」
 
フラフラになりながら4人はどうにかラダトームまで辿り着く。
町の者は戻って来たジャミル達の姿を見てびっくり驚いてしまった。
 
「勇者さん達……、どうしたの!!それに……、みんな傷だらけじゃないか!!」
 
「勇者様……」
 
「おいたわしや……、どうかゆっくり傷を治していって下され……」
 
「ハハ……、ちょっとな、調子乗り過ぎてボコられちまったい……」
 
ジャミルの顔は笑っていたが心の中は失意のままだった。
 
「みんな有難う……、心配掛けてごめんな……、俺達は平気だから……」
 
「ジャミル、申し訳ないけど……、また暫く宿屋でお世話になろう……」
 
「ああ……」
 
宿屋の夫婦は最初ジャミル達が再び戻って来た事に驚いたが、
又宿屋に泊まっていくのを心から喜んでくれた。
 
「どうぞ、召し上がって下さい……」
 
おかみさんが温かい料理を運んでくる。
 
「私達にはこれぐらいしか出来ませんが……、沢山食べてどうか元気を出して下さいね……」
 
「おばさん……、いつも本当、ありがとな……」
 
おかみさんは笑って厨房へ戻って行った。
 
「優しい人ね、本当に……」
 
「うんっ、うんっ!」
 
「ご馳走になろうよ、ジャミル」
 
「えっ?あ、ああ……」
 
4人はおかみさんが作ってくれた温かい、美味しい食事に舌鼓を打つ。
 
「おいしい♡」
 
アイシャが幸せそうに料理を口に運んだ。
 
「やっぱり戦いなんかより、こうやって美味しい物食べてる方がオイラ幸せだよお~」
 
「ふふ、そうだね……」
 
「ねえ、ジャミル、このエビフライ、衣サクサクでおいしいよ!」
 
ダウドがフォークでエビフライをジャミルの口元まで近づける。
 
「そうかい……、良かったな……」
 
「ジャミル……?」
 
アルベルトも様子を気に掛ける。先程からジャミルは出された食事に目もくれず、
只管下を向き、じっと唸っている。
 
「どうしたの……、さっきから全然口つけてないじゃん……」
 
ダウドはそう言いながら先程のエビフライをぱくっと自分の口に入れた。
 
「……」
 
「ジャミル……、焦っても仕方ないよ……、気持ちは分るけど……」
 
「あーーーっ!!あんのイカむかつくう!!イカ焼きにして食ってやる!!」
 
苛々してジャミルが頭を掻きむしる。
 
「……じゃあ、ジャミルの分のタマゴ焼き、オイラが……」
 
「んー!?」
 
「……食べません、いたたたた!いたいよお!」
 
「とりあえず落ち着いて、お腹いっぱいになれば気分が落ち着くよ…」
 
「そうか、じゃあ食うか……」
 
「はあ~……」
 
ダウドの所為で漸く食事に目を向け、食べる気になったらしく、アルベルトがほっとする。
 
 
〔おまけエピ 魔法の……。〕
 
 
ロビーにて。話をしている男衆。
 
「……ねえ、ジャミル……、オイラ相談があるんだけど……」
 
アイシャが食事の途中で先に風呂へ行った隙にダウドがジャミルにこっそりと話し掛けた。
 
「何だよ」
 
「これね、キングマーマンが落としてったみたい……」
 
「これは……、ビキニだ……」
 
「やっぱり……、ビキニだよねえ……」
 
「……やっぱりって何だよ……」
 
「どうしようか迷ったんだけど……、捨てるのもねえ……」
 
何故かダウドの顔がいやらしくなる。
 
「女性専用の……、レア装備アイテム……なのかな……」
 
やはり男の本能なのか……、アルベルトも顔が赤くなる。
 
「……これはアイシャに着てもらう方がいいと思うんだよお……、
何だか守備力高そうなオーラ出てるし……」
 
元々タレ目のダウドの目じりがどんどん下がっていく。
 
「……バカ野郎!それこそ殴られんぞ……!!……特に俺が……」
 
「じゃあ……、勿体無いけど……、売っちゃう……?」
 
アルベルトがジャミルの顔をちらっと窺う。
 
「う……、っと、ま、待てよ……、露出度高いのはあいつマジでギャーギャー
怒るからな……、でもなあ……、あーうー……、何だかかんだか……」
 
「じゃあ、ジャミルが着なよ……」
 
「何で俺なんだよ!!」
 
「女装趣味があるんだから……」
 
「……元の方から話持ってくんな!!それに趣味じゃねーっつーの!」
 
