記憶
「ここ、前にも来たことあったよね」
そう言われたけれど
実は思い出せない
ぐるりと見回してみる
見たことがあったような
そう思いたいだけ
「この先を行くと街が一望できるんだよね」
色々な景色を思い浮かべながら
坂道を進む
そこには
見たことあるものたちが綺麗に並ぶ
凹凸の世界
映像の断片すら出てこなかった
私の中で消えてしまっている景色
初めてみる景色を綺麗だな、と思う
それを隣で
「やっぱり綺麗だね」
と言う
私の頭に刻まれたはずの記憶は
消え続ける
不思議なことではない
いつも新鮮でいられる
記憶