星の営み
息が白い、森で、ホットチョコレートをのみながら、月からうまれる子どもたちを見ている。
夜の街のざわめきは、旋律。
ノイズ、と、きみは呼んで、アルビノの彼は、やさしさにうもれて、酸素不足。チョコレートの甘さに酔いしれて、わたしのまぶたは重く、だれかの、狂おしい恋がはじまる深夜を想像して、しあわせ、というやつを、かんがえさせられるから、金曜日は憂鬱だった。
あしもとで、リスが、パンケーキを焼こうと言う。
底なしにやさしい、シカが、月からぽこぽこうまれてくるちいさなひとびとに、心配と、慈しみに満ちた眼差しを向けている。母親みたい。
もう、この星はそんなに永くはないのだと、みんな知っているけれど、べつに、かなしんでいるひとはいなくて、むしろ、ようやくその時がくるのか、と、どこか安心しているひとが多い。ニュースのなかのひとたちだけが深刻そうで、となりの家の、スナックのママをやっているワニは、鼻で嗤ってた。
(ねむい)
(おなかがいたい)
(しあわせ、が、わたしを悩ませる)
あらたな生命をうみだす月は、あかい。
星の営み