「この際きっぱりさっぱり売った方がいいよね……、超レアアイテムで勿体無いけど……、チラッ、チラッ……」
 
何故か未練がましいアルベルト。
 
「……ま、待て!!」
 
「やっぱり着て欲しいんでしょ……?我慢しちゃ駄目だよ?」
 
「……駄目だよお?」
 
「う……、ううう~……」
 
 
         ……さて、どうするのか……
 
 
やがて、出してもらった料理もすべて平らげてしまい、先に風呂に入りに行っていた
アイシャもロビーに戻ってくる。
 
「ふーっ、食った食った!」
 
ジャミルが満足そうにお腹を撫でた。
 
「はあーっ……」
 
「?」
 
見ると隣のテーブル席の男が異様に落ち込んでいた。
 
「何かあったのかい?」
 
ジャミルが男に声を掛けた。
 
「詐欺にあったんですよ……、カンダタと言う男から伝説の剣を買ったんです……」
 
「ふーん?……ちょ、ちょっと待て!!」
 
「……カンダタですって!?」
 
アルベルト達も思わず椅子から立ち上がり身を乗り出す。
 
「あなた達も詐欺に遭われたのですか……?」
 
「うーん、詐欺じゃねえんだけどさ……、ちょっとな」
 
「これを見て下さい……」
 
「銅の剣がどうかしたのか?」
 
「……実はこれを王者の剣と言い張って、オラ買えよ!お買い得だろと、
無理矢理買わされたんです……、値段ですか?……ちなみに5000ゴールドです……」
 
「王者の剣て……、ゾーマに盗まれたんだろ……」
 
「魔王に唯一対抗出来る伝説の剣ですものね、剣の力を恐れた魔王がラダトーム城から
奪い去ってしまったと云われています……」
 
「伝説の剣か……、畜生……」
 
稲妻の剣も失ってしまい、昼間の戦いを思い出したジャミルが悔しそうに
拳をぐっと握った。……そんな剣と巡り合える日は果たして来るのか。
 
「……とりあえずこの剣は売ってしまう事にします、幾らにもなりませんが……」
 
男はよろよろと宿屋から出て行った。
 
「……」
 
「で、でも、なんでカンダタがこんな所にいるのーっ!?」
 
「分らないから人生は面白い」
 
「あのね……」
 
「もしかして俺達の後つけて、奴らもこっちの世界に来た……とか?……んなワケ
ねえよな……」
 
「ス、ストーカー?」
 
「何か気持ち悪いわ……」
 
「……」
 
「なあ皆……、俺、武器屋に行きたいんだけど……」
 
話を変えようとジャミルが口を挟む。
 
「そっか、そのままじゃ戦えないもんね……」
 
「ま、しょうがねえさ!ははっ!」
 
「ジャミル……」
 
何とか気丈に振舞っているジャミルを見て、アイシャが心配そうな顔をする。
 
「んな顔すんな、俺は平気だから……」
 
「……無理……、しないでね……」
 
口ではアイシャにそう言ったものの、ジャミルの心の中はクラーゴンに勝てなかった
悔しさとイライラ、これから先の戦いへの不安でいっぱいだった……。
 
 
〔おまけエピ 魔法の……。 その後。〕
 
 
武器屋に行く前に汚れをしっかり落としていこうとアイシャと交代で風呂に入りに
行った男連中は……。
 
「うーん……」
 
ちゃっかり脱衣所までこっそり持参したビキニを目の前にまだ悩んでいた。
 
「これじゃオイラ達……、まるっきり変態だよね……」
 
「……何で僕まで……」
 
「大体だな、オメーがこんなモン持ってくるから火種になるんだよ!」
 
「なんだよお!本当はビキニ姿のアイシャ見たくてしょうがない癖に!!」
 
「……俺ばっかりふるなっ!!お前らだって見たいんだろう……?」
 
「……」
 
「……本当の処は……、あ……!」
 
「わーい!アルが本音だしたーっ!!」
 
「ち、ちが……、うー!!ンモーっ!!」
 
「やっぱ、人間素直が一番だよな……」
 
口の端を曲げ、ニヤニヤ笑いながらジャミルが頷く。
 
「……違うったらっ!!違うよっ!!」
 
「だけど……、これには根本的な問題がある……」
 
「?」
 
「思い出したんだ……、肝心のアイシャが……、まな板……っつー事を……」
 
「……そうかあ……、む、むちむちぷりん……、なら……」
 
「発展途上国……、だったね……」
 
「……」
 
「やっぱりこっそり売った方が……、お金になるし、ベストだね……」
 
「だな……」
 
 
       「……はああああ~……」
 
 
スケベ男連中は脱衣所で揃って溜息をついた……。
 
「……はっくしゅん!!」
 
「アイシャさん、大丈夫ですか?」
 
「うーん……?少し湯冷めしちゃったのかなあ……?」
 
「はい、紅茶ですよ、温まりますよ」
 
「おかみさん、どうも有難う……」


優しき仲間達

「さて……、今日はもうお終いだな、店を閉めるか」
 
「ジョニー!」
 
「……勇者様?」
 
本日の営業終了、店を閉める寸前でジャミル達がやってくる。ジョニーは驚いて目を
パチクリさせる。
 
「よお」
 
「どうなされたんですか?今日はお仲間もご一緒ですか?」
 
「まあな、……紹介してなかっただろ?俺のダチさ」
 
「こんにちは、初めまして、僕はアルベルトです」
 
「オイラ、ダウドだよ」
 
「私はアイシャです」
 
まだジョニーと会った事の無かった他の3人もジョニーに挨拶した。
 
「私はここで武器屋を営業しております、ジョニーと申します、どうぞ宜しく……」
 
「王様は元気かい?」
 
「ハッ、実は……、勇者様にお会いして少し笑顔を取り戻された様なのです」
 
「そっか、良かった……」
 
「処で……、一体どうなされたのです……?大分ご出発が遅れているご様子ですが……」
 
「実はさ……」
 
4人は家に入り、リビングへと通される。ジャミルは代表でクラーゴンとの戦いの件を
ジョニーに話した。
 
「……そうだったのですか、本当にどんな怪物が潜んでいるのか判りませんね……」
 
「それで、武器を見せてもらいに来たんだ」
 
「おお、うちの武器で宜しかったら、是非!」
 
「もう今日は店じまいだったんだろ?悪いな……、こんな遅くに急に来ちまって……」
 
「いえいえ、とんでもない!少し待っていて下さいね……」
 
ジョニーは店の倉庫に行って大量の武器を引っ張り出してきた。
 
「うわあ、いっぱいだね……」
 
「色々あるね」
 
「凄いのねえ……」
 
アルベルト達も武器を覗き込む。
 
「どうぞ、どれでもお好きなのを持って行って下さい」
 
「うーん、どれがいいのかな……?迷うな……」
 
「あ、でしたらお勧めのがあるんですよ」
 
「どれ?」
 
「これです」
 
ジョニーは鍔部分に翼をイメージした様な細身の剣をジャミルに差し出す。
 
「これは、はやぶさの剣といいまして、剣にしてはとても軽いんですよ」
 
「どれどれ?へー、ホントだ……」
 
「実はこの剣は攻撃力こそないんですが、一度に2回攻撃出来るんです!」
 
「便利だな……」
 
「いいんじゃないかな?ジャミルは素早さが高いからピッタリだと僕は思うよ」
 
「よし、これにするか!」
 
「ねーねージャミル、これ面白いよ!」
 
「は……、何……?そのハートのステッキの玩具は……」
 
「振るとね、音が鳴るのよ!ぴっこりーんて!」
 
何故かアイシャは嬉しそうである。
 
「玩具に見えるんですけど……、一応、あれも立派な武器なんですよ……」
 
「あ、そうなん……」
 
「プッ……」
 
「え、えーっと、んじゃ……、この剣買うよ、いくらだい?」
 
「勇者様からお代を頂くなんてとんでもない!そのまま持っていって下さい!」
 
「は?な、何言ってんだよ、金はちゃんと払うって!!」
 
「いいえ、頂けません!!」
 
「お、おい……」
 
「私も何か勇者様達のお力になりたいんです、ですが……、こんな事ぐらいしか
出来ませんのです、でも、私の精一杯の気持ちなんです……」
 
「ジョニー……」
 
「お願いします……」
 
「分ったよ、ありがとな、ジョニー…」
 
「勇者様……」
 
ジャミルはジョニーの気持ちに甘え、はやぶさの剣を受け取る事にした。
 
「大事に使わせて貰うよ、この剣を……」
 
「はいっ!」
 
「ねーねージャミルう、これ面白いよおー!」
 
「またか……」
 
今度はダウドである。
 
「このマイク喋るんだよお!」
 
「それも武器なんです、歌うんですよ、凄いでしょ?」
 
「はぁ……」
 
ペッペラパポププップ プッ
ペッペラパポププップー
ペップープペッペラパパプ
ポパポププップップー……
 
山田くーん!座布団全部持ってっちゃいなさい!!
 
(……使えんのかよ……、おい……)
 
「勇者様、国王様に会っていかれませんか?」
 
「いいのか?今日は連れがゾロゾロいるけど……」
 
「ええ、勇者様のお仲間なら大歓迎ですよ!」
 
ジャミル達は国王に会っていく事にし、2階の寝室へと通された。
 
「国王様、勇者様達が来られました」
 
「……おお!!」
 
「久しぶり……、でもないか……、少し元気になったって聞いたから安心したよ」
 
「ほう、今日は連れも一緒か……、」
 
「陛下、お初にお目に掛かります、私はジャミルと共に旅をしております、
アルベルトと申します……」
 
アルベルトに続いてアイシャとダウドも深く頭を下げ挨拶した。
 
「そんなに畏まらなくてもよいぞ、儂はもう国王などではないのだから……」
 
「陛下!?」
 
「王……」
 
「……儂はもう民を見捨てて逃げたのだ……、国王などと呼んで貰える資格など
ないのだ……」
 
「お話はジャミルから聞きました……、ですが……、今の世界情勢を見たら誰だって
逃げ出したくなる方が当たり前だと思います……」
 
「……ぐー……」
 
「そうだよお!王様は悪くないよ!!」
 
「……陛下はお優しいからこそ、自分の前で志願しては死んでいく若者達を見て
傷つき心を病んでしまわれたのでしょう?だからこそ……、もうこんな辛い現実から
逃げてしまいたいと……」
 
「……嫌だったら逃げちゃうって事も時には大切な事だと思うわ……」
 
「……ぐうー……」
 
「……オホン、ジャミル……」
 
アルベルトがジャミルを肘で突っついた。
 
「ふ?ふぇ……?」
 
「……お前達は優しいのだな……、こんな儂でも庇ってくれるのか……?」
 
「当たり前じゃん、皆、仲間なんだからさ!」
 
「……勇者殿……」
 
「へへっ!」
 
「……有難う……、勇者達よ……」
 
ジャミル達の優しい言葉にラルスは一筋の涙を溢した。
 
「なあ、ジョニーから武器貰ったんだけど、もしかしたら、これでもゾーマと戦えるかな……?」
 
「?」
 
「実はさ……」
 
ジャミルはクラーゴンの件をラルスにも聞いて貰う。
 
「……そうであったか……、お前達ばかりに辛い思いをさせてしまって……」
 
「い、いや……、別に平気だよ、当分は何とかこの剣でやっていけそうだし……」
 
「しかし……、いずれゾーマと一戦交えなくてはならぬのなら……、
その剣では無理であろう……」
 
「……やっぱり……」
 
「伝説の剣、王者の剣でなくてはゾーマを倒す事は限りなく不可能に近い……」
 
「確かゾーマの奴に持ってかれて……、どうなったのか判らないんだっけか……」
 
「もう今頃とっくに壊されてるよね……、ゾーマにとってそんな危険な剣なら……」
 
ダウドが絶望的な表情をする。
 
「……勇者の盾がどうにか無事だったのが救いよね……」
 
アイシャもぽつりと声を洩らした。
 
「いや……、まだ希望はあるやも知れぬ……」
 
「……?」
 
「勇者よ、マイラの村へ行ってみると良い、其処に……、凄い腕を持つ職人がいると
聞いた事があるのだ……」
 
「職人かい?」
 
「何でもどんなガラクタでも引き取って加工して、誰も見た事のない凄い武器を
作ってしまうと言う噂だ……」
 
「へえー!そりゃすげえじゃん!!」
 
「じゃあ……、その職人さんに頼めば……!」
 
アルベルトも嬉しそうな表情でジャミルを見る。
 
「ああ、希望があるかもだな!!」
 
「もう一度、海を越えよう……!!」
 
「今度こそ大丈夫だな、このはやぶさの剣もある事だし!」
 
「ところで……、盾が無事だったとは……?」
 
「ん?ああ、これかい……?北の洞窟でさ、モンスターから取り返したのさ」
 
ジャミルが国王に勇者の盾を見せた。
 
「……おお、それはまさしく……、城から奪われた勇者の盾……!!」
 
「やっぱ、そんなに凄いのかい?これ……」
 
「王者の剣と同じくゾーマ討伐にはなくてはならない物じゃ……」
 
「ふ~ん……」
 
「だから、モンスター達は邪魔な物って言ってたのね……」
 
「勇者よ、盾はそなたに預けよう」
 
「返さなくていいのかい?」
 
「……必ずやそなたの身を守ってくれるであろう……」
 
「分った、……大事にするよ……」
 
ジャミル達は国王とジョニーに礼を言って武器屋を後にした。
 
「あ……、大切な事忘れてた……」
 
「?」
 
        パンッ!!
 
           
「よし、行こう」
 
「……おめえなあ~……」
 
いつか必ずアルベルトの頭も引っ叩いてやる……、そう心に誓うジャミルであった……。

zoku勇者 ドラクエⅢ編 13章

zoku勇者 ドラクエⅢ編 13章

スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 クロスオーバー 年齢変更 オリジナル要素・設定 オリジナルキャラ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-02

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. その1
  2. その2
  3. その3
  4. その4
  5. その